日本では知る人ぞ知るブランドとして名が通るイタリアのビンディングブランド「ATK」。アルミ削り出しの剛性と独創的な技術で、軽さと滑走性能を両立する妥協なきものづくりに迫る。
航空宇宙規格の7075アルミニウムを素材に採用

スピードツーリングやスキーモが起点の「ATK」は2007年に設立されたテックビンディングブランド。ミラノ五輪の山岳スキー競技では、表彰台に上がった12台中9台がATKを使っていたという実績を残している。
ATKが他と一線を画しているのは、製造の全工程をを自社で管理し、アルミニウムの塊から部品を削り出すCNC加工にこだわる精密なものづくりにある。多くのブランドが鋳造やプラスチックパーツを使った製造方式に対して、ATKは航空機や宇宙産業でも使われる非常に強度の高い「7075アルミニウム」の角棒だ。
製造工程では、このアルミブロックの重量の約93%をあえて削り取る。一般的に使われる鋳造と異なり、金属の組織を壊さずに固い塊からそのまま形を作るため、部品はとても強く、折れや歪みに強い。削り取られた大量のアルミチップは100%回収され、再利用のサイクルへと戻される。
この手法を貫くのは、鋳造ではどうしても避けられない金属内部のわずかな気泡やムラを排除できるため。ひいては、力を加えた瞬間にスキーへ伝わる正確な反応を実現するためだ。精密に削り出された部品は、ミクロン単位で組み合わさるため、ガタつきによる力の逃げや、部品同士の摩擦による摩耗を最小限に抑えられている。これが、堅牢なビンディングの核となる。
前後均等な保持と14mmのたわみで理想の滑りへ
こうした強固な土台の上に、ATK独自の仕組みが組み込まれている。まず注目すべきは、つま先側の保持力を調整できる「EVOシステム」だ。従来のテックビンディングでは解放値を上げると、かかと側の保持力だけが強まり、つま先側とのバランスが崩れることが課題だった。ATKはトウ側にも調整機構を設けこの不均衡を解消。常に前後均等なバランスを保つようにしている。
また、滑走中のスキーの動きを妨げない「ERS(エラスティック・レスポンス・システム)」も見逃せない。これはヒールピースプレートと調整ネジの間にバネを挿入した構造。スキーがたわんだ際に、ヒールピースが最大で14mm後方へスライドすることで、スキー本来のたわみを邪魔せず、衝撃をバネのように吸収して不意の解放を防ぐ役割を果たす。さらに、磁石の力でヒールリフターを固定する仕組みによって、激しい滑走中でも振動を効果的に軽減する。

さまざまな技術を詰め込んだプロダクトは、BCでの多様な雪質や地形を滑るスキーヤーを支えている。なかでも軽さと滑走能力を両立したRAIDERコレクションは、雪質が激しく変わる日本の山々を攻略するのに最も適したモデルと評判も高い。昨季からはヒールプレートにアルミニウムを採用し、プラスチックの使用を削減しながら耐久性とパワー伝達能力をさらに高めている。
また、25季から加わったHYコレクションは、メカニカルなギミックで世界的に注目を集めている。登りは軽いテックビンディングとして機能しながら、滑走時にはアルペンビンディングのような操作感に切り替えられる。まさにATKの技術の最高到達点と言えよう。
ATKは自分たちの手の届く範囲ですべての工程を管理している。研究開発をする部署が部品の改良案を思いつけば、わずか数分で全部署へとその内容が伝わり、すぐに生産現場へと反映される。この判断の速さが、質の高いものづくりと、環境への配慮を高いレベルでつなぎ合わせているのだ。
3カテゴリーの代表モデル

滑走も妥協なく|FREERAIDER 15 EVO
解放値=7-15
重量=395g
ヒールリフター=0、+27、+48mm
ブレーキ=85、91、97、102、108、120mm
¥143,000
14mmのスライド機構がスキーのたわみに追従し、専用スペーサーが伝達力を強化する。トウ側でも正確な解放調整が可能にした。

シンプルで機能的|CREST 10
解放値=4-10
重量=300g
ヒールリフター=0、+27、+47mm
ブレーキ=86、91、97、102mm
¥99,000
レース級の軽さと汎用性を両立 。AUTO Brake Systemが急斜面で即座に制動し、多様な環境での素早い行動を支える。

ATKが送り出す新たなスタンダード|HY13 FREE
解放値=6-13
重量=675g
ヒールリフター=-18、+10、+42mm
ブレーキ=97、108、120mm
¥176,000
回転式アームによって歩く時はテック。滑走時はアルペン仕様にモード変化。踵が18mm下がる歩行モードにより平地移動も効率的に。
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