スノーウェアの選び方 ’25ー26 | 理想の一着を手に入れるために知っておきたい機能と構造

防水透湿性、耐久性、通気性、ストレッチ性、そして環境への配慮──最新のスノーウェアは、素材や構造の革新と多様性のあまり、選ぶことがとにかく難しい。そこで、ブランドカタログに並ぶ最新テクノロジーや専門用語の意味を含め、ウエア選びの基礎を整理してみよう。今季モデルの多くが出揃ったこの時期、カタログの読み方も変わってくるはずだ。

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スノーウェアに求められる機能


スノーウェアは単なる防寒着にとどまらない。滑ったり、バックカントリーでは登行したり、身体を動かすことで体温は上昇し、冬でも汗をかいてしまうことがある。雪山で快適に安全に過ごすには、体温と発汗のコントロールが重要だ。そのうえ、雪山では気象条件が変化し続ける。このような環境下であるため、スノーウェアに求められる条件、性能は数多くある。

スノーウエアに求められるさまざまなエレメント (NORRØNA Tamok)

これら上手くカバーして、スノーウェアは絶妙のバランスの上に成り立っている。このバランスを実現しているのが、生地の構造と各部のディテール設計だ。

雪山での快適な行動のために欲しいディテール

マルチな高機能を備える NORRØNA

ジャケットのディテール

雪山での行動を支えるのが細部(ディテール)の設計だ。厳しい自然条件下でも衣服内の温度を上手に調節し、アクティブに活動できるよう、さまざまな機能や工夫が採用されている。こうした機能ディテールは、雪山でのストレスを減らし、安全性や快適性を大きく左右するポイントだ。

PERMANENT UNION|KOVAL JACKET

ジャケットの着目点として、まずフード(❶)は、雪や風を遮る保温装備の要。最近ではヘルメットの上から被れる大型タイプが主流になっている。

また、カラー(襟)が高く、ゴーグルの下あたりまでくるデザインも、吹雪の際にはありがたい。

そして、衣服内温度を調節するのに機能するベンチレーション(❷)は、とくにハイクアップと登行を繰り返すバックカントリーユースなら欠かせないディテール。

多くは脇の下など熱がこもりやすい部位に配置され、ファスナーを開ければ効率的に外気を取り入れ体温調整が可能だ。バックパックのショルダーベルトに干渉しない工夫を凝らしたデザインなどもある。

ジャケットには各種のポケット(❸)が配置されている。収納性や保温性、ときにはデザイン性目的として大小いろいろなサイズの複数のポケットを表面、そしてウェアの内側にも備えているモデルが多い。

お腹部分のスッと手を入れやすいポケットは、手を温めるのに便利、胸や腕、内側のメッシュポケットなどはゴーグルや予備のグローブ、携帯電話など小物を入れるのに使いやすい。

カフ(❹)は雪の侵入を防ぐ。グローブの上に袖口をかぶせることができるよう、袖はゆとりがあり、カフは太めになっていることが多い。さまざまなグローブに柔軟に対応できるよう、調整範囲も広くとっている。

ファスナー(❺)も機能的だ。完全防水仕様、軽く錆びない樹脂製が主流。山で使い勝手の良い両方向に開くファスナーもよく使われる。

この他、ジャケットによく搭載されている機能では、裾の内側や袖口に雪の侵入を防ぐためのパウダースカートやリストゲーター、フードの調節や裾をしぼるドローコードなど、バックカントリーでの着用を意識したウェアのなかには、RECCOリフレクターが内蔵されているものもある。

パンツのディテール

パンツは胸あてのあるビブパンツか、レギュラースタイルのパンツに大別される。バックカントリーユーザーに人気なのは俄然ビブパンツのスタイルだ。保温性、収納性に優れ、春先ならビブパンツだけで雪上にいられるという汎用性も人気の背景。

ビブパンツの懸念点として、いちいちジャケットを脱がないとならないトイレが大変、ということがよく挙げられるが、最近ではそれをクリアする、ジャケット着たままで、お尻の部分がフルジップオープンするモデルもある。

PERMANENT UNION|KOVAL BIB PANTS

ディテールの代表はベンチレーション(❶)。脚の外側にフルレングスで施され、フルオープンするもの、ももの横が部分的にオープンするもの、内側にあるもの、内外の両側にあるモデルもある。

ファスナーの開く方向も上から下、下から上、フルオープンするタイプでは両方向に開くモデルもある。

パンツでもポケット(❷)は気になるポイント。大きさや配置されている場所はさまざまだが、脚部の激しい動きを妨げない配慮がされている。

パンツの膝の部分のデザインは見逃せないポイント。身体の動きを考慮して3Dに生地を裁断した立体裁断(❸)のデザインは、脚部の動きを妨げず、激しい動きにも追従してくれるため、動きやすさや快適性に大きく影響する。

エッジガード(❹)はパンツの裾をスキーのエッジから守る。裾の内側はケブラーなどの丈夫な素材でガードされている。丈夫であってもしなやかさを損なわいよう工夫されており、足さばきに影響を与えない。なかにはRECCOリフレクターを内蔵したモデルもある。


生地構造を理解する ― 3レイヤー(3L)・2レイヤー(2L)の違い

スノーウェアの個性や特徴、性能を決める要素として、生地構造と防水透湿膜(メンブレン)も極めて重要だ。

表地と裏地の間にメンブレンを挟み込んだ3層構造は、「3レイヤー」。「3L」という表現が商品名に含まれているモデルをよく見るだろう。3レイヤーは裏地がメンブレンを保護するため耐久性が高く、過酷な自然条件下で活動するバックカントリー滑走により適している。

裏地がなく、表地とメンブレンだけで構成されている「2レイヤー」は軽量でしなやか、通気性に優れる。

3レイヤーは裏地によってメンブレンを保護できるため、耐久性を向上させることができるほか、裏地によってすべりが良くなることで、快適な着心地をもたらしてくれる。2レイヤーは裏地がないぶん透湿性が高くなり通気性に優れ、しなやかで重量を抑えることができる。こうした特徴をいかしながら、コンセプトに沿った構造が採用されている。

表地の機能的役割

ウェアの骨格ともいえる部分で、雪や雨を弾き、頑強さを保持し、ウェアの形や色を整える。素材は化学繊維がほとんどであり、ナイロン系の素材が多用される。ナイロンの摩擦に強く、弾力があってしなやかという特性がスキーウェアにぴったりだからだ。

裏地の機能的役割

ウェアの中に着ているものとの滑りをよくして動きやすさを確保する他、汗を吸収することで快適性や着心地を向上させている。また保温性を備えた裏地を使うことで防寒性を高めている製品もある。

中綿の入ったものも

ウェアには保温性を高めるため、中綿を封入しているものもある。多くは雪や汗に備えて、湿気に強い化学繊維の中綿が使われている。またウエアによっては滑走中の風を受けて冷えやすい身体の前側に重点的に中綿を入れるなど、体温の分布に応じて保温性を調整しているものもある。

防水透湿素材(メンブレン)の機能

メンブレンとは、表地と裏地の間に挟まれた「防水透湿膜」。1㎠あたり十数億もの微細孔を持ち、水滴は通さず水蒸気だけを外に逃がす仕組みで、そのミクロな孔構造が高い防水性や透湿性、防風性を生み出している。近年のスノーウェアは、ほとんどがメンブレンを挟み込んでいる。

透湿性とは、衣服内の湿気を外に逃がす性能のこと。水蒸気を外に逃がす性能のこと。雪山での雨雪などによる外部からの水分はシャットするが、ウェアの内部で汗をかいて蒸気になった湿気は外に逃がすことで、内部をドライに保ちでムレずに済む、というわけだ。具体的には、衣服内の水滴にならない蒸気状態の水分を24時間で何グラム外に出すか、数値で表す。もちろん値が高いほど透湿性は高い。

透湿性によって快適なコンディションを維持できるかは、雪山での登りや滑りのパフォーマンスにも大きな影響を与える。よってスノーウェアにおいてメンブレンはとても重要な意味を持つ。メンブレンの特徴を把握しておけば、そのスノーウェアがどのような用途に向けて作られているのか、より深く理解することができる。

メンブレンにもいろいろな種類があり、それぞれに特徴を持っている。最も有名なものはGORE-TEX(ゴアテックス)だろう。スノーウェアで最も信頼されている防水透湿素材で、極小の孔を持つ特殊なメンブレン構造により、雨や雪などの水は通さず、汗の水蒸気だけを外へ逃がす。そのため濡れにくさと蒸れにくさを両立。

GORE-TEXメンブレン 提供:日本ゴア合同会社

そのなかでもハイエンドに位置する「GORE-TEX PRO」は、高い耐久性と透湿性を両立し、過酷な雪山環境でも体を快適に保つため、プロガイドやバックカントリー愛好者に長年支持されてきた。

その他、NeoShell(ネオシェル)やeVent(イーベント)なども知られている。国産ではTeton Bros. の「Täsmä」はブランド独自のメンブレンとして世界的評価を得ている。

GORE-TEX ePEの登場

スノーウェアの今季の大きな注目は、GORE-TEXが発表した新世代メンブレン「ePE(expanded Polyethylene)の登場だ。従来の自然分解されにくく環境負荷が問題視されてきたePTFEに代わり、パーフルオロカーボン(PFC)を使わない環境配慮型素材として進化を遂げての誕生となった。

ePEは軽量でしなやか、しかも従来の防水透湿性能を維持している点が大きな特徴で、すでにNORRØNAやPatagonia、ARC’TERYXなどが採用モデルを展開している。機能性だけでなく「環境への責任」も備えた素材選びが、ウェア開発の新しい流れとなっているのだ。


レイヤリングという考え方

レイヤリングの仕組み 提供:モンベル

スノーウェアの快適性を語るうえで欠かせないのが「レイヤリング(重ね着)」の概念だ。肌に近いところから、「ベースレイヤー」、「ミドルレイヤー」、「アウターレイヤー」の3層の重ね着をするのがレイヤリングの基本。

  • ベースレイヤー(肌着)で汗を肌から離す
  • ミドルレイヤーで保温と吸湿拡散を行う
  • アウターレイヤー(シェル)で外部の雪や風を防ぐ

という三層構造。防水透湿性のシェルを活かすには、内側に吸湿性・速乾性の高いレイヤーを組み合わせることが不可欠だ。レイヤリングが機能しなければ、どんな高価なシェルも性能を発揮できない。つまり「防水透湿性」は単独で完結する性能ではなく、レイヤリングの仕組みの中で初めて本領を発揮するものなのだ。

レイヤリングは単に衣類を重ねて着るだけでなく、個々の層で発揮すべき特性に注目して素材や構造を選ぶことで実現する。

身体に近い1枚目は肌に汗を残さない素材のものを選ぶ。2枚目で蒸気になった汗を外気に放出するのが上着(アウタージャケット)の役目だ。スキーの場合、シェルジャケットがそれにあたる。しかし、汗は放出しても、雪や雨はさえぎりたい。こうした相反する機能を実現するのが、湿気だけ通して水は通さない「防水透湿性」なのだ。

つまり「防水透湿性」はレイヤリングという考え方の延長線上にある。防水透湿性をフルに発揮させるためにはレイヤリングが不可欠であり、防水透湿素材のウェアを着れば、それだけですべて解決! とはいかない。だからこの性能が必要なのだ。


プラスして知っておきたい知識

防水性がわかる耐水圧

スノーウェアに必需の防水性をわかりやすく数値で表したものが耐水圧。つまり、耐水圧とは生地に染み込もうとする水の力を抑える性能の数値だ。

耐水圧の数値で「どのくらいの水の圧力に耐えられる防水性なのか」を知ることができるというわけ。当然、値が高いほうが防水性が高い。

一般的なナイロン製の雨傘の耐水圧が約200~500mm程度、しっかりしたレインコートなら耐水圧5,000mm程度。スノーウェアは、雨雪に長時間さらされる環境を考えると少なくとも耐水圧10,000mm以上ないと不安だろう。雪山でサンプルを着てから買うかを決められないウェア選びでは、耐水圧の数値は防水性の担保がとれる重要な情報だ。

生地の硬さの指標となるデニール

デニールは生地に使われている糸の重さを表しており、9000メートルあたりの数を数値にしたもの。カタログではこれが間接的に生地の厚みを表すことにつながっている。

一般的なウェアは70デニールから150デニールのものが目立つが、生地の硬さや着心地はデニール数だけで判断できるものではないことも知っておこう。

ウェアのカッティング(裁断)

どんなに高性能な素材を使っても、裁断が悪ければそのポテンシャルは半減する。肘や膝に立体裁断(3Dカッティング)を施したり、背中や脇にストレッチ性の高い素材を切り替えるなど、体の動きを阻害しない設計がポイント。動きやすさを追求するこうした工夫は、滑りの自由度や疲労感の軽減に直結する。


カタログを読み解くポイント

このようにウェアのパーツや生地の機能的役割がわかってくると、ウェアカタログに掲載されている情報の意味や重要性がよく理解できるようになり、スペックから自分の滑る環境に合ったウェアがイメージしやすくなる。NORRØNAのオンラインストアの商品情報をピックアップしてみよう。ウェアの機能面の表現を赤い文字にしてみた。

NORRØNA
tamok Gore-Tex Performance Shell Jacket

MATERIAL
Gore-Tex® 3-layer (ePE), 70D X 160D recycled nylon
Material 2nd:Gore-Tex® 3-layer (ePE), 200D recycled nylon

バックカントリーやパウダーライディングにフォーカスしたtamokシリーズのフラッグシップジャケットが、デザインはそのままに、素材を全面的に変更して生まれ変わりました。新たな素材は、GORE-TEX® ePEメンブレン

GORE-TEX®の長い歴史のなかで、初めてメンブレンそのものを一新。定評ある防水透湿性、防風性、耐久性の高さを維持しつつ、環境負荷の軽減を実現した注目の素材です。

3レイヤーの表地はバックカントリーでタフに使える70×160デニールの100%リサイクルナイロンで、肩と肘にはさらに耐久性を高めた200デニールのリサイクルナイロンで補強されています。

裏地はしなやかなC-KNIT™ナイロンバッカー。メンブレンが変更になった結果、生地は若干薄く軽くなり、着心地も向上しています。長めの着丈は個性的なシルエットを演出しつつ、寒気のなかでも腰回りを保温。腕は立体裁断で動きを損うことはありません。


機能を理解すれば、理想の一着が見えてくる

こうして見てくると、スノーウェアのスペック表やカタログの用語は、単なる数字やテキストではなく、ウェアの「思想」を表していることがわかる。どんな環境で滑りたいのか、どんなスタイルを理想とするのか──それを明確にすれば、自分に必要な素材・構造・機能が自然と見えてくるのでは。

“GORE-TEX PRO ePE”のような最新素材や環境への配慮を掲げたブランドが増える今こそ、スペックの奥にあるストーリーにも興味を持ちたい。よく理解し、共感して選んだ一着は、単なる装備ではなく、雪山での信頼できる相棒になるだろう。

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