「スキー場マニアへの道」 索道の巻|前編

このシリーズは、日本のスキー場をより詳しく、マニアックに知るためのあれこれを、さまざまな観点から解説していくものだ。今回は、スキーヤー、スノーボーダーなら誰もがお世話になっている「索道」前編。

文/ミゾロギ・ダイスケ Text/Daisuke Mizorogi 
編集/STEEP編集部 Edit/STEEP
出典:2018 BRAVOSKI vol.2より再編集

INDEX

ところで、「索道」の「索」って何?

2019年に開設した国内では初となる石打丸山のコンビリフト

チェアリフト(いわゆるリフト)、ゴンドラ、ロープウェイの類を総称して「索道」と呼ぶ。 あまり、日常的にお目にかかる機会がない、索道の「索」とは何か?  これは、ワイヤロープ(索条)のこと。
鉄の線路の上を走る交通機関が「鉄道」なら、空中に渡した「索条」に吊るした搬器を移動させる交通機関が索道なのだ。 ちなみに、いわゆるケーブルカーは、索条で引っ張る構造だが、線路の上を走るので鉄道の扱いとなる。

日本初の旅客用索道は、1912(明治45)年に大阪の新世界にあった初代通天閣と、その向かいにあった「ルナパーク」という遊園地の間に架かったものだ。といっても、それは遊園地の乗り物のようなオープンな客車1台が行ったり来たりするだけの簡素なものだった。

100年以上前にハイカラな施設があった大阪。出典:ウィキペディア

日本のスキー場に架かった最初の例は、GHQの占領下にあった1946年。札幌の藻岩山に、続いて志賀高原の丸池に造られたが、 いずれも進駐軍専用のものだった。

民間営業用として初となるスキー場のリフトは、’48年、いまの草津国際にできたもの。それから、赤倉、野沢、蔵王などに次々とリフトが架かっていった。以後、ロープウェイ、ゴンドラもスキー場に続々登場し、索道はスキーを楽しむうえで欠かせないものになっていく。

ところで、索道はどこのメーカーが造り、メンテナンスしているのだろう?  極めて専門性が高いだけに、メーカーは少数精鋭の様相だ。シェア1位の「日本ケーブル」の存在感が大きく、大正時代に設立された老舗「安全索道」がこれに続く。他にも数社がある。

まったく単純ではない「索道」のカテゴライズ

索道には専門的には主に3つの分類の仕方がある。いささか紛らわしいが、全部で3種類あるのではない。分類の仕方が3つで、そこからさらに細かく分かれるのだ。

まず、搬器の支え方、牽引の仕方による違い、それから走行方法の種類、さらに箱状の搬器で人を運ぶか、開放された搬器を用いるか、の3つである。
ここからは、3つの分類ごとに、それぞれの詳細を説明しよう。

①支持・牽引方法による分類
▶単線 ロープ1本で支えて引っ張る

鉄道の「単線」とは意味が異なる。チェアリフト、ゴンドラは主にこれだ。1本のロープが搬器を支える役割と、引っ張る役割を兼ね、それが循環する形式である。このロープを「支曳索」という。後述する固定循環式か、自動循環式かは問わない。

’76年に架かった志賀高原の東館山にある「東館山ゴンドラ」。卵型の搬器は4人乗り
▶複線 役割の違う複数のロープを用いる

搬器を支える「支索」と、牽引する「曳索」という複数のロープが用いられている。写真のように車輪が走行するのは支索の方だ。重量がもっとも重いロープウェイがこのタイプで、チェアリフトでは皆無で、ゴンドラでもほとんど見られない。

▶複式単線 まだまだ少ない最新型

ロープは搬器の左右に複数あるが、それらはいずれも支える役割と引っ張る役割を兼ねるロープ(支曳索)だ。複数あることで安定性があり、横風に強い。このうち、2本のロープの幅が搬器の幅より広いものには「フニテル」という名称もある。


②走行方法による分類

▶固定循環式 搬器とロープが固定されている

文字通り、搬器がロープに固定されて循環するタイプ。主にチェアリフトで用いられる。固定されているので、基本的にすべての搬器が同じスピードで動くことになる。構造がシンプルなので、メンテナンスがもっとも容易なのがコレ。ただし、少数だが「パルスゴンドラ(※現在志賀高原で建設中)」といって周期的に減速、または停止させることができるタイプも存在する。

▶自動循環式 高速化を可能にした方式

搬器が停留場の間を走行中はロープに固定されるが、停留場ではロープから自動的に切り離され、別のレーンを循環するタイプ。切り離されることで、乗降時は減速でき、一方で走行時は高速化が可能になる。つまり、乗り降りがしやすく、スピードは速いということだ。

▶交走式 2つの搬器が交差する

いわゆる「つるべ式」。片方の搬器が上昇すると、もう片方が下降し、中間地点ですれ違う。主にロープウェイがこの方式だ。効率性の面からゴンドラ、チェアリフトでは用いられないが、交走式のゴンドラもこの世には存在する。

二度目の登場、湯沢高原「ロープウェイ」
▶滑走式 自分の板で滑って移動

スキーヤー、スノーボーダーが、搬器にまたがったり、臀部に当てたりなどし、板を接雪させた状態で移動するTバーリフト、Jバーリフトなどをこう呼ぶ。ただし、日本ではかなり少数派。

NZにあるクラブフィールドではロープトゥにナッツクラッカーという専用の器具を引っ掛けて移動する

③搬器による分類

▶特殊索道 外部に開放された座席で運ぶ

椅子型の搬器によるチェアリフト、Tバーリフト、Jバーリフトなどがこれにあたる。搬器が覆われるが閉鎖されていないフード付きリフトもこちらのカテゴリーだ。Tバー、Jバーには「シュレップリフト」という名称もある。

▶普通索道 箱型の搬器で運ぶ形式

扉で開閉できる箱形搬器による索道。主に循環式で中型の搬器のものを「ゴンドラ」、交走式で中~大型の搬器のものを「ロープウェイ」と呼ぶことがほとんど。ただ、丸沼高原のように前者をロープウェイと呼ぶ施設もある。

日本のスキー場にあるのは主にこのタイプだ

索道事情は国によって様々。たとえば、日本では少ないTバー、Jバーは欧米では珍しくない。そのため、海外のスキー場にはあるが、日本にはない索道のタイプも存在する。前篇の最後に、実際に日本で稼働している索道にはどんなタイプがあるかを紹介しよう。どれも前述した①②③の組み合わせになっているので、見返しながら読むと理解が深まる。

●単線固定循環式チェアリフト

構造がもっともシンプルなタイプだ。一般的なチェアリフトのひとつで、国内ではもっとも数が多い。固定循環式ということは高速化できないので、あまり、長距離には適さない。「◎◎高速リフト」といった名称のものは、まずこれにあたらない。

●単線自動循環式チェアリフト

単線なのはチェアリフトの原則だ。そして、このタイプは乗降時に減速できることで、高速で運行が可能。したがって、ベースから中腹まで一気に延びるリフトや、メインコースに架かるリフトに多い。フード付き搬器が導入されるケースもある。

●単線滑走式特殊索道

ほとんどの索道はスキー場以外の観光地や遊園地などにも設置されるが、これだけは99.99%スキー場限定だ(グラススキー場含む)。滑走式の名の通り、乗客は滑りながら進んでいく、Tバーリフト、Jバーリフトがこのタイプ。

●単線自動循環式ゴンドラ

日本のスキー場にあるゴンドラはほぼ単線だ。そして、多人数が乗車し、乗降に時間がかかるため、自動循環式が向いている。なお、ニセコビレッジや石打丸山には単線自動循環式のゴンドラとチェアリフトの搬器がひとつのロープを共有する「コンビリフト」が存在する。

●複式単線自動循環式普通索道(自動循環式フニテル)

ロープが複数ながら自動循環というのがミソ。日本のスキー場で最初に導入したのは蔵王温泉で2003年のこと。その後、谷川岳天神平にも設置された。循環式なのでゴンドラの範疇のようだが、国内の2カ所とも「ロープウェイ」という名称である。

●複線交走式ロープウェイ

搬器が重くてデカいロープウェイが、単線であることも、次々に循環するスタイルであることも物理的になかなか難しい。したがって、現在は複線で交走式というのが普通だ。平均的にロープウェイが20~30分に1本程度の運行なのは、そのためだ。

後編に続く

[Profile] ミゾロギ・ダイスケ Daisuke Mizorogi 

BRAVOSKI編集部員として20年以上に渡りスキーに携わる。モーグルの取材歴は90年代より、スキー場ガイド分野でも経験が豊富にある。一方で、サブカルチャーとスキーを融合させた、既存のスキー雑誌にはない型破りな企画を数々生み出してきた。現在は、「昭和文化研究家」という肩書きも冠しつつ、スキー以外にもさまざまなジャンルで執筆や編集活動を行う。アウトドアな世界ではもっともインドアな位置に、インドアの世界ではもっともアウトドアな位置に立脚している。
d-mizorogi.com

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