今季最注目の新機能「BOA®」搭載のK2フリーライドブーツ「Mindbender」。雪山で酷使したガイド3名のインプレッション

Mindbenderが滑り派から支持を集める理由

高い滑走性を持ちながら、歩行もしやすいブーツとして、滑り重視派のスキーヤーから支持の厚いK2ブーツ「Mindbender」。
そのブーツのなかでもフレックス130と120に、BOA®フィットシステムを搭載したモデルが登場した。

「Mindbender」が滑り派に人気の理由はいくつも挙げられるが、最大の要因は滑走性能を損なわないシェルの作りだ。部位ごとに硬さや厚さの異なる4種類のTPU素材を配置することで、力を余すことなくブーツに伝えられる。

ちょうど4種類の素材を使い分けているのがわかる。もっとも硬い黒いTPUは足裏全体を包んでいる
黒いTPU素材は表面がざらついた感触。適材適所な素材を使うことで、滑り手の力を的確にスキーへと伝えられる。シェルは熱成形ができるため、それぞれの足に余すことなくフィットする


130を例にとると、黒い部分が最も硬く厚いTPU素材、次いで硬いのが青い部分。少しわかりにくいが薄いグレーの甲部分は薄く柔らかいTPU素材を使いスムーズな脱着を手助けしてくれる。クリーム色のアッパーシェルには寒さによる硬度変化を受けにくいペバックスを採用、という配分。
「Mindbender」は機敏な反応を察知し力を伝え、軽く、使いやすいという三位一体なブーツなのだ。

ウォーク モードは50 度の可動範囲がある。後部への可動域も広いため歩きやすい


BOA®を搭載したことによるメリットはどんなところ?


24季、スキーブーツへ新たにBOA®フィットシステムを採用したブランドはK2を含めて4ブランドある。そのうちウォークモードがついたブーツにBOA®フィットシステムを採用しているのは、ATOMICとK2だけだ。

正面から見たBOA®フィットシステム。4箇所の支点から足全体を包んで締め込む
ワイヤーは19本の芯の周りを90本の細いワイヤーで覆うタイプ。直径は1.7mm。最大245kgの引張り強度を持つ



BOA®フィットシステムはワイヤーレースで足の甲からつま先部分を締め上げていくもの。
バックルを留め具に引っ掛けて締める方式は親指から小指にかけて引っ張られるような感覚があった。それに対してBOA®フィットシステムは足全体を包み込むようなフィット感が特徴。
かかとがブーツのヒール部により馴染み、ヒールロックの向上によりブーツからスキーへの高いパワー伝達可能となり繊細なエッジコントロール性能が高まるメリットもある。
また、BOA®ダイヤルを逆に回すと緩み、1クリック0.25mmの微調整は驚異的だ。
バックルシステムと比べ、BOA®ダイヤルを回すだけというシンプルな操作ゆえ、過酷な状況下でも確実に機能する強みがある。

また、歩いて滑るを繰り返すバックカントリーではブーツを触る機会がとても多い。訪れる場所は行くたびに状況は変わるため、”いつもと同じのように”とは、なかなかいかないはずだ。
ほんの些細なことも手間となり、それが積み重なればちょっとしたストレスへと繋がる。
たとえば、バックルが雪まみれのときに、付着した雪が凍ってスムーズにはまらない。歩いている最中に足先がキツくなってすぐ簡単に緩めたい、またはその逆パターンなど。
穏やかな天候時ならいざしらず、悪天候時にそうした調整にかける作業は地味に面倒になってくる。

それが、BOA®フィットシステムならワンアクションで済ませられる。滑るときは余すことなくフィットし、歩くときはキツすぎず緩みすぎないちょうどいい状態をキープしやすいのだ。


ここからは、昨シーズン「MINDBENDER 130 BOA®」を使用していたガイドの声を聞いてみよう。毎日のように雪山を歩き滑るからこそ感じとったフィーリングを参考にしたい。

「ロアシェル全体が包み込まれる印象」半田譲ガイドの声

プロフィール
宮城蔵王を中心に南東北エリアをガイドするZAOC代表。幼少期から蔵王を滑り遊びつくす。プロスキーヤー、バックカントリーガイドといった顔のほか、FWTジャパンのアドバイザーもつとめ、年齢を重ねてもアグレッシブな滑りの追求は欠かさない。
ZAOC https://steep.jp/guideclub/zaoc/

「履いたのは3月上旬から4月下旬までの約2ヶ月間。20日ほど雪上で試しました。足入れをした最初の印象はバックルモデルとさほど変わらないものでしたが、ワイヤーを締めていくと、ロアシェル全体が包み込まれる印象がありました。

ダイヤルを回すとワイヤーが動いてミリ単位で締まるのですが、締まり具合の微調整がとてもしやすいんです。バックルは形状的に4段階のどれかで締めますが、BOA®はそれとは比べものにならないほど調整できフィットします。足の前部分の脇や上も締まる感覚がとても好みです。
バックルタイプはしっかり締めても、ちょっと遊びがでて、締めているのに締まりきってない感触がずっとありましたが、そういったことから開放されています。
個人の好みもあるのですが、僕の感覚的にはとても好きです。

回しやすいようにダイヤルはゴムが巻かれ、力を忠実に加えられる
ヌッと突き出たダイヤル部分が、これまでのスキーブーツらしからぬ印象をもたらす。このあたりも目新しさの一因か



僕は頻繁に第2バックルを開放、調整します。とくにスキー場でリフトに乗るときは全開放するのですが、ワンアクションで開放できるシステムはとても楽ちん。ハイクアップや滑走のときの切り替えも同様に簡単です。

物を手にする前は『大丈夫かな〜』というのは正直ありました。ただ実際に手にして使いはじめると、ワイヤーの強度はあるし、ぶつけて取れてしまったダイヤルもすぐに再装着ができる。
2ヶ月間使いましたけど、不具合はありませんでした。見慣れていないだけかもしれませんが、いままでのスキーブーツぽっさがないのも、目新しさの一つだと思います」

「作業のひと手間が省けてスムーズに行動できる」五十嵐和哉ガイドの声

プロフィール
モーグル全日本チャンピオン、ナショナルチームオリンピックコーチ、三浦雄一郎氏と共にエベレスト登頂など数々の経歴が光る。現在はかぐらスキー場を拠点にBCガイド、登山ガイドとしてとくに初中級者へパウダー滑走の醍醐味を伝えている。

かぐらパウダーステーション https://steep.jp/guideclub/kagura-powderstation/


「1月中旬から5月中旬までの4ヶ月間、100日程度履きました。バックルタイプとBOA®フィットシステムが大きく違うひとつは、バックルを締める手間や作業が少ないことです。

バックカントリーでは歩く前のセッティング、滑るときには、シールを外して、ウォークモードから滑走モードへ切り替えて、バックルを締めてといろいろな作業があります。その作業中に、バックルがきれいにハマるように雪を払い、場合によっては氷を剥ぐといった作業が、BOA®なら必要ありませんでした。ストレスとまで言わないけど、使用頻度が多いほど、こうした作業の手間が省けるのはすごく良いです。

また、ロアシェル前部分を締める強さが絶妙なのが良いですね。バックルは締められる場所や強さがあらかじめ決まっていますよね。それがワイヤーシステムならダイヤルのワンクリックで約0.25mm締めたり緩めたりできます。これならば、フィット感をちょうどいいところにセットできるんですよ。

スキー場内外で4ヶ月にわかって使い込んだブーツ。不具合は一つもなかったという。
ワイヤーを締め込んでいく様子。ゆっくり回すとカチと1ダイヤルずつ締めたり緩めたりできる。ダイヤルを引き上げれば瞬時に開放する



あとは、足首のホールド感が高まっている感触があり、足全体が適切に締まります。そのことが直接的に関係しているかどうかは定かではありませんが、ターン始動時に内足の雪の捉えが早くなった印象があります。
4ヶ月使い込み、フィールドで不具合が生じたことは一度もありませんでしたよ」


「気密性も高まり、渡渉時の水の侵入が減った」佐伯岩雄ガイドの声

プロフィール
立山の麓に生まれ育ち、幼い頃から登山や山スキーに親しむ。競技スキーではインターハイに出場。競技カヌーにも没頭し、国体入賞を果たしている。現在は立山エリアから白馬、妙高まで広い範囲でバックカントリーをガイドする。日本山岳ガイド協会の理事をつとめ、若い世代のサポートにもあたっている。

チロル https://steep.jp/guideclub/tyrol/


「12月下旬から3月までの約3ヶ月間、使い込みました。フィット感はこれまでにない感覚があり、まさに包み込まれるという表現が適切ですね。バックルからワイヤーへと変わったことで、ねじれ方向への剛性が高まった印象を受けました。それから、ロアシェルの気密性が高まったおかげで、渡渉などで水の侵入が少なくなった気がします。

バックルブーツは留め具の場所を決めればワンタッチで締めることができますが、BOA®は全開放してしまうと締めるまでにダイヤルを回す時間が多少かかってしまう。
その際、BOA®はどこまでも締まっていくので、きつく締めすぎないような注意は必要です。ただ、それを差し引いても足全体をくるむような絶妙なフィットフィット感は素晴らしい。

2箇所のバックルで調整するのではなく、ダイヤルひとつで足全体のフィットをまかなう
バックルがなくなったことでシェルの剛性にもやや変化をもたらしている気がすると話す佐伯岩雄



バックルがないから、シェルの成形に干渉することがなく、あたり出しといった成形に対応しやすいのもポイントだと思います。また、インナーブーツにもBOA®を使っていてよりフィット感は高まっています。ただ、ダイヤルによって若干高さがありますが、使いこむうちに慣れるでしょう。

シーズンの大半を使っていましたが、不具合と言えるようなことはほぼありませんでした。厳冬期にダイヤルが凍り開放しにくいときが稀にありましたが、一度締める方向へ回して氷を割ると開放でき、大きな問題ではありませんでした」

壊れても無償でパーツ交換「BOA®ライフタイム保証制度」

「BOA®フィットシステム」は、アルパインブーツの製品寿命の期間に限って保証制度が付帯している。万が一、ダイヤルやワイヤーが破損した場合も、BOA®公式サイトから無償修理キットを取り寄せられ、自分で修理することができる。欲しいパーツがあれば取り扱いショップにて交換可能となっている(別途取付工賃が発生する場合あり。詳しくは各ショップにて)。

MINDBENDER 130 BOA®
フレックス:130
ラスト幅:MultiFIT Last (97-100mm)
重量:1745g
サイズ:24.5-30.5cm
13万2000円

MINDBENDER 120 BOA®
フレックス:120
ラスト幅:MultiFIT Last (97-100mm)
重量:1695g
サイズ:24.5-30.5cm
12万1000円

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K2 JAPAN

公式サイト:http://www.k2japan.com/

公式SNS:|https://www.facebook.com/K2Skis.japan/
|https://www.youtube.com/channel/UCFBwopU5_0whIhXEdp4Lsng

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