U10アルペンスキー、ニュージーランドで話題のスーパーキッズ大野里紗(おおのりさ)

並外れたセンスや度胸を持ち、自由な感性でスキーを楽しむ。時々現れるそんな注目の子どもたちの、純粋無垢なスキーライフに迫るスーパーキッズシリーズ。

INDEX

パパ、スキーに連れてって

今回紹介するのは、「ニュージーランドで話題になっている子がいる」との情報からその名を知った、大野りささん。2016年生まれの小学3年生だ。

南半球で開催されている大会に出場していると聞き、リザルトをチェックしてみると……、名前を探すまでもなく、U10部門のトップに“OHNO Lissa”の文字があった。

2位に約3秒という圧倒的なタイム差

現地の選手を抑えての堂々たる優勝。そのうえ、子役やモデルとしての顔も持つという彼女の存在は、気になることばかりだ。早速取材を申し込み、東京の自宅とオンラインでつないで話を聞いた。

学校から帰ってきたばかりという里紗さん(左)とお父さん(右)

「世界一を目指す」とSNSで公言しているりささん。9歳にして“世界一”を目指すとは─スキーを始めたきっかけや理由がはっきりあったのだろうかと聞いてみると、「本人は覚えていない」との答え。そこで、ご家族がどのようにスキーを始めるようになったのかを、お父さんが教えてくれた。

「年少さんの夏、突然“スキーに行きたい”と言いだしたんです。『パパ、スキーに連れてって』と。夫婦ともスキーをしないし、イメージとしては『寒い、遠い、なんだか大変そう』といった感じで。そのうち忘れるだろうと、冬になったら行こうねと言ってかわしていたんです」

そして冬。忘れてしまっているかと思いきや……、しっかり覚えていた。ホワイトワールド尾瀬岩鞍にて、念願のスキーデビュー。シャイでおとなしく、自己主張の少ないタイプだというりささんの、初めての強い希望を叶える形となった。
2時間のレッスンに入れてみたところ、わずか4歳にしてターンを習得してしまったという。その小さな背中には、天性の感覚がすでに宿っていたのかもしれない。

数年後にニュージーランドで活躍しているとは、誰が想像できただろう
同じ人物とは思えない、この勇ましいシルエット!

なんでも通っていた幼稚園の友達が、スキー場へ行ってそりなどの雪遊びをしたことを楽しそうに話すのを聞いて、スキーがしたいと言い出したのではないかとのことだ。夏に、雪のない地域で、スキーを始めるきっかけが降ってくる。なんとも予想外の展開だ。

アルペンスキーとの出会い

そうして始まったスキーライフ。家族のレジャーとして何度かゲレンデに通ううち、偶然目にしたアルペンスキーの大会。「やってみたい!」というりささんの一言を受け、どうすればゲート練習に参加できるのかを調べたところ、チームに入る必要があると知った。

幼稚園児でも入れるチームは少なく、現在彼女が所属する「JFAMILIA SKI CAMP」も本来は小学生以上が対象だ。しかし、体験参加の際にその意欲と滑りが評価され、特別に加入を許可された。以来、同じチーム、同じコーチのもとで練習を重ねている。

選手一人一人と真剣に向き合う富井次郎コーチ(右)

アルペンスキー専門、本気で世界を目指す選手のためのチームの拠点は、長野県・野沢温泉村。コーチを務めるのは、自身もプロスキーヤーとして活躍してきた富井次郎さんだ。そんな環境に、初めから馴染んでしまったというのも、りささんの持つ素質を物語っているだろう。

プロテクターを身に着け、ゲートにも果敢にアタック

“かっこいい”“楽しそう”が原動力のりささんに、理想の滑りを聞いてみた。

「外脚に重さをしっかり乗せて、板を走らせた滑りです」

感覚派かと思いきや、技術的な理解も持ちあわせている。憧れの選手は、アルペン界の女王、アメリカのミカエラ・シフリン。ワールドカップ通算101勝を誇る圧倒的な存在に少しでも近づくため、りささんは独自の練習方法を取り入れている。
それは、大人でも力を込めなければ曲がれない173cmの長い板で滑ることだ。ごまかしのきかない長さで正しいポジションを身につけ、目と体をスピードに慣らすことが目的で、りささんもスピードを楽しんでいるとのことだ。

どんどん加速し遠くなっていくりささん、あっという間にボトムに到着

命がけの追い撮りと家族のサポート

滑りの研究や発信のため、お父さんはカメラを片手に、必死でりささんを追いかける。夢に向かい、どんどん速くなる娘の滑りを追うのは、決して簡単なことではない。
夏休みには家族でニュージーランドへ遠征する。遠征中はお父さんがコース整備と安全確認を担当し、お母さんが撮影をする、まさに家族一丸となった体制だ。

さらに、食事面でも日本にいるときと同じ環境を整えてあげたいと、お母さんは大量の日本食材や調味料を持参。ただでさえ荷物の多いスキー遠征に、撮影機材まで加わる。スキーへの思いが重すぎて、空港で荷物超過を指摘されそうだ。

“ホーム”を再現するための、何人分かという大荷物

1か月におよぶ合宿の1日のスケジュールは、

6時:起床
6時45分:出発
7時:ウォームアップ
8時~9時:ファーストトラック
9時~10時:フリー滑走
お昼
11時~13時:フリー滑走
休憩
~15時:フリー滑走

フリー滑走では、技術の根幹として低速の基礎練習を重点的に行う。毎日5時間は滑り、練習後には30~40本ものビデオとボイスメッセージを日本にいるコーチに送る。そのフィードバックをもとに次の日に挑む。この繰り返しだ。1か月間の間、休みは1日もないという。

チューンナップスペースも一から作り上げる
現地スーパーマーケットでの異文化体験も

キーワードは「自信」

そうして挑む海外レース。南半球はシーズン真っ只中。現地の選手はゲートによる実践練習を十分に積んで臨むが、りささんは数週間のフリー滑走のみ。にも関わらず、U10部門4戦中3勝という快挙を成し遂げた。

「それでも勝てるというのは、親としてもアルペン競技の面白さを感じるところですね」

“WHY!?”と納得のいかない選手に、表彰式で握手を拒否されることもあるそうだが、現地でできた友達がスタートに応援に来てくれたことで自信がつき、それが勝因にもつながったのではないかとのこと。

同年代でニュージーランドチャンピオンの男の子
スポーツが言葉の壁を越えているようだ

本気で世界を目指すりささんに応えて特別メニューを提供する、富井コーチの言葉で印象的だったことを聞いてみた。

「スタートに立ったら、今までやってきたことを思い出すこと」

徹底した技術練習だけでなく、精神的なサポートも大切にしていることが伺える。レースの時にはお父さんがスタートに立ち、自信を持って滑れるようなケアを心がけているという。

英語が飛び交う中では一層の不安や緊張があるはず

「怖くても、世界一になるためなんだから、何回でもチャレンジしないとと思ってやっています」

まだ小さな少女を支えているのは、そうした周囲の丁寧なサポートと明確な目標。そしてもうひとつは、憧れの選手の存在だ。

時代の変化もあり、Youtubeなどで海外トップ選手の滑りを目にする機会も増えたが、モチベーションの源として、やはり身近な選手の存在は大きい。所属チームの拠点である野沢温泉村出身の、富井大賀選手とはニュージーランドで出会ったという。お互いに発信活動などもしていることから、動画でコラボしたり、スキーを教わったりと、兄妹のような関係を築いている。

動画は、りささんが自ら大賀さんにインタビューしている様子。積極的な姿勢は、 “攻めの学び”そのものだ。

組織に頼らず、選手同士が自発的に関わり合い、高め合う。そんな“オーガニックなコミュニケーション”がスキー文化を育み、競技を超えて人生を豊かにしてくれるに違いない。

先輩の背中をおいかけるりささん
休憩時間でも丁寧に教えてくれる大賀さん

谷に飛び込む勇気

りささんの将来や教育の面で、どのようなことを期待しているのかも聞いてみた。

「スキーに限らず、ただ言われたことに従うのではなく、意味や本質を自分で考えて行動するようになってほしい。もともと自信がない子だったんですが、スキーは唯一自信が持てるものとしていつかの支えになれば」

もはや専属コーチのようなお父さんの口からは、専門用語も自然と出てくる。

「グリュニゲンターンや急斜面では、怖くても体を谷側に落とさないといけない。思い切って一歩踏み出せたとき、成長を感じますね」

斜度に対してまったく遅れず、むしろ前のめり

獅子は我が子を千尋の谷に落とすということわざではないが、我が子が自ら谷に向かうのをそばで見守るスタイルだ。海外選手の、コーチとの関わり方についても話していたお父さん。りささんにも積極的なコミュニケーションを取るように伝えているという。

「コーチには毎日ビデオを送っていますし、振り返りノートも欠かさないように。子ども扱いではなく、一人の選手として向き合ってくれます」

“顔は怖いけど優しい”という富井コーチへの感謝の言葉も。一見おとなしいりささんもだが、師弟で共通して、見かけによらない強さと優しさがある。

演技とスキーに通ずること

スキーと共に子役やキッズモデルとしても活躍しているとのことで、芸能活動もマネジメントするお父さんにそのきっかけを聞いてみた。

「スキーと同じく、周りの友達でそういう活動をしている子がいて、やってみたいと」

アスリートとしての強さも感じさせる、立派なプロフィール写真

表現活動として、スキーと共通する部分はあるのだろうか?

「スキーも演技も、やはり基礎が大事かなと。スキーの低速練習や身体のケア、演技でいえば発声練習のような」

なるほど。徹底した基礎練習と、日々の積み重ねが重要だ。ちなみに、ピアノや水泳も好きだそうで、そうした幅広い活動がスキーの速さにもつながっているのかもしれない。

世界一スキーを楽しむ人に

好奇心に素直に従う“スーパーアクティブキッズ”、りささんには目標にしている選手がもう一人いる。世界ジュニアチャンピオンであり、アルバニアに初のワールドカップ表彰台をもたらしたララ・コルトゥーリ選手だ。昨年ニュージーランドでたまたまリフトに乗り合わせ、スキーバンドを貰うなど、英語で交流したという。

偶然の出会いが彼女のスキー人生を導いてきたように、このインタビューを通してりささんのことを知ることになるかもしれないスキーヤーへ、メッセージをお願いしてみた。

「何でも、もうダメだって諦めないで、しっかり最後までやり切ることが大事だと思います」

若きアスリートのまっすぐな言葉に、胸を打たれた。

「あと、声をかけてくれたらステッカーを渡します!」

“Faster than light!”のキャッチコピー入りチームステッカー

地道なステッカー配りも、選手活動の一環。応援してくれる方とのコミュニケーションのきっかけにもなっている。ご両親にとっては、もはや生き甲斐となっているというチームリサの活動。やりたいことに本気で取り組める環境を用意してあげたいという、お父さんお母さんに対して、改めて伝えたいことを最後に聞いてみた。

「いつも応援してくれるから、頑張らないとなって思います。これからも応援してほしいなって思います」

なんとも健気な願いだ。

11月にはチームのヨーロッパキャンプに参加する予定のりささん。こうして世界を旅しながら、たくさんの人と出会い、学び、スキーを楽しみ続けてくれることを願ってやまない。

Team LISSA

公式インスタグラム:@lissaohno
公式Youtube:LISSA SKI CHANNEL

INDEX