「フリースタイルスキー・ハーフパイプ」競技の見どころ―ミラノ・コルティナ2026オリンピック

ミラノ・コルティナオリンピックの観戦をより楽しむために、競技の特徴や見どころポイント、ルールなど、フリースタイルスキー・ハーフパイプの基礎知識をつけておこう。

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■フリースタイルスキー・ハーフパイプ(HP)とは? そのおもしろさ

Photo: @fisparkandpipe

フリースキー・ハーフパイプは、U字型の巨大なパイプの左右の壁を使い、流れのなかで連続してジャンプとトリックを繰り出していく競技だ。2014年ソチ大会から五輪種目となり、パイプのボトムからR上に沿って上に大きくポップするダイナミックさと空中でのフォトジェニックなスタイルで注目を集めてきた。

オリンピックやW-CUPなど、FIS国際スキー連盟の国際大会で使用されるハーフパイプには仕様上の規格があり、そのサイズスペックは壁の高さが約6.7mを基本とし、滑れる長さが最低160m、大規模な国際大会では170m前後となる。パイプの幅は約19〜22m、ウォールと呼ばれる壁の角度は、最低17°、推奨18°前後で、上端は角度82〜83°で、ほぼ垂直に近い形状を持つ設計とされる。パイプのボトム(底)から見上げると、約6.7mにそそり立つウォールは、なんと3階建てのビルと同じ高さだ。

競技では、エアの高さ、技の難度、流れ(連続性)、安定感、そして全体の構成が評価される。単発の大技だけでなく、1本のランを最初から最後まで高度なエアトリックをつないでなめらかに滑り切るには、テクニカルなトリックを決める技術力はもちろん、ボトムとウォールで失速しない滑走技術、そして集中力、勝負をかけられるメンタリティの強さが求められる。

観ている側にとってのハーフパイプの魅力は、重力の存在を忘れてしまうような空中でのムーブメントの"妙”にある。リップから空中に飛びあがる高さは、スピードのあるファーストヒット・セカンドヒットでのエアで8m前後、滞空時間は2秒前後、そのなかで縦・横・斜めと自在な軸で回転をかけ、グラブをキメ、さらにウォールのRにピタッと合わせて着地する。そのヒットを170mのなかで5〜6発、打たなくてはならない。選手たちの平衡感覚や身体の柔軟性、集中力や体力は、もはや人間とは思えないほどに見えてしまう。

ビッグエア同様に、パフォーマンスの進化は止まらず、現在では優勝レベルは1620(4回転半)まで回転数があがっている。さらにスイッチからのダブルのトリックや、新しい軸を入れる傾向も増えている。上位の選手は自由自在に4方向(レギュラーイン・スイッチイン・回転方向がフロントサイド・バックサイドという逆方向)すべての技をルーティーンに組み込むんでくるのだ。

一方で、ハーフパイプは失敗の代償が大きい。着地が少しでも乱れれば次のジャンプの高さが出ず、構成全体が崩れてしまう。高難度の技を入れるほど、そのリスクは増す。攻め続ける胆力と、崩れない精度の両立が最大の難関だ。

観戦時は、ジャンプの高さが最後まで維持されているかに注目したい。序盤だけでなく、後半まで高さと安定感が続くランは評価が高い。また、左右の壁でいかに技のバリエーションがあるかも見どころとなる。


動画で実際の様子を見てみよう!

前回の北京オリンピック 2022 ハーフパイプハイライト集

ミラノ・コルティナオリンピックならではの着目ポイント

男子のハーフパイプは北京五輪からさらにトリックが進化し、その勢いが止まらない。現在では、すべてのヒットでダブル系のトリックが必須となってきており、スイッチからのダブルコークのような、難しいスイッチのつなぎ技も見られる。優勝レベルの選手は1620を出してくるのは想像にたやすいが、まだ誰もメイクしていないような新しいトリックを習得して隠し持ち、オリンピックの舞台で初披露、といった可能性も十分考えられる。

今大会は予選・決勝とも夜の開催。ライトアップされたハーフパイプのステージはショーとしての見映えも最高だが、選手たちにとってもナイターのほうが「リップが見やすく滑りやすい」という。メダルを賭けたアッと驚く新技が出るか楽しみだ。

Photo: Mateusz Kielpinski (FIS)

■フリースタイルスキー・ハーフパイプの試合形式とジャッジ方式

「個人」では、予選から決勝まではこのような流れで争われる。

〈予選〉全員が2回ずつ滑り、高い方の得点を採用し順位を決め、上位12名が決勝へ進出

〈決勝〉全員が3回ずつ滑り、最も高い得点を採用し、最終順位を決める

予選は抽選によって滑走順が決まる。2本滑って合計点ではなく高い方の得点が採用されることがポイントで、1本目は失敗しても、もう1回チャンスがある。ただし、1本目で高得点を得た選手は2本目に失敗しても決勝進出の可能性は担保されているため、精神的に楽になる。

決勝は3回チャンスがある(W杯は2回)。そのため、メダルを狙う選手は一か八かのトリックに挑んでくるケースが多い。なお、決勝は予選下位の選手から順番に滑るため、予選上位の選手は全体の展開を見極められるので、その点で有利だといえる。

*当日の天候などにより試合形式、順位決定形式が変更になる可能性あり

■ミラノ・コルティナオリンピック フリースタイルスキー・ハーフパイプ競技スケジュール

開催日時種目放送予定
2/19(木) ●男子フリースキー・ハーフパイプ 予選
[日本時間]2/20(金)18:30
 —
●女子フリースキー・ハーフパイプ 予選
[日本時間]2/20(金)03:30
 —
2/20(金)●男子フリースキー・ハーフパイプ 決勝
[日本時間]2/21(土)03:30
 —
2/21(土)●女子フリースキー・ハーフパイプ 決勝
[日本時間]2/22(日)03:30

■ミラノ・コルティナオリンピック フリースタイルスキー・ハーフパイプに出場可能性のある日本人選手

[男子&女子]

nameInstagram生年月日出身所属SAJの五輪派遣推薦基準をクリアした戦績
松浦透磨(まつうら とうま)@tomamatsuura_ski2002年9月23日岐阜県岐阜日野自動車
SC
'24-25 W-CUP HP 最終戦12 位
’25ー26 W-CUP HP コッパーマウンテン大会HP 8位
桐山菜々穂(きりやま ななほ)@nanahokiriyama1996年7月19日岐阜県ヒマラヤSNOW CLUB’24–25 W-CUP HP シークレットガーデン大会9位など12位内3回

松浦 透磨は、2025年12月、W-CUP USAコッパーマウンテンHPで自己最高の 8位入賞、SAJの五輪派遣基準をクリアした成長株。グラブなどスタイルには並々ならぬこだわりを持つ選手だ。日本人男子選手のハーフパイプ五輪出場は、現在全日本ナショナルチーム・フリースタイルスキーのヘッドコーチ津田健太朗の2014年ソチ五輪以来12年ぶり。

桐山 菜々穂は、抜群の安定感とグラブなどにこだわったスタイルが持ち味。入賞経験こそまだないが、昨シーズンはW-CUPでSAJ推薦派遣基準の12位内を3回という条件をクリアしている。

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