2021年3月中旬、場所は北海道十勝岳エリア。やってきたのはゴールドウインのアスリート、関谷和茂と河野克幸。3日間雪山に籠って、ハイクアップし、思い思いのラインを描く。
目的は、最新アリス・ジャケット&ビブをテストし、更なる改良点を探るため。誕生から5シーズン目を迎えたアリスシリーズはこうして進化を重ねてきた。
Profile|プロフィール
河野 克幸-こうの かつゆき-
1981年長野県野沢温泉村に生まれる。幼少期からアルペンスキーをはじめ、中学卒業後、単身オーストリアへ渡る。21歳で帰国し、スキークロスW杯に参戦。現在は野沢温泉村に戻り、実家の宿「白樺」、レンタルショップ白樺、七良兵衛珈琲を経営する傍ら、野沢温泉ジュニアスキークラブコーチとして毎日雪面に立つ。 https://shirakaba8.com/cafe/
関谷 和茂-せきや かずしげ-
1980年長野県小布施市に生まれる。高校生まで競技スキーに打ち込み、卒業後、フリースキームーブメントに惹かれて米国のコロラドへ留学しフリースキーの世界へ。現在は、北信州の木島平村を拠点にインバウンドを対象にしたプライベートガイドサービス「SKINAGANO」を主宰する。 https://www.goskinagano.com
■それぞれのゴールドウインとの出合い
河野:関谷さんはいつからゴールドウインを着ているの?
関谷:ゴールドウインがリブランディングする15/16シーズンの前年からだから、今年で7シーズン目だね。最初着ていたのは、2レイヤーのゴアテックスで綿入りの上下だった。ゲレンデを回すだけならあたたかくていいんだけど、バックパックを背負ってハイクアップするとオーバーヒートする。だから、バックカントリー向けの3レイヤーのゴアテックスジャケットを作ってくれって要望したんだ。それで出来上がったのが、アリス・ジャケットとビブだった。
河野:そういうレスポンスの速さが、国内に開発と工場を置きアスリートとの距離が近いゴールドウインの良さであり、強みですよね。
関谷:カツがゴールドウインチームに入ったのは、リブランディングをして3レイヤーになってからだよね?
河野:そう、最初からアリス・ジャケットとビブでした。それまでゴアテックスでなく独自の防水透湿性素材を使用した海外ブランドを着ていました。ゴールドウインは、ゴアテックスという信頼性の高い防水透湿性メンブレンに加えて、縫製やディテールが丁寧に作られている。だから、より安心して雪山に入れるようになりましたね。
関谷:カツがゴールドウインチームに加わって嬉しかったよ。活動エリアが近いからちょくちょく会って話ができるし、一緒に滑れるし。「シューティングしよう」ってチームとして動きやすくなったよね。アルペンからフリースタイルへ楽しみを求めていったスキーのスタイルも似ている。ゴールドウインの周りは基礎とか競技のスキーヤーが多いから、フリーライドの仲間が加わって単純に嬉しかった。そして、開発へのフィードバックが通りやすくなった。
河野:ひとりよりもふたりの意見としてフィードバックすると説得力がある。あと小谷村の深沢祐介さんを加えて3人で攻めるとさらに(笑)。今シーズンから白馬コルチナの柴田勇紀さんも加わるからますますいい流れ。ゴールドウインは、アルペンからバックカントリーへスキーの世界を広げる過渡期にありますね。
関谷:仕事柄、海外ブランドのウエアをフィールドでよく観察しているんだけど、国産ゴールドウインのウエアは圧倒的によくできている。動きを妨げない細やかなカッティングやチンガードなど着心地への配慮、丁寧な縫製にいたるまで日本人の繊細さを感じる。島国日本の湿度の高い環境下で滑っていると、とくに性能の高さを感じるよ。
河野:関谷さんは、アリス・ジャケット&ビブの開発にずっと携わってきたわけだけど、なにが魅力だと思いますか?
関谷:デザイン、見た目が好き。シンプルだからね。3シーズン、4シーズン前のアリス・ジャケットと今シーズンのモデルを比べても分からないくらい、基本的なコンセプトは変わっていない。飽きがこないよね。そして、スキーだけじゃなくて、街とかキャンプでも着られるカジュアルさがいい。バリバリのアウトドアブランドのウエアって、コテコテすぎて雪山以外ではなかなか着られないよね。
河野:シンプルだけど、抑えるべき要点はちゃんと抑えている。関節の可動域を立体的にカッティングして、まったくストレスがない。フードの形も、ベンチレーションの位置と長さもいい。すごい優等生。この高い完成度に仕上げるまでに、いろいろな改良がされてきたんですか?
関谷:初代のアリスは、サイズ感がちょっとタイトで、丈も短かった。フリーライドする人は、手をあげたり屈んだり体を捻ったり、いろんな動きが多くなるからシルエットはルーズにしたほうがいいと。そして、バックバックを背負うからウエストハーネスと裾が干渉しないように丈を長くした方がいいとフィードバックしてきた。ビブも初期型はタイトだったな。で、少しずつ、ゆったりとしたルーズフィットになっていったよね。
河野:たしかにおれが最初着たときは、厚めにレイヤリングするとキツかったね。さまざまなレイヤリングに対応できるように、ゆったりとしたシルエットになっていった。あと、カラーがいいよね。この落ち着いたアースカラーは、初代からずっと続いていたの?
関谷:そう、そこは初代からブレてない。レッドでも真っ赤じゃなくてどこか落ち着いたいい色を出してくる。主張しないんだけど雪山に入ると映える。国内外、おれの周りでもカラーリングはすごく評判いいね。
■レイヤリングアイテムとの相性もいいアリスシリーズ
河野:昨今、ゴールドウインのアウトドア部門が立ち上がったというのもあって、アウターにレイヤリングするベースレイヤーやミドルレイヤーの種類が豊富になったね。
関谷:去年着てみて調子良かったのが、薄手のフリース「ウールグリッド ジップフーディー」。
河野:あれ、おれずーっと着てるよ。もう擦れて破れそうなくらい(笑)。
関谷:薄手なんだけど、あったかくて、汗抜けもいい。これもまさに快適に過ごせる温度域が広い。春時期のあったかいときに着ていてもいいし、寒いときにきていても温かいから、レイヤリングがしやすいよね。
河野:そのバラクラバ「ウールグリッドバラクラバ」もめっちゃ調子いい。
結局、どれもゴールドウインの傘下にあるザ・ノース・フェイスなどのアウトドアブランドで培ったノウハウから生まれたものだから、信頼性があるし、レイヤリングしやすいんだよね。頭部から爪先までせめてきているから。
関谷:「ウールグリッドバラクラバ」はいままで出会ったなかで間違いなくナンバーワンバラクラバだね。
今回の3月の北海道十勝岳バックカントリーで、関谷さんはどんなレイヤリングをしてました?
関谷:「ウールグリッドジップフーディー」が調子いいからシンプルで迷いがない。このほか、ボトムのインサレーションパンツ「サイドオープン3/5ダウンパンツ」を停滞時に履いていた。これずっと作って欲しいとお願いしていたモデルなんだ。サイドがボタンでフルオープンになるから着脱がラク。さらにシェルの上からもブーツを脱がずにダウンパンツを履けるんだよ。撮影のときは待ち時間が長いから、すごく重宝したよ。
河野:アリスジャケットと同じように、ほかのウエアに関してもデザインがカジュアルで、日常生活でも違和感なく着られて、汎用性が高いよね。スキーとは関係ないけど、トレッキングパンツやショーツもすごく気に入っていて、毎日履いているよね。気に入ったモデルは、ネットで色違いを買ったりして(笑)。
関谷:ゴールドウインは、アルペンスキーで成長してきたブランドだけど、日本国内ではアウトドアやライフスタイルのブランディングにも力を入れはじめた。これまでのノウハウや技術があるから心強いよ。
河野:最近、おれたちに求められること、ガチになってきてない?今回の北海道もそうだけど、「これアイゼンだな」っていうシーンが多くなって、やっていることがハードになってきた(笑)。
関谷:それ、おれも思った。だけど、頭から爪先まで信頼できるアイテムに囲まれて、おれたちはラッキーだよ。そして、毎年毎年、新しいモノを生み出してくるゴールドウインの開発力と発想力は、すごいと思う。アスリートとしてその期待に応えられるよう、おれたちも心身ともに用意しておかないとね。
【Goldwin Athlete Arris Series Setup】
【河野克幸のセットアップ】
■Arris Pro Jacket
アリス プロ ジャケット
8万8000円/サイズ:S~XXL/カラー=2色
■Arris Bib
アリス ビブ
6万500円/サイズ:S~XXL/カラー:3色
【トップス】
ベース:アドバンスウォームロングスリーブ
ミッド:ハイブリッドジャケット
【ボトム】
タイツ:アドバンスウォーム 3/4タイツ
ミドルレイヤー:ハイブリッド3/4パンツ
【関谷和茂のセットアップ】
■Arris Jacket
アリスジャケット
8万300円/サイズ:S~XXL/カラー:4色
■Arris Bib
アリス ビブ
6万500円/サイズ:S~XXL/カラー:3色
【トップス】
ベース:アドバンスウォームロングスリーブ
ミッド:ウールグリッド ジップフーディー
【ボトム】
タイツ:アドバンスウォーム 3/4タイツ
ミドルレイヤー:ウールグリッド レギンス
株式会社ゴールドウイン:https://www.goldwin.co.jp/goldwin/
Photo / Takanori Ota, Takeshi Wakabayashi(YUKIMI STUDIO)
Text / Shinya Moriyama
2021.11月 収録