ニセコ発。「OYUKI」が育む“ビッグスノーカルチャー”とは

2012年、世界中のスキーヤー・スノーボーダーが憧れる北海道・ニセコで誕生した「OYUKI」。当初、ニセコ周辺でよく見かけたフェイスマスクは地域のスーベニアのひとつだと思っていたが、ペップ・ファスをアンバサダーに迎えたあたりから、その本格度が国内外に伝わりはじめ、各地でその名を目にするようになった。

現在ではフェイスマスクやグローブといったアクセサリーだけでなく、ベースレイヤー、ミッドレイヤー、シェルといったウェア類に至るまでプロダクト群は多岐にわたっている。その展開は日本国内にとどまらず海外にも広がっており、ブランドン・デイビスやサミー・カールソンといった著名なライダーがアンバサダーに就き、ARMADAやSMITHをはじめとする名だたるブランドとのコラボレーションも実現している。

ブランドが掲げる「Big Snow Culture」が意味するもの。プロダクト開発やデザインに込められた哲学から、サステナブルな取り組み、オススメのアイテムまで、ブランドマネージャーのAdam Kroenert(アダム・クローナート)さんに話を聞いた。

腰までの深雪に、笑みを浮かべるクローナート氏
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必要は発明の母。顔まで埋もれる豪雪から誕生

OYUKIの原点にあるのは、滑り手たちが直面していた、極めて現実的な課題だった。

創業者のMatt Hampton(マット・ハンプトン)さんはニセコへ移り住んだ後、一晩で景色を一変させる豪雪や、低温下で長時間過ごす山での一日など、ニセコ特有の厳しい冬を身をもって経験した。なかでも、ディープパウダーを滑るたびに顔に雪を浴びる「Face Shot(フェイスショット)」が、視界や体温、快適性に大きく影響することを痛感した。

「創業当初からのビジョンは、ディープスノーを滑るために設計され、実際のフィールドでテストされたプロダクトを作ることでした。深い雪や絶え間ないフェイスショットから身を守るフェイスマスクからブランドは始まりました」

「OYUKI 攻めろ大雪」のロゴ入り
2014年当時のラインナップ

体験から生まれた課題を、自分たちの手で解決する。その徹底した現場主義は、現在のプロダクト開発にも受け継がれている。

「OYUKIの独自性は、ブランドがニセコで生まれ、いまもこの土地の環境とカルチャーによって形作られ続けていることです。私たちの製品は、深雪と極寒のなかで機能するように設計され、テストされています。ニセコの環境が自然と、耐久性、機能性、品質を追求するギア作りへと私たちを押し上げてきました」

ニセコという土地は、ブランドの背景にあるだけではない。巨大なテストフィールドでもあるのだ。

世界が注目する“NISEKO”の特異性

OYUKIは、まだ現在ほど国際化が進む以前からニセコに根を張り、その変化を見届けてきたブランドでもある。

「ニセコは、世界でもとくに魅力的なパウダーの聖地として知られています。ここが本当に特別なのは、軽くドライな雪の質と、それが日常的に降り続ける量の両方が揃っていることです。すべての条件がうまく重なったとき、ニセコは世界中のパウダースキーヤーやスノーボーダーにとって、まさに夢のような場所になります」

日常生活を維持するのも一苦労
自治体と民間企業の連携による充実したインフラ整備

そして、特別なのは雪だけではない。

「ニセコは、冬を中心に暮らしが営まれています。一晩で道路が消え、誰もが日常的に雪かきをする。生活のリズムは、雪の降り方で変わります。大雪が予報されると街には独特の高揚感が漂い、人々は天気図を見つめ、リフトの運行開始を待ち、誰よりも早く深雪へ飛び込もうとする」

そんな狂気ともいえるパウダーへの愛と、豪雪地ならではの厳しい環境から生まれたのがOYUKIである。

「Big Snow Culture」

OYUKIがブランドの核として掲げているのが、「Big Snow Culture」だ。

「Big Snow Cultureとは、まだ誰も滑っていない深いパウダーを追い求めるライフスタイルです。それは単にスキーやスノーボードをすることだけではありません。世界中を旅し、その土地の文化に触れ、山を知り、新たな人と出会う。寒波が近づくたびに期待を膨らませ、良い一日を仲間と共有する。そうした体験すべてを指します」

そうした文化と同じくらい大切にしているのが、人とのつながりだ。ブランドチームには、サミー・カールソンやブランドン・デイビスといった世界最高峰のアスリートをはじめ、ガイド、写真家、映像作家、アーティスト、そしてホームマウンテンや地域と深く結びついたローカルレジェンドたちが参加している。

「大会の成績やSNSのフォロワー数よりも遥かに大切なものがあります。それは、山、雪、旅、そしてコミュニティに対して心からの繋がりを持っている人たち。本当に山が好きで、ストームを追いかけるような人たちですね。彼らは、それぞれが滑る場所からリアルなストーリーを伝えてくれます」

使い手との対話を通して磨かれるプロダクトには無駄がなく、デザインには哲学がある。

シンプルは、意図的につくられる

OYUKIのデザインは、「シンプルさこそ機能性の鍵」という思想に基づいている。余計な装飾や過剰な機能を省き、本当に必要なものだけを残す。使いやすさを突き詰めた先に美しさが宿るという、日本の「用の美」にも通じる考え方だ。

「ニセコのような過酷な山岳環境では、不要な機能は問題を解決するどころか、トラブルの原因になることの方が多いのです。 私たちにとってシンプルにするということは、単に素っ気なくすることではなく、意図的であることを意味します。素材、構造、ポケット位置など、すべてが明確な役割を果たすものであること。 とくに、素材へのこだわりと、直感的に使える思慮深いデザインを重視しています。目指しているのは、過酷な環境下で自然に機能することです」

アダム氏が、シンプルな美しさを最も体現していると考えるのが、GORE-TEXグローブの「Sencho」「Chika」シリーズだ。

Sencho GORE-TEX Gloves
Chika GORE-TEX Gloves – Women’s

OYUKIチームにも愛用者が多いという「Sencho」は、タフさと暖かさを備えた定番の上位モデル。プレミアムゴートレザーのアウターにGORE-TEX WARMを組み合わせ、甲側と手のひら側で厚みの異なるPrimaLoft Goldを使い分け、ライニングにはCalamaiウールを採用するなど、細部までこだわり抜かれている。形状は5フィンガー、3フィンガー、ミトンに加え、限定デザインなど幅広く展開。「Chika」は、同様の機能性を女性向けのサイズとフィットに落とし込んだシリーズだ。

“日本風”ではなく、精神性を映すデザイン

その思想は、製品の構造だけでなくグラフィックにも反映されている。スキーの一部モデルには、木霊や妖怪など、日本の伝承を想起させるモチーフが登場することがある。ただし、単に日本らしさを演出するキャラクターとして採用しているわけではない。

Mike Shanksterによる「木霊」を表現したアートワーク
数量限定のコラボモデル「Armada x OYUKI 116 UL JJ」

「ブランドのデザインルーツは、日本の自然観にあります。日本の伝承が持つ、自然への畏敬や神秘性は、雪山をフィールドとする私たちの世界観とも重なります。伝承をそのまま表現するのではなく、日本の冬や雪山に漂う空気感や情緒を、さりげなくデザインへ取り入れることを大切にしています」

漢字二文字「大雪」に込めた想い

OYUKIを象徴する「大雪」ロゴは、“Smash Pow”というブランドの精神を表している。

「“Smash Pow”は、OYUKIとBig Snow Cultureを象徴する言葉です。新雪が積もれば、朝一番のリフトから最後の一本まで、思い切り自由に、尽きないエネルギーと創造性でパウダーを滑りたい。その感覚を表しています」

「破壊する」「粉砕する」といった意味の“Smash”という単語にはやや強い印象があるが、決して攻撃性や雪を征服するという意味ではないという。

「雪山への敬意と興奮。そして、今日は特別な一日になると期待が膨らむ、パウダーデイならではの一体感。あの瞬間を仲間と共有する気持ちを表した言葉です」

そうした喜び、文化やコミュニティを未来へつないでいくために、サステナブルな取り組みも進めている。

海洋保全につながる、サステナブルなものづくり

雪山の文化を将来へつないでいくため、OYUKIは環境負荷を減らす素材や加工の採用も進めている。その一つが、リサイクル素材「NetPlus」とのパートナーシップだ。

「NetPlusは、使用済みの漁網を回収し、高品質な糸へと再利用するプロジェクトです。海洋プラスチック汚染の削減に貢献すると同時に、雇用の創出や廃棄物インフラの改善、地域NPOへの還元を通じて、世界の貧困地域・漁業コミュニティを支援しています」

カリフォルニアのBureo社が各地の漁業コミュニティと連携し、回収した廃漁網を再資源化した素材。OYUKIでは、以下のモデルなどに採用されている。

Myoko NetPlus® 3L Anorak – Unisex
アースカラーを軸にしつつ、近年は雪上での“映え”を求めるライダーに向けた鮮やかなカラーリングも展開する
Tōya Down NetPlus® Insulator Jacket
こちらは来季の新商品。男女で異なるスタイルを展開する

このほかにも、フッ素化合物を使用しない「C0 DWR(耐久撥水)」加工の採用や、アウターウェアに使用する生地を日本国内で製造するなど、環境に配慮した製品作りを進めている。

一貫した現場主義が生む「ニセコ基準」

OYUKIの製品は、モデルによってはリリースまでに2〜3シーズンをかけ、デザインの改良とフィールドテストを繰り返す。日常的に雪山と向き合う多様なメンバーで構成されたチームが、ニセコをはじめ世界中の山々で製品を使い込む。

そうした現場の声から生まれた代表的な製品のひとつが、「Iwanai Zipper Mitts」だ。「グローブを脱がずに素早く指を出せるよう、ミトンにジッパーを付けてほしい」という、ニセコのチームライダーであるカッスンからの提案をもとに開発された。極寒のなか、スマートフォンやカメラの操作、用具の調整など、ちょっとした作業のたびにグローブを外すことが大きなストレスになっていたという。

Iwanai Zipper Mittens
暖かく、メリノウールのインナーグローブはタッチスクリーン対応

「豪雪、低温、深い森。ニセコは人にとってだけでなく、ギアにとっても非常に過酷な環境です。私たちはよく『ニセコで通用するプロダクトなら、世界中のほぼどこでも通用する』と言っています」

防水性、通気性、保温性、耐久性、フィット感の弱点をあっという間に露呈させるニセコの環境が、素材選定や各部の設計、レイヤリングシステムに至るまで、製品の改良プロセスに大きな影響を与えているようだ。

体験型ストアから広がるコミュニティ

白馬の中心地・八方エリアに位置する「OYUKI 白馬店」

2025年には、長野県・白馬村に新店舗をオープン。製品を販売するだけでなく、ブランドの世界観や雪山文化を伝える場として、フルラインナップを取り揃えている。昨年には1シーズン限定で、カナダのウィスラー・ブラッコムにもポップアップストアを出店した。

「白馬は、世界中からマウンテンコミュニティが集まる特別な場所です。新しいお客様に私たちのブランドを知ってもらい、気軽に立ち寄ってプロダクトを手に取ってもらえる場所をつくりたかったのです。ショップは非常に好評です」

そして、ここからは本記事が世界初公開となるニュース。2028年には、ブランドのすべてが始まったニセコに、新たな拠点が誕生する計画も進んでいるという。店舗限定商品の販売に加え、ここでしか味わえないユニークなショッピング体験を提供する予定だ。

おすすめモデルをピックアップ

そんな勢いを増すOYUKIプロダクトの豊富なラインナップのなかから、用途別におすすめのモデルを選んでもらった。

トータルセットアップなら

「メンズなら『Goshiki Jacket & Bib』、ウィメンズなら『Nimi Jacket & Bib』の組み合わせがオススメです。ディープパウダーを想定して設計され、天候の変化や長時間の滑走に対応するプロテクション、通気性、運動性を備えています」

Goshiki NetPlus® 3L Jacket / Bibs
Nimi NetPlus® 3L Jacket / Bibs – Womens

「レイヤリングには、『Sora Polartec Power Air Hoodie』をインナーとして合わせるのが最適です。コンパクトで軽く、温かい。通気性、吸汗速乾性に優れ、極寒からハイクアップ、日常生活まで幅広く使えます」

あわせやすい自然なカラーもポイント
Sora Polartech® Power Air Pullover Hoodie

女性ライダーへのオススメは?

「レディースには、完全リニューアルの『Oyuki Toya Down NetPlus® Insulator Jacket – Women’s』をおすすめします。」

ヒップ丈のレギュラーフィットで、街にもなじむデザインも魅力
ハンドウォーマーポケットやインナーポケットなど、使い勝手のよいポケットも充実

リサイクルダウン310gを使用し、とても暖かく、破れにくく、PFCフリーの撥水加工で湿気にも強い。外側に縫い目が出ないインナーバッフル構造により、雨や雪が染み込みにくいのも特徴だ。

バックカントリー初心者におすすめのモデルは?

「バックカントリーで重要なのが、体温調節のためのレイヤリングです。オススメは、軽く汎用性の高い『Toya Vest』。体の動きを妨げずに体幹をしっかり温めてくれます。重い防寒着一枚より、レイヤリングを組むことがポイントです」

Tōya Down NetPlus Insulator Vest
薄手で動きやすく、アウターの下に着てもかさばらない
専用ケースで収納もコンパクトに

パウダー愛から生まれる、次のプロジェクト

自然への畏敬と、雪山に対する深い理解があるからこそ、雪を厄介な存在としてではなく、恵みとして受け止めることができる。そんな共通のパウダー愛から、OYUKIはこれまでにも、志を同じくするブランド、アーティスト、アスリートたちと自然発生的にコラボレーションを実現してきた。今後も、Big Snow Cultureを軸に、さまざまなプロジェクトを展開していくという。

「この記事を読んでいる日本人アーティストの方がいたら、ぜひ私たちのInstagramにDMを送ってください!」

最後に、Adamさんから日本の読者へメッセージをもらった。

「ブランドに興味を持ち、私たちのストーリーを読んでくれてありがとうございます。OYUKIでは、皆さんが山で素晴らしい時間を過ごせるよう、高品質なギア作りに全力で取り組んでいます。ぜひInstagramをフォローして、ショップにも気軽に立ち寄ってもらえたらうれしいです」

Photo: OYUKI

Information

OYUKI

公式サイト:http://oyuki.com/
公式SNS:Instagram|Facebook|YouTube

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