選手のユニフォームが歩む第二の人生。Goldwinの循環型プロジェクト「Circular Action」が始動

ゴールドウインが、役目を終えた「Goldwin」のウエアをリペアやアップサイクルをして再生し、循環させるプロジェクト「サーキュラーアクション」を始動した。

気候変動の影響がウィンタースポーツに限らず、さまざまな分野に及ぶ昨今。廃棄物の削減と資源の有効活用を促進するため、国が毎年10月に定める「3R(Reduce、Reuse、Recycle)推進月間」にあわせ、2026年10月14日(水)、東京・神田の「GRAVITY KANDA」で新プロジェクト・製品発表会が開催された。

アスリートが実際に着用したウエアは、どのように生まれ変わるのか。モーグル日本代表の堀島行真選手によるトークセッションも交え、イベントの模様をレポートする。

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雪を守ることは、スポーツの未来を守ること

2050年頃には、スキー場の年間滑走可能日数が現在の3分の1にまで減少するともいわれるなか、スキーを起源とし、雪とともに歩んできたGoldwinにとって、「雪不足」はブランドの存在意義にも関わる重要なテーマだ。スキー場の運営や選手活動だけでなく、競技人口の減少、ひいてはウィンタースポーツ業界全体の衰退にもつながりかねない。

こうした課題に対し、同社は2024年、「人を挑戦に導き、人と自然の可能性をひろげる」という理念のもと、自然、顧客や社会、共に価値を生み出す仲間の3つを重視したサステナビリティ方針「Goldwin Regenerative Journey」を策定。今回のプロジェクトも、この方針に基づく取り組みの一つだ。

■「Goldwin Regenerative Journey」

Nature(自然)
People We Inspire(価値の提供先)
Co-Creators(価値を協創する仲間)

発表会ではまず、ゴールドウインのマーケティング部長・蓑輪光浩氏が登壇。アムステルダム大学で循環経済を学んだという蓑輪氏は、昨今のファッション業界が抱える課題に触れながら、この方針が目指すものについて説明した。

循環経済とスポーツの関わりを日々探究する蓑輪氏。映像を交え、プロジェクトの資源循環の仕組みを解説

「目指すのは、限りある資源を有効に使いながら、製品を通じて人々に新たな価値や喜びを届け、その可能性を次世代へとつないでいくこと。作る責任、最後まで見届ける責任を意識しながら、美しいサイクルを生み出していきたい」と語る。

一方、アスリート側にも課題があった。シーズンや大会ごとに規格が変わるユニフォームは、まだ使える状態でも競技用としての役目を終えてしまう。競技生活が長いと、保管場所に困るという悩みもあった。そんなアスリートの声にも応える形で、今回のプロジェクトが動き出した。

「着る」から「つなぐ」へ。Circular Actionとは?

「サーキュラー=循環」のためのアクションと題して始動した本プロジェクト。

日本では年間約50万トンもの衣類が廃棄され、その約95%が焼却・埋め立て処分されているという。こうした状況を受け、Goldwinでは以前から、不要になった衣類を回収・再資源化するなど、リサイクルを推進してきた。また、廃棄量の削減目標を掲げ、製造総量の適正化やカスタムオーダーの導入など、製造段階から廃棄を減らす取り組みも進めている。

全国の対象店舗に設置される回収BOX(2025年6月撮影)。2024年には約12トンの衣服を回収した

今回のCircular Actionは、そうした活動をさらに一歩進めるもの。製品を循環させるだけでなく、再生した製品の売上の一部を、アスリートの活動支援へと還元する仕組みを組み込んでいる。

プロジェクトの軸となるのは、「リペア」と「アップサイクル」だ。これは、サーキュラーエコノミー(循環経済)において、資源の循環方法を優先順位で整理する「R戦略」にも通じる考え方だ。

サーキュラーエコノミー 10R

R戦略に用いられる「10R」指標。

不要な製品をつくらない、不要なものを断る・使わないという「R1:Refuse」から、焼却時の熱などのエネルギーを回収する「R10:Recover(energy)」まで。

今回の取り組みは、「R5:Repair」と、別の用途の製品に作り替える「R7:Remanufacture(再製造)」に該当。

焼却によるエネルギー回収に至る前に、新たな価値を生み出し、製品の可能性や寿命を広げていく。廃棄する前の、もうひと踏ん張り。最後まで諦めないアスリートの姿勢にも重なるこの取り組みは、モノだけでなく、お金や応援の気持ちも循環させる。

すべて一点もの。雪上の鎧が、新たな相棒に

プロジェクトの第一弾に選ばれたのは、フリースタイルスキー・モーグル日本代表チームのユニフォームだ。
Goldwinは2018-19シーズン以降、フリースタイルスキー日本代表チームのモーグル、スキークロス、エアリアルのユニフォームを提供してきた。

なかでもモーグルは、全長200~270m、平均斜度約28度のコースで、およそ50~60ターンを繰り返し、2か所のジャンプも華麗に攻略しなければならない競技。選手の精密かつダイナミックな動きを支えるウエアには、屈伸を妨げないストレッチ性や立体裁断、透湿性など、高い運動性能が求められる。

そんなタフで高機能なウエア約20着から、試作品を含め約70点のアイテムが新たに生み出された。貴重なウエアを無駄なく使うため、丁寧に解体し、フードやパウダーガードなども素材や形状の特性、機能性を生かす形で再利用。職人の手によって、一点一点、新たな製品へと生まれ変わっている。

ラインアップは、トートバッグやサコッシュ、巾着、ポーチなどの日常使いできるアイテムに加え、ヘルメットケースやゴーグルケースといった、スキーヤーに身近な製品まで全7型。それらの特徴は大きく3つある。

① 競技の記憶を受け継ぐ、世界に一つの製品

第一弾プロダクト。重みのある「JAPAN」ロゴがデザインのアクセントに

選手一人ひとりの競技人生が異なるように、製品もすべて一点もの。もとになったユニフォームのカラーやパーツの配置によって、一点ごとに異なる表情を持つ。

随所にウエアのギミックが盛り込まれ、バックルのクリック音や手触りからも、使うたびに雪山や選手の雄姿に思いをはせられる。あの選手は、このポケットに何を入れていたのか。そんな想像も楽しい。

ウエアのフードを活かした、丸みのあるフォルムが特徴的なゴーグルケース。ドローコードもそのまま活用されている

価格は4,950円から。画面越しの存在だった憧れの選手が身に着けていたウエアを、日常で使えるアイテムとして手にできる。ファンにとってはうれしい内容だ。

② 製品のルーツを巡る「デジタル製品パスポート」

もう一つの特徴が、全製品に導入された「DPP(Digital Product Passport/デジタル製品パスポート)」だ。服のタグといえば、サイズや洗濯方法を確認するくらいかもしれない。しかし、このDPPには、ウエア本体と同じくらい価値のある情報が詰まっている。

製品タグの二次元コードをスマートフォンで読み取ることで、アップサイクル前の製品情報や着用したアスリート、着用された舞台、アスリートからのメッセージなどを確認できる。さらに、生産から再生までの各段階におけるCO₂排出量や水使用量などの環境指標も可視化。製品が環境に与える影響を数字で実感できるほか、お手入れ方法やリペアサービスに関する情報も確認できる。

▼DPPに表示される情報の例

DPPは欧州で導入が進んでおり、今後は幅広い分野への展開が計画されている。国内でも、Goldwinが拠点を置く富山県で、カターレ富山のユニフォームや富山マラソンのウエアへの導入が進められているという。

立山連峰の稜線がモチーフの
「26/27 KATALLER TOYAMA Limited Uniform」
リサイクルポリエステル100%の
「富山マラソン2026 参加賞Tシャツ」

環境に意識を向けるきっかけづくりや、コミュニケーションを促すツールでもあるが、ファンにとっては製品が持つストーリー自体が大きな付加価値に。一点ものだからこその販売上の課題もあるというが、75年の歴史で培ってきた製造技術と、多部署にわたるチームの知見を結集し、それらを一つの製品にどう落とし込むか。そうした試行錯誤が、より良い製品づくりにもつながっているという。

「パスポート」という名のとおり、製品の来歴を知り、その先の行方を自ら決めていくためのツール。ギアを長く大切に使う文化を育み、雪山に通い続けられる未来にもつながりそうだ。

③ 売上の一部をアスリートの活動支援へ

そして、今回のプロジェクトを特徴づけるのが、アスリートへの還元だ。製品売上の一部は、全日本スキー・スノーボード連盟(SAJ)に寄付され、アスリートの活動支援に活用される。

世界を転戦するには多くの資金が必要だ。堀島選手も、補助金などで賄えない費用は選手個人の負担になることや、中国やアメリカなどとの資金面での格差に触れ、今回のような還元の仕組みに感謝を示した。

単にウエアを提供するという従来のサポートから、選手とブランド、ファンがともに価値を生み出す関係へ。もともとタフにつくられたウエアだからこそ、長く使う文化を育むのにも適している。Goldwinならではの、まさにWIN-WINの循環が生まれている。

堀島行真選手が語る、雪不足への危機感と新たな挑戦

発表会の後半は、質疑応答を交えた堀島行真選手のトークセッション。昨シーズンについては、オリンピックでのメダル獲得とワールドカップ年間総合1位を達成し、満足度の高いシーズンだったと振り返った。11月末から始まる新シーズンに向けては、気持ちを切り替え、再び挑戦していく姿勢を示した。

4年サイクルの初年度となる今季は、再始動に向けて心身のメンテナンスを重視しているという

2013年に初めてナショナルチーム入りし、2018年からGoldwinのサポートを受けてきた堀島選手。日の丸を背負うユニフォームは、誇りであり、重ねてきた練習への自信をまとわせてくれるものとしながら、シーズンや大会ごとにモデルチェンジするため、自宅で保管するにも「行き場に困っていた」という。そんな思い出の詰まったウエアが新たな製品となり、ファンの手に渡ることへの喜びを語った。

一方、雪不足についても、アスリートならではの実感がある。昨シーズンには、ハイシーズンにもかかわらず雪不足によって一部の試合がキャンセルとなり、10年前には考えられなかったような状況が起きているという。今や選手は、競技力を高めるだけでなく、変化する環境にも対応していかなければならない。

冬季五輪の開催環境が変化していく可能性についても、ノルウェーの室内スキー場でトレーニングを積んだ経験を交えながら言及。

「今後は開催国が高緯度地域へ移ったり、屋内施設やスタジアム、一般の人々が競技をより身近に、親しみを感じられる都市部での開催が増えたりと、競技のあり方も変化していくかもしれない」。そんな変化を柔軟かつ前向きにとらえる様子も印象的だった。

2026年3月の「FISワールドカップ富山なんと大会」の写真を背景に、「スキーを元気にしたい」と語る堀島氏

そんななか、堀島選手にとって大きな励みとなったのが、富山で開催されたモーグルワールドカップだ。2日間で約8,000人の観客が会場に集まり、地元の声援から大きな力をもらったという。

今後は、モーグル界を牽引してきたミカエル・キングズベリー選手の引退によって、勢力図が大きく変わることも予想される。誰もがトップの座を目指すなか、勝ち切れるかどうか。結果を追い求める一方で、ブランドや一般の人々とともに、スポーツの価値を高めていくことにも喜びを感じているという堀島選手の、新たなシーズンへの挑戦は続く。

モノも、想いも循環する。雪山の未来へ向けた第一歩

始まったばかりのCircular Action。第一弾は数量限定での展開となるが、今後は利用者からのフィードバックを反映しながら、サステナブルな活動を通じて他企業との横のつながりを生み出し、プロジェクトを育てていきたいという。

今回の発表会では、長年にわたり信頼関係を築いてきたブランドとアスリートの自然なやり取りからも、一方的なサポートではなく、ともに新たな価値を生み出そうとする姿勢が感じられた。

堀島選手も、今後は発信活動など、それぞれの立場でできることを続けていきたいと語り、今回生まれたバッグを持って、ぜひ応援に来てほしいと呼びかけた。

作り手、滑り手、サポーターがともに育むこの取り組みが、ウィンタースポーツの未来を支える新たな一歩となりそうだ。

Circular Action 第1弾「アップサイクルプロダクト」

販売期間: 2026年10月15日(木)~25日(日)
販売場所: GRAVITY KANDA(東京都千代田区神田小川町3-6 大栄堂ビル1・2階)
営業時間: 11:00~19:00
製品: トートバッグ、サコッシュ、ヘルメットケース、ゴーグルケース、巾着、ポーチなど全7型
価格: 4,950~24,200円(税込)
備考: 数量限定、なくなり次第終了
公式サイト:https://www.goldwin.global

Information

Goldwin(ゴールドウイン)

公式サイト:https://www.goldwin.co.jp/goldwin/
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