シーズンの最中、早くもメーカーによる来季’2023-24シーズンのニューモデルがお披露目される展示会が各所で開催されている。今回は、バックカントリー滑走に欠かせないスキンで有名人気のブランドPOMOCAの話題を「SNOW SPORTS合同展示会」(2月14~日開催@パシフィコ横浜)で聞いてみた。
POMOCAはスイス発のスキーシールのトップブランドとして、創業以来80年にも渡って世界中の山岳スキーレースのアスリートをはじめ、山岳ガイドや山岳レスキュー隊など山のプロフェッショナルたちに選ばれてきた。近年のバックカントリームーブメントのなか、日本でもその存在感は増すばかりだ。
すべての商品名を変更し、わかりやすくなった!
’23-24シーズンのPOMOCAの大きな変化は、まず何よりすべての商品名が変更になったこと。今まで名前から商品の特徴もつかみづらい、ややこしい名前だったものを、ユーザーにわかりやすくシンプルに変更したのだ。
例えば、POMOCAシールで最も人気の高いモデルは「CLIME」カテゴリーの「CLIME PRO S GLIDE」という名前だったが、CLIME(登る)PRO(プロ仕様)まではいいが、「S GLIDE」が何を言わんとしているか、なかなかわかりづらくモデル名を覚えるののも大変だった。一言でわかるようにカテゴリー名を「CLIME」から「TOUR」とし、モデル名を「TOUR PRO」とシンプルにわかりやすくしたのだ。
今まで「CLIME2.0」だったものは2.0がわかりづらいので、エントリーモデルという意味で「TOUR EXPLORE」という名前に一新した。「FREE」カテゴリーは名前はそのままだが、これまでの「FREE2.0」は、2.0ではわかりづらいので、エントリーモデルという意味で「FREE EXPLORE」という名前にした。「FREE PRO 2.0」は「FREE PRO」になった。
グライド&グリップ力が数値で明確にわかるようになった!
'23-24シーズン、大きく変わった点はまだある。これまでカタログには掲載していなかったグリップ&グライドの数値を新しく掲載するようになったことだ。この数値はPOMOCA社がテストをして、1時間あたりにスキンを滑らせてどれだけカロリーを消費するのかを「グライド力」、1cm²あたりにどれだけグリップするかを「グリップ力」としている。
例えば、一番人気のTOUR PROだと1時間あたりのカロリー消費は213kal/hだが、一番グリップ力の高いナイロン100%のFREE EXPLOREだと、1時間当たりの消費カロリーが294kal/hと、その差は歴然だ。つまり、TOUR PROはより歩いて(登って)も体力の消耗が少ない。FREE EXPLOREはグリップ力が高く、滑らないため登りやすく、エントリー層には扱いやすい、ということが数値からもわかる。
TOUR PRO
65 % モヘア/35%ナイロン
GLIDE:213Kal/h
GRIP : 52g/㎠
Width : 120mm ¥30,800(税込)| 140mm ¥34,100(税込)
POMOCAのベストセラーモデル。ロングツアーで高い撥水性と耐久性を誇る。
FREE EXPLORE
100%ナイロン
GLIDE:294Kal/h
GRIP : 54g/㎠
Width : 123mm ¥30,800(税込)| 140mm ¥34,100(税込)
長時間のシール歩行時も、ナイロン100%効果で安定したグリップ力を発揮する。
TOUR PROに負けない人気を持つ 「FREE PRO」では、グライド力は200kal/h、グリップ力は45g/cm² で、「TOUR PRO」の213kal/hよりもグライド能力がアップして、滑りがよくなる。より滑らかに低エネルギーで進めるので、一歩の距離は数センチの違いでも、ロングツアーで何時間も歩けば大きな差になる。対してグリップ力は52/cm²→45/cm²と少し落ちるが、ここは経験にモノをいわせてカバーしようというところ。
FREE PRO
Formula POMOCA(ナイロンモヘアミックス)
GLIDE:200Kal/h
GRIP : 45g/㎠
Width : 123mm ¥30,800(税込)| 140mm ¥34,100(税込)
フリーライドスキーヤー向けの軽量かつコンパクトなナイロンモヘア
スキンの持つ性質・能力が数値から明らかにわかるようになったことで、ユーザーがバックカントリーで何に重きを置くかを考慮して選びやすくなり、実に都合がいい。しかし数値だけではその差が感覚的にわからない部分もあるため、実際にショップなどでモノを手に取ってみるといい。厚みや頑丈さが大きく異なるため、実感としてその違いがわかるだろう。
山岳ガイドレスキュー隊がシールを携帯するなら、嵩張らないほうが断然いい。TOUR PROは、容量という点でも非常にコンパクトで小さくなる。また、ロングツアーや1日の中で何度も登り返すときも、撥水性や耐久性が高いものがいい。そう考えると必然的に山のプロフェッショナルの選択はTOUR PROになろう。一方で、FREE PROはフリーライド向けで、登ったり歩いたりは少なめで、基本滑走メインのバックカントリーユースに適しているだろう。
最強「CLIME PRO S GLIDE」が毛の配合率を変えて「TOUR PRO」に
日本でも世界でもベストセラーの「CLIME PRO S GLIDE」が「TOUR PRO」と名称変更とともにアップデートされた。毛の配合率が、これまでモヘア:ナイロンで7:3だったものが6.5:3.5と、モヘアが少し減ってナイロンが増えた。これによって頑丈でグリップ力が向上。その分、グライド力がダウンするかのようだが、わずか5%の違いに過ぎず、むしろ安全面を配慮した仕上がりとなった。
最後に追加情報
展示会場にはサンプルがなく、写真がお見せできなくて残念だが、’23‐24シーズンは、すべてのアイテムに対して、トップとテールのアタッチメントが、これまでのプラスチック製から割れない頑丈なスチール製のものになったことも、追記しておこう。
▼POMOCA説明動画(行方さん)