ブラックダイヤモンドは、アクティビティベースのモノづくりを行っている。
トレンドを追いかけるマーケティング主導ではなく、フィールドの声に耳を傾け、プレイヤーが必要とする機能を見極めて製品開発を進める。
こうして生まれた製品はシンプルで力強い。「こういうのが欲しかったんだよね」と手にしたユーザーが思わずつぶやくような、そんな道具だ。
クライミング用品のイメージが強いブランドだが、登山全般に必要な装備はほぼ網羅し、板をはじめポールやクライミングスキンのようなスキー用品も幅広く手がけているのはご存知のとおり。
そのなかでも、とくに滑り手に注目してもらいたいのがグローブだ。
グローブ選びはむずかしい。保温性とグリップ感をいいところでバランスさせながら、低温でもしなやかさを失わず、濡れに強く、耐久性もそれなりに……。
相反する要素をバランスよく求められるうえに、良し悪しの判断は個人の主観によるもので数値化できないからタチが悪い。結果、市場には細部が微妙に異なるグローブが山のように溢れ、滑り手は理想の一双を求めて沼にハマる。
迷えるグローブ難民に声を大にして伝えたい。
ブラックダイヤモンドのグローブいいよ。
グローブはギアだ
ブラックダイヤモンドがアパレルを手がけるようになったのは2013年の秋/冬シーズンからだが、グローブは1989年の創業当初からラインナップしている。前身となったシュイナードイクイップメントの1987年のカタログには、「バックカントリースキー用」とはっきり謳った「シェルグローブ」が掲載されている。
いまから約35年前に登場したこのモデルにはすでに、リラックスした指の形に近いプレカーブが与えられ、片手で調節できるカフのクロージャーも装備されている。現在の「ガイドグローブ」の原形といえるモデルだ。
ブラックダイヤモンドは、いまも昔もグローブをアクセサリーではなく道具のひとつと位置付けている。開発を担当するのはアパレルカテゴリーではなく、バックパックやポールと同じマウンテンカテゴリーだ。
開発環境も申し分ない。会社があるのはソルトレイク。朝イチでハイクして一本滑ってから出社するのも日常である。賢明なる読者を相手に、開発者自らがプレイヤーであることの強みを改めて説明するまでもないだろう。
ゲレンデ、バックカントリー、厳冬期、残雪期、初心者、上級者……。ひと口にスキーといってもシチュエーションはさまざまだが、いつ・どこで使うかを明確に想定して作られた製品は、ユーザーにとっても選びやすい。
そこで、2024-25シーズンの製品のなかから、特徴が際立つ4つのモデルをピックアップした。このほかに気になるモデルがある場合も、これを基準に見比べることで特徴がつかみやすくなるはずだ。
今季グローブの新調を考えているなら、試しにショップで実物を手にしてみてほしい。手を入れて、ぎゅっと握ったときに「いい」と思えたなら、おめでとう! グローブの問題は解決だ。
対象者別にピックアップした主要4モデル
「タフなプロフェッショナル向け」
ガイドグローブ
その名の通り山岳ガイドやスキーパトロールのように日々グローブを酷使するプロフェッショナル向けで、ブラックダイヤモンドのグローブのなかでは耐久性/保温性ともにもっとも高い。
4wayストレッチナイロンと革のコンビネーションで、手のひらには丈夫なゴートレザー(山羊革)を使い、補強のパッチはサイドまで巻き込む念入りなつくりだ。プリマロフトゴールド(170g/㎡)とボイルドウールを封入し、取り外し可能なインナーグローブにはインサレーションと一体化したゴアテックスプラスウォームテクノロジーを採用。中指に吊り下げ用のカラビナループを備える。より保温性に優れるトリガータイプもある。
「細かい作業もできるエキスパート向け」
レジェンドグローブ
通常のバックカントリーはもちろん、クライム&ライドも視野に入れるエキスパート向け。プリマロフトゴールドを封入するが、甲側の170g/㎡に対して、手のひら側は60g/㎡の薄手のものを使用。指の先端部には縫い目をつくらず、親指の付け根部分にはガセット(マチ)を設けてフィット感と操作性を追求。ポールだけでなくピッケルを握ったり、寒風吹きすさぶ稜線でロープを扱うこともあるなら迷わずコレだ。フィット感重視ながら保温性も十分にあり、またショートカフで扱いやすいので幅広い場面で使いやすい。ゴアテックスプラスウォームテクノロジー採用。
「コスパも重視したエントリーユーザー向け」
ミッショングローブ
BC入門者やシーズン中の使用日数が少ない人などに向けて、コストは抑えつつもポイントはしっかり押さえたオールラウンドモデル。手のひらには丈夫でしなやかなゴートレザーを使い、甲側はリップストップポリエステルにしてプリマロフトゴールド(133g/㎡)を封入。袖の中に入れやすいショートカフで、ポールをグリップしやすいように指はプレカーブさせてある。
「スピードツーリング向けのニューモデル」
サークグローブ
スキーモ(スキーマウンテニアリング)からレース要素を取り除いたような、スピード重視のツーリングを想定したモデル。5本指のソフトシェルグローブの手首には、収納式のウインドフードが縫い付けられている。トレイルラン用のグローブでよく見るつくりだが、フードに中綿を入れているのがポイント。フードの甲側にプリマロフトゴールドクロスコア(40g/㎡)を封入し、装着時の防風性と保温性を高めている。手のひらには耐久性の高いゴートスキンレザーを当て、さらに要所を補強している。フードによって保温性と防風性をUPできるつくりは、厳冬期のハイクアップ用や装備を軽量化したい残雪期のロングツーリングにも応用できそうだ。
Text=Toshiaki Ito
Photo=Shota Kikuchi
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ロストアロー
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