’21季に登場したLINE(ライン)の「Blade」は、目を見張る形状がもたらすターン性能によって、滑ることの面白さに目覚める人が続出した。フリースタイルなスキーを作り続けてきたLINEにとっても新基軸となるこのスキー。
深いカービングターンやハイスピードでのクルージング、スライドもカービングも自在に操れ、飛ばなくてもスキーの楽しさの幅を広げてくれる。
「Blade」のアウトラインはトップから154−95−124というボリューム感。トップとテールのロッカーを低くとり、長い有効エッジはターン時のグリップ力と安定感をもたらした。
芯材となるコア材には軽さと安定感のある100%アスペンを採用。そこに魚の骨のような形をした中抜のチタンメタルを入れ、芯材の特性を活かしつつ、エッジグリップやトーションの安定性を高めている。
「Blade」のイメージ映像はLINEのYOUTUBEをチェック。
この新しいスキーをいち早く乗りこなしているスキーヤーたちがいる。
ひとりは北海道にあるパドルクラブ札幌店スタッフの加藤功二(コウジ)。もうひとりはLINEのサポートライダーでもある山形のプロショップ「TRUNKBASE」のオーナー丹野幹也。
一般的なカービングスキーに比べて「Blade」は何が異なり、どう楽しめるのか。2人の声を聞いてみよう。
パドルクラブ札幌店 加藤功二(コウジ)のケース
パドルクラブ札幌店勤務。元アルペンスキーヤー。北海道の山々、スキー場を中心に滑る。フリーライドコンペに参戦するなど、自らのスキー技術を高めることにも余念がない。夏はSUP SURF、スケートボードを嗜み、ヨコノリ感覚も持ち合わせている。
イワオヌプリをバックにBladeで切れの良いカービングを魅せる。BCでノーポールスタイル
「このスキーはひと目見れば、”すごいシェイプだ”ってなるじゃないですか。ファットスキーやレーシングスキーでは見られない猛烈にくびれたシェイプ。ウエスト95mmなのに、トップは154mmもあり、ラディウス表示は「Tight」って、なんだそれ? ってなりますよよね。
ディレクショナルスキーながら、ビンディングの推奨位置はリアルセンターから−6cm。多くのスキーが10cm近くセットバックしていることを考えると、推奨位置がかなりセットフロントなのが分かります。そのためテールが使いやすくなっていて、切れ上がるようなターンができる秘訣だと思います。
チタンメタルは魚の骨のような形状のシートが全体を覆っていますが、足もとの一部分はメタルが抜かれているので、スキーはよくたわみながらも、剛性を保ったまま、適度なねじれを生みだします。力強いエッジグリップだけでなく、力のかけ具合を調整して粘るようなグリップ感が長く引っ張ったターンを可能にします。
このスキーの最大の長所は”ターンの気持ちいい部分をすべて味わえる”ではないでしょうか。ターン前半はトップのグリップを最大限に感じ、中盤では足もとでスキー全体が噛むのを強く感じ、後半はテールが残ることで、切り上がることも走らせることもできます。
このスキーに、12月中旬から3月末まで、とくに仕事終わりに週4くらいで行っているナイタースキーで乗っていました。はじめはポールを持って滑っていたのですが、手稲店の謙さん(佐々木謙)と一緒に遊んでいるうちにノーポールで滑ってみようってなって。
すると、普段なら見逃しがちな地形のうねりが拾えたり、両手を雪面につけるビッテリーターンができたりと、スノーボードのような動きができて、すごく面白かったんです。
そこで、2シーズン前に滑ったハーフパイプに入ってみたんですよ。
札幌ばんけいにある国内でも最大級の高さ6mのハーフパイプ。以前滑った時は左右両方の壁を使って滑ったので間延び感があったんですが、夏にやっているSUP SURFで気持ちいボトムターンができたときに、パイプの片方の壁でやってみたら、この感覚が味わえるんじゃないか、と思ったんです。
それに明さん(佐々木明)が片壁だけで遊んでいる映像を見て「コレだ!」って確信しました。
「Blade」の性能と相まってボトムターンがめちゃくちゃ気持ちいいんですよ。パイプのトップから落下していく力がすごくて、そのパワーを使うとスキーが信じられないくらいたわんで返ってくるから、スキーがすごく走ります。
その力を利用してトップターンへと繋げるんですけど、スキーが体より高い位置にいって登り切ってからは無重力みたいな感じでフワっとした感覚になります。そこではスキーが動かしやすくなるんですよね。そこからズラすか、切るかは自分次第。まさにサーフィンの動き。SKI SURFって感じです。
トップターンの動きはどのスキーでも単発ならできるけど、ボトムターンとトップターンをこのスパンで表現できるのは「Blade」だけじゃないでしょうか。個人的にはボトムターンが最高に気持ちよく、それを味わうためだけに履いてもいいくらいです。
意識したのはサーフィンの体の使い方や目線。スキーってフォールラインを向けって教わるので、それだけだと動きの制限が生まれちゃうんです。だからノーポールで滑ったりすると、上半身のローテーションも使えたりしてよりフローのある動きになります。実はこれが省エネな滑り方だったりするんですよ」
LINEサポートライダー、TRUNKBASEオーナー 丹野幹也のケース
モーグルでは全日本選手権に出場。その後ビッグエアやスロープスタイルに活動の軸足をシフトしながら、ハーフパイプではW杯や世界選手権にも出場。現在は地元・山形でプロショップを営みながら、スキー場やバックカントリーを滑り、映像や写真でスキーを表現する。
「昨年から「Blade」で滑っていますが、降雪が少ないときのスキー場では、ほとんどこのスキーで楽しんでいましたね。昨年、当て込みやズラしがちょっとやりにくいみたいなことを言っていたと思うんですけど、この冬、小回り用の基礎スキーを試乗する機会があったんです。
これ系のスキーはトップが雪面に食い込むとその後はまったくズレない。そういったスキーに比べれば、「Blade」はまだその許容範囲が広くて、切れ上がるターンもできれば、力のかけ具合によってズラし気味にターンを決められます。
昨年のインプレッション記事はこちら
いろいろな条件の雪を滑ったことで、そういったスキーに働きかける力の加減も分かってきて、より面白みが増しましたね。
斜面状況にあわせていろいろなターン弧で遊んだり、パークでは主に低回転トリックやジャンプ、スキー場の地形にあわせて飛んだり、当て込んだりといったフリースタイルな遊びも十分に楽しめます。
ロッカーの立ち上がりが少ないため、深い雪では存分な浮力は望めませんが、コース端のパウダーやうっすらとパウダーが乗ったコースなら問題なく滑れます。そういう意味では、深い雪にならなければ、これ1本でスキー場のすべてを滑るのが調子がいいですね。
これまでLINEのスキーはフレックスやトーションの柔らかいスキーがほとんどでした。ボクもそういったスキーにずっと乗っていたので、チタンメタルが入った「Blade」はまったく別ジャンルのスキーかなと思ったんですよ。
でも、フレックスはそこまでの硬さを感じさせず、トーションは強い印象を受けました。部分的にどこかが硬いというのではなく、トップからテールまで均等にスキーがたわみます。荒れたバーンでもスピードを落とすことなく雪を踏み潰しながら滑れる。それはやはり効果的に入ったチタンメタルのおかげだと思います。
ビンディング位置も普通のカービングスキーよりはセンター寄りにあるので、スイングウエイトも軽快です。リフトに乗ってるときに足を降ってもトップ・テールともにバランスいい感じがします。そのため、飛んでもバランスが取りやすく、トリックもしやすいですね。
このスキーは他に似ているものはなく、「Blade」は唯一無二の存在と言ってもいいくらいです」
まとめ
2人の話にあるように、「Blade」は雪山を自由に滑るためのスキーだ。どこにでも深いターン弧を刻み、スライドやスラッシュ、サーフライクなボトムターン、リッピング、カットバックまで可能にする。
タイトなラディウスはスキーの反応も早いため、カービング操作もしやすく、苦手な人は感覚を掴む1台としても最適だ。腕に自信のある人は、他の人とは違うスキースタイルを磨くのも良い。
チタンメタルを採用するスキーの多くが安定性とパワーを重要視しているのに対し、「Blade」はLINEの核である「楽しさ」を実現するために生まれたものだ。
フリースタイルやフリーライド、基礎といったジャンルにこだわらず、新しい時代のオールマウンテンスキー「Blade」を、この冬ぜひ体験してみて欲しい一台だ。
Blade95
Blade 92
LINEの全ラインナップは以下のウェブサイトを参照ください
https://lineskis.com/en-jp