米コロラド州BOA本社潜入取材 スキーブーツの新革命BOA®フィットシステムが注目されるポイントはコレだった!

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【開発者インタビュー】緻密なフィット感で快適性とパフォーマンス性能がアップ! 画期的システムの3つのポイントとは?

本社メンバー ブランドマーケティングのカースティさん(写真左)、イリヤさん(写真中央)、アダムさん(写真右)

ではここで、改めて画期的なシステムのについてそれぞれのポイントについて、開発に携わった担当者たちから直接聞いてみた。

1. BOAが目指したのは締めるではなく「足を包み込むフィット感」

これまでバックルで締める、といったブーツの仕組みは足を下向きかつ一方的な圧力がかかっていた。対してBOA社が目指したのは「足を包み込む」というフィット感。ワイヤーで締めることで足全体的を包み込みフィットさせるので、バックルの圧力による痛みや力の分散が軽減。より快適なブーツ内環境が整った。同時に、ダイヤルによる緻密なフィット調節が行えることから、ヒールロックの向上にも繋がっている。よりフィットした安定感から自信を持ったターン始動、そしてブーツからスキーへのダイレクトなパワー伝達が実現し、エッジ・トゥ・エッジのコントロールが向上した。

イリヤさん:この製品の利点を感じるには、実際に履いて滑ってみないとわかりづらいかもしれません。均等な圧力分布、改善されたヒールホールド、そしてターン開始やスキーでのパワー伝達にどのようなメリットがあるのか、言葉で説明を受けただけでは信じられないことばかりです。実際に店頭で、何より重要な雪上で試してみるまでは、理解することが難しいでしょう。アルペンスキーブーツという市場において、全く新しいシステムを打ち出したからこそ、発売と同時にどれほどパフォーマンス力が上がるのかというテスト結果も公表することが必要と感じ、テストデータは具体的な数値まで公表しています。

アダムさん:BOA®フィットシステムの良さは直感的に履けるという点です。これは私が興味深く思ったことですが、バックルタイプのユーザーはどうも締め付けすぎてタイトにする傾向があります。キツく締めるために必要以上に全てガッチリ締め上げて滑る。すると「あれ締めすぎちゃったな」って感じて緩める。十分に締まっているのにキツくしすぎている。そんな方々がBOA®のブーツを履くと、「そこまでキツくする必要はないね」と感じるのです。BOA®ブーツは、従来のブーツより快適に感じるからです。ですが、設計上は自分の好みのタイトさになるよう締め上げれるようにはしています。キツく締めすぎて壊れない限りはね(笑)

2. シェルの硬さに対応するため一から開発したアルペン向けフィットシステム

アルペンブーツに搭載するとプロジェクトが動き出した初期は、製品化されているスノーボードブーツのBOA®で試していたが、まるでアルペンブーツのシェルの硬さには耐えられなかったという。そこで一から見直し、新たなシステムを生み出した。

イリヤさん:以前より販売している、スキーモなどで使用されるマウンテニアリング用のBOA®とは、本当に全く異なるものです。使うブーツのシェルの厚さも違えば、スキー板も異なります。今回のアルペンブーツ用ではBOA®のワイヤーがスキーのエッジ部分に接触する可能性があるので、より強力で耐久性があるものになり、その他のダイヤルやガイド(留め具など)も全て新しいものを開発しました。開発はほぼゼロからのスタートとなったので、その結果完成に5年以上もかかりました。

3. フリースキー、グルーミングどんなシチュエーションでもトップアスリートが満足できるフィット感

左はアルペンレーサーのベンヤミン・ライヒ、右はフリースタイルスキーヤーのサム・クッチ

開発テストは53人のBOAフィールドテスターたちと2シーズンに渡り、アメリカ各地とオーストリアで実施。どの雪質でも、どの滑りのスタイルでも通用する製品を作り出すため、さまざまな条件下でフィールドテストを行なっている。2度のオリンピック金メダルを獲得したアルペンレーサーのベンヤミン(ベニー)・ライヒは開発当初から深く関わっている。ベニーはテスト初日から「BOAはアルペンスキーにおいて非常に重要なイノベーションになるだろう」と確信していたという。

イリヤさん:アメリカ全土でテストを行いました。太平洋岸北西部やシアトルのマウント・フッドやマウント・バチェラーでテストする場合、コロラドやニューヨーク、バーモントとはまったく違う雪質になります。残念ながら日本ではテストは行えませんでしたが、日本も北海道と長野の雪は違うように、さまざまな環境下を想定してテストしたので、問題ないと思います。昨シーズンに日本のガイドたちも使ってくれていることは大きな証明になるでしょう。

イリヤさん:フリースタイル系ではサム・クッチが自ら好んでBOA®搭載のK2 Mindbenderを使ってくれています。私たちやメーカーが強要したわけではなく、彼自身が興味を持って、そしてフィールドで何度もテストをした結果、選んでくれました。偉大なスキーヤーから選ばれた、ということは私たちにとっても光栄なことです。

アダムさん:私は開発テストディレクターとして、一年ほどオーストリアに滞在して、実際にレースを行うアスリートたちとテストを行いました。ターン始動時の感覚や、雪面からの圧や力が変わることを彼らはフィードバックしてくれました。さらには「ここの足の包み込みが良い」だとか、フィット感においても的確なフィードバックをくれたことは開発に役立ちました。

アダムさん:思い通りにタイトに締めれること、頑丈であること、丈夫で長く使えること、全ての製品の開発テスト時に課していることです。グルーミングされた地形でのテストだけでなく、コブ斜面やフリーライドのような高い位置から飛び降りる、といったシチュエーションでもトライしました。高速域でのスキーと複雑な地形でのより力がかかるといったシチュエーションでもテストを重ね、今回の製品に活かされています。


世界のトップレベルの滑り手たちからも高い評価を受け、今年の冬に多くユーザーの手に渡るBOA®フィットシステムを搭載したブーツたち。多くのエンジニア、滑り手たちの念願ともいえる新システム。今季モデルをゲットした方は、新感覚のフィット感を早速雪上で試してみよう。また、この秋から本格的なPRを始めるBOA社。ライダーたちの滑りやコメントもSNSにて公開中。今後もその動きに注目だ。

教えてくれた人

イリヤ・ミンキン(Ilya Minkin)

BOA Technology, Inc. グローバル戦略企画ディレクター

BOA社に入る前は長らくスキーショップで勤務し、スキーの販売からブーツのフィッティング、レンタル、そして商品の仕入れまで行っていたという根っからの業界人。その後BOA社に入社して15年ほど経過し、さまざまな部署での業務を経験し、現在は将来を見据えた企業としてのビジネス展開の計画を行う。

アダム・アウル(Adam Auell)

BOA Technology, Inc. 開発テストディレクター兼エンジニア

ラボおよびフィールドテストを行い、テスト基準の選定やテスト結果を開発に活かす役割を担い、今回のアルペンブーツ向けBOA®製品開発だけでなく、その開発は多岐に渡る。自身もテレマークスキーヤーであり、雪上でBOA®ブーツを試した1ユーザーでもある。


取材・執筆:福田 愛
取材協力:BOA Technology, Inc.

BOA
公式サイト:https://www.boafit.com/ja-jp
公式SNS:InstagramFacebookX(Twitter)YouTube

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