フルモデルチェンジ2シーズン目の「レンジャーシリーズ」。フリーライドの対象層を広げる充実のラインナップ

Photo/Daniel Honda

レンジャーシリーズが大きく変わって2シーズン目|モデルごとに扱いやすい特性の理由

フリーライドをコンセプトの軸に据え、滑るスタイルや滑走フィールドによって選びやすいラインナップへとフルモデルチェンジ。ウエスト幅によって116、108、102、96、90、84mmと6種類のモデルを展開し、ほぼすべてのシーンを「レンジャー」がカバーしているのが分かる。

このレンジャーシリーズを大きく特徴づけている機能が『シェイプドTI』だ。
チタニウムシートを各モデルごとに幅や長さ、切込みの角度を変えてカットしたものを挿入。幅広いスキーほどセンターを中心にレイアウトしているシートの長さが短くなり、狭いほどシートの長さは前後へ延びる。チタニウムシートが長いほどトップとテールの抑えが効くため、ウエスト100mm以下は圧雪斜面の滑走で安定性をもたらし、幅の太い102mm以上のスキーは真ん中へ寄せることで、あらゆる斜面での滑走に対応できる。

また、センター部分は『フレックスカット』という、シートに切れ込みを設けている。
幅広いスキーほど深く広くとってあり、狭いと細く小さい。フレックスとトーションの硬さをこのカットで調整するのだが、スキーに触れば、一目瞭然で幅の太いスキーほど柔らかさを感じ、幅の狭いスキーほど反応が早く、足元の安定性を感じる。

浮力や軽快さを持ちつつ、滑走の安定感を保つチタニウムの絶妙なレイアウトによって、このシリーズはオールマウンテンでアクティブに楽しめるラインナップが揃っているのだ。
そこで、長年「レンジャー」を使い続けているフリーライドスキーヤーと、「レンジャー」を使い始めて2年目という基礎スキーの女王の2人から感覚を聞き、「レンジャー」の魅力を探ってみたい。

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レンジャーと共にもっと山を楽しんでみたい|使って2年目、栗山未来のケース

栗山未来

1985年生まれ、富山県出身。3歳からスキーを始め、ジュニア時代はインターハイ・国体に出場。その後、基礎スキーに転向。小柄ながらスピードがあり、かつ大きく歯切れの良い滑りを武器に、全日本技術選では4度の優勝を飾っている。現在はGALAスキー&スノーボードスクール主任インストラクター兼GALAキッズスクール代表として活動中。

Instagram:@kuriyamamiku



「スキーを担いで、山を登り、大自然のなかを滑ってみたい」

'21-22モデルからレンジャーを使い始めた栗山未来は、手にした瞬間そう感じたという。
スキー技術選で総合優勝を4度獲得する彼女は、紛れもない基礎スキー界のトッププレイヤー。そんな彼女も、レンジャーは、広大な山を自由に滑ったり飛んだり、好きなようにスキーを楽しんでいるイメージだったという。いつかは乗ってみたいスキーと考えていたところ、鮮やかなピンクカラーをまとった「レンジャー102(163cm)」('21-22モデル)を手に入れた。

普段はガーラ湯沢を拠点に滑っている栗山。降雪の多い地域だけに新雪が降り積もると「レンジャー102」の出番。雪の質や圧雪非圧雪を問わず自由自在に滑ることができる性能の高さに満足度もうなぎのぼりだ。

色に惹かれた'21-22モデルのレンジャー102

「レンジャー102は色に惹かれたんですよ。白い雪山に映えるピンクを想像しただけで胸が高鳴りました。暗い時でも発色がよいので滑っていてもテンションが上がります。
163cmと短いのは、主にガーラ湯沢で使うことが多いからです。越後湯沢は雪が深くて少し重め。さらに距離の短いコースが多い。そのなかで一日中楽しむには、深い雪でもオンピステでもクイックに滑れて、コースが踏まれて荒れたバーンも、このスキーだけで最高に楽しめるはずと考えました。最初は色から。その後に長さと幅を決めました」


と語る栗山。いつも使っているスキーはレーシング用スキーに比べて、「レンジャー102」はウエスト幅が2~3cmも太くなる。そのあたりの感触も聞いてみた。

「ウエスト幅の違いはとっても大きいですが、スキーの力強さや雪を切り裂く感覚は、フィッシャーならではで、とてもよく似ています。
ウエスト幅が普段乗っているスキーより広いので、身体と一緒にスキーが浮遊しながら動いていく感じです。スキーが縦に走ってくれるので爽快感を感じられるのも特徴です。
レーシングスキーは、潜りながら切り裂いてイメージですが、「レンジャー102」は浮きながら切り裂いていく。硬い圧雪斜面でカービングをするときや深いパウダーなど、雪質の違いが出れば出るほど違いは明確にわかります。
でも、どちらも安定感があってどっしりとした足場があります。バランスがとても良くて、それぞれのシチュエーションに合ったスキーですね。雪質やシチュエーションに合わせてスキーを変えると、こんなにも滑りやすいんだということも再発見できて、それも面白いです」

スキーの楽しむ幅が拡がった栗山は、ここ2年、春になると立山へ滑りにいくようになったという。長時間スキーを担いだり、スキンをつけて歩き、自然の斜面を思いのままに滑るのは、スキー場を滑るのとはまったく違った気分は新鮮で心地よいそうだ。どの斜面を滑るのか、そこへ向かうルートはどうするのか、滑るラインは、スピードは、なにかリスクがあったらどうするか、など管理されていない山のなかでは、自らが考えて動く。スキー場でのスキーとは別格の達成感だ。

2023年春はフルモデルチェンジした「レンジャー」で立山を滑った

「山へ行って自然と向き合うと、ちっちゃな悩みなんて全部吹き飛んじゃう感じです。自然に対して夢中になれる瞬間は、やってみたいとわからないなと感じました。レンジャーと共にもっと山を楽しみたいですね」


圧雪斜面の性能が年々高まりスキーが楽しい|レンジャー歴10年。関谷和茂のケース

関谷和茂

1980年長野県小布施市に生まれ。高校生まで競技スキーに打ち込み、卒業後はフリースキームーブメントに惹かれて米国のコロラドへ留学しフリースキーの世界へ足を踏み入れる。現在は、北信州の木島平村を拠点にインバウンドを対象にしたプライベートガイドサービス「SKINAGANO」を主宰しながら、フリーライドのコンペティションへの参加や撮影に勤しむ。https://www.goskinagano.com

Instagram:skinagano

モデルチェンジ以前から「レンジャー」を10年間使い続けている関谷和茂。新しくなった「レンジャー」シリーズでは116(187cm)、108(185cm)、102(176cm)の3タイプを、それぞれのシチュエーションにあわせて使っている。

「116は深雪やリゾート内のツリーラン、108は主にBCで使い、パウダー、アイスバーン、ザラメと雪質を問いません。102はリゾート内での使用が多くて圧雪斜面が最高に楽しいスキーですね」

ディレクショナルのTIとツインチップのFRという2つのラインナップが混在する時代から、フリーライドを志向していた関谷の「レンジャー」への印象はどうなのか? とくに大きな変化を感じた116を中心に語ってもらった。

Photo/Horoya Nakata

「116はサイズ、スキーの幅、フレックス、トーションのバランスがとても良くて、深いパウダーでもスムーズに滑れます。スキーがきれいにたわむので、小回りのときには沈んで浮いてのリズムが良くターンができます。大回りではスピードを保ちながら、正確な弧を描きながらターン。沢地形ではこれまでだったら辿り着けなかった高さまでターンが引っ張れ、スピードもキープして当て込めます。
フルモデルチェンジをして最大の魅力は操作性が良くなったこと。ターンのきっかけがスムーズになり、スキー操作のなかで一番難しいターンの導入が簡単になって、楽にターンを始められます。ウエスト幅が116mmもあるツインチップなのに、圧雪斜面でほとんど違和感を感じずカービングができたときにそれを感じましたよ。スイッチで滑っても問題ありません」

深い雪で快適な滑走性能を発揮するウエスト116mm幅のスキーが、シチュエーションを限定しないのはスキーの性能の高さを裏付けている。パウダー以外でのフィーリングをもう少し深掘りしてみよう。

Photo/Horoya Nakata

「スピードにも強いですし、整地を高速で大回りしてもスキーがバタつくことは一切なかったです。ラディウスが20mなので、さすがにカービングは大回りしかできません。ただ、レンジャーシリーズに共通する次のターンへの入りやすさがあるので、ロングターンは快適です。足元は116mmもあるので、機敏なレスポンスはありません。その点、重量感を若干感じると思います。
降雪がないときの荒れた斜面でもほぼ同様の感覚です。とくに雪が柔らかければ、大きな問題なく対応できます。116はシリーズのなかでもっともノーズとテールが反りが大きいタイプで、柔らかなフレックスなので雪が緩くて荒れたコンディションでもズラしたり、ドリフトがしやすく、走破性は高いでしょう。ただ凹凸の衝撃はかなりあるので、スキーの太さぶん挙動を拾いやすいのは間違いありません。硬い斜面では108や102が無難に対処できるはず。空中へ飛び出したときの動きは、ビンディングのマウント位置によって左右されます。180cmでメーカー推奨位置より1cm前にマウントしていれば、スピントリックもしやすいです。トリックを踏まえたエアを中心にラインを考えるなら、108や102がオススメです」

歩くことも含むBCではどんな印象を持ったのだろう。

Photo/Yuji Kaneko

「116はシリーズのなかでももっともチタンシートが少なく重量は片足2150g。太さの割にはそこまで重くありませんし、ハイクをしてても「重いな~」という感じはありません。スキンを取り付ける際はテールにスキンフックサポートがレンジャーシリーズの全てについているので、歩行中にフックが外れにくくなっています。
パウダーで僕はスピードをかなり出す方ですが、どんなにスピードをだしても怖さを感じることはありませんでしたね。フレックスも柔らかく、地形の凹凸にも対応しやすい。深雪でのタイトなツリーランの小回りから、オープンな斜面では高速のビックターンまでこなせる操作性と安定性。ズラししたり、ドリフトしたりも楽です」

レンジャーシリーズに乗り続けて確実にパウダーでの滑走技術が上がったと話す関谷。とくに新しいレンジャーになってからは、それまではスピードが足りなくて、辿りつかなかった沢地形の”リップ”に当て込めるようになったり、深すぎてスピードが出にくかった斜面でも高速でターンができたりと、スキーの性能に助けられることも多いという。フリーライドの大会でも好成績を残し、撮影では確実に画を残す関谷のライディングにレンジャーはもはや欠かせない。

レンジャーシリーズ
全ラインナップ

RANGER 116|D=147-116-137mm|L=180、187、193cm|R=20m(187cm)|W=2150g (176cm)|¥170,500
フレックスは柔らかく軽い。深い雪でも自由自在な滑走性でフリーライディングを実現

RANGER 108|D=143-109-134mm|L=171、178、185、192cm|R=18m(185cm)|W=2120g (185cm)|¥170,500
パウダーと圧雪斜面で高い滑走性と操作性を持つ。バランスの良さが特徴の汎用性の高いモデル

RANGER 102|D=137-102-127mm|L=162、169、176、183、190cm|R=18m(176cm)|W=1950g (176cm)|¥154,000
滑走シーンを問わない操作性と安定性が持ち味。これ1台で自由に楽しむことができる

RANGER 96|D=128-96-119mm|L=159、166、173、180、187cm|R=17m(173cm)|W=1850g (173cm)|¥154,000
足元のチタニウムが安定性抜群。大小のターンが刻みやすいオールマウンテンモデル

RANGER 90|D=124-90-114mm|L=156、163、170、177、184cm|R=16m(170cm)|W=1750g (170cm)|¥143,000
「シェイプドTI」のチタニウムがシリーズ内で最も長く入ったモデル。エッジング時の安定性も高い

RANGER 84|D=117-84-107mm|L=153、160、167、174、181cm|R=14m(167cm)|W=1850g (167cm)|¥121,000
シリーズのなかでチタニウムを使っていないモデル。ウッドのナチュラルなフレックスが扱いやすい

RANGER|D=128-92-117mm|L=152、162、172cm|R=15m(172cm)|W=1800g (172cm)|¥82,500
フリーライドのエントリーモデル。チタニウムは入っておらず、柔らかなフレックスで操作性も良い


FISCHER フィッシャー

公式サイト:https://www.goldwin.co.jp/fischer/
公式SNS:FacebookX(Twitter)

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