バックカントリーでスキーやスノーボードをする際には、雪山で快適に滑走を楽しむためだけではなく、自然に潜むリスクから身を守るためにもいろいろな道具が必要だ。この冬、バックカントリーで滑りたいというスキーヤー・スノーボーダーに必要なギアや装備を紹介しよう。
※本記事は’23ー24季に展開したものをリメイクしています
バックカントリーを安全に楽しむには
必要な装備を知ることから
バックカントリースキー・スノーボードに必要な基本の装備をチェックしてみよう。(1 dayのバックカントリーツアーを想定した一例)
基本装備リスト(1Day)
アイテム | アイテム | 必携度 |
アバランチギア | ビーコン | ◎ |
プローブ | ◎ | |
ショベル | ◎ | |
エアバッグ | △ | |
滑走・登行ギア | スキー | ◎ |
スキービンディング | ◎ | |
スキーブーツ | ◎ | |
ポール | ◎ | |
シール | ◎ | |
スノーボード | ◎ | |
スノーボードブーツ | ◎ | |
スノーボードビンディング | ◎ | |
スノーシュー | ◎ | |
バックパック | ◎ | |
ウエア・アクセサリー | アウターシェル | ◎ |
ミッドレイヤー | ◎ | |
ベースレイヤー | ◎ | |
インサレーション | 〇 | |
グローブ(+予備用) | ◎ | |
帽子 | ◎ | |
バラクラバ | △ | |
ヘルメット | ◎ | |
ゴーグル(+スペアレンズ) | ◎ | |
サングラス | 〇 | |
ヘッドライト | △ | |
予備ソックス | △ | |
行動に関するアイテム | 飲料 | ◎ |
水筒・保温ボトル | ◎ | |
行動食 | ◎ | |
時計 | ◎ | |
地図・コンパス | 〇 | |
GPS | △ | |
トランシーバー | △ | |
携帯電話 | ◎ | |
発煙筒 | △ | |
ワックス | 〇 | |
その他ケアまわり | 薬 各種 | 〇 |
ロープ | △ | |
カラビナ | △ | |
ファーストエイドキット | ◎ | |
日焼け止め | 〇 | |
ゴミ袋 | 〇 | |
健康保険証 | 〇 | |
山岳保険保険証写し | 〇 | |
スクレーパー | 〇 | |
工具類 (ギアの故障に備えて) | 〇 |
アバランチギア
アバランチビーコン / Avalanch Beacon
電波の送受信によって雪崩に埋没してしまった人の位置を発見するためのギア。埋没者の数を把握することもできる。捜索するにも、されるにも身につけておく必要がある。バックカントリーに出るのに一番重要ともいわれる必携アイテム。ガイドなどが使用する多機能な高性能モデルから一般スキーヤーが扱いやすいモデルまで多種多様。
ショベル / Shovel
雪崩で埋まってしまった人を掘り起こしたり、雪の層をチェックする際、ビバーグ時の雪洞堀りにも使う、バックカントリー必携アイテム。シャフト(柄)とブレード(スコップ部分)が分解でき、コンパクトに折りたためバックパックに収納できるものが主流。ブレードの大きさや形もいろいろだ。使用素材によって重さにも差が出る。
プローブ / Plove
ビーコンで雪崩による埋没ポイントを探知したら、雪に差して埋没者の位置を特定するためのギアがプローブ。折りたたみ時には20~30㎝とコンパクトだが、コードを引っ張るとシャフトがジョイントして、自動的に2~3mの長さになる。シャフトの材質には軽量のカーボンや耐久性の高いアルミが使われている。
エアバッグ / Air Bag
雪崩で埋没しそうになった際に、バックパックに内蔵されたエアバッグを瞬時に膨らませることで雪崩の中で浮力を得て埋没の深さを軽減させるための救助アイテム。膨らませるのに電動式か圧縮空気ボンベ式かに分かれる。エアバッグの形状や大きさも各メーカーいろいろ。価格的にはハードルが高いが安全性確保には有効。
滑走・登行ギア
スキー / Ski
一口にバックカントリーといっても実際は非常に多様。パウダー狙いの滑りがメインか、長時間のハイクを伴うツアー志向かの目的によって、また自身の体格や体力、滑走技術レベルや滑りの志向、バックカントリーの経験によっても、どのようなスキーが適しているかは異なってくる。が、ざっくりと考えるならば、浮力を求めるならウェスト幅100㎝のファットスキー、ツアー向けなら軽量なものが選ばれやすい。
スキーブーツ / Ski Boots
バックカントリーで滑る&登るを考えたときに、選択を慎重にじっくり考えるべきがブーツだ。ソールの形状によってアルペン規格、ツアー規格があり、対応するビンディングも異なる。テックビンディング対応、ウォークモードなど、求める滑りのスタイルに応じて多様なチョイスが可能。シェルの構造やインナー、素材などでフィット感や重量も異なってくる。
ビンディング / Binding
革新的に進化を続けてきたスキービンディング。テック、アルペンモデルとのハイブリッドテック、フレームツアービンディング、可変式トゥーピースのモデルなど多様。バックカントリーでの使用では、ブーツとの互換性の確保は当然として、滑りのクオリティを求めるか、ハイクアップや機動力を重要視するかでも異なる。さらには使用スキーの性能を引き出せる組合せも必要になる。
ポール / Pole
バックカントリーでは必要に応じてプローブとしても使用できたり、パウダーの深さに合わせて長さを調整できる伸縮性のスタイルのものも多い。厳冬期ではパウダーリングは必須。ポール部分の材質によって耐久性や重さ、操作性にも違いが出る。グリップの形状もいろいろなので手に馴染むものがよい。
シール / Skin
バックカントリーで歩く・登る際に必須のアイテム。スキーのソールに装着するのに、糊のように粘着性のグルータイプと、分子の吸着効果で貼りつくシリコンタイプに分けられる。スキンの毛の素材(モヘア系・ナイロン系・ミックスなど)、長さなどでも、その性能と、その結果の滑り手の機動力が大きく異なってくる。重さも含めて比較検討したい点は多い。
スノーボード / Snowboard
バックカントリーには、ディレクショナル(一方向に進む設計)で比較的固めのフレックスとトーションを持つフリーライドボードを使うユーザーが多い。ノーズ幅がテール幅より広いテーパードという形状、ノーズ部分がロッカー形状で反り上がり、両足の間がアーチ状(=キャンバー)でパウダーでの浮力とターンの操作性を向上させている設計のボードが主流。スプリッドボードに対して通常のボードをソリッドボードと呼ぶこともある。
スプリッドスノーボード / Split Snowboard
スノーボードが中央から2枚に分割でき、スキーのようになることで登行ができる。結合させた状態で通常のスノーボードのように滑ることもできる。最大のメリットはハイク時にボードを背負わなくていいため体力温存になること。雪が深い箇所や緩斜面での登りもスノーシューより楽。一方で分割・結合の手間などデメリットもある。スプリッドボードを展開するメーカーも増えている傾向だ。使用には専用のビンディングが必要となる。
スノーボードブーツ / Snowboard Boots
雪面へのグリップ力が高く、雪上でより歩きやすい特殊ソールを搭載し、保温性や防水性の高い機能を持つバックカントリー専用ブーツも出てきている。基本は通常のソフトブーツであればソリッドボードでもスプリッドボードのビンディングでも対応できる。
ビンディング / Binding
ソリッドボードかスプリッドボードかで適応するビンディングは異なってくる。バックカントリーユースで求められるのは、パウダーや非圧雪のラフなスノーコンディションの中での操作性。ホールド性は確保しながらも、柔らかく足首の可動域が広いものが人気。ストラップのないステップオンのスタイルのビンディングもある。
スノーシュー / Snow shoes
スキーヤーならスキン、スノーボーダーにとってはバックカントリーでの登行にはスノーシューは必須ギア。平坦地用と登山用に分かれるが、大きな違いは浮力だ。滑走時の収納や重さ、どんな斜面をどれくらい移動するのか、などバックカントリーユースならではのチョイスのポイントがある。
バックパック / Back Pack
バックカントリーに出るには携帯すべきアイテムが多数ある。効率の良い収納と登行・滑走時のフィット感などは気になる点。各メーカーも工夫を凝らして多彩にバックパックを展開している。自分に合った大きさ・機能性・フィーリングなどセレクトポイントは多数ある。
ウエア・アクセサリー
バックカントリーの装いでは、レイヤリングが基本。アウターシェル+ミドルレイヤー+ベースレイヤーという重ね着をすることで、ハイクアップ時と滑走時における体温調節や発汗による透湿性を確保する必要がある。また、過酷な自然条件下で体を保護するアクセサリーも重要だ。
アウターシェル / Shell
アウターとは一番外側に着るウェア。ソフトシェルとハードシェルとがある。ハードシェルは硬いパリッとした素材感で撥水性、防水、防風に強い特性がある。ソフトシェルは柔らかい素材で、動きやすく透湿性がある。これらのシェルを一番外側に着る場合はそのウェアはアウターシェルになる。
ミドルレイヤー / Mid layer
ベースレイヤーとアウターレイヤーの中間の層。外部の冷気と身体との間に「空気の層」をつくって、断熱材のような役割をするのがミドルレイヤー。また、ベースレイヤーから出された湿気(水蒸気)を通す透湿性も重要。大きくフリースかダウンに分かれるが、素材の種類と、その特長もさまざまだ。
インサレーション / Insulation
中綿の入ったベースレイヤーとアウターシェルの間に着る中間着。高い保温性を持つもので、ダウンやフリースは定番。最近は化学繊維のインサレーションが人気になっている。防風・防水も備えたアウター向きのものから、透湿性を備えた行動着として着るものも。
ベースレイヤー / Base layer
肌に直接触れるレイヤー。バックカントリーでのハイクアップ時など、身体から出る汗を肌に残さないように素早く吸い上げてくれる吸汗性と、汗で濡れてもすぐに乾いてくれる速乾性を備えている必要がある。さまざまな素材があるのでよく吟味したい。
ヘルメット / Helmets
さまざまな危険の潜むバックカントリーで頭を衝撃から守るために最も大切なアイテムのひとつ。頭の打ちどころが悪ければ深刻な状況に陥ることもある。そのようなリスクを最大限に避けるために、ヘルメットは常にかぶっている必要がある。サイズフィットはもちろん、長くつけていても快適なものを選びたい。
ゴーグル / Goggles
雪山で視界を確保し、瞳を紫外線から守るゴーグル。視界不良による遭難を防いだり、木への衝突を未然に防いだり、身の安全を守るためにも重要なアイテムだ。フレームの形状、フィット感、ベンチレーションや曇り止め加工など、チェックするべき点が多い。
グローブ / Gloves
手の保護と保温のために必須。雪山ではいろいろな手が傷みかねない状況もある。また、手が冷えすぎてしまうと手指が自由に動かせなくなり不便になるだけでなく、バックカントリーの過酷な自然状況下では凍傷にかかってしまうこともある。使い勝手のよい機能の高いものを選びたい。
帽子 / Beanie・ Cap・ Hat
ヘルメット同様、雪山で頭を衝撃から保護したり、保温する役割の帽子。ニット帽、キャップ、ハットなどタイプはさまざま。デザインの好みはもちろん、時期や山の気候、用途に合わせてスタイルや素材を選ぶことになる。
バラクラバ / Balaclava
顔の大部分を覆えるバラクラバは圧倒的に温かい。積雪のそれほど多くない山や時期であっても、急な吹雪に見舞われることもある。携帯していくと便利で、いざという時に安心。
行動に関するアイテム
水筒 / Water Bottl
バックカントリーツアーでは水分の携帯は必須。水筒は保冷用・保温用、兼用と用途の違いや、マグタイプ、コップタイプなどスタイルもいろいろ。雪山で体を温めるためにお湯を持参してコーヒーやカップラーメンを食べることもある。保温性の機能などは気になる点だ。
ヘッドランプ / Head Lamp
夜間や暗い環境での安全確保に欠かせないアイテム。暗い時間帯の視界確保はもちろん、曇りや霧、雪などで日中でも視界が悪い場合、進むべき方向やルートがクリアになる。頭に装着するため、両手が自由に使えることも大きな利点。点滅モードやSOSモードを備えたモデルでは、遭難時や救助を求める際に視覚的な合図にもなる。
時計 / Watch
バックカントリーで滑る際には行動管理や危険回避のためにもタイムマネジメントが欠かせない。ルートや位置の確認、天候・時刻・高度や位置情報を得ることで行動の手がかりになる。近年は時計にGPS機能を搭載しているモデルも多い。ログ(記録)がとれるものもあり、いい滑走スポットのデータ蓄積もできる。
ワックス / Wax
バックカントリーで滑り出す前に、ひと塗りすることで滑走性がグンとアップ。板が走って滑りがより楽しめるはず。シールがうまく貼れなくならないように事前のワックスは控えめだとすると、現場でのWaxはポイントになる。携帯しやすく雪のコンディションへの対応度が高いものを。
ファーストエイドキット / FIRST AID Kit
山でのケガやトラブル、いざという時のためのファーストエイドキットは必携。テーピング、ガーゼ、絆創膏、ハサミ、ピンセット、薬、消毒液、使い捨てビニール袋、三角巾など、中身はそれぞれ自分が必要とするものが基本だが、パッケージになっているファーストエイドキットも各種ある。
まずはガイドツアーに参加してレンタルで使ってみるのも手
バックカントリーに初挑戦ならば、いきなりたくさんの装備を揃えるのは大変だろう。そこで、はじめはバックカントリーガイドクラブのツアーに参加し、ギアもレンタルを利用すると便利で安心だ。多くのガイドクラブはアバランチギアのセットレンタルができる。
「COLOR SPORT CLUB」の一例を紹介すると
・レンタルセット(ビーコン、プローブ、シャベル、スノーシュー、ポール、ザック)―3,300円(1日)
・雪崩安全セット(ビーコン、プローブ、シャベル)―2,200円(1日)
滑走用具も含めて、単品ごとにレンタルができるところもある。
「KAGURA POWDER STATION」の1日単位のツアー参加者特別料金
スキー:3.000円、ポール:500円、シール:1,000円、スノーシュー:2.000円、
フロートバッグ:4,000円、 バックパック:1,000円、ビーコン:2.000円、ショベル:1,000、プローブ:1.000円
実際に雪上で使ってみてわかることもあるだろう。
まずはレンタルで体験してみてから、自分に適したギア選びをするのもいいだろう。
※上記レンタル料金は2024年10月時点でのものです