2006年、スイス・ヴェルビエで誕生したフリースキーブランド「FACTION(ファクション)」。スノーボードカルチャーの自由で遊び心あふれる精神に影響を受け、フリースキーやフリーライドといった“滑りの可能性”を広げることを目的にスタートした。
初年度の生産台数はわずか190台という小さな規模だったが、現在では世界31ヵ国以上に展開されるまでに成長。加えて、1% for the PlanetやPOW(Protect Our Winters)との連携を通じて、環境保全活動にも積極的に取り組むなど、単なるギアブランドにとどまらない姿勢を貫いている。
コレクティブを作り上げていく

この新しいスキーブランドを生み出したのはAlex Hoye(アレックス・ホイ)とTony McWilliam(トニー・マクウィリアム)の2人だ。「The Faction Collective」 と いうブランド名が示すようにfactionを介した集団という、意味合いが強く、ユーザーとのつながりを軸にしたコミュニティの重視をミッションに掲げている。
設立当初はわずか190台のスキーを生産する小さなブランドだった。当時はツインチップスキーが世界に登場して10年も経たない頃。老舗メーカーをはじめほとんどのメーカーがこのシーンへ参入したが、旧来のブランドほどニーズに即した小回りが利かない。
その点、FACTIONは早くからツインチップにワイドなスキーを取り入れ、フリースタイルとフリーライドの両者の要素を取り入れたスキーを発表するなど、コアなスキーヤーの心を掴んだのだ。

右:FACTION初期の契約ライダーであるカッレ・フレドリクソン
映像カルチャーとともに広がったFACTIONのコミュニティ
この初期の潮流が活気あるコミュニティを世界各地に生み出していく。牽引役になったのは新たなトリックや動きでスキーの可能性を広げるダンカン・アダムスやアダム・デロルメ、ティム・マッケンジーといったスキーヤーたち。DVDの映像などを通してファクションが徐々に知られていくなか、後押しになったのは2012年から約10年続いたキャンディッド・トベックスとのタッグだ。草の根的にファン層を広げていたFACTIONは、彼の加入を機に世界中のフリースキーヤーに知られるようになった。
その頃から、ブランドが主導する映像作品が始まる。これまでは、主にフィルムレーベルが作る作品をサポートしていたが、指針を変更。FACTIONのライダーをフィーチャーし、質の高い映像を制作して、発信するようになった。
その映像は、トリックやスリリングなライディングシーンを繋げただけではない。ライダーたちの背景に迫るストーリーテリングを重視したことで、FACTIONが大切にしているコミュニティを表現し、ブランドの理解を深めるのに一役買った。当時、こうしたスタイルは、他ブランドではあまり見られなかった方向性だった。
世界中から才能が集まる「The Faction Collective」

コミュニティの中心を担うライダーこそがFACTIONのアイデンティティを形作っている。映像プロジェクトを推し進めることで、FACTIONには続々と新進気鋭の才能が集まった。Xゲームスや五輪で目覚ましい活躍をみせるアイリーン・グーやアレックス・ホール。マチルド・グレモーを筆頭に、若手のマーク・フォーハンド、マテイ・スヴァンサ。フリーライドではFWT総合2位のマルティン・ブレンダーと世界で活躍するライダーが名を連ねている。
一方で、フリーライドやビッグマウンテンシーンでレジェンドとしてリスペクトを集めるサム・アンタマッテンやエリザベス・ゲリッツェンなど、年齢やカテゴリー、国籍を問わないライダーたちが脇を固めた。
日本から世界へ。注目されるライダーたち

なかでも、ここ数年は日本のライダーも世界から注目を集めている。日本人としてFWTに初参戦した楠泰輔をはじめ、映像や写真でインパクトを残す星野洸我、スロープスタイルなどのコンペシーンで頭角を現すニコルズ皇吏や伊藤瑠耶など、それぞれがオリジナリティあるスキーを表現することで、FACTIONは豊かな多様性をみせている。
また、制作チームをはじめFACTIONは毎年日本を訪れ、日本のスキーシーンの理解を深めている。スキー場や山へ行きライダーと過ごすのはもちろんの、イベントではショップやファンの声に耳を傾け、コミュニケーションを図っている。本拠地のヴェルビエや欧州でやっていることを日本でも推し進めて、製品づくりに活かそうとしているのだ。

世界各地で起こっているムーブメントに足を運び、現場へ赴き、コミュニティを知る。FACTIONはそうやってスキーヤーの進歩と伴走しながら、スキーを進化させ続けてきた。そんなFACTIONは次のシーズン、2026年に周年を迎える。
クリエイティブなブランドムービー
2014年からスタートしたFACTIONのブランドムービー。最初の「We Are The Faction Collective」は 2016年まで毎シーズン作られ、3つのエピソードを順次公開していく形だった。2017年からは隔年で映像を発表していくスタイルに変えていった。
作品ごとにテーマを設け、世界各地が撮影ロケーション。フリースタイル、フリーライド、パウダー、とカテゴリーを横断し、年齢や性別、国籍も問わない豪華なラインナップのライダー陣が出演する。完成時には試写会を開くなど、映像がコミュニティハブとして機能している。いずれの作品もFACTIONのYouTubeチャンネルで視聴可能だ。
FACTION歴代の名機たち
FACTIONといえば、革新的なフリースキーデザインで数々の名機を生み出してきたブランド。ここでは、今も語り継がれる歴代の名機たちを振り返る。
Royale(2007年)

ブランドの方向性を決定づけたモデル。ツインチップやファットスキーが徐々に増えていく2007年当時、ツインチップにワイドなウエストを採用し、フリーライドとフリースタイルの要素を取り入れた先駆的な1台。
このスキーの登場によって、若い世代へ新たなスタイルを提案し、FACTIONが既存のスキーイメージを刷新する存在だと示した。少量生産なこともコアなスキーヤーによく響いた。
Candide 1.0(2013年)

フリースタイルスキー界のレジェンド、キャンディド・トベックスとのコラボレーションによって生まれたシグネチャーモデル。
革新的な形状とフレックスパターンを持ち、パークやパイプはもちろんのこと、ゲレンデ内外のあらゆる地形に対応できる汎用性の高さで注目を集めた。彼自身のライディングスタイルを体現したこのモデルは、多くのフリースタイルスキーヤーに影響を与え、シグネチャーモデルとして多くの人気を集めた。
Dancer(2022年)

Dancerシリーズは、オールマウンテンフリーライドスキーとしてブランドの進化を示したモデル。軽くて安定感があり、パウダー、グルーミングされたゲレンデ、そして春雪など、多様な雪質に対応できる性能を持っている。
とくにDancer 2は、そのバランスがよく、多くのスキーヤーに「一本でなんでもできる」スキーとして評価された。サステナビリティへの意識も高く、早くからリサイクル素材を用いた環境へ配慮したスキーだ。
'25-26シーズンFACTIONシリーズ一覧
今季も「遊び心」と「性能」のバランスに優れたラインナップを展開。フリースキーの代名詞的存在として、パーク、パウダー、オールマウンテン、ツーリングまで幅広く対応するモデルが揃っている。ここでは、2025-2026シーズンのFACTIONスキーシリーズを一挙紹介。
DANCER

ポプラコアとチタンによる安定感の高さが特徴。高速滑走やハードバーンが得意。79ミリのウエストはブランド史上最も細い。
STUDIO

ポプラコアとカーボンにより軽量かつ高反発。パークでのトリック性能を追求しており、太いサイズもその性質は変わらない。
PRODIGY

ポプラコアの芯材が反発力と安定性をもたらす。パークやゲレンデで多様な滑りを楽しみたい。耐久性の高さも特筆もの。
AGENT

超軽量カルバコアと織り込んだカーボンを採用。ツアー性能が高く、軽快な登りと安定した滑りを両立する汎用性の高さが魅力。
LA MACHINE

軽量パウロニアコアとデュアルカーボンレイヤーの構造。軽量でソフトフレックス。パウダーでの浮力と操作性抜群のシリーズ。
MOGUL


過去に流行ったデザインを現在に蘇らせるシリーズ。フリースタイルのルーツに敬意を表し、モーグルスキーを作り続けている。
Information
FACTION(ファクション)
公式サイト:https://jp.factionskis.com/
公式SNS:Instagram|Facebook|YouTube
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