野沢温泉村で生まれ育った河野克幸、健児、直人の三兄弟。辿ってきた道は一緒だったり、別々だったりと、それぞれが交差しながら、3人は30年以上にわたってスキーに携わり、今も野沢温泉を拠点に滑り続けている。
そんな3人が揃ってスキートリップへ出かけたのは2006年のニュージーランドの一度きり。約20年ぶりのスキー旅となった舞台は、北海道の中央に位置し世界でも有数のパウダースノーを楽しめる「北海道パウダーベルト」。
キャンピングカーで気ままに移動した道中の会話を拾いつつ、三兄弟の様子からトリップの面白さや楽しさを垣間見てみよう。
河野三兄弟のプロフィール

L⇒R
河野直人
1988年生まれ。高いスキー技術をベースにフリースタイル競技を経験。スノーボードはもはやプロ並の腕前。ヨコノリのスノーボードとタテノリのスキーを融合した独特のセンスの持ち主。冬は各地のイベント運営サポート、夏は農業に従事。通称直っさん。家族間でもその名で呼ばれる。 Instagram@naossan
河野克幸
1981年生まれ。兄弟の中で唯一、単身オーストリアへ渡りアルペンスキーで世界を目指して欧州を転戦。帰国後はスキークロスに参戦しながら映像制作を手掛けた。現在は家業の宿「白樺」をはじめ、レストラン七良兵衛珈琲やレンタルなど幅広く事業を手掛ける。Instagram @katzukono
河野健児
1983年生まれ。幼少期からアルペンスキーにどっぷり浸かり、スキークロスのワールドカップ選手として12年間に渡り世界を転戦。XーGamesにも二度出場経験あり。野沢温泉内にて、宿泊施設や飲食店を運営する。Instagram @kono_kenji
19年ぶりのスキー旅行

編集部:3人一緒にどこかへ滑りに行く機会なんてあまりないですよね?
河野直人(以下、直っさん):撮影で(野沢温泉の)近場の山はあったけど。カツとは何回か一緒に行ったかな、北海道。
河野克幸(以下、カツ):行ったね。
河野健児(以下、健児):スキー旅は19年ぶり。
カツ:撮影で行ったニュージーランド以来。MCVの撮影だね。スノーパークとカードローナーに企画書を出したらリフト券が出てきて、自由に滑れたっけ。
(注)MCV=河野三兄弟と上野三兄弟が中心になって撮影や映像制作などをしていたスキーユニット
健児:トレブルコーンもじゃない?
直っさん:カードローナーオープン出たよね。クロスとパイプ。
健児:出てた??
直っさん:俺、あれしか大会にでたことないから。その時が初海外で、英語が喋れないのに、トランジット先の香港で両替してこいって、健児に言われて。「俺、英語喋れないぞ」って思ったよ、笑。
健児:大輔さん(佐々木大輔)や杉村さん(フォトグラファー杉村航)もずっと一緒だったね。当時はハーフパイプにめちゃくちゃハマってて、それをやりにスノーパークに行った感じ。
直っさん:ニュージーまで行ってハーフパイプしか滑ってないな……。
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3人が旅の移動手段にしたのは星野リゾートのキャンピングカープラン。4泊5日で移動は自由。車内に寝泊まりしながら、星野リゾート トマム、OMO7旭川 by 星野リゾートの各施設の一部が利用でき、朝食や入浴施設、駐車場の利用が付いている。
コンディションにあわせて行動するにはぴったり。最大人数の4名で借りれば、コストパフォーマンスも良い。
今回訪れた先は、星野リゾート トマムのほか、OMO7旭川をベースに、名寄ピヤシリスキー場、サンタプレゼントパーク、カムイスキーリンクス、そして上富良野のBCエリア。

名寄は「北海道パウダーベルト」の北側にあるが、どこも北海道の内陸性気候による低温が特徴だ。マイナス20~30℃以下にまで気温が下がることもあるから、雪は鳥の羽根のように軽いドライパウダー。積もった雪は水分が抜けていくドライアウトになりやすく、降雪が少なくても、良いコンディションが生まれやすい。そのため、どこかにはいい場所がひっそりと潜んでいる。
スキーを続けていなかったら40歳を超えて、3人で旅はしていない





トマムでは「狩振岳CATツアー」を体験。スキー場から車で20分ほど走った場所にあるフィールドに雪上車が待機してあり、セーフティギアを身につけて乗り込む。暖房完備の快適なキャビンは最大12名乗車可能で、半日かけて滑走本数は4~6本を楽しむ。





編集部:スキーという共通の趣味がなかったら、この歳になってみんなで旅に行きますか?
直っさん:(サッポロ)クラシックを飲ませてくれれば、俺はどこでも行くよ。滑るのは2人に任せてさ。
カツ:行かないかな〜。
健児:ニュージーの時はスキーだけって感じで、ストイックだったしね。
直っさん:毎日、朝から晩まで滑って、宿に帰って飯食って寝て、またスキーしてだった。20代前半だったからできたって感じ。
健児:いまはそこまでじゃないし、滑る以外にも街に出て食べたり飲んだり。行ったことがない場所を巡るのも楽しい。
カツ:スノボもやるようになったしね。
直っさん:みんなでスノーボードやるのも良いね!
健児:俺がついていけないし、笑
(注)河野克幸と直人はスノーボードで撮影ができるほどの腕前
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初めて訪れたトマムを満喫した3人は一路旭川を目指して北上する。旭川で拠点になるのはOMO7旭川 by 星野リゾート。
寝泊まりはトマム同様にキャンピングカーだが、朝食が摂れ、ロビーではくつろげる。有名なサウナ プラトーも利用可能。スキーにワックスをかけたり、濡れたり冷えたブーツやスキーを温める乾燥室も完備している。





到着後、まずは乾杯と作戦会議。マウンテンシティパブのオリジナルクラフト生ビールで乾杯しながら、この後の数日間の天気や周辺スキー場の状況を洗い出す。こんな時、スキー場のコンディションをリアルタイムで見れる館内のスキー場ライブカメラが、とても役に立つ。さぁ、明日からはどこへ行く?





スキーを長く続ける秘訣はある

編集部:スキーを長く続ける秘訣はあります?
直っさん:俺ね、サーフィンをするようになって、遠くのフィールドへ通う人の気持ちが少しわかった気がするわ。
健児:どういうこと?
直っさん:夏場に野沢から太平洋まで結構な頻度でサーフィンに行って、友人に会うのは嬉しいし、ローカルと会って滑る感覚ってこんなんだなって。何時間もかけて移動して、フィールドへ行くけど、俺はあんまり大変だとは思わなかった。意外と近いなって。
健児:好きな場所を見つけて、そこへ通い続けると、ローカルと仲良くなれるきっかけが増えるしね。カツは?
カツ:シーズン中にトリップをした方がいいね。普段(通っている場所)と違うところへ行くっていうのは大事。あとはトレーニング。スキーをするのに結構準備が必要だ、笑。最近はすぐ故障しちゃうし。健児は野沢以外に結構行ってるよね。
健児:北海道、白馬、ヴェクターの試乗会で毎年いろいろなスキー場や山に行ってるね。


編集部:40年近く野沢温泉を滑ってて飽きないですか?
健児:飽きないね。
直っさん:飽きない。というか庭。だから、すげえ楽しいとかつまらないとか、そういう感情ナイです。
健児:俺は結構あるけどね。
カツ:スノーボードもスキーも両方やるから、それぞれ楽しめるシチュエーションが違って面白いね。レーシングのコーチもやって、人の滑りを見ているから、勉強にもなる。
編集部:同じスキー場で滑り続けて、歳を重ねても、学びは常にある?
カツ:あります、あります。子どもたちと一緒にいると、伝えたことが果たして自分はできるのか。できないなら、それは伝え方に問題があって再現性のある言葉で言わないといけない。あと、フィジカルがなくてできなかったりすることもあるから、フィジカルは大切。
直っさん:俺はフィジカル上がっているよ。だから、飲みに行っても朝はちゃんと起きてる。
健児:それも厄年過ぎたらくるよ、笑。祭り(1月15日にある道祖神祭)が終わった瞬間にもっていかれる。
直っさん:まぁ、でも、あまり過去の自分と比べないね。昔はできたとかじゃなくて、いまできること。それでいい。
健児:スキーはずっと面白いよ。スキーを作っているのもあるけど、いまでも超ハマっている。雪質やコンディションは関係ない。もちろん良い雪で滑るのはいいけど、極端なことを言ったら白けりゃ良い。
直っさん:それ、グリーン(クロージング)の田口さんのセリフだから。
カツ:ペルソナ(ebis filmsのドキュメンタリームービー)だ、ペルソナ。
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旅中で思いを馳せた野沢温泉のこと

直っさん: 俺、小学校の低学年の時はモーグル雑技団に入ってたな。(上野)修くんとかいて。
健児:(森)徹さん、俺が小学生の時にゲレンデでいきなり360をやってて「超すげえ」ってこともあったな。
(注)森徹(もりとおる)野沢温泉出身。フリースタイルスキーモーグルの全日本メンバー。長野冬季五輪モーグル代表候補選手だったが、1997年9月に胃ガンが発覚。闘病の末、1998年に25歳の若さで死去。
カツ:徹さん、アルペンやってたけど、 いつの間にかモーグルをしていた。ちょっとジェネレーションが違うかも。10歳くらい上だった? いや、違うな。
健児:6、7歳くらい上じゃない。
直っさん:俺がちっちゃい時は兄貴たちも家にいないから、モーグルの人たちと、春になったら沢に入って、コブを作って、パークでジャンプしてって感じだった。とにかく、上手い人がいっぱいいた。
スキーはね、好きだったんだけど、アルペンが嫌いだった、練習がほんとに嫌い。 全然面白くない。
健児・カツ:(爆笑)
カツ:3回くらい(嫌いを)言った、笑。
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健児:サーファーが地元の海へ行くじゃん。これまで野沢にはそういう雰囲気があまりなかった。
直っさん:そうそう、地元のオヤジたちがイケイケな感じね。
健児:野沢のオジさんたち、俺らみたいな年代がめっちゃスキーをやっていないと、次の世代や若い世代が出てこないと思う。「楽しそうで、スキーっていいな」って雰囲気。
直っさん:サーファーはそういうの多いよね。ローカルヒーローみたいな。
健児:俺らの時代はさ、競技が終わったら、スキーを完全に辞めるっていうのが普通だった。別に誰が決めたわけでもなくて、そういう流れだった。それを変えると、もっといろいろと面白くなるはず。その役目があるから、ずっと滑り続けてる。
編集部:今、選手として競技に携わっている世代がそうなると良いですね。
健児:スポーツはいつかは負ける、現役の時にそういった寛容さを持つようにする。そうすると辞めた後もやりやすいのかなと。どうしても負けたから辞めました、みたいなイメージになっちゃうもんね。別にそんなの関係ないんだよ。誰しも、いつかは負けるんだから。
編集部:勝ち負けだけの価値観ではない、楽しみや面白さを知って欲しいですね。学生を終えると辞めちゃう人も多いし。
直っさん:確かにね。多い。
健児:大学ぐらいから(スキーが)上手くなるんだけどね……。俺は卒業後にスキークロスをやり始めてからスキーがうまくなったと感じてる。多分……いい影響はある。
カツ:俺もスノーボードをはじめてから、スキーが上手くなった気がしている。面で滑る感じ? それまではエッジでしか滑ってなかった、面で滑るなんてありえないって感じで。 エッジに頼りすぎてた、笑。
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健児:久しぶりに3人で滑って、みんな昔よりスキーが上手くなってるな〜って思ったよ。
カツ:いや、楽しかったね。落ち着いて、安全に滑れて良かった。 ギリギリだったけど。 スキーでもスキー以外でも、旅の楽しみ方が分かるようになってきた。
直っさん:俺は今でも山じゃなくて、ゲレンデを滑ってるのが一番好きだな。
カツ:サンタのナイターは楽しかったね。
編集部:ナイター、帰りたいってすぐ言ってましたよ。「2本も滑れば十分でしょっ、帰ろ、帰ろ」って。
カツ:ワハハハハ。あと少しという気持ちがあるときに帰るのがいいんですよ。それがね、次へ繋がってくる。そこでやり切っちゃうと、もう満足しちゃうし。あと1本とかで滑ると、いろいろやらかすから、絶対。
健児:俺は未だに結構ガツガツ滑っちゃうんだよな〜。

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2000年代半ば。野沢温泉の河野三兄弟と上野三兄弟が中心になって撮影や映像制作などをしていたスキーユニット「MCV」。映像やイベントなどを通して、幼少からアルペンレースで培ったテクニックをベースに、パークからビッグマウンテンまで、自由で楽しいスキーを提唱していた。
仕事を持ち、家庭を築いて、責任あるポジションに就く河野三兄弟が、普段の生活から一瞬離れ、1台の車で濃密な時間を過ごしながら、各地でスキーを楽しむキャンピングカートリップは、まさにそうした20年近く前に過ごした日々を思い起こすようだった。
いくつになっても、スキートリップはいい。
この冬、どこか雪山へ旅をしてみよう。
Photo:Takahiro Nakanishi
Information
星野リゾート トマム
〒079-2204 北海道勇払郡 占冠村中トマム
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OMO7旭川(おも)by 星野リゾート
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北海道パウダーベルトをめぐるキャンピングカープラン
詳細:https://japan-crc.com/hoshino-hpb-campingcar/jp/
狩振岳CATツアー
詳細:https://www.snowtomamu.jp/winter/ski/ski-slope/cat/

