スケールの大きな映像作品を制作したり、X Gamesや北京オリンピックといったコンペシーンで存在感を示したり、10年共に歩んだキャンディッド・トベックスとのパートナーシップの満了するなど、21-22シーズンはニュースに事欠かなかったFACTION。
22−23シーズンのFACTIONはモデル変更が多くあり、他にはない意欲的なスキーをアピールするなど、新たな幕開けを感じさせるラインナップに仕上がっている。そこで、FACTIONのインターナショナル・セールマネージャーであるアレックス・シンプソン(Alex Simpson)に22−23シーズンのプロダクトのことを、いろいろと聞いてみた。

Alex Simpson アレックス・シンプソン
フランス・アヌシーに拠点を置きながら、世界中の国々を周り、共に滑りスキーの楽しさを分かち合う。もちろん日本各地の山々も滑っている。ちなみに日本食の好物はお好み焼き。趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)とサーフィン。お気に入りのFACTIONスキーはAgent 3とLa Machine 5 Max。1988年3月17日生
編集部:22−23シーズン、ラインナップ変更の概要を教えてもらえますか?
アレックス:CTシリーズに変わる新しいプレミアムツインチップライン「MANA(マナ)」、フリーライドツーリングスキー「La Machine(ラマシーン)」が新シリーズとしてラインナップに加わります。ほかには、ディクテーターシリーズが「Dancer(ダンサー)」へと名称変更。「Prodigy(プロディジー)」、「Agent(エージェント)」、「OUTCAST(アウトキャスト)」のシリーズは継続です。また、いくつかのスキーはグラフィックを更新しました。
編集部:これまで2シーズン、「La Machine」は「OUTCAST」シリーズの一機種としてひっそりとラインナップされていました。それが22−23シーズンは独立したシリーズとなり、さらにはカタログでは巻頭に掲載されています。その理由は何故でしょうか?
アレックス:2020年、私たちはディープパウダーが滑りやすい、超ファットで軽量の「La Machine」を作りました。このスキーはトップとテールの大きなロッカーとテーパード形状が特徴です。最近は少なくなったフラットキャンバーを採用したことで、ディープパウダーでも驚くほどの浮力があり、起伏ある地形を自由自在に滑れます。この構造は、数十年にわたるベテランヘリスキー・ガイドの意見を取り入れて、あらゆるタイプのライダーが楽にパウダーが滑れるようなスキーを作り上げました。

このサイズ感ながら、186cmで重量は1950gの軽さ。シリーズラインナップはウエスト幅91mmの「MICRO」、99mmの「MINI」、109mmの「MEGA」の4種類
このスキーが成功したことによって、同じデザインとシェイプのシリーズを作ることは当然の流れでした。
フラットキャンバーによって、ディープパウダーから春のコーンスノーまで、あらゆる雪の状況でサーフライクなライディングができます。引っかかりが少ないため浮遊感が存分に味わえ、ピポット操作も自由自在です。また、カーボンレイヤーは、圧雪斜面をカービングするときにも最高のエッジホールドを発揮します。 コレクションのなかで最も軽量なスキーになったので、バックカントリーツアーにも理想的でしょう。

編集部:ウエスト幅の狭いモデルがフラットキャンバーというラインナップは他では見られない興味深いものですね。春に試乗しましたが、どのモデルも軽くて扱いやすく沢地形が滑りやすかったのが印象的でした。他モデルについても教えて下さい。
アレックス:「MANA」は、プレミアムな素材を使った軽量なツインチップスキーです。MANA2とMANA3は、優れた性能を発揮するツインチップを求めるスキーヤーのためのモデルです。
MANA4は、トップとテールのロッカーを大きくとり、フラットキャンバー。あらゆる深雪でピボットとスラッシュがしやすいファットスキー。パウダーでもフリースタイルな動きができます。
ちなみに、MANA3には足元のエッジ付近にカーボンとラバーで補強した”ストンプパッド”を搭載しています。これは、足元の耐久性を高めたものでウッドコアを保護するだけでなく、着地やジブの衝撃を吸収し安定させる効果があります。
それから、「MANA」シリーズ全モデルにはユニークなフレックスパターン”ボートフレックス”を採用しています。これはスキーのセンターが柔らかく、トップとテールの両端に向かって硬くなるものです。普通のスキーと逆ですね。変化の多い雪質でもターンのはじまりでしっかりグリップし、力強く切り抜けられます。エアのランディングでも衝撃を吸収しやすいですね。
といっても、「MANA」のフレックスはFACTIONのラインナップのなかでは、硬めの分類に入るので、柔らかすぎる感覚はありません。むしろ、スキーにしっかり荷重したときのポップする感覚がとても気持ち良いですね。

「DANCER」シリーズは、コンセプトをはじめ大きな変更点はありません。「DICTATOR(独裁者」)というネーミングイメージから敬遠する人が多いかも……ということから名前の変更です。それにあわせてグラフィックも変えました。このスキーは軽いのに、ハードな滑走性能がポイントです。軽量なポプラコアの上に2枚のチタンシートを載せ、高速化でも安定性とエッジホールドをもたらします。エキスパート向けのスキーだけでなく、ターンを楽しみたい中級者以上なら、スキー場内のどんな地形でもアグレッシブに滑れるでしょう。「DANCER」はガイドやパトロールにとっても理想的なツールです。

編集部:「PRODIGY」や「AgentT」はいかがですか?
アレックス:「Prodigy」シリーズは、どんなスキーヤーでも簡単に上手くなり、山で自分を表現できる、最高に楽しくてサーフなツインチップ・スキーです。ラインナップに変更はなく、グラフィックチェンジのみです。 「AgentT」シリーズ は、耐久性が高く、登りが楽で、滑走性能が高いフリーツアー用スキー。より軽量なオールマウンテンやフリーライドスキーを好むスキーヤーにも使用できます。1台のスキーですべてをこなしたいライダーにとって、理想的な選択といえるでしょう。


編集部:なるほど、全体がよくわかりました。ちなみに、FACTIONはモーグルスキーやモノスキーといったカテゴリーのスキーを作り続けていますよね。大手ブランドがその領域から手を引くなか、作り続けるのは何故ですか?
アレックス:その理由は簡単です。モーグルスキーはフリースタイルスキーの誕生と同義であり、私たちはそのルーツに敬意を表しています。なので、数に関わらずスキーを作り続けるんです。 モノスキーはいまのフリーライドを楽しむためにデザインされたスキーです。フリーライド用のフラットテールとフルロッカーは、他に類を見ないもの。案外新しい感覚が得られてハマるかもしれませんよ。

編集部:キャンディッドとのパートナーシップが完了したことによる影響はありますか?
アレックス:過去10年にわたるキャンディドとの強力なパートナーシップには、信じられないほどの感謝をしています。共に築いた楽しい時間と素晴らしいスキーはこのあとも大切にしたいと思います。ただ、ひとつの扉が閉まれば、また別の扉が開きます。22−23シーズンのラインナップはこれまでのなかでも充実したものであると思っていますし、これからの未来にもワクワクしています。
編集部:新たなラインナップも加わってますしね。アレックス、今回はどうもありがとうございました。
アレックス:こちらこそ、ありがとう。FACTIONはあらゆるタイプのスキーヤーに向けて、山へ行き、山を楽しむインスピレーションを与え続けます。僕らが発信するいろいろな情報もチェックしてみてください。
取材協力
Lollipop
長野県上水内郡信濃町野尻759-9
妙高エリアの信濃町にあるski&snowboard+outdoorショップ「Lollipop」。FACTION JAPANのオフィスも兼ねているため、全ラインナップが手にとって見られる。FACTION JAPANのマネージャー高井伸幸がいるときには、スキーのディテールが聞けたり、様々な話題に触れられたりもできる。ブーツやウエア、アクセサリー類も充実しているため、妙高方面へ行った際には立ち寄りたい。なお、高さもR角度も適度なランページを目当てに遊びに来る人も多いとか。悪天候時の遊び場としても使える。
Instagram:@lollipop_shinanomachi