K2(ケーツー)が3年の月日を費やして開発した「DISRUPTION(ディスラプション)」。レベルや指向性を問わず、誰もがターン本来の面白さに目覚めさせてくれる。フリースキーマインドに溢れる〈K2〉が作るカービングスキーとは一体どんなものなのか。
アメリカンスタイルなオンピステスキー
コンペティションにこだわらず、スピードとカービングをこよなく愛する人に向けて作られたカテゴリー〈speed perfomrance〉〈PISTE perfomrance〉。その核となるモデルが「Disruption(ディスラプション)」だ。既存の概念を打ち壊すスキーといった意味合いをもつスキーの映像をまずは見てみよう。
動くスタート台から飛び降り、バンクやウェーブ、ジャンプ台が連なるスキークロスのようなコースをグイグイと滑り抜けていく。1/100秒のタイム差を競うのではなく、ファンな要素をふんだんに盛り込んだこの映像。カービングスキーの楽しさをK2が表現するとこうなるのだ。
これは1月下旬にドイツ・ガーミッシュで行われた「Disruption」のプロモーションイベントの模様になる。メインキャラクターとしてワールドカップレーサーだったWarner Nickersonをはじめ、長野オリンピック金メダリストJonny Moseley、最近はスノーボーダーとしても活躍するSean Pettitといった〈K2〉を代表する錚々たるメンバーに加えて、日本からは坂本豪大らが参加した。
すべてのモデルを一斉に入れ替える昔とは違い、いまはカテゴリーごとにモデルチェンジを行うのが常。19-20季に〈PINNACLE〉から〈MINDBENDER〉にフルモデルチェンジしたように、20-21季はこの「Disruption」。スキーマーケット的にもヨーロッパシーンは未だ大きく、〈K2〉としてもオンピステ斜面を長く滑る層をターゲットにしたスキーの見直しを見計らっていたというわけだ。
また折しも、ここ数年の少雪の影響から、いつでもパウダーが滑れるわけではないことを多くの人が感じはじめていた。とはいえ、スキーの面白さはパウダーを滑るだけではない。整備されたコースはこれまでと変わりなくあり、いかにターンを楽しむかを改めて考えていた時期でもあったのだ。
キレ味鋭いターンを引き出す3つの機能
「Disruption」は切れ味鋭く速いターンを引き出す特徴をもつスキーだ。映像のようにハイスピードでエッジの痕跡がくっきりと残るカービングターンをもたらすのは、3つのテクノロジーに依るところが大きい。
エッジグリップを強化する”DARK MATTER DAMPING - DMD”、ダイレクトに力を伝達する”POWERWALL”、ターンを安定させる”I-BEAM”。この三要素がターンの楽しみを引き出す。
・DMD(DARK MATTER DAMPING)
ターンの始動でエッジが雪面を確実に掴むことは重要なポイント。その動きを助けるのが赤い部分にあるDMD(DARK MATTER DAMPING)。ポリマーの振動吸収材だ。コンタクトエッジ付近に配置することで、ターンに入るときチタンが取りこぼす高周波波動を吸収してくれる。これによって氷や人工雪といった硬い雪でも強くエッジがグリップし、スキーをコントロール下において、フォールラインに向かっていける。
・POWERWALL
雪面を捉えてスキーを踏みこんだときに無駄なく力を伝える役割を担うのがPOWERWALL。特大のABSサイドウォールをスキー中央部のウッドコア内にラミネートしたことで、ダイレクトにエッジへ力が加わり、スキーがたわむ。
・BEAM TECHNOLOGY
スキーセンターに沿ってノーズからテールまでチタンを配置することで、ターン時の安定性と正確性が向上した。
ターンスピードにフォーカスした〈speed perfomrance〉
〈speed perfomrance〉〈PISTE perfomrance〉といったカテゴリーを構成する機種は全部で16もある。前述した機能にフォーカスした「DISRUPTION」に絞って紹介していこう。
ターンスピードにフォーカスした〈speed perfomrance〉シリーズは5機種。 上からMti、Sti、SC、女性用のMTi AllianceとSC Allianceの順になる。”Ti”はチタン、”C”はカーボンの意味で、”M”はミディアムターン、”S”がショートターンという位置づけだ。〈K2〉のカービングスキーにはロッカーが備わっており、〈speed perfomrance〉にはノーズのロッカーが低めに設定され、スキーのほぼ全体がキャンバー形状。的確な操作性と安定性をもたらす。
オールマウンテンにターンを楽しむ〈PISTE perfomrance〉
基本構造は〈speed perfomrance〉とほぼ変わらないが、こちらのほうがウエスト幅が広く、ターンを自在に操れる。コース脇の端パウやコブ斜面、アイスバーンや春スキーにも対応でき、オールマウンテンに使えるシリーズと言える。ロッカーについては「DISRUPTION76」のみ。中低速域でも簡単にターンができるようノーズとテールのロッカーの角度を緩やかにとった仕様になっている。
〈PISTE perfomrance〉シリーズは全11機種あるが「DISRUPTION」の名が付いたモデルは5機種。残りの6機種は女性用モデル「ANTHEM」としてラインナップしている。名称の後につくアルファベットは、”Ti”チタン、”C”カーボン、”X”については搭載ビンディングと芯材が異なっている。
各地のスキー場を滑った坂本豪大の「Disruption」インプレッション
1月下旬から”K2 Disruption Japan Tour”と題して各地のスキー場を巡った坂本豪大。1/19の群馬県丸沼高原を皮切りに3/25のたんばらスキー場まで、約30ヵ所のスキー場を滑り、試乗会を行ったりユーザーと一緒に滑ったりしながら、このスキーの魅力を伝えてきた。
国内でもっとも「Disruption」を乗った坂本豪大にどんなスキーだったのかを聞いてみた。
【インプレション情報】
坂本豪大(42歳)166cm、67kg
SKI:DISRUPTION MTi 175cm
BOOTS:K2/RECON PRO
5段階で硬さの印象(1=ソフト←→5=ハード)
ノーズ:4 センター:5 テール:4
5段階で適したシーン(1=不向き←→5=最適)
パウダー:3
グルーミング:5
ハードパック:5
パーク:2
コブ:3
なお、はじめに映像で紹介したDisruption Cupは、この冬に世界各地での開催を考えているとのこと。もしかしたら、どこかのスキー場であの動くスタート台とコースが出現するかもしれない。
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K2の全ラインナップはリンク先を参照