2024年4月12日(金)~14日(日)野沢温泉スキー場で開催された’24-25季ニューモデル試乗会。STEEPが注目のニューモデルを一般スキーヤーにいろいろと試して乗ってもらった。2023年のSTEEPのユーザーアンケートで希望の多かった「ライダーだけでなく一般ユーザーの試乗インプレッションも興味がある」というリクエストに応えてのチャレンジ企画だ。
INDEX
’24-25季ニューモデルスキー&スノーボード試乗会 @野沢温泉スキー場やまびこゲレンデ
毎年恒例となっている4月の野沢温泉スキー場主催の来季ニューモデルの試乗会。今回も40以上のブランドがテントを構える大規模開催となった。今シーズンは小雪で開催がやや心配されたが、3月の積雪のおかげで会場となる「やまびこゲレンデ」には十分な雪があった。天気にも恵まれて、春スキーとしてのコンディションは上々だった。
週末には、朝8:10の長坂ゴンドラ運転開始を待つスキーヤー・スノーボーダーでこんなに長蛇の列が! 試乗会の会場にも所狭しとテントが並び、スキー・スノーボードのハードギアにとどまらず、ゴーグル・ヘルメット・グローブやウエアなどの展示もあり・試乗会としてはたいへんな賑わいとなった。
この時期にしてゴンドラ乗車待ちとは!
会場は長坂ゴンドラ山頂駅の前に広がるやまびこエリア
基礎・アルペン・フリーライドと多ジャンルの人気のスキーブランドがいっぱい!
SMITHのテントにはいつも人だかりができていた
STEEPユーザーレポーターいざ出陣!
今回、ユーザーレポーターとして試乗会に参加したのは、東京在住の齊藤雅之(さいとうまさゆき)さんと漆間幸治(うるまこうじ)さん。齊藤さんは野沢温泉スキー場のシーズンパスホルダー。漆間さんはHAKUBA VALLEYのシーズンパスホルダー。これらの滑り写真を見れば、かなりの足前のコアなフリースキーヤーであることは間違いない。さらにはギアにもかなり詳しく、例年いろいろな試乗会で来季のニューモデル乗り比べしているという。
[Reporter]
齊藤雅之(さいとう まさゆき)さん 身長:167㎝ 体重:63kg 普段の愛用スキー:VECTOR GLIDE MAKE BC JS180
東京都在住の41歳。野沢温泉をホームに、バックカントリーからパウダー、整地、不整地、沢、コブ、パークまでオールランドに滑るフリースキーヤー。なかでも、フリーライドを得意としてJFOにも参戦。シーズン滑走日数は70日程度。家族でもスキーを楽しむファミリースキーヤーの一面もあり。
Skier :齊藤雅之
[Reporter]
漆間幸治(うるま こうじ)さん
身長:166㎝ 体重:74kg 普段の愛用スキー:BLIZZARD RUSTLER10 188cm(2021)
東京都在住の31歳。白馬バレーシーズン券を駆使し、パウダーを求めて冬は毎週末往復生活。アルペン競技経験あり、整地のカービングにもこだわりがち。最近はスノーボーダーと滑る機会が多く、壁でのアクションや横に引っ張る動きを重視している。
Skier:漆間幸治
今回は、STEEPがピックアップした、’24ー25季に新しくなった注目モデルや、継続ながら気になるモデルを中心に「試乗機リスト」を作成。春の雪ではあるものの、スキーの特徴を以下の6項目でスケールチェックし、さらに滑走インプレッションをコメントしてもらった。 ●安定性 ●操作性 ●カービング性能 ●万能性 ●遊び心 ●浮力性
「試乗機リスト」を新長坂ゴンドラ内でチェックする二人
漆間さんは最も注目していた「VANDEER」から試乗スタート
ARMADAテントでは日本アルマダの顔とも言える村井トモヒロさんがアテンド
滑走フィーリングを忘れないうちにシートにすぐさま記入
試乗したのはこれら16モデル
Vector Glide|MAKE BC ICELANTIC |NOMADO 106Vector glide |INTIMACY BLASTRACK|MASSIVE 106 Vector glide |POLARVE LIGHT Vector Glide |POLARVE STANDARD FISCHER |LANGER 108 ARMADA| Declivity-X 108
SCOTT|SEA 108 VANDEER|FREERIDE 108 ICELANTIC | SHAMAN 110 RMU | Professor 111 DPS | KOALA 111 ARMADA| ARV 112 ARMADA | Declivity-X 115 SALOMON | QST-X
Vector Glide|MAKE BC
試乗したIMAKE BC (180cm)|D=127-96-117mm(180・172)|R=22.7(180)|L=172,180,188cm
この板の特徴は、なんといっても高い次元でとてもバランスが良い板です。
まずVector Glideの板の特徴でもありますが、スピードとターンの切れ味が最高のフィーリングで、朝イチの締まったピステンバーンでは、フルエッジのカービングで思いっきり倒しこんで角付けしたターンを楽しむことができます。
そして、スウィングウエイトが軽く、取り回しも良いため、野沢温泉の沢地形では、沢のヒットを当て込みながらエアトリックを入れたフリーライドやパークライドが可能です。センター96㎜なので、オフピステでもオンピステでも安定した走破性でいけます。
私自身、11月の立山バックカントリーからJFO、パーク、沢まで、この1台ですべてをこなし、最も愛用している1台です。すべてを高い次元で自分のやりたいスキーを満たしてくれる信頼の1本です。
ICELANTIC |NOMADO 106
試乗したNOMADO 106|D=141-106-133mm|R=19(182)|L=171,176,182,188cm
とてもバランス良くまとまった、自分にとっては優秀な板。エッジグリップが良く、しっかり曲がっていきます。気持ちいいカービングを体感できますね。乗ってみると、スペック表記の長さよりもだいぶ短く感じます。その分、安定度という点では少し劣るものの、取り回しの良さでは、それがメリットに感じられます。総じて板なりに走らせる乗り方がマッチすると感じました。行きたい方向がきっちり決まるので、板のサポートをしっかり受けたい人にオススメです。 たわみ感が薄いため、そこが強く出れば、自分の志向としては、もっと楽しさが出るように感じました。
Vector glide |INTIMACY
試乗したINTIMACY(180cm)|D=137-106-120mm(180)|R=22.7(180)|L=180,188cm
MAKE BC 180の兄貴分的な板で、フリーライド志向の滑り手にとってめちゃくちゃいい板です。MAKE BCが「高い次元でバランスが良い」板であれば、INTIMACYは、より「パウダー&フリーライド」に寄せた板だと感じています。特徴は、①ロッカーのバランス ②強めのフレックス ③取り回しの良さです。
①ロッカーとセンターのバランスが良く、操作性がすごく良いです。センター106㎜がディープなパウダーでも十分に浮いてくれて、高速にパウダーランを楽しめます。②強めのフレックスから、荒れたバーンでも安定したフリーライドが可能で、朝イチのカチカチのリフト下の荒れた斜面でも、高速で滑れます。③VGのラインナップの中でも、ビンディング位置が前よりにセットされているため、スウィングウェイトが軽く、取り回しが良いため、より自由なフリースタイルな滑走ができます。今回のように春の野沢の沢地形のフリーランやエアトリックを入れたフリーライドが可能で、まさにMAKE BCの兄貴分的な板で、BCなど、より大きなフィールドでも力を発揮する板だと思います。
BLASTRACK|MASSIVE 106
試乗したMASSIVE 106|D=134-106-122mm(180)|R=20.5(178)|L=165,178,185cm
バランスが良く、まとまった印象です。板が勝手に走ることもなく、荒れに足を取られることも少ない。取り回しがとても軽快です。一方で、4月の春雪のせいか、エッジグリップは緩めのフィーリングでしたが、春の重い雪に負けることもなく、どんなシチュエーションでも負担が少ないと思います。バーンコンディションに左右されずに落ち着いた滑りを楽しみたい人にいいのではないでしょうか。
Vector glide |POLARVE LIGHT
試乗したPOLARVE LIGHT(180cm)|D=137-106-120mm(180)|R=23(180)|L=170,180,186cm
安定度の最高値としては4という感じですが、雪面状況を問わずに常に叩き出してくるような感じがします。信頼感が常に感じられ、板の進む方向に合わせていくことでハイスピードでのターンが可能です。反面、硬派な部分が際立っているため、取り回しや遊び心といった部分は、ちょっと大味になってしまうかもしれません。
Vector Glide |POLARVE STANDARD
試乗したPOLARVE STANDARD(180cm)|D=135-107-128mm(180)|R=23(180)|L=180,186cm
ポラーヴ・スタンダードは、とにかくターンのスピードとキレが特徴で、安定感とカービング性能に突出した板という感想です。Top-Center-Tail: 135-107-128mm、Radius:23(180)という設定で、オンピステでもパウダーでも不整地でも、スピードある安定した力強いターンをさせてくれる板です。なんと言っても、ターン後半の粘りが最高のフィーリングです。野沢温泉のDコースを徐々に角付けして、スピードのギア上げながら、角付けの角度を深くしていくと、深回りターンのリズムがセットされ、そのまま急斜面に入ってからの高速ターンの気持ちよさが異次元で、ターン後半の粘りがワンランク上のスキーをさせてくれるような感じの板です。
それなりにスキーの重さと強度もあるため、MAKE BCやINTIMACYに比べ高速でキレのあるカービングや不整地をスピード出して走破していくようなガンガン滑るハード系の滑り手にお勧めの一台です。オンピステ、パウダー、不整地、BCまで、あらゆるコンディションにおいて、安定性・カービング性が高い1台だと思います。
FISCHER |RANGER 108
試乗したRANGER 108|D=143-109-134mm(180)|R=18(185)|L=171,178,185cm
トップの立ち上がりが大きめにとられているので、ターン始動時にロッカー独特のオートマチック感がしっかりと伝わります。足元からテールにかけては剛性感を感じるので、パウダーやもっと深さのあるザラメ雪のときは、豹変しそうな雰囲気を感じました。今日の雪質とはちょっと相性が合わなかったのかな、という印象です。
ARMADA| Declivity-X 108
試乗したDeclivity-X 108 (184cm)|D=130-108-121mm|R=24(184)|L=176,184,191cm
Declivity-Xらしい、ガツンとくるフィーリングがほとんど感じられず、マイルドでとても滑りやすく、しっとりした乗り心地でした。全体の剛性と比べると、エッジグリップのマイルドさにギャップを感じるかもしれません。ただ、柔らかい雪にフォーカスしているとも言えるのかも。重たい雪で疲れずに緩いラインで滑りたい人に向いているかなという印象です。
VANDEER|FREERIDE 108
試乗したFREERIDE 108 |D=148-108-130mm(180)|R=18(180)| L=164, 172, 180, 184cm
板の反応がとても素直なので、乗り手次第でどこでもいけるイメージです。ただし、テールの先までかなりグリップするので、低速域では長さ以上の感覚かもしれません。そういう意味で硬派で、ゆるい遊び心は少ないかな、という印象です。エッジグリップは「さすがマルセル・ヒルシャー!」のひと言に尽きます。アルペンスキー由来の色がとても濃いです。基礎やアルペンの板から太めのスキーを履いてみたいという人にはぴったりなチョイスになりそう。
ICELANTIC | SHAMAN 110
試乗したSHAMAN 110 |D=160-110-130mm|R=17(182)|L=169,176,182cm
全体的にマッチョなセッティング。Rの小ささや長さの表記通りではなく、ハイスピードで突っ込んでいく人に向けた性能になっている印象です。個人的にはビッグマウンテンのビッグターンにハマると感じました。長さで取り回しを犠牲にしたくないけど、ダイナミックな直線的な滑りを満喫したい人に向いていると思います。 直進性が突出している分、アジャイル(俊敏・機敏性)さや万能性のトーンは弱めに感じました。
RMU | Professor 111
試乗したProfessor 111|D=138-111-132mm|R=18(178)|L=168,178,188cm
幅の広さを感じさせない操作性で、いろいろなシチュエーションに対応できそうな一台。板全体の接雪感があり、「不意に」というような動きがほとんど出ません。硬く荒れが目立つコンディションでスピードを出しても破綻しない安定感とのバランスが絶妙です。言い換えると、板への働きかけは必要で、自分で滑りたいラインを定めないと板の性能を活かしきれずに、楽しみ足りない可能性も…。滑走日数多めのスキーヤー向けに思いますが、コンディションに迷うときの一台を探してる人にはハマりそうです。
DPS | KOALA 111
試乗したKOALA 111(上)|D=135/112/130|R=21(185)L=165,175,185,192cm
数値では正直あまり良さそうに見えないかもしれません。ただし112mmというウエストの太さに対して、エッジグリップが異常にいいです。太さゆえに切り替えの鈍重さは感じますが、補って余りある安定感。
スピードが出ているはずなのに余裕でさばけるくらいのポテンシャルを持っていると思います。ハードチャージできる人にはおすすめですが、ただ軽さを求めたり、乗りやすさを求めての購入はNGでしょう。見た目以上にだいぶマッチョな板という印象です。
ARMADA| ARV 112
試乗したARV112|D=135-112-130|R=21(185)L=165,175,185,192cm
今回の試乗会で最もいろいろなシチュエーションに対応できそうな一台。強めに見えるロッカー形状ながら、バタつきは少なく、ターン時も腰砕け感が感じられません。それでいて太さ、形状からくる捌きやすさが、春のザラメでも発揮されていると思いました。
スピードを出しても接雪感は十分。従来モデルよりも低く、立ち上がり位置が早めになったロッカー形状がいい味を出しているのでは。贔屓目なしにおすすめできるモデルです。
RMU| Apostole 114
試乗したApostole 114|D=138-111-132mm|R=18(178)|L=168,178,188cm
高速安定性は非常に高いです。硬めで強く突上げられるようなバーンコンディションでもしっかりと抑え込めます。フレックスも硬めに仕上がっていて、スピードを出していけるシチュエーションならポテンシャルを発揮できるはず。エッジグリップも非常に強力ですが、その反面、融通が効かないと感じる場面もあるかもしれません。緩く滑るには慣れが必要と感じますが、ロッカーも緩く入ったボトムデザインで、捌きやすさはしっかりと出ていると思います。パウダーであればさらに楽しさが感じられそう。
ARMADA | Declivity-X 115
試乗したDeclivity-X 115(185㎝)|D=137-115-130|R=22.5(185)L=185,192cm
DECLIVITY 115は、力強く、よりハードに、より速く滑るハード系の滑り手に相応しい板です。トーションも強く、足元はしっかりとした硬さで、まず荒れた斜面のハイスピードでも安定した滑りが可能です。これには、個人的にもビックリで、もっと柔らかく、万能性が高そうという印象が180度変わりました。滑り始めたら、前傾してガンガン踏み込んでいきたくなるフィーリング。フレックスも強く高速域での安定性がすごく魅力的な板です。
できれば、50センチを超えるようなパウダーでの朝イチ黒鞍、牛首、シュナイダー、39の壁を全力のフルスピードで滑ってみたい。と思った板です。きっとその日は、大満足な1日になるに違いないでしょう。より大きな斜面をハイスピードにストロングに滑るスキーヤー向けの素晴らしい板だと思います。
SALOMON | QST-X
試乗したQST-X|D=140-116-127|R=25(184)L=178,184,192cm
ウエスト幅116㎜と太さを感じた上で、エッジグリップの良さをしっかりと感じられる。板を合わせて見るとトップロッカーの強さがよくわかります。浮力は圧倒的でしょう。ディープパウダー用と謳ってはいますが、パウダーが食い尽くされたゲレンデでも楽しく滑れそう。板全体に剛性があるためハードにチャージできるのであれば、どんなシチュエーションでも対応できるポテンシャルがあると思います。ただし、楽しくなりすぎて暴走しすぎないように注意が必要かな! と感じました。
最後に
一般のユーザーによるニューモデル試乗会での試乗インプレッションは、今後も続けていく予定。我こそは!と思う足前自慢のスキーヤー、いつもさまざまな板を乗り比べている人、スキーの特徴や乗り味を言語化するのが得意な人、など来シーズンはぜひ参加してみては?