スキーブーツの選び方 26ー27|フリーライドブーツ・バックカントリー向けの基礎知識

スキーブーツは体とスキーをつなぐ、ある意味最も重要なアイテム。スキー板以上に滑りの感覚を決定づけるのが「ブーツ」だ。いくらハイスペックな板を履いていても、ブーツが合っていないとパワーを板に伝えきれず、快適さも失われる。また、BOA搭載ブーツの登場以来、選択肢が大きく広がったともいえる。自分に合った 1 足を見つけるために、最新トレンドを交えてブーツ選び方の軸を整理してみよう。

INDEX

POINT 1 |自分の滑りの志向にマッチするブーツはどのような種類・タイプ?

ひと口に「スキーブーツ」といっても、その種類や設計は実にさまざま。高速で正確な操作が求められる競技スキー、滑りの質や技術を追求する基礎スキー、地形やパウダーを自由に楽しむフリーライド、モーグル、そしてゲレンデを気持ちよくクルージングするスキーまで、スキーヤーの志向によってブーツに求められる性能やフィーリングは異なる。

たとえば、フレックスや足首のホールド感、フィット感や履き心地、操作性や重量、バックカントリーでの機動力など…。ブーツは「自分がどんな滑りをしたいのか」を基準に、それに適したモデルを選ぶことが大切だ。

たとえば、老舗ブーツブランドのDALBELLOのカタログを見ると、このように滑りのスタイルによってマッチするモデルが多様に展開されている。

・レーシング
・オールマウンテンピステ
・オールマウンテンフリーライド
・フリースタイル
・フリーライドフリーツアー
・ツアーリング

レーシングブーツは、高速で氷のような硬いバーンでコンマ1秒を争うゆえ、強靭なボディと繊細なフィーリングが求められるため、フレックスは120~150など非常に硬く、ラスト幅は93~98㎜とタイトな造りになっていることはよく知られる。

一方で、フリーライドやフリースタイルでは、自然地形の多彩な斜面に対応したり、パークライディングのためフレックスは80~110、 ラスト幅はさまざまな動きに対応するため広めで100~104㎜と広めであることが多い。

山岳エリアのツアーリングに適したブーツは、軽量さが追求されていることで、ブーツのフォルムからして随分と異なる。足首を使うため、フレックスは柔らかめが中心。

基礎スキー派は、オールマウンテンタイプや競技志向が強ければレース向きブーツを使用している人も多いようだ。

自分の滑りの志向にマッチするタイプを選んだら、次に重要なチェックポイントは、やはりフレックスだろう。

POINT 2 |フレックス ―自分に合ったものを

phaenom

ブーツの硬さを示すのがフレックス。主にシェルの素材や厚み、補強構造によって決まり、ブーツへの力の伝達やスキー操作に大きな影響を与えるから重要だ。とかく初心者は柔らかいブーツ、上級になるほどフレックス値の高い硬いブーツを選ぶ傾向があるが、自称レベルに惑わされてはいけない。

柔らかすぎるとポジションが安定せず、硬すぎれば力が板まで伝わらない。自分の脚力や体重、技術レベルに合った硬さを選ぶことが必須だ。

そして、各メーカーのフレックス値はあくまでも同じメーカー間での比較のための数字であり、すべてのメーカーのブーツに共通しているものではない。同じ硬さという意味ではないので気をつけよう。

フレックスの目安 (※ブランドにより異なる)

~90 》〉〉初級・初中級
90~110 》〉〉中級・中上級
110~》〉〉上級・アスリート
75~115 》〉〉レディス

POINT 2 |ラスト幅 ―重要チェックポイント

スキーブーツを選ぶ際は、通常の靴のように全長のサイズを基準にするだけでなく、足の一番幅の広い部分=ラスト(Last)幅が非常に重要。横幅が自分の足の幅に合っていないと、いろいろな弊害が出てくる。

狭すぎると圧迫されて強い痛みや痺れが出てきたり、スキーへうまくパワーが伝わらずに操作性が落ちたりしてしまう。また、広すぎるとブーツの中で足が前後左右に動き、タコや靴擦れになったり、バランスが取りにくくなったり、スキーが踏みにくくなったりする。

ラスト幅が狭いほどホールド性やフィット感が強く、広いほどスペース的にゆったりと快適性が高い。レースブーツで90㎜台前半、フリーライドブーツでは100㎜前後が多い。バックカントリーなどで保温性を重視するならあえて広めのラスト幅を選ぶことも。

ラスト幅の目安

92~93㎜ 》〉〉極めてタイトなトップレーサー向け
~98㎜ LV(ローボリューム) 》〉〉足幅が細い人・上級者向け
~100㎜ MV(ミディアムボリューム) 》〉〉標準的な足型向け
102㎜~HV(ハイボリューム) 》〉〉幅広甲高の人向け

ATOMIC

POINT 3 |サイズ ―「実寸」でいい!

スキーブーツのサイズは、これまで「足の実寸+1㎝」で選ぶという話をよく耳にしたことがあるだろう。

しかし、現在販売されているスキーブーツの7~8割は熱成型が可能なため、実寸より上のサイズを選んでしまうと、さらに熱成型することで足が前後左右に動き、フィット感が落ちてしまったり、結果的に足が痛くなってしまったりする可能性も少なくない。


つまり、いまどきのブーツサイズ選びは「実寸」でよいといえるのだ。また、年齢とともに足の形や大きさも微妙に変わることもあるため、前回の購入から年数が経過している場合は、ショップで足の大きさを測ってもらい、スタッフと相談しながら選ぶと安心だ。

POINT 4 |2ピース or 3ピース ―好みで選択

スキーブーツの構造には、大きく2ピースから成るものと、3ピースから成るものとがある。それぞれ性能やフィーリングはかなり異なる。

2ピースシェル構造

2ピースシェルはダイレクトなパワー伝達性に優れ、ターン重視のライディングに最適な構造。ロワーシェルがパワー伝達とフレックスを、アッパーは脚の前傾角度を維持し正確なポジションをサポートする。狙ったラインをトレースするターンコントロールとハイスピード滑走を楽しむなら、これに勝るスキーブーツはない。

ATOMIC/HAWX MAGNA XTD130 GW|TECNICA/Zero G Decoy 130 GW|GEN/FUTURE

3ピースシェル構造

3ピース構造は、剛性あるロワーシェルがパワーを伝え、独立したタングがフレックスを担う。カフは前後に無理なく可動できるのが特徴。3ピースシェルは独立したタングによってフレックスの設定が容易で、足首の動きを重視するスキーヤー、とくにトリックや地形を遊ぶフリースタイル・フリーライド派から根強い人気がある。

また、構造上カフの可動域も大きく取ることができるために、ツアーブーツのほとんどがこの3ピース構造を採用している。また、ロワーシェルとカフをつなぐヒンジが実際のくるぶしに近い位置にあり、これも足首の柔軟な動きを損なわない隠れた要因になっている。

DALBELLO/IL MORO PRO 3DWRAP |K2/REVOLVE PRO

バックルのスタイル

バックルの位置や数も、2ピースシェルと3ピースシェルでは大きく異なる。つま先までキッチリとホールドしたい2ピースブーツは、足先からくるぶしまで締める4バックルが多い。

一方、3ピースブーツはカカトから土踏まず周辺のホールドを重視し、つま先には余裕を持たせる配置。それによりジャンプの着地でつま先が詰まって痛めたり、低温下で指先の冷えすぎを軽減させるというメリットもある。

3ピースシェルで第一バックルが逆向き。ジャンプの着地などで接触することを防ぐアイデア
3ピースでタングレス構造。甲はバックルとコードを併用したウェーブクロージャー採用。軽さと滑走性を両立した作り
同じ3ピースシェルでもバックルが2つ、バックル式のパワーベルトが一つというユニークな形式
2ピースで4バックル+パワーベルトはオーソドックスながら信頼度が高いシステム

POINT5|従来のバックル式 or BOA ?

25-26は、BOAを採用する10ブランドのうち、K2、SALOMON、ATOMIC、NORDICA、HEAD、DALBELLOの6ブランドからBOAダイヤルを2つ搭載したデュアルダイヤルBOAブーツを展開した。

もしかすると、いまやスキーブーツ選びの最初になるのかもしれない「従来のバックルスタイルか、それともBOAブーツか」という選択肢。それほどにBOAブーツはスキーシーンに浸透したといえよう。プロショップによれば、購入したユーザーからネガティブなフィードバックや故障の報告はほとんどなく、評価は上々という。

一方でまだまだ慎重派も少なくない。従来のバックルのほうが安心感がある、

BOAフィットシステムがスキーブーツをローンチさせたのが23-24、約5年の月日をかけて開発され、既存のバックルタイプのブーツに比べて、足の上部にかかる圧力が13%軽減したことや、ミリ単位で微調節が可能になったことでよりフィット感が増し、ターン始動時の力生成率が10%向上したこと、などが研究結果からも報告された。

デュアルダイヤル搭載のBOAブーツは、シェルと上部カフ上で連動することにより、微調節可能な精密フィットを実現。足と脛部を包み込み、均一なフィット感で甲の圧迫点を減らし、さらにかかとをヒールポケットに固定して不要な動きを排除。ブーツからスキーへのパワー伝達を最大6%向上させ、ターン中の安定性とコントロールを最大10%向上させる、と発表された。

微調節可能な精密フィットで即座に適応。足と脚を均一に包み込み、足の甲にかかる 圧力と痛みを軽減するとともに、すね全体の接触圧を改善。かかとをしっかりと固定し、中足部の一体感を向上。

POINT 6 |3タイプあるソール形状

ソールには大きく3タイプある。アルペンブーツ規格(ISO 5355)とツアーブ−ツ規格(ISO 9523)という2種類の国際規格がある。さらに、増えているのが、ツアーブーツ規格ながらセイフティビンディングに対応するグリップウォークソール。

グリップウォークは別として、それぞれの対応規格ビンディング以外では、コバの高さやソール形状が異なるので互換性はない。仮に装着できたとしても、ビンディング本来の保持や解放の機能が正常に機能しないので非常にリスキー、使用は避けたほうが無難だ。
※ビンディングとの互換性についてはこちらをご参照のこと。

【アルペン規格ソール(ISO 5355)】
いわゆる従来型のスキーブーツのフラットなソール。基本的にアルペン規格ビンディングのみ対応

【ツアー規格(ISO 9523)】
歩きやすいラバーブロックとロッカーを装備したソール。トウのコバの高さがアルペン規格ソールより高く、アルペン規格ビンディングには適合しない

【グリップウォークソール】
歩きやすいラバーブロックの中に、ビンディングのスライディングAFDに対応する樹脂プレートが配置されている。基本的にツアーブ−ツ規格(ISO 9523)に準拠したものが多い

POINT 7 |テックビンディングとの互換性

トウとヒールにテックインサートが搭載されていればテックビンディングを使用できる。現在、グリップウォークソールを含めたツアーブーツの多くがこれに対応している。

【トウ】
トウ側はコバに設けられているテックインサートをピンで挟んで固定するシステム

【ヒール】
テックビンディングのヒールピースにある2本のバーをフックして保持する

POINT 8 |ウォークモード機能

ARMADA | AR ONE AF 130 MV

現在、ツアーブーツに限らず、多くのフリーライドモデルにウォークモードが搭載されている。モードチェンジするとロックが解除され、カフが前後に可動できるようになる。急斜面の登高や短い登りではあまり効果を感じないかもしれないが、斜度の緩い斜面や平地を進むときは、カフの可動域が広いほうが1歩ずつのストライドが大きく取れ、結果、速くて楽に移動することができる。

また、バックカントリーシーンに限らず、スキー場の広い駐車場内の移動や、ロープウェイに並んだり立ったままの乗車中など、このメリットを活かせる場所は少なくない。

ウォークモードの使い方はシンプル。カフの後部に配置されているモードチェンジレバーで滑走モードとハイクモードを切り替えればOKだ。

POINT 9 |インナーブーツ

現在、多くのブーツが熱成型できるインナー(ライナー)を採用している。足とのフィット感が格段にアップするのはもちろん、インナーとシェル間の隙間も埋めてくれるからシェルの中でズレにくく、素足からシェルまでがしっかり一体化して効果を発揮。保温性の高さも大きな特徴だ。さらにシェルも熱成型できるモデルが増えているので要チェック。

【ラップタイプ】
足首をしっかり包み込む形状は、バックルを締めなくてもある程度ホールドされるほどのフィット感を生む

【タングタイプ】
タングが独立したオーソドックスなインナーは足入れがよく、ターンの足首の動きにもよく追随してくれる

登降中のフィット感を高めるためにインナーブーツにBOAフィットシステムを採用もの
ウォークモード機能付きブーツのインナーは足首背面にスリットを入れて、歩行時の動きを助けている

【インソール】
カカトの収まりがいい立体的なインソールは足裏のズレを防ぎパフォーマンス向上に効果的。また、市販されている熱成型タイプの別売りインソールも、少ない投資で効果は絶大だ。

INDEX