パークスキーヤーを中心に、バックカントリースキーまで厚い選手層を擁するアルマダ。
2002年にアメリカ・カリフォルニア州でタナ―・ホールや故JP・オークレアなどフリースキーの隆盛とともに活躍したスキーヤーたちが作り上げたブランドだ。
パークスキーがブランドの原点にあるゆえに、ライダーの多くは今もパークで活躍、またはパーク出身のライダーが多い。バックカントリーで活躍するライダーも山を滑り降りるだけでなく、ジャンプやトリックをミックスさせたスキースタイルを得意としている。
当時はメンズのパークスキーを中心に展開していたものの、今では滑り重視の「ディクリビティ」やユニセックスの「ARW」など、多岐にわたるラインナップでフリースキーヤーを楽しませている。
ラインナップが増えたことで、選び方が分からない、またはどれが自分に合うのか迷っている人も多いはずだ。そこで、今回は編集部が選んだおすすめの3本を紹介したい。
1_ ARV 116 JJ UL(エーアールブイ 116 ジェイジェイ ウルトラライト)
この板は2010年に「バックカントリーでもパークのようにトリックができて、自在な動きをしたい」というライダーの願いをかなえるために生まれたJJ の進化モデルだ。そもそもARV JJはロッカーのファットスキーでありながら、ゲレンデでも滑りやすく、走破性に優れるという点でロッカーの概念を覆すような仕上がりになった。それがライダーはもちろん、一般のスキーヤーにも受け入れられ、爆発的人気を誇った。
その進化モデルであるARV 116 JJ UL。ULは「ウルトラライト」の意味を持ち、ウルトラライトとは呼んで字のごとく、とにかく軽いということだ。
製造に用いる素材はARV JJと大きく変わらないが、ロッカーを浅くしてキャンバー部分を延長し、アウトラインを細かく調整している。それによって接雪点が長くなり、さらに様々なシーンで滑りやすく、幅広いレベルの人が扱いやすくなった。
そして、芯材を薄くすることで片足約500gという驚きの軽量化を実現。通常のJJよりもおよそ2割軽いことになる。しかし、足元のサイドウォールは強固に補強している。全体的に軽くした代わりに、力がかかる部分は頑丈な設計なのだ。この改良を行うにはアルマダの高い技術力がなければなしえないということも付け加えておきたい。
ARV JJがもともとパウダーでもパークのような動きを可能とすることを目的とした板なだけあって、新雪でもスウィングウェイトが軽く、小回りが効く。さらに、トップが軽くなるように薄く作られているので、その恩恵でパウダーを受けて板の先端が浮いてくれるのも特徴のひとつだ。
軽くなったことでツアーリングにも適応した板になった。滑走性を損なわず、歩行や登行にも向いているということでツアー入門者にもオススメできるだろう。
一台持っておくと滑るシチュエーションがぐっと広がる、そんな万能なロッカースキーだ。
樋口永悟のARV 116 JJ ULのレビューと評価
「乗り味はとにかく最高の一言。パウダーで一回乗ってしまうと、もう手放せません。使っているのは185㎝ですが、ツリーランのような細かい操作が必要な場所でも長さを感じません。飛んで回るのもパーク板のようにできるし、有効エッジが長いことで着地も安定します。カービングも楽しく滑れて、この一台で何役もこなせてます」
2_EDOLLO(イードロ)
EDOLLOは14シーズンに登場したヘンリック・ハーロウのシグネチャーモデル、「アルデンテ」の後継機だ。EDOLLOとはヘンリックのニックネームに由来する。
スウェーデン出身のヘンリックはいまやアルマダブランドを代表する滑り手の一人。
ヘンリック・ハーロウってどんなスキーヤー?
コンペティションではオリンピック、X GAMESでビッグエア・スロープスタイルのゴールドメダルを争いながら、映像作品も精力的に作り続けている。ビッグサイズのウエアにバンダナを巻くスタイルなどストリートカルチャーの要素をスキースタイルに織り込みながら高い技術力も保持する、スキー界において唯一無二の存在だ。
そんなヘンリックのシグネチャーモデルEDOLLOは15シーズンにアルデンテから名称が変わり新登場した。
サイドウォールの長さが板全体の50%の長さに設計されており、フレックスの柔らかい板だったがコンペティションへの出場やストリートでの撮影など、ハードに使用するシチュエーションに合わせ、サイドウォールを75%まで伸ばして頑丈な板へ改良された。それに伴いフレックスとトーションが強くなり、ゲレンデや非圧雪でも力強い滑りができる板になった。
それでいながら、ヘンリックが得意とするノーズバター系のトリックがしやすいよう、ノーズロッカーを採用。足元からテールにかけてはキャンバーなので、ジャンプをするときの板の反発やランディングでの安定感が高い。ゲレンデや非圧雪斜面はもちろん、パークでのトリックやバックカントリーでもジャンプしながらでも高い走破性を持つスキーに仕上がっている。
また、今季はグラフィックにも注目したい。これまでのEDOLLOには妖怪をモチーフにした派手なイラストのデザインを貫いていたが、今年はアルマダ初期のタナー・ホールシグネチャーモデルを連想させるシンプルなデザインになっている。
今季は北京五輪も開催され、ヘンリックにとって勝負の年になる。師匠であり良き兄貴分でもあるタナー・ホールとともに、4年に一度の大舞台に望む強い意志が表れている。
浦田義哉のEDOLLOのレビューと評価
「パーク板でありながら普段の滑走も申し分ない性能なので、シーズン前の足慣らしとしてフリーランで使ったり、センター幅が98㎜あるのでちょいパウダーの日、あとは春のパークで使用します。特徴はロッカースキーでトップの幅が広く、ノーズ系のトリックが安定してやりやすい点ですね。操作感、乗り味 板自体も軽いのでジブ、キッカーでスムーズにトリックができるのも気に入っています。ゲレンデのみならず不整地や自然地形でも使うのでワイドで安定感がある板によって、スピードが出てもコントロールしやすい印象です」
3_BDOG(ビードック)
BDOGはアルマダの古参ライダーでもあるカナダのスキーヤー、フィル・カサボンのシグネチャーモデルだ。ヘンリックと同じく、BDOGはフィルのニックネームである。ヘンリックとはまるで兄弟のように仲が良く、『B&E』というユニットで、数々の映像作品がつくられてきた。
フィル・カサボンってどんなスキーヤー?
コンペティションにも出場するヘンリックとは対照的に、自分のスキースタイルを探求し映像や写真で表現することにこだわるフィル。そのこだわりは独創的な滑りからさまざまな、既存の概念にとらわれない新しいトリックを編み出し、フリースキーの可能性を拡張したといっても過言ではない。ヘンリック同様、スキー界において唯一無二の存在だ。
アルマダで最もフレックスの柔らかい板で、ノーズとテールはロッカー。バタートリックをはじめとしたグラウンドトリックを連発させるフィルに最適化された仕様になっている。EDOLLOよりもサイドウォールが短く、比較的誰もが取り回しやすいスキーになっている。それでいながら、板に全体重をかけるノーズプレスやテールプレスの重みにも耐えられるよう芯材には強靭なポプラアッシュコアを採用。
そして、BDOGの最大の特徴はノーズとテールが同じフレックスでほぼ同じ形状をしている点。通常は前方向に滑ることが多いため、テールはキャンバーを採用し、抵抗を減らすためなだらかにテーパーするよう作られるスキーだが、フィルの板は違う。スイッチでもレギュラースタンス同様に滑り、ジャンプ、グラウンドトリックができるようテールはノーズと同じように丸みを帯びたツチノコのような形をしている。
小回りが効く扱いやすさと、細かなトリックを自在に操れるよう軽量かつフレックスの柔らかい板がこのBDOG。
フリースキー入門、またはバターやオーリーなどグラウンドトリックをたくさん習得したいのであれば、この板を選べば間違いない。
「基本的にはシーズン頭からシーズン終了まで乗る板です。ゲレンデで使う時も有ればストリートでも使います。深雪じゃない限りBDOG一本でさまざまな場所を滑れますから。
フレックスが柔らかい板ですが、浅いパウダーから不整地、硬めのバーンまでオールラウンドに乗れる板ですね。パークではとくにジブ、地形で板の魅力がはっきりと出ます。地形ではプレストリックがやりやすく、頑丈な板なのでジブのイン・アウトでも衝撃に耐えてくれます。デザインが個人的にすごく好きで、遊びやすいスペックも自分にはぴったりの板だと思います」
磯川健斗のB DOGのレビューと評価
「基本的にはシーズン頭からシーズン終了まで乗る板です。ゲレンデで使う時もあればストリートでも使います。深雪じゃない限りBDOG一本でさまざまな場所を滑れますから。
フレックスが柔らかい板ですが、浅いパウダーから不整地、硬めのバーンまでオールラウンドに乗れる板ですね。パークではとくにジブ、地形で板の魅力がはっきりと出ます。地形ではプレストリックがやりやすく、頑丈な板なのでジブのイン・アウトでも衝撃に耐えてくれます。デザインが個人的にすごく好きで、遊びやすいスペックも自分にはぴったりの板だと思います」