冬をもっと楽しくする最適なスキー選び!ワクワクが導く理想の一台

SKIER: Anna Veith @Mirja Geh Photography

かつてワールドカップレースを転戦し、2018年から全日本アルペンチームのヘッドコーチとして再び雪上へ。翌年オーストリア・インスブルックに移住し、現在では日本総代理店としてケスレスキーを展開している浦木健太(うらきけんた)。海外からのグローバルな視点で、ヨーロッパのスノーカルチャーやギア・技術など、最新情報や興味深い話題をお届けしていく。

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冬の準備を始めよう

@Innsubluck (AUT)

オーストリアでは、10月末のアルペンスキー・ワールドカップ開幕に合わせて、街のスポーツショップに最新のスキーギアが並ぶ。周辺の山々には雪が積もりはじめ、冬の到来を感じさせる独特の雰囲気に包まれる季節だ。日本でも11月に入ると、スキー場やショップが一斉に冬支度を始める。世界中のスキーヤーが憧れる日本の雪山へ、「今年こそ滑りに行こう」と計画を立てている人も多いのではないだろうか。

そんな冬の準備に欠かせないのが、スキーギア。コアなスキーヤーの中には、6月から始まる早期展示会でお気に入りのアイテムを予約している人もいる。しかし、多くのスキーヤーにとって、ニューモデルが店頭に揃い始める11月からが、まさにベストシーズン。スキー、ブーツ、ウェア、ゴーグル、グローブ──すべてのカテゴリーで新作が出揃うこの時期は、ギア選びを始める絶好のタイミングだ。

今回は、ヨーロッパに住みながらスキーブランドを日本で展開している私の立場から、スキー板を選ぶ際の重要なポイント、そしてヨーロッパや北米のスキー事情をお伝えしたい。

スキー選びの第一歩 ―自分のレベルとスタイルを知る

新潟県湯沢町のクレブスポーツ店内

自分のスキーが欲しいと思ったら、スキー専門誌のギア特集やオンラインでのリサーチから始めるといいだろう。板の長さ、滑る環境やジャンル(レーシング・オンピステ・オフピステ・パウダーなど)の違い、さらにはレベルに応じたスキーの特徴など、参考になる情報がいくらでも手に入る。

これらを見比べながら、自分の滑る姿を想像し、予算と相談して選んでいく。そのプロセス自体が、すでに楽しい時間だ。また、全国のスキーショップには専門知識を持つスタッフがいる。迷ったら、積極的に相談してみよう。的確なアドバイスをもらえるはずだ。

ここで最も注意したいのが、自分のレベルに合ったスキーを選ぶこと。「値段が高い=良いスキー」と安易に考えるのは危険だ。上級モデルは高性能だが、板の張りが比較的強く、ある程度のスピードを出して、良いポジションでスキーを操作できなければその性能を引き出せない。

一方、初級モデルは初心者でもコントロールしやすく、比較的軽く、しなやかなスキーが滑りの上達を助けてくれる。身長や滑るジャンルは明確に数値化できるが、「自分のレベル」は案外曖昧だ。誰かに相談するにしても、まずは自分の滑りの実力を冷静に把握すること。そこからスキー選びを始めるのが、失敗しない一番の近道だ。

心を動かす“ワクワク感”を大切に

スキー選びのポイントは理解できたとしても、そこにもう一つ大切な要素を加えたい。それが、“ワクワク感”だ。

ここ数年、円安の影響でスキーの価格は大幅に上がっている。だからこそ、「納得して買う」ためには、性能やスペックだけでなく、胸の奥から湧き上がる高揚感が重要だと思う。最終的には、理屈だけではなく“感情”こそを決め手にしたい。つまり、「テンションが上がるかどうか」。

スキー大好き!の幼少期
ケスレと共に歩んだ選手生活。20歳で初めて出場したワールドカップで

私自身、子どものころからスキーに特別な思いがあった。買ってもらったスキーをベッドの横に立てかけ、ブーツを履いたまま眠った夜もある。ブランドイメージ、デザイン、カラー、ウェアとのコーディネート……。心から「かっこいい!」と思えるスキーを手に入れたときの喜びは、何ものにも代えがたい。大人になった今では、ブランドの歴史やストーリーといった背景にも惹かれるようになった。

私にとっての“ワクワク”の象徴は、オーストリアのスキーブランド「ケスレ(KÄSTLE)」だ。アルペンスキー選手時代、最も良い成績を残したときに履いていた思い出のブランドであり、ロゴを見るだけで今でも気持ちが高まる。

2018年にブランド復活を知ったときには居ても立ってもいられず、2022年には本社を訪ね、日本総代理店を始めてしまったほど。(ケスレの日本復活に関する過去のコラムはこちら:https://steep.jp/column/101983/

これは少し極端な例かもしれないが(笑)、そこまで愛着を持てる一本に出会えたなら、スキー選びはもう迷わない。「これだ!」と心が動く瞬間こそが、最高のスキーとの出会いだと思う。

ヨーロッパ・北米・日本 、それぞれのスキー事情

スキーには多くのブランドがあり、それぞれにレーシング、ピステ、フリーライド、オールマウンテン、フリースタイルなど、多様なジャンルが存在する。そして国や地域によって、好みの傾向にも違いがある。

ヨーロッパの場合

@Kästle GmbH

ヨーロッパはスキー発祥の地であり、とくにオーストリアと周辺国ではアルペンレーシングの人気が圧倒的だ。ここでは、アルペンスキーで強さを実証している老舗ブランド、オーストリアで生まれたアトミック・ヘッド・フィッシャー、ブリザード、2018年に再始動したケスレ、フランス生まれのロシニョール・サロモンなどの人気が高い。

さらにはドイツのフォルクル、イタリアのノルディカ、高級ブランドのイメージがあるスイスのストックリなども強い支持を得ている。スキー場が広大なヨーロッパでは、170cm以上のロングターンモデルやウエスト幅70〜90mmのオールマウンテンモデルが主流。細かいターンよりも、大きな弧を描きながら優雅に滑るスタイルが好まれている。

北米の場合

@Kästle GmbH

北米は西部のロッキー山脈沿いの広大なスキーリゾートを中心に、フリーライドカルチャーがかなりの割合を占める。ヨーロッパの人気ブランドに加え、アメリカで最も歴史のあるK2をはじめ、アルマダやDPSといった2000年代以降の新興ブランドも勢いがある。

人気はウエスト幅90mm以上のフリーライドモデル。雪が降った朝はスキーヤーが一斉にリフトへ殺到し、ファーストトラックを狙う光景が日常だ。そのエネルギッシュな雰囲気こそ、まさに北米(特とくにアメリカ)らしい。

日本の場合

Skier:Naoto Kono Photo:Daniel Honda @斑尾高原

日本は、ヨーロッパや北米に比べ、滑走性能に対して敏感なスキーヤーが多い印象だ。ターンのキレ、雪面の捉え、スキーの走り、そういった繊細な感覚を大切にするスキーヤーには、ピステモデルで165cm前後のショートカービングスキーの人気が高い。ヨーロッパの人気ブランドに加え、長野県発のオガサカスキーは、日本の雪質に合わせた設計と丁寧な仕上げで高い信頼を得ている。

また、日本は世界でも有数の豪雪国。軽く乾いたパウダースノーは海外からも注目されており、ここ数年はフリーライドモデルの人気が高まりつつある。そして、その雪の多さから、日々変わる多様な雪面コンディションを味わうことができるのも特徴だ。もちろん、その日のコンディションに合うスキーを選ぶことができれば最高だが、レンタルならまだしも、複数台のスキーを購入するのも、持ち歩くのもハードルが高いと言える。

そんなスキーヤーへのおすすめは、ウエスト幅が100mm以下のフリーライドモデルや、ヨーロッパで人気のあるオールマウンテンモデル。どんな雪面コンディションでもラクに乗れて、高いスピードでも安定感があって、景色も楽しみながら長時間でも疲れずに乗り続けられるスキー。そのように、人に魅せるためのスキーではなく、なによりも自分が楽しむことを最優先したスキー選びもおすすめしたい。

冬を共に楽しむ最高のパートナー

@Kästle GmbH

私の仕事は、「ケスレ」の日本総代理店であり、ケスレブランドのスキーやブーツを日本のスキーヤーに届けること。同じように、日本国内でスキーブランドに携わる人々は、より多くの人にスキーの楽しさを知ってもらうために、1年を通して努力を続けている。

マーケティング、製造、輸入、販売——どの工程も、情熱と信念で支えられている。しかし、近年は主に円安の影響で価格が上昇し、企業努力だけでは限界があるのも事実。それでも、スキーを通じて得られる感動や出会い、景色、達成感を知っているからこそ、私たちはクオリティの高い商品と素晴らしい体験を届けるためには努力を惜しまない。

ブランド、ショップ、そしてユーザー。この三者の想いが正しくつながったとき、スキーは単なる道具ではなく、冬をともに楽しむ最高のパートナーになるのではないか。今年の冬、ぜひあなたにとって“ワクワクする1台”を見つけてほしい。そのスキーが、きっとこの冬を、そしてあなたの人生を、もっと豊かにしてくれるはずだ。

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