バックカントリーになくてはらない「3種の神器」
バックカントリー(BC)に入る際には必ず身に備えていなければならないとされているアバランチギア。なかでも、ビーコン、プローブ、ショベルの3つは雪崩に遭遇した時に、3点それぞれの機能が相互に補完され、救助を行うことができるようになる。これらは雪崩捜索に欠かせない最重要アイテムのため「3種の神器」と呼ばれる。
雪山では、いつ何時、雪崩が起こるか知れない。3種の神器は自分の命を守るだけでなく、一緒に山に入った仲間を助けるために必須だ。これからバックカントリーを安全に楽しみたい、必需品ならばぜひ購入しよう!と考えたものの、使ったことのないBC初心者にとっては、数多くの商品の中から何をどう選んでいいのかちょっと難しい。そんなBC初心者にうってつけなものがある。
登山メーカー各社が販売展開しているビーコン・プローブ・ショベルの3点セットだ。
ビーコン・プローブ・ショベルの役割
【ビーコン】
埋没者(要救助者)が持っているトランシーバーが送信している電波を受信する、または雪崩に遭遇して埋没してしまった時に、電波を発信して自身の位置を知らせるために必要。
【プローブ】
ビーコンによっておおまかに探した埋没者が、雪面地下のどの深さにいるか、ピンポイントにどこにいるかを探すために雪面に差して使う。
【ショベル】
埋没ポイントがわかったら、実際に埋没者を雪の中から掘り出すために必要。また、雪崩が起きやすい弱層の状態になっているかのチェック時にも使う。
ユーザーフレンドリーな3点セットで迷い知らず
すでに決められたセット組みになっているため、ユーザーはほぼ迷う必要がないのが利点。多くはBC初心者をターゲットとして、操作において扱いやすいものや、なるべく軽量かつ耐久性はあるもの、比較的リーズナブルな価格帯のものなど、ユーザーフレンドリーな観点でパッケージされている。おかげで初心者も安心して購入できる。bcaなどはユーザーのニーズに合わせて複数のパッケージを展開している。
どのようなパッケージがあるか、BCギアメーカーとして実績のあるブランドのパッケージを紹介しよう。
bcaのビーコンは、シンプルで視覚的な感覚で使いやすく、耐久性に富んだ製品として、北米で最も広く使われている。TRACKERシリーズはシグナルのキャッチが速く、状況の変化に対しても表示が素早く追従する点、複数の埋没者を捜索できるなどの機能性が高く評価されている。
ユーザーのニーズに合わせて3タイプのアバランチレスキューパッケージを展開。ビーコンは3タイプ異なるが、プローブとショベルは同じものがセットになっている。
bca | T4 RESCURE PACKAGE
ビーコン:TRACKER4
プローブ:STEALTH270
ショベル:B-1EXT
価格:6万6000円
最も高度な捜索が可能なハイエンドなレスキューパッケージ。ビーコンはTRACKERシリーズの最新バージョンTRACKER4が含まれる。TRACKER4は捜索時のビープ音の音色を、より聞きやすいものに変更し、液晶表示部分を大型化して視認性を向上、ボディにゴムのグリップをつけることで落下防止などグレードアップした。プローブ・ショベルは他の2つのパッケージと同様にSTEALTH270とB-1EXTがセットになっている。
bca | T3⁺ RESCURE PACKAGE
ビーコン:TRACKER3
プローブ:STEALTH270
ショベル:B-1EXT
価格:6万500円
bcaで最も選ばれているレスキューパッケージ。TRACKER3は瞬時のリアルタイム表示を備え、bcaビーコンの中で最薄の使いやすいモデル。よりアクティブなライディングに干渉せず、収納性も考慮したデザインだ。プローブ・ショベルはTS RESCURE PACKAGE同様にSTEALTH270とB-1EXTがパッケージになっている。
bca | TS RESCURE PACKAGE
ビーコン:TRACKER S
プローブ:STEALTH270
ショベル:B-1EXT
価格:5万5000円
必要な物が揃っていながらコストパフォーマンスの高いレスキューパッケージ。ビーコンはTRACKER S。性能はTRACKER4やTRACKER3と同じだが、操作性や価格をエントリーユーザーに標準を合わせ手頃にしている。プローブは270㎝のSTEALTH270。プロや上級者からも信頼されている定番モデルだ。ショベルはこれまで広く利用されてきたB-1EXTがパッケージになっている。
クライミング & バックカントリーギアからトレッキングギアまで、 信頼性の高い登山用品を製造するメーカー。Patagonia(パタゴニア)の創始者イヴォン・シュイナードが立ち上げたブランドが根幹となっている。スノーフィールドでは、スキーやポールを含むバックカントリーギア、中でもアバランチビーコンやショベル、プローブなどのセーフティギアにおいて高い信頼を集めている。
Black Diamond | BD Recon Avy Safety Set
ビーコン:Recon BT
プローブ:QuickDraw Probe 240
ショベル:Transfer
価格:5万1700円
Recon BTビーコン、Transferショベル、QuickDraw Probe 240をセットにしたエントリーセット。耐久性を備えた軽量で扱いやすいアイテムを揃えながら、コストパフォーマンスに優れるエントリーセット。
ReconBTビーコンはBlackdiamondのビーコン3種の中では最もエントリーユーザー向けだが受信範囲は60mと十分。ショベルは今季新しくなったTransfer、シャフトは伸縮式でグリップが握りやすい。プローブは240㎝、必要十分な長さで組み立てやすく、BC初心者には扱いやすい。
◆お問合せ:ロストアロー https://www.lostarrow.co.jp/index.html
アバランチトランシーバーの老舗名門ブランドORTOVOX。もの創り王国ドイツらしい高い技術力と職人気質のこだわりは、アバランチギアをブランドのルーツにマウンテンウエアやアクセサリーなどのプロダクツに発揮されている。ORTOVOXは「SAFETY ACADEMY」 という山での安全を教育するトレーニングコースを提供しており、映像でも雪崩救助について学ぶことができる。
ORTVOX | AVALANCHE RESCUE SET DIRACT VOICE LIGHT
ビーコン:ダイレクトボイス
プローブ:240アルーライトQAS
ショベル:プロフェッショナルライト
価格:7万950円
世界初の捜索音声ナビゲーションシステムを搭載したビーコン「ダイレクトボイス」を中心に、使い勝手のいい人気のプローブとショベルがパッケージになっている。
ダイレクトボイスは捜索有効範囲の50メートル内において、音声で埋没ポイントまで確実に導いてくれるという画期的なもの。使い方さえ理解しておけば目隠しをしていても、埋没者(発信ビーコン)を発見することができる高水準なナビシステムで、初めてビーコンを買う初心者でも必ず埋没者を発見することができる、心強いアイテムだ。
プローブはラインナップの中で3番目に軽い「240アルーライトQAS」。作りが堅牢で、シャフトが7本のタイプなのでよりコンパクトに収納できる。ショベルは「プロフェッショナルライト」。ORTOVOXブランドのショベルでは日本国内で最も売れている最軽量モデルだ。取り回しやすく、UIAA認証も取得しており、耐久性・有用性も信頼できる。440gという軽さは、不慣れなバックカントリーでなるべく負荷を減らしたい初心者にとって非常にありがたい。
◆お問合せ:マジックマウンテン http://www.magic-mountain.jp/item/brand/index.html
アバランチビーコン、プローブ、ショベル等のスノーセーフティーギアの専門ブランド。スマートフォンで設定/管理できるビーコンや、ビーコンの電波をキャッチし、ビープ音とLEDの光の点滅によって埋没者との距離を知らせるプローブといった、最新エレクトロニクスによるインテリジェンスなアバランチシステムを構築している。
PIEPS | ピープス セット「 iプローブBT」
ビーコン:マイクロBTセンサー
ショベル:C660
プローブ:iプローブBT260
価格:6万6000円
PIEPS最速のレスキューシステムとなるセット「 iプローブBT」。ビーコンはPIEPSの最小・最軽量モデルで、50mの球形受信範囲を持ち、ディスプレイも大型で見やすいデザイン。送信⇔受信の自動切り替えで、切り替え時間の短縮と切り替えミスを防ぐ「マイクロBTセンサー」。プローブは、音と光でヒットしたことを知らせ、ファインサーチ~ピンポインティングを60%も短縮できるiプローブBT。ショベルはボタン操作なしで素早くハンドルとブレードを組み立てることができるC660がセットされている。
PIEPS | ピープス セット「マイクロBTボタン」
ビーコン:マイクロBTボタン
ショベル:T500スタンダード
プローブ :アルミニウム220
価格:5万380円
ピープス最小・最軽量で直感的に操作できる3アンテナの「マイクロBTボタン」は、送信モードから受信モードに手動で切り替えられるボタン式スイッチを搭載。ショベルは小型軽量の「T500スタンダード」に「アルミニウム220プローブ」をセットにしたコンプリートキット。
PIEPS | ピープス セット 「パウダーBT」
ビーコン:パウダーBT
ショベル:C660
プローブ:アルミニウム260スポーツ
価格:4万6200円
50mの捜索範囲を持ち、シンプルながら迅速かつ正確な捜索をサポートするバックカントリーフリーク向けのビーコン「パウダーBT」。高い機能性とハイコストパフォーマンスな「パウダーBT」に、C型ハンドルで作業性の良いC660ショベル、耐久性に優れたアルミニウム260プローブを加えたベーシックセット。
◆お問合せ:ロストアロー ユーザーサポート
https://www.lostarrow.co.jp/store/contact/contact.aspx
アバランチギアを使いこなすために学ぶ
アバランチギアがただのお守りやお飾りに終わらないように、実際に雪上で使いこなせるよう、雪崩に関する知識と対応技術を身につけなくてはならない。それには専門家から学ぶのが確かだ。
日本雪崩ネットワーク(JAN:Japan Avalanche Network)は、冬季アウトドア活動の雪崩安全に取組む専門団体。バックカントリーツアーを提供しているガイドたちの多くが、このJANのメンバーであり、「雪崩業務従事者」の資格を持っている。
JANでは専門家の養成だけでなく、一般の登山者やバックカントリーの愛好者へ雪崩に関する教育機会を提供している。雪崩の危険に気づく機会として「安全セミナー」や、フィールドで雪崩対策を学ぶ「雪上講習会」を開催。
安全セミナーには2種類があり
①AN(アバランチナイト)…雪崩の基礎知識や事故事例について話が聴ける2時間の無料セミナー。入門者から経験者まで幅広い方が対象
②miniAN(ミニ・アバランチナイト)…雪崩の専門スキルのあるJAN会員が開催する小規模セミナー。これから雪山に入りたい人や経験が浅くても気軽に参加可能
フィールドで雪崩対策を学ぶ雪上の講習会は、3種類ある。
初心者が対象になるのは「AvSAR基礎コース」1日と「BSC(ベーシックセーフティキャンプ)」2日間。これらを受講すると、雪崩の安全対策に係る包括的かつ重要な基礎知識を身につけることができる。この他に経験者向けの「ASC(アドバンスセーフティキャンプ)」もある。
詳細はJANのHPを見てみよう。
◆日本雪崩ネットワーク(JAN) https://nadare.jp/
アバランチレスキューギアの使い方がわかる雪崩捜索の動画を見てみよう
これらはJANが公式HP上でリソースとして提供しているAvSAR(日本雪崩捜索救助協議会)による雪崩の救助に関する動画。ビーコン・プローブ・ショベルを使った実際の捜索がどのようになされるのかがよくわかる。
【AvSAR Basic 救助の流れ】
【AvSAR Basic 雪崩ビーコンによる捜索】
【AvSAR Basic プローブの使い方】
【AvSAR Basic 掘り出し】