BOAフィットシステムを搭載したスキーブーツが登場して約3年。高いフィット感や細かな操作性への評価が広がる一方、従来のバックルタイプを支持する声も根強い。いまユーザーは何を感じ、何を選択しているのか。そしてリアルな滑り手と日々接するプロショップはどう見ているのか。BOAブーツを取扱うプロショップ9店に、その現在地を聞いてみた。

BOA登場から3年という現在地
アルペンスキーブーツにBOAフィットシステムが本格的に採用されてから約3年。登場当初は「本当にスキーブーツにBOAは必要なのか」「バックルに代わるシステムとして信頼できるのか」といった期待と不安が入り混じっていた。
しかし現在では、続々とメジャーブランドがBOA搭載モデルを発表し、ラインナップを拡充しながら、現在では中・上級者を中心に認知度は大きく向上した。試乗会や店頭で実際に試し履きしてフィット感を体験し、そのホールド性や細かな締め分けを評価するスキーヤーも着実に増えている。
一方で、市場全体を見ると、BOAが従来の4バックルに完全に取って代わるまでには、まだ至っていない。価格帯やモデル数、耐久性への印象、長年親しんだバックル構造への信頼感などから、購入を慎重に検討するユーザーも少なくない。また、「4バックルが選べるうちに手に入れておきたい」という声も聞かれるなど、ユーザーの価値観はまだ二極化しているのが現状だ。
支持派・慎重派がそれぞれ存在する背景

では、二極化するユーザーが抱くイメージや評価はどのようなものか。編集部でも試乗会やユーザーイベントなどで、このような声を聞いてきた。
BOAを支持する声
- 足全体を均一に締められ、フィット感が高い
- 全体を包み込むようなフィットで、当たりがほとんどない
- ダイヤルによる微調整が簡単で締め直しがしやすい
- 脱ぎ履きがラク
- アフターサポートがしっかりしている
購入を慎重に考える声
- すぐ壊れてしまわないか、耐久性や長く使えるのか不安
- BOA採用モデルは価格が高い
- 従来の4バックルのほうが部分的に締められて安心感がある
- バックルのダイレクトな締め心地のほうが慣れていて好き
- コンペティションには不安で使えない
日々ユーザーと接するプロショップでは、この3年間の変化をどのように見ているのだろうか。リアルな声を聞いてみよう。
プロショップによるレビュー
認知は定着、ただし購入は慎重派が多数
中級者以上ではBOA採用ブーツはかなり認知されていると感じます。ただ、そこから先は、まだ次に購入するブーツは絶対にBOAにしたいという人は一部で、多くの方が試着してバックルのみのものより良ければ検討する、という意見や、価格や性能面でまだ成熟は先、と見て購入に慎重な方が多いと感じます。一部では、4バックルが選べるうちに買っておきたいというニーズもあります。
使用者の評価は上々、未経験者へのアプローチが今後の鍵
使用しているユーザーからは、悪い評価はほぼありません。締まり具合を微調整できる点、均等に締まっていくところが高評価になっています。その一方で、まだBOAブーツを使用したことがない人は一定数いる印象です。まだまだバックル派、というスキーヤーも多く感じます。
満足度は高く、バックルへという戻る声はなし
BOAを選ぶユーザーも増え、知名度も上がっていると思います。販売足数が増える半面、故障の対応も増えるかと思っていましたが、今季は当店では1件のみの交換となりました。
反対に選ばれない、購入を見送られる理由としては、「ナローラストのブーツがない」、「バックル独特の上から抑えられている感覚が好き」という販売当初と変わらない理由でした。
ナローラストのブーツの販売が可能になれば、さらにアクティブに、繊細なコントロールを求めるお客様にコミットするのではないかと思います。ユーザーの使用感としては、満足度が高くバックルにブーツに戻したいという声はまったくありませんでした。BOAの魅力に納得する方が多いようですね。
指名買いをするユーザーが着実に増加
年々浸透してきていて、BOAブーツを指名してくる方が増えている。やはり簡単に締める・緩めるができ、バックルブーツで起こる「部分的に締まる」ということがないので、快適に履いていられるとの声が多く届いている。

アウトドアショップ・パーマーク
Staff/佐藤淳一さん
包み込むようなフィット感が好評。今後はタイトなラストの拡充に期待
BOAのタイプは主にK2ブーツを扱っていますが、全体的に包み込まれるようなフィット感はすこぶる評判良いです。
個人的には、バックカントリー向けテックホールの付いたモデルでも、ラストワイズが狭めでタイトなモデルが、各ブランドでもっと増えてくれればと思っています。
ロアBOAは高評価、アッパーBOAは様子見の状況
ロアシェルのBOAに関しては、レーシングやデモを除いてデフォルトであってもいいのかと思います。使用されているユーザーからのクレームもほぼなく、逆に、周りの人もBOAに興味を持たれる場合が多いように思います。
アッパーBOAに関しては、まだそこまでの普及もなく、正直のところ様子を見ている感じです。
履きやすさより、フィット感がBOAの本質
少し浸透してきた感はあります。実際にユーザーよりBOAブーツの依頼を受けることも増えてきました。しかし、まだまだ「BOAブーツは履き(足入れ)やすい」と思っているスキーヤーが多い。
BOAシステムはあくまでバックルシステムに代わる、脱ぎ履きがしやすいブーツということではありません。この勘違いを訂正する必要があると思います。当店では店頭にてしっかり説明したうえで購入いただいておりますので、実際に購入されたユーザーよりは一定の評価をいただいています。結局は、自分にフィットした形状を選んだうえで、BOAブーツを履く必要があると思っています。
当初の不安はいまや信頼へ。故障率はバックルと同等かそれ以下
初年度は我々のようなショップスタッフのなかにも、不安視している人は一定数いたのではないかと思う。フィット感の好みはあるが、浸透度はスキーのジャンルに関わらず、かなり高まってきている。
故障に関する問い合わせをよくもらうが、いまのところの肌感覚では、バックルと同じか、むしろ少ないくらい。サポートも手厚いため、信頼感は高い。
故障は少なく、サポートも充実
「BOAブーツにしてよくなかった」という声はいまのところ店頭には届いていませんが、各メーカー年々搭載モデルが増えていたり、バックカントリーモデルだけでなくゲレンデ用のブーツにも搭載され始めているので、スキーブーツには相性がいいシステムではないでしょうか。
初めて選ぶ場合は、「ワイヤーが切れてしまわないか」、「壊れてしまいそうだ」と心配されるユーザーはいます。実際に私も3シーズンぐらい使用した感想や、メーカーの講習会に参加したときの故障事例などを聞き、ご案内しています。
店頭でも、「故障してしまった」と持ち込まれることはほとんどありません。BOA社の保証がしっかりしていて、購入者は無償で自らパーツをWEBから注文することができます。個人的にはメリットが多いシステムと感じています。
プロショップの声から見えてきたこと

今回のショップコメントを通して見えてきたのは、単に「BOAは人気か?」ではなく、ユーザーによる評価のフェーズが変わったということではないか。
BOAスキーブーツのリリース当初は、「耐久性は大丈夫か」「本当にバックルに代わるのか」という未知の技術への不安が話題の中心だったろう。しかし、3年が経過した現在、多くのショップが口を揃えて語ったのは、実際の故障は想像より少なく、使用したユーザーからの評価も非常に高いという事実。とくに、均一な締め付けによる快適なフィット感や、細かな調整のしやすさは、多くのショップで共通して高く評価されていた。
一方で、BOAがすべてのスキーヤーの「当たり前」「第一選択」になったわけではない。従来の4バックルならではの締め心地を好むユーザーや、価格、ラスト幅の展開の少なさから購入を見送る人も少数派ではない。また、「BOA=脱ぎ履きがしやすい」という勘違いも残っており、ショップでは適切なフィッティングや、システムの特性を丁寧に説明することが、ユーザーの満足度を左右する重要な役割となっている。
俯瞰して見ると、BOAは「新しい機構」から「有力な選択肢」へと着実にステージを進めている段階といえるのではないか。今後は耐久性を証明する実績がさらに積み重なり、対応モデルやラスト幅のバリエーションが拡充されれば、BOAを選ぶユーザーはさらに増えていくのかもしれない。









