辺境の地を滑りながらも国内でビギナーフレンドリーなBCツアーも開催するプロスキーヤー・山木匡浩(やまきただひろ)。そしてフリーランスライターとしてスキー・スノーボードの雑誌に寄稿しながら、北海道でアウトドア用品店「Transit東川」を営む林 拓郎(はやしたくろう)。いずれもGIROを愛用する2人の滑り手が、なぜこの製品を使い続けているのか。その理由を明らかにするべく、「ゴーグルを選ぶとき」というテーマを投げかけてみた。
Photo/Yukinori Otsuka
ゴーグルを実用品として見据えるなら
林:山木さん、今日はよろしくお願いします。
山木:こちらこそ、よろしくお願いします。
林:早速ですけど、山木さんのGIRO歴ってどのくらいですか?
山木:そうですね、GIROがスノーゴーグルを作るぞってなった初年度からなので、もう15年ですね。
林:それだけ長く、プロのスキーヤーが道具としてGIROを使っていらっしゃる。そんな山木さんから見て、ゴーグル選びのポイントってどこにあるとお考えでしょうか?
山木:いきなり核心にきましたね(笑)。 まぁ、ひとつ思うのはゴーグルってスキーやブーツと一緒で、完全に実用品。どれだけ雪の上で役に立ってくれるのか、ですよね。
林:たしかに。
山木:だからいちばん大事なのは機能性だと思うんですよ。
林:最短距離で回答いただきましたね(笑) 。そこは間違いないと思います。で、いっこ思うのがゴーグルって、機能性と商品性の2つの面があるけど、製品を選ぶときにそれを一緒に話しちゃってるじゃないかってことなんですよ。
山木:あ~、それはすごく分かります。商品性って見た目とか値段とかブランドイメージっていうことですよね?
林:ですです。

山木:で、機能性の部分に視界とかレンズの特性とか、曇りにくさ、フィット感みたいなことが入ってくるってことですか?
林:そうなんですよ。その2つは全然別の価値観で話さないといけないのに、どうも境目なく混ざり合ってるような気がするんですよ。だからユーザーも自分が求めてるものを、上手く整理しきれてないんなじゃないかなーって。
山木:うんうん。
林:自分でお店をやり始めて、ダイレクトにお客さんと話すようになってから気づいたんですけどね。
山木:その視点はすごく分かりやすいと思いますね。
林:山木さんとして、GIROっていうのはやっぱり機能性に軸足置いてるって印象ですか?
山木:もろにそうですね。もちろん今季出てるCONTOUR、AXIS、METHODのFenderコラボモデルみたいにデザインがすごくかっこいい製品もあるし、BLOKみたいなコスパの高いモデルもあって商品性もすごく大事にしてると思います。けど、そういった製品のすべてに通底しているベーシックな機能のレベルが高い。基本的な作りの良さがワンランク上、みたいなところがありますよね。
林:機能性で土台を作って、その上に商品性を乗せてるイメージ?
山木:ですね。だから商品性で選んでも間違いはない。けど、機能性の部分をきちんと知って選んだら、本当に使いやすいゴーグルにたどり着けるし、ゴーグルってこんなに見やすかったんだ!っていう未知の世界に連れてってくれると思いますよ。
機能性に直結するGIROのスペック
林:ということで、話は機能性に寄せていこうかと思うんですけど。
山木:はい。
林:視界、レンズの特性、曇りにくさ、フィット感っていう4つを機能の柱としてお聞きしたいんですけど。
山木:うん。
林:山木さん、ずっとCONTOURを使っていらっしゃるじゃないですか。あれはどのへんに理由があるんですか?

山木:CONTOURはとにかく視界が広いんですよ。EXV+テクノロジーっていうフレームレスデザインの技術を使ってるんですけど、横方向の視界は裸眼と変わらないですからね。やっぱり滑ってるときって、細かくいろんな所を見るんですよ。そのときに眼球だけを動かして見れたら最高で。もしもフレームが視界に入って見えづらいからって首を動かしたりしてたら、いろいろ間に合わなくなるんですよね。
林:それはプロならではの意見ですね~。
山木:いやいや、みんなだって意識してないけどそうなんですよ。滑ってるときって、思ってる以上に目は動いてますから。たぶんCONTOUR使ったら、今までのゴーグルって視界狭かったんだ~、ってなると思いますよ(笑)
林:なるほど~。
山木:林さんは? 機能的に気に入ってるところってどこですか?
林:僕はVIVIDレンズがめっちゃハマったんですよ。ギラギラに晴れてるときでも眩しくない。そのまま夕方まで滑っても何にも不便を感じない。とにかく一枚のレンズでカバーできる範囲がものすごく広いんですよね。
山木:それはありますね。あとVIVIDって、曇りや吹雪のフラットライトのときに見やすいですよね。
林:そうなんですよ、条件が悪くなればなるほど良さが出てくる。弱い光の中でコントラストを強調してくれるから、ナイターとかも風景がくっきりして見やすくなりますよね。
山木:実は僕、暗いレンズが好きで。VIVIDが出る前からですけど、曇りや吹雪のコントラストがつきにくい時には、ちょっと暗いレンズでトーンを落としてたんですよ。
林:そうなんですか?一般的な方法とは逆の感じですよね。
VIVIDレンズの技術は、コントラストを高めるブルー光線は取り入れ、害となるUV光線をブロックすることで効果的にブルー光線を操作。巧みにブルー光線を操ることでVIVIDレンズは視界のかすみを取り除き、視界をよりクリアにするため滑走ラインをしっかりと見極める。 目の疲れを抑え、体の反応を良くし、信頼感を高め、色飽和を起こさずに正確なビジョンを与えてくれる。さらに詳しい内容はこちらの映像を
山木:フラットライトで見えないからって明るいレンズ使うと、視界の中で一番明るいところに目が馴染んじゃうのか、暗いところが見にくい感じなんですよね。で、VIVIDが出てきたときに試してみたら、ちょっと暗いレンズの見え方がものすごく好みの感じで。それまで以上に暗いところの陰影がはっきりしてたんですよね。
林:これはいいのが出た!ですか。
山木:ホントそう。自分が欲しかったのはコレだ!って。で、そのときに分かったのが、自分は暗いレンズを選んでたけど、暗さじゃなくて光の透過率の問題だったんです。ただ暗いだけのレンズは影になっているところも見えなくなるけど、透過率を下げたレンズは暗いところから明るいところまで全域に渡って光を抑えてるだけで、暗い中にも陰影があるんですよ。こういう自分の好みの見え方が実現できてるっていうのは、僕にとってはすごく大事なことなんですよね。
林:なるほど~。
山木:林さんは、そういうのありますか?
林:僕はVIVIDのOnyxっていう晴天用のレンズが大好きなんですけど。これ、見た目は赤いレンズなんです。かけた瞬間には景色が夕焼けみたいになるんですけど、10分もすると、自分が何色のレンズを付けてるか忘れちゃうんです。それくらい色の偏りがないし、景色の色調が自然なんです。
山木:うん、その感じはよくわかります。
林:ブランドによっては色のついたレンズで見てる、って感じが一日中拭いきれないゴーグルもあるんですけど、GIROはその色の偏りがない。僕は写真もとるので、色の偏りがないのはすごく助かってます。
曇りにくさを実現するエアフロー
山木:林さん、ふだんメガネですけど、滑るときはコンタクトですか?
林:いえ。僕の目、複視っていって物が二重に見えるんですよ。これはメガネじゃないと矯正できないんで、滑るときもメガネです。

山木:じゃあゴーグルの選択肢ってけっこう狭くなりません?
林:実はそれもGIROを選んでる理由の1つで。GIROってほぼすべてのモデルがメガネ対応フレームなんですよ。もちろんメガネの大きさにもよりますけど、何の問題もなくメガネ使えてます。
山木:そうなんだ~。でもメガネが曇ったりはしないですか?
林:それもエアフローがいいのか、滑ってるときはほぼないですね。ハイクアップでゴーグルかけたままだったら曇るかもしれませんけど、普通に使っててメガネが曇って困ったことはほとんどないです。
山木:たしかに僕も、ゴーグルが曇って困ったことはないかな......。
林:山木さんの場合、撮影で天気が変わりそうだから急いで登り返し、とかもありますよね?
山木:そういうときはなるべくゴーグルはずしますけど、つけたまま登っててもあんまり曇ったことないかもしれないですね。まぁ、僕が使ってるCONTOURだったらレンズがマグネット式だから、レンズだけ外しちゃうって手もありますしね。
林:山木さん、ヘルメットもGIROだから余計に曇りにくいのかもしれないですよね。
山木:それはありますね。最近だとゴーグルメーカーはヘルメットを作ってるし、ヘルメットメーカーはゴーグルを作り始めてるし、ゴーグルとヘルメットがワンセットになってるって印象あるじゃないですか。同じところが作ってるから形の相性は間違いないですよね。あとはヘルメットに取り込んだ風をゴーグルに上手くまわして曇り止めにしたり、ヘルメットの厚みとゴーグルのストラップの付け根の高さがちゃんと合ってたり。
林:細かい工夫がちゃんといかされるようになってるんですね。
山木:その意味では、ゴーグルとヘルメットは同じメーカーで揃えたほうが間違いはないですよね。ついでに言えば、ヘルメットは必須。やばい!ぶつかる!って思ってからヘルメット買いに行けないですからね。

林:こんなのかぶってたけど、何の役にも立たなかったな、高い買い物してムダだったな~って笑ってもらうのがいちばんなんで。
山木:ホントそうだと思います。
良し悪しではなく、相性を確かめたい
山木:僕はGIROのアスリートとして活動しているからGIROしか使ってないけど、林さんはライターでもあるから、いろいろな製品を使うわけじゃないですか。
林:そうですね。
山木:それでも今はGIROを使ってるし、ご自分のお店でもGIROを置いてるでしょ。
林:はい。
山木:それはなにか理由があるんですか?

林:う~~ん、一言でいうと、さっきもお話したように、VIVIDレンズがフィットした、ってことなんですよ。
山木:そのあたり、お客さんに説明することもあるでしょ? どんなふうに話してるんですか?
林:え〜と、ご存知のように、人間の目って赤、緑、青っていう三つ色の光を感じ取ってますよね。で、大きく分けると最近のハイコントラストを狙ったゴーグルレンズっていうのは人間が感じる色の波長に合わせて、赤を強調するもの、赤と緑を強調するもの、青を強調するもの、の三種類に分けられるんです。
このうちGIROがドイツの名門光学メーカー・ZEISS(ツァイス)と共同開発したVIVIDレンズは、青を強調しています。というのも、雪が白く見えるのは、透明な氷をかき氷にしたら白くなるのと同じで、さまざまな色の光を乱反射しているから。雪のホントの色は青なんです。
だからGIROとしては雪本来の色に基づいて明暗を強調することで、曇りや吹雪といった光が弱い状況でも陰影をはっきりさせてクリアにものが見えるようにしています、って感じですかね。
山木:お〜、分かりやすい。
林:まずは赤を強調するもの、赤と緑を強調するもの、青を強調するもの、という特性の差があることを知ってほしいと思ってるんです。どれが良いとか悪いとかじゃないですし、どれが高性能とかってことでもないです。
人間の目の特性は個人や人種によって違うし、見え方に好みもありますから。自分の目の特性に合ったゴーグルレンズを選ぶことができたら最高ですよね。
山木:うん、確かにそうですよね。
林:なんですが、困るのは、雪の上でどんな見え方になるかっていうのはお店でゴーグルを顔に当ててみてもわからないんですよ。
山木:それはそうですね。
林:最近はお店でも、ゴーグルには触らないでください、ってところも見かけるようになりました。ネット通販も多いし、実際に商品を手に取る機会が減ってると思うんです。そうなるとゴーグルを選ぶ場合でも、ブランドイメージやデザイン、値段、そして評判っていう商品性の情報に頼ることになっちゃうんですよね。
山木:うんうん。
林:だけどやっぱり大事なのは機能性だと思うんです。そうなったら実際に雪の上で使ってみて、ユーザーが自分で、これは好みの見え方だ、このゴーグルは曇りにくい、このフォームは長時間使っていても不快感がない、みたいなことを判断してもらうしかないと思ってます。なので「Transit」ではGIROのゴーグルレンタルをしてるんですよ。
山木:あ~、それはいいですね~。

林:あくまでもお店で持ってるごく一部のモデルだけですけどね。それでもVIVIDレンズをいつものフィールドで、ご自分のゴーグルと比べてもらえば、果たしてGIROが自分に合ってるのかどうかを確かめてもらうことができますし、機能性の話も納得してもらえると思ってます。
山木:まさに山に近いショップだからこそできるサービスですね。
林:山木さんがおっしゃったように、ゴーグルは実用品だと思います。それなら実際に試してみたいっていうのが、買う側の気持ちだと思うんです。雪の上で使ってもらって、GIROのゴーグルがどのくらい自分に合うのかを確かめてもらう。青を強調するVIVIDレンズの見え方が、自分にはどのくらいしっくりくるのか。それが分かるだけでも、ゴーグル選びの正解にはグッと近づけると思うんですよね。
長く使うための小さな気遣い
山木:あとさ、いっこ気になってることもあって。
林:はい。
山木:滑った後、ゴーグルを車のダッシュボードの上に置いて、デフロスターの風をバンバンに当てて乾かしてる人を見かけるんですけど。
林:うん、よく見ますね。

山木:GIROに限らずですけど、あれ、やめたほうがいいと思うんですよ。デフロスターって熱風なんで、場合によってはフォームの接着剤が劣化しちゃったりするんですよね。
林:なるほど。っていうか、そもそもそんなに急いで乾かす必要ってなくない?ですよね。
山木:そうなんですよ。次に滑るまでに乾けばいいわけですから、もっとゆっくりでいいはずです。実際に使う状況に近い温度で乾かしてやったほうが劣化はしにくいはずですから。その意味では、もっと気温の低いところ、たとえば車の後ろの席とかでいいと思うな。
林:滑り終わって雪がついたままとかは?
山木:それは良くないでしょうね。ダブルレンズの間に湿気が入っちゃったりすると面倒ですから。取れる雪はとりのぞいて、低めの室温でゆっくり乾かすのがおすすめですね。
林:優しく扱う、ってことですね。
山木:そうなんです。ちょっとのことなんですけどね。濡れたレンズを拭くときも、使ったゴーグルを乾かすときも、夏の間の保管も、少し気を使って製品にストレスを与えないようにしてやる。それだけでだいぶ長持ちしますから。
林:決して安くはない買い物ですもんね。
山木:ホントそうです。僕、場合によっては予備を何個も持っていって次々変えるっていうくらい、ゴーグルをめっちゃ厳しい状況で使うこともあるんですよ。そうやっていろんなことしてきたからわかります。ていねいに扱ってあげれば、ゴーグルは長持ちします。
林:そうやって、機能性が高いものを長く使い続けたほうが気持ちいいし。
山木:何より機能性が高いものは、滑ること自体がワンランク楽しくなりますよ。だから本当に自分に合ったものを、機能性で選ぶってことを考えてみてほしいなって思います。
林:なるほど、ありがとうございました。
山木:この冬もいっぱい滑りましょう~!
山木匡浩も愛用するGIROの人気モデルCONTOUR|コンツアー

裸眼とほぼ同じ視界を誇るフレームレスモデル。GIRO独自のEXV+テクノロジーによって、フレームの存在を感じさせない自然な見え方を実現した。レンズはGIROならではのVIVIDレンズを搭載。雪本来の色を際立たせることで影のコントラストを強調して、曇りや吹雪の日でもクリアな視界を確保する。また、磁石を使ったクィックチェンジレンズ交換システムは簡単な操作でレンズ交換を叶えながら、転倒時にもレンズが外れないタフさを備える。スペアとして曇天用レンズが付属。
教えてくれた人

山木匡浩
北海道札幌市在住。2000年の北米デナリ(6,190m)をかわきりに、2006年の南米アンデス・ピスコ峰(5,475m)、2010年南米アンデス・ペケーノアルパマヨ(5,370m)など、世界のビッグマウンテンを滑降。その一方、国内ではテクニックキャンプやビギナー向けの深雪講座を開催するなど、スキーカルチャーの充実にも尽力。さまざまなDIYに興味を持つ傍ら、古いクルマ好きとしても知られる。
林 拓郎
長年、スノーボード、スキー、アウトドア雑誌を中心に編集や執筆、フォトグラファーとして活動する。滑ることが好きすぎて2014年に北海道へ移住し、旭岳の麓の東川町に旅とアウトドアのギアストア「Transit東川」を開業。これまでに培ってきた深い知識と経験をもとにセレクトしたプロダクトが多く並ぶ。Instagramの各投稿の詳細な説明を見ると、そのスタンスは一目瞭然。朝から営業しており、フィールドへ行く前に立ち寄れるのも嬉しい。