ミレー、スノーバシンジャケット&パンツの魅力とは?プロスキーヤーによるレビュー

フランスのアネシーを拠点にするミレー。1921年の設立以来100年近くに渡って、山岳エリアにおける様々なアクティビティをサポートし続けてきた。スキーウエアもその例外になく、世界のなかでも歴史と権威のあるガイド協会のシャモニーガイド協会と提携を結び、フィールドからの多くの声をもとに製品を作り上げているのだ。ここで取り上げるスノーバシンジャケットとスノーバシンパンツもその一つ。

スノーバシンジャケットとパンツはスキー場でのどんなシーンにおいても、動きやすさと快適さを感じさせてくれるフラッグシップモデルだ。防水性と透湿性はブランド独自の素材「ドライエッジ」を採用。4方向へと伸縮する素材を使った「4WAYストレッチ」と背中内側に配した「モーションインサート」があらゆる動きに対応し、気にかかる突っ張り感も軽減。ほかにも快適に滑るための機能が満載だ。

ここで、実際にこのジャケットとパンツを着用し続けているプロスキーヤーの谷藤昌司のインプレッションと共に製品を細かくみてみよう。

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ライディング姿勢を崩さない、抜群の動きやすさ

谷藤昌司 MASASHI TANIFUJI 
学生時代はアルペン競技スキーに打ち込み、その後基礎スキーへ。SIAデモンストレーターとして、福井県を中心に各地で精力的にレッスン活動を行い、スキーの楽しさを伝えている。それとフォトグラファーとの撮影もコンスタンスに行い、作品を発表している。
1980年5月15日生まれ、北海道出身

「ジャケットとパンツを着たときに、柔らかくて包まれているような気分になりましたね。ありがちな、ゴワゴワとした硬さをまったく感じませんでした。ストレッチが全体に効いた印象です。とくに背中部分の縫製が変わったため、腕を横から前へ動かしたときに、まったく違和感がなかったのがとくに良いですね。

動きやすさと共に気に入っているのは、動きが映えるデザインということです。私はプロのインストラクターとして、ユーザーへ滑り方を伝えていますが、動作を大げさにしやすいので、ユーザーへ分かりやすくテクニックを伝えられるのは大きなメリットです。
その点はユーザーからもわかりやすいと評価をもらっています。また、私が大会に出たときの様子を見たインストラクター仲間から、動きがとてもよく分かると評判でした」

 

谷藤が言う動きやすさは生地に使っている「4WAYストレッチ」と「モーションインサート」によるところが大きい。スキーの面白さは言うまでもなく、変化の豊かな斜面状況にあわせて、コントロール下においた疾走感あるスピードだ。そのために体はストレスなく動けなくてはならない。その点この2つの機能はとくに動きやすさに特化している。

「4WAYストレッチ」は縦にも横にも伸びるストレッチ素材で、抜群の動きやすさ。また、ジャケットの背面内側、背骨上部にかかえてレイアウトしたメッシュのストレッチパネル「モーションインサート」は「4WAYストレッチ」と相まって背中の突っ張りを解消する。肩周りにかけての自由な動きを促すだけでなく、メッシュ素材ということで、激しく動いた際の効率的なエアフローも促してくれる。逆に体が動かしていない時はこのメッシュが縮むことで、ウエア内の空気を逃さず、暖かな状態を保ってくれる。背中を暖めると、体全体に波及するため、この機能は大変有効だ。

しっかりと中綿が入っているのがよく分かるウエア内側。「モーションインサート」は背中の黒い部分だ。このメッシュのスレッチパネルが体の動きにあわせて伸縮。止まっているときはパネルが閉まり暖かさを逃さず、動いているときは暖かい空気を開いたパネルから外へと排出し、蒸れにくくする。ジップポケットやメッシュポケット、携帯電話用3Dメッシュポケットなど収納力も抜群。ウエア内が暖かいため携帯電話のバッテリー消耗を抑えられる
メッシュパネルはこのように伸び縮みするストレッチ性能が備えている。どんな激しい動きにも十分に対応する

快適に滑るための機能が充実

他の機能にも言及している谷藤のインプレッションの続きを聞いてみよう。

「私は身長が164cm、72kgのがっしりとした体型です。ジャケット・パンツ共にユーロMサイズを着ています。
パンツにはサスペンダーが付いていますが、私は普段からしていません。理由は動きやすさに重きをおいているので、肩にテンションをかけるより、ウエストで固定しているほうが気にならないからです。取り外しできるのは便利ですよね。
プロのインストラクターなので、レッスン中は動いたり止まったりを繰り返します。そのため中綿入りは動いていないときに暖かいからとても重宝します。動いたときには通気する「モーションインサート」機能はありがたいですね。
ちなみに、寒い日はアルファライトスエットジャケット、暖かい日はワッフルウールをウエア内に着ています」

海外と日本ではサイズ感の相違があるため、とくにパンツについては日本人の体格にあわせて、人気の高いカラーをジャパンフィットとして採用している。黄緑色のパンツがユーロモデルだが、股下のレングスの長さの違いがよく分かる
パンツのサスペンダーはベルクロで取り外し可能。好みに応じて使い分けられる。長さの調節も簡単で誰でも使いやすい
パンツのベンチレーションは外側に配置。メッシュ素材のため雪の侵入もほぼなし
脇下ベンチレーション。激しい動きが続く時は、ジャケット・パンツともにベンチレーションを開放して、外の空気を積極的に取り入れよう
保温性を重視するために衿は高めに設定。衿元にはフロントジッパーのほかにマチ付きジッパーを備えている。このジッパーが状況に合わせて首周りの通気をこまかく調節できる優れもの
左腕の外側にはICチケットを収納できる小さなポケットが。目立たないからデザインを損なうこともない
ヘルメットにも対応するフードは全方位に渡って調節が可能。フードは取り外しが自由なため、シチュエーションにあわせて使える


中綿入りのため、長距離を歩くバックカントリーにはやや向いていないが、少しのハイク時間で行けるフィールドならば、とくに問題になるようなところはない。

それよりも体の動きを妨げない裁断と柔軟性は大きなメリットだ。深い雪の中を潜って滑ったりするときの上下動のアクションや、段差の大きなコブ斜面でスムーズな下半身の動きを引き出したり、ハイスピードで圧雪斜面を滑るときの切り返しなど、ストレッチ性のあるウエアはスマートな滑りをサポートしてくれるはず。

ジャケットは全3色、パンツも同様に3色だが、パンツに限っては、黒とネイビーの色だけがジャパンフィットになっている。バックカントリーでの滑走は年に1度あるかないか、なによりりも時期を問わずスキー場をアグレッシブに滑りきりたい、そんなスキーヤーにピッタリのウエアだ。

スノーバシンジャケット&スノーバシンパンツ スペック情報

スノーバシン ジャケット SNOWBASIN JKT M

サイズ:XS、S、M、L
カラー:RED/SAPHIR、SAPHIR/KUMQUAT、SAPHIR/NOIR
重量:1200g
57,200円

独自の防水透湿素材「ドライエッジ」は耐水圧20,000mm、透湿性20,000g/㎡/24h。中綿にはプリマロフト®シルバーは断熱性がありながら通気性も両立した素材。ユーロサイズのためシルエットはやや丈長で少しゆったりとした作りになっている。

スノーバシン パンツ SNOWBASIN PT

サイズ:XS、S、M、L
カラー:BLACK-NOIR、SAPHIR、BIRD
重量:1000g
36,300円

パンツもジャケット同様に4ウェイストレッチの防水透湿素材「ドライエッジ」を採用。画像の左2点が日本人の体型にあわせてカッティングしたモデルになる。

Photo/Shouta Kikuchi

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