ギア選びに慣れてきた中上級者でも、実は自分では気がつかない先入観に縛られていたり、ギアについての正しい理解が不足していることはないだろうか。「太い板は難しい」「ブーツはワンサイズ上」これらは本当? そこで専門知識や雪上での経験の豊富なプロショップが、店頭でユーザーとの関わりから見えてきた「ギア選びの盲点」を語る。

スペックや口コミで判断し、適切なケアを知らないケースが多い
お店でユーザーと接していると、「太い板はパウダー専用」という先入観が根深くて、板の太さだけではその板の個性は測れないことを理解している人はまだ少数だと感じます。
また、スキーブーツの良し悪しをフィッティングを利用せずに、ブランドイメージや口コミでだけで決めてしまう人も少なくない印象ですね。あと、ウェア、ゴーグル、レンズなどの適切なケアを知らない人が多いなぁと感じます。
どうしても「思い込み」があるようです
「太いスキーは滑りにくい」という話を、ユーザーから毎年のように耳にします。確かに細いスキーのほうがエッジのかかりが速いですが、太いスキーでもエッジの立て方に慣れてしまえば、楽に滑れるパターンがあるかと思います。春のザブザブ雪などでも太いスキーのほうが雪に潜り込まず安定することがあったりします。
同じように、フリースタイルスキーは、キッカーを飛ぶ人、ジブをする人、といったパーク専用スキーと思い込んでいる人が多いことも感じます。フリースタイルスキーは扱いやすいモデルが多いので、初めてスキーをする人や初心者にもオススメなんです。「フリースタイルスキーはパーク専用」と思い込まず、普通に滑れるスキーの一つとして選択肢に入れていただきたいなと思います。
ブーツもウェア選びも”ちょうどいいサイズ”は危ない
当店では、スキーブーツ購入の際、スニーカーと同じサイズの選び方をしてしまう人が多く見受けられました。Mt.Peaksでは実寸の足のサイズでご提案をしています。理由としては、スキーブーツは「歩く靴」ではなく「滑る靴」だからです。
スニーカーの場合は、通常歩行時や、坂を下る際にどうしてもつま先が前に動いてしまうため、つま先に余裕のあるサイズを選ぶことがほとんどかと思います。でも、スキーブーツの場合はバックルで足を固定し、踵がしっかりと収まりホールドされるため、前後に動くことが少ないです(BCブーツの場合は歩行動作があるためこの限りではありません)。
そのため、実寸サイズで問題ありません。しかし、新規で来店される人のほとんどが1~2サイズ大きいものを今まで選ばれていました。足入れをして横幅が痛くない楽なブーツを選ぶために、サイズを上げて購入されていたのです。
現在販売されているスキーブーツの7~8割の製品が熱成型が可能となっているなかで、上のサイズを選んでしまうと、さらに熱成型することで足が前後左右に動き、結果的に痛くなってしまう、という負の連鎖に陥ってしまいます。
年齢の変化とともに足の形や大きさも変わることが多くなるため、前回の購入から年数が経過している場合は、一度ショップで足の大きさを測ってもらい、ショップスタッフと相談しながらブーツ選びをすることをオススメします。
また、ウェア選びに関しては、レイヤリングを意識しないサイズ選びをしてしまう人が多く見受けられました。最近のウェアはスキーヤーのレイヤリングを重視したシェルタイプ(中綿が入っていないウェア)が多くなってきています。ここ数年の気温上昇に伴ってハイシーズンでも暖かい日が多いため、シェルウェアを着用し、自身でウェアのなかに着こんだり、脱いだりすることで体温調整をすることが多くなっているのです。
そのため、ウェアのなかに着こまない状態でピッタリのウェアを選んでしまうと、着こんだときにパツパツになってしまい、動きづらく、見た目も悪くなってしまう場合が多いです。シェルウェアを選ぶ際は、ウェアの下のレイヤー(ミドルレイヤー、ファーストレイヤー)をショップに持ち込んでサイズを確かめながら購入いただくことを強くオススメします。「ちょっと大き目かも」がベストサイズ!
ファットを履くだけではパウダー・BCは滑れない
パウダー向けのファットスキーを履けば、誰でもすぐにパウダーを滑れると思っている人がまだ多いようです。とくにBCシーンにおいてはその傾向が顕著です。ファットスキーを使う場合は、まずはゲレンデ内のパウダーを滑り込む必要があることを理解いただきたいですね。

アウトドアショップ・パーマーク
Staff/佐藤淳一さん
スキー選びの条件はいろいろ。まずショップで相談して
スキー選びの際、用途、技術レベル、体格やパワーなどを考慮して、板のモデルと適正サイズ(長さ)が決まります。板のタイプによって選ぶ長さもまったく変わってきます。
Narrowsのある盛岡周辺のスキー場はバーンコンディションも良く、岩手県内のユーザーは滑走レベルも比較的高い人が多いので、ネットや雑誌などで情報を集めて来店する人には、イメージしているよりもワンサイズ長めのスキーをオススメすることもあります。
あとは、メインに滑りに行く山やスキー場によってもチョイスが変わってくるので、まずショップに相談すると良いと思いますよ。
ブランドやカテゴリーのイメージに縛られるもったいなさ
ユーザーの傾向として、主にブランドや商品カテゴリーなどの大きな枠で商品を捉えている、と感じることはよくあります。例えば、ツインチップはジャンプやスイッチのため、と思っている人は非常に多いです。
それが間違っているわけではないのですが、ツインチップは、スイングウエイトが軽く、ターンもズラしもしやすくなっていると捉えれば、リゾート用のスキーとしても非常に楽しめるものになる部分もあると思うので、少しもったいないと感じることもあります。
同じように、個別の商品で見れば欲しい内容にマッチしているのに、ブランドのイメージで「これは違う」と選択肢から外してしまうことも見受けられますね。
板の長さや上級モデルへの思い込みを変えたい
スキーの長さの最大の決定項が自分の「身長」と考えている人が多いことが、とても残念です。中級や上級になれば使用の目的やシチュエーションで長さが決まる。そのことをもう少し周知したいですね。
また、自分のレベルに合ったモデルではなく、高いレベルのモデルを使えばうまくなると思っている人もいまだに若干います。
勘違いから解放されて、フリースキーでスキーを楽しんでほしい
基礎スキーヤーや競技スキーヤー、また一般的なコンフォート系スキーで滑っているスキーヤーに多い勘違いです。
「ツインチップ形状のスキーは飛んだり回ったり(ジャンプ)後ろ向いて滑ったり(スイッチ)をしないといけない。ターン性は低くカービングターンができない。太いスキーはゲレンデで楽しく滑りにくい」
といった勘違いをされている人が多く、フリースキーに対して拒否感を持っている人がたまにいらっしゃいます。
もちろん、基礎・競技系スキーに比べると純粋なカービング性能は落ちるけれど、それなりにカービングターンもできます。必ず飛ぶ必要もなく、後ろに滑る必要もありません。逆に適度にズレのあるターンも可能なので、さまざまなシーンに対応しやすい。少し太いことで荒れたゲレンデや新雪や悪雪でも滑りやすくなる。
ある意味、本当のオールラウンドスキーではないかと思います。いろんなスキーヤーにフリースキーでスキーを楽しんでいただきたいと思います。
スペックに囚われずに、まず試すことが大切
板の太さやラディウス、ブーツのラスト幅など、数字に目がいってしまい、本当は自分にとって良い候補になるギアに気づくことができない、というパターンは多く感じます。板の太さはロッカーのバランスでも印象が変わり、ラスト幅は同じ表記のブーツでもかなり履き心地に差異がある。まずは試す! これがいちばん重要だと思います。
ネット情報だけでは
YouTubeやAIが言ってることがすべて、みたいな人が増えてきました。プロショップの店員ナメんな!って思います(笑)。昔みたいにショップとの関係性を作れる人も減ってきて、情報交換ができないユーザーは損してますよね。
YouTubeやAIばかりだと型にハマるだけだから、面白味がない人が増えるばかりなので、付き合い方を間違えないようにすることが大切ではないでしょうか。
大きめサイズのブーツを選ぶ前にショップで相談を
うちのお店のお客様はバックカントリーやツーリングスキーヤーが多いのですが、ブーツサイズを大きめのものを選ぶ人が見受けられます。足の幅に合わせて大きめのサイズを選んでいたり、締め付けられるのが嫌で大きいサイズを選んでいたりするのですが、最近のブーツはインナーだけでなく、シェルも熱成型できるものもあるので、ぜひお店で相談していただきたいです。
ショップのアドバイスからわかったこと

11ショップのコメントを通して浮かび上がったのは、多くのスキーヤーが「スペック」や「イメージ」に引っ張られ、本来の性能を十分に理解しないままギアを選んでいるという盲点ではないか。
「太い板はパウダー専用」「ツインチップはパーク用」「上級モデルなら上達できる」「ブーツは少し大きめで選ぶ」。こうしたセオリーは決して間違いではないものの、近年のギアの進化によって、必ずしも当てはまらなくなってきている。実際にはロッカー形状やフレックス設計、ラスト設計、熱成型技術などにより、数字だけでは判断できない個性を持つモデルが数多く存在する。
また、多くのショップが共通して挙げたのが、「試すこと」と「相談すること」の重要性だ。ブーツの熱成形ひとつとっても履き心地は大きく変わり、同じウエスト幅のスキーでも滑走フィーリングは大きく異なる。スペックやネット情報ではわからない部分こそ、ショップスタッフの経験値や店でのフィッティングが活きてくる。
手軽に情報を得られる時代だからこそ、それらを入口として活用しながら、最後は実際に試し、自分の滑りの志向や技術、フィールドを知るプロショップと対話することが、自分にとってベストなギア選びへの近道なのかもしれない。











