バックカントリーでの滑走&登行のパフォーマンスを大きく左右する「レイヤリング」。急激な気温変化や発汗、雪や雨に濡れた際にも適切な体温を維持し、安全を守るために欠かせない重要なノウハウだ。バックカントリーガイドたちは、ゲストの安全を守りながら適切に行動できる万全のコンディションを保つことが重要だ。日本の最北端、北海道をベースに活動するプロガイドたちは山でどのようなレイヤリングをしているのか、そのノウハウを聞いてみた。
※ガイドクラブの詳細情報は、ガイドクラブ名をクリックでご覧いただけます。
CIRCLE GAME guide service |佐々木翔平
レイヤリングのコツは面倒くさがらないこと
ハイシーズンのレイヤリング
Outer layer:klättermusen | Skirner Jacket/Skade 2.0 Salopette
Middle layer :klättermusen | Hödur Hooded Zip/Nal Vest
Base layer:klättermusen | Huge Crew/Hugin Pants
その使用感は?(インプレッション)
アウターシェルはゆったりめのサイズ感で生地がとても柔らかいので、1日中着ていてもまったくストレスがありません。ミッドレイヤーはフーディタイプのフリースとウィンドシェルのベストを組み合わせています。 先頭でラッセルしながら歩くことが多いので、オーバーヒートしないようフリースを脱いでベースレイヤーの上にベストを着るなど、細かく調整できるのがとても気に入っています。
オーバーダウンはアウターシェルの上から着れるようなサイズ感でチョイス。 滑走準備中から滑走、次の登行開始直前まで、ダウンを手放せない日も多いです。 アウターシェルのなかに着込むよりもダウンを外に着るほうが楽で暖かくてオススメですよ。
スプリングシーズンのレイヤリングは?
ベースレイヤーの上を薄手のウールに変更。 それ以外はハイシーズンと同じものを使用しています。
さらに加えている工夫はありますか?
工夫ではありませんが、 暑かったらすぐ脱ぐ、寒かったらすぐ着る。 レイヤリングのコツは面倒くさがらないことです。 それができたら次のステップとして、暑くなりそうだったら脱ぐ、寒くなりそうだったら着る。 長い急登が続く、風のよく通る尾根を登るなど、ぜひ少し先のルートや状況を見たり、予想したりすることを意識して、山を歩いてみて下さい。
レビューワー
CIRCLE GAME guide service|佐々木翔平 Shohei Sasaki
北海道七飯町出身札幌をベースに、冬はバックカントリースキーのガイド、夏は北海道の自然を幅広くガイドしている。クライミングとスキーを組み合わせることを好む。
Niseko Mecca|田中久敬
透湿性が高くて動きにフィットするMAMMUT アイガーエクストリームシリーズを
ハイシーズンのレイヤリング
Outer layer:MAMMUT |アイガーフリーJKT&PANTS
Middle layer :MAMMUT|アイガースピードミドルレイヤーフーデッド
Base layer:MAMMUT|ツリーウールファーストレイヤーロングスリーブ
その使用感は?(インプレッション)
MAMMUT アイガーエクストリームシリーズは、アルパインエリア(クライミングを含む)での使用を目的に作られているので、透湿性が高く身体の動きにフィットする 。アイガーフリーは、バックカントリーフリーライディングを楽しむBCスキー&スノーボーダーにおすすめのモデルです。
レビューワー
Niseko Mecca|田中久敬 Hisataka Tanaka
北海道の山岳はもとより海外はカナディアンロッキーやニュージーランドでのクライミング&バックカントリーなどの経験も持つ。2002年よりニセコにてガイド業。
TERUI DAICHI|照井大地
汗抜けが良く、汗をかいても冷えにくいレイヤリングを心がけている
ハイシーズンのレイヤリング
Outer layer:ARC'TERYX |アルファジャケット & アルファSVビブ
Middle layer :ARC'TERYX|デルタフーディー
Base layer:ARC'TERYX|ローLTフーディー
その使用感は?(インプレッション)
ラッセルをして汗をかいても汗抜けが良く、汗をかいても冷えにくいレイヤリングを心がけています。 寒いときのためにARC'TERYX の「ニュークレイSV」など、シェルの上から羽織れるインサレーションジャケットを携行しています。寒いときにわざわざシェルを脱ぎたくないので、サイジングはシェルの上から羽織れるサイズ感を意識しています。
スプリングシーズンのレイヤリングは?
厳冬期のレイヤリングがベースとなりますが、パンツを薄いタイツに替えたり、フリースの代わりにソフトシェルやウィンドシェルを着る機会が増えます。 春はテント泊での山行も増えるので、行動中は薄着、テント生活用のインサレーションと、大きく2つに分けるように意識しています。
さらに加えている工夫はありますか?
汗をかきにくい一定のリズム、ハイクの斜度もなるべく均一に保つようにしています。 急な冷えに対しては暖かい飲み物で身体のコアから暖め、血液の循環を促します。 グローブも数組持っていくことで気温に合わせて使います。 あとは、一緒に行く仲間同士の声かけによって汗をかきにくいリズム、顔面凍傷になっていないかなど、目視を心がけています。
レビューワー
照井大地 Daichi TERUI
大学在学中に山岳ガイドを志し、国際山岳ガイド石坂博文氏に師事。大学卒業と同時に日本山岳ガイド協会の認定ガイドとなる。20代前半より北欧でのヘリスキーガイドトレーニングやヨーロッパアルプスでの登山、スキーツーリングを経験。
RIKI JAPOW GUIDE|中島 力
肌に触れるのは絶対ウール!
ハイシーズンのレイヤリング
Outer layer:patagonia|メンズ アントラックド・ジャケット&パンツ
Middle layer :patagonia|メンズ フーディニ・ジャケット
Base layer:patagonia|メンズ・ロングスリーブ・キャプリーン・クール・メリノ・グラフィック・シャツ
puromonte|ダウン七分丈フルオープン
その使用感は?(インプレッション)
軽さ、コンパクトさに対して保温力が十分である。肌に触れるのは絶対ウール!
スプリングシーズンのレイヤリングは?
すべてパタゴニア 極薄のウールの半袖シャツ。寒ければ「R1プルオーバー・フーディー」。
風を防ぎたければ「フーディニジャケット」。
さらに加えている工夫はありますか?
冷えないように、また、汗をかかないように衣服を調整しながら行動する。こまめな脱ぎ着が大切。
レビューワー
RIKI JAPOW GUIDE|中島 力 Riki Nakajima
カナダでCSIAインストラクター資格と、日本人初のCFSAフリースキーインストラクター資格を取得。フリースキーコンペからバックカントリーへ活動の場を広げ、現在は星野リゾート トマムスキー場をベースに、ガイドやレッスンを展開。
マウンテンガイド・コヨーテ |古市竜太
ハイクの時にとても楽に感じる全天候対応のジャケットはお気に入り
ハイシーズンのレイヤリング
Outer layer:SALOMON|QST GORE-TEX PRO JACKET & BIB
Middle layer :SALOMON|OUTLINE DOWN JKT+OUTLINE HZ MID M
Base layer:SALOMON|SNTIAL WOOL LS TOP M(上) SNTIAL WOOL SEAMLESS(下)
その使用感は?(インプレッション)
Motion Fit™ パターニングを採用したこのジャケットは、タフでテクニカルな斜面での滑走でも、身体のあらゆる動きに合わせてフィットします。過酷なアドベンチャーの為に作られた頼れる一着。防水性にかなり優れており、それでいてGORE-TEX素材を使用した通気性にも優れている。冬山でも抜群の安心感が得られます。ハードに使用しても壊れにくいタフさも併せ持っています。前面に4つのポケットがあり、スクレーパー・スキーバンド・パス券などの冬の小物をすぐに取り出せるため、使用感が抜群です。
最近はこのミッドレイヤー「OUTLINE HZ MID M」ひとつで十分です。フードを頭にかぶれば、首に風雪が入らず、かなり暖かく感じます。また、ダウンジャケットの「OUTLINE DOWN JKT」を、軽くかさばらないので、1、2月の厳冬期ではザックに必ず入れています。ちょっとした休憩時間に、上から羽織るだけで体力の消耗が抑えられます。暖かく気持ちが良いので、ほっと一息する時に最高です。
ベースレイヤーは、積雪期に体が冷えるのは絶対嫌なので、ウールを使用しています。多少汗をかいてもヒヤッと感がまったくありません。
スプリングシーズンのレイヤリングは?
インナーレイヤーに、薄めのサロモン「OUTLINE FZ HOODIE」(フリース薄めで、フーディーニ)を来ています。ザックには薄手のシャカシャカ素材を入れています。
レビューワー
マウンテンガイド・コヨーテ|古市竜太 Ryuta Furuichi
環境と食に興味を持ち、明治大学の農学部卒業後、雄大な北海道で生活する為に北海道の企業に入社。さらに身近に自然を感じ、環境にインパクトをかけない生活を実践するために マウンテンガイド・コヨーテを立ち上げる。テレマークスキーで雪山を滑るのが大好き。