山木匡浩の挑戦と共に、進化を続けるブランドの20年|GIRO

1999年にヘルメットブランドとして始まったGIROは、2008年にゴーグルという新たな領域へと踏み出した。その黎明期からプロダクトを現場で使い続けてきたスキーヤー、山木匡浩。彼と共にGIROの進化の歩みを辿る。

INDEX

Chapter1 共にはじまった冒険

この20年近く、山木匡浩は世界各地の雪山を滑ってきた。国内はもちろんのこと、南米ペルーの秀峰Mt.アルパマヨではピスコピーク滑降、ボリビア ペケーニョ・アルパマヨでは急斜面を駆け下りた。カナディアン・ロッキーでは高峰Mt.クレマンソーを滑り降り、スロベニアの最高峰トリグラフへスキー遠征へも出かけた。

グリーンランド、ロシア、ニュージーランド、南米、中央アジアと世界各地を滑る山木は、2019年から東欧諸国へも足を運び始めている。写真は2019年、スロベニア最高峰(2864m)のトリグラフ山とその周辺のトリグラフ国立公園山域を滑り旅をしたもの。この時は山小屋がクローズとなり、雪洞泊を余儀なくされるという想定外のハプニングも。そうした状況をも楽しんでしまうのが彼の流儀だ

これほど様々な山を滑る彼にとって、目まぐるしく変わる天候や複雑な地形の起伏を見極めて滑走ラインを滑るために、ゴーグルは欠かすことのできない大切なパートナーだ。そんな山木が2008年に初めてGIROのゴーグルを手にした時のことを、こう振り返る。

「はじめは、ヘルメットのメーカーがゴーグルを出すって、どんなものかって……。なにせ初年度のプロダクト。正直なところ半信半疑な状態ですよね」

山木がそう思うのも無理はないだろう。何十年と続くブランドでさえ、ファーストロットに問題を抱えるのはよく耳にする話しだ。

ただ、山木はそこに大きな可能性と伸び代を感じていた。ここから一緒に、最高のゴーグルを作っていけるんじゃないか、と。

光の陰影のなかを滑るツリーラン。積雪と木々から落ちた雪は極上の滑り心地をもたらす。フォトグラファー小橋 城による2009年の作品だが、古さを感じない気持ちよさそうなカットだ

ニュージーランドでのゴーグルテストを経て臨んだ南米遠征では、悪天候のなか、長時間に及ぶハイクアップをする状況が訪れる。行動中に息は次第に上がっていき、体から発する熱気と湿気をまとう条件は、ギアの良し悪しをはっきりと感じ、何が足りないかを知るきっかけになった。

Chapter2 2014年、革新のレンズとフィットの追求

GIROのゴーグルが大きなターニングポイントを迎えたのは2014年のことだ。カメラレンズや医療光学機器で世界的な実績を誇る1846年創業のツァイス社と業界ではじめてパートナーシップを結んだのだ。歪みがなく視野が極めてクリアな同社のレンズは、雪山の状況下で、驚くほどシャープで解像度が高いため、瞬時に地形を捉えられる。鮮明な視界が保たれると共に、山木のパフォーマンスも比例して上がっていった。

「レンズを覗き込んだ時、景色がまったく新しく見えた。陰影に関係なく雪面のわずかな起伏まで、手にとるようにわかった。それ以上に、ツァイスという歴史あるブランドがプロダクトに採用されたことで、ものとして完成度が高まった印象を受けましたね」

時を同じくして、日本の滑り手たちのためのジャパンフィット開発も本格化した。その際、GIROはまず日本のスキー場やショップを巡り、日本人の骨格データを丹念に計測したという。横側のフォームを薄くし、鼻周りのフォーム形状を重点的に調整して、ミリ単位で密着度を高める設計を施した。

「この頃になると初期のモデルに比べてフレームの大型化が著しかった。面積が大きくなるから、どうしてもアーチがきつくなりますよね。それでも、顔にピッタリと寄り添うから、新雪を滑った時に舞い上がる細かな雪も全くゴーグルに入ってこなくて、気にならなくなった」

ツァイスレンズの圧倒的な視界と、顔の形に柔軟に対応するジャパンフィット。そして定評あった視野角を広げる独自のテクノロジーEXVが三位一体となったゴーグルが、山木のパフォーマンスを押し上げていく。

Chapter3 VIVIDレンズがもたらした革命的な見やすさ

2024年には中央アジアのキルギス天山山脈北部のトゥユクスへ遠征。未知のルートや滑走の可能性を探りに行くのは旅の醍醐味だ。スケールの大きなロケーションでターンを刻む山木

悪天候やフラットライト。ガスに巻かれた視界が閉ざされる世界でも、的確に雪面を捉え、しなやかなラインを描く。こうした環境下でパフォーマンスを一段と引き上げたのが、2018年に登場したVIVIDレンズだった。

ツァイスとGIROが共同開発したVIVIDレンズは、雪上のコントラストを高めるブルー光線を効率よく取り込むことで、滑走面のわずかな起伏や陰影をクッキリと浮き彫りにする。これがまさに山木の感覚と響き合った。

「コントラストが驚くほど上がりました。吹雪でも雪面の凹凸がくっきり見えて、思い通りのラインを描ける」

一般的には、曇天や吹雪の日には、明るいレンズを選ぶのがセオリーとされている。一方で、山木は昔から光の透過率を落とした濃い目のレンズを好んで使っている。それは、個人差のある見え方のため。彼は、暗い環境下でも地形がしっかり見える状態を理想としている。

「曇りの日にレンズを明るくしすぎると光が入りすぎてしまい、かえって雪面の影や凹凸が消えて見えなくなってしまう。ただ暗くするだけでは視界が悪くなるけど、VIVIDレンズならば光がフラットになりがちな曇天時でも雪面の陰影をくっきりと際立たせてくれるため、木々の間の地形や小さな起伏の変化が見えて、ラインを見極めて滑れるようになった」

2026年には極寒でも自然にレンズの色が変わる「VIVID Plus 調光レンズ」が登場する。変化はゆっくりだが、違和感なく変わっていくレンズはテストをしたライダーからも高評価を得た。VIVIDレンズが新しい局面に入った証でもある。

Chapter4 完成された道具と、遊び心あるデザイン

世界各地を滑ってきた山木だが、地元の北海道の環境はやはり世界でも恵まれていると感じている。コンスタントな降雪と積雪量、そして上質さ。フォトグラファー小橋 城との最新カット

現在、山木が絶大な信頼を寄せるのは、圧倒的な視野とマグネット式レンズ交換システムを備えた「Contour」。そして、堅牢なフレームを持つ「Reverb」だ。

「『Contour』は何と言っても、機能、フィット感、視野の広さのバランスがとても良くて、シーズンを通してメインで愛用している。『Reverb』はハードな山行でもレンズを守ってくれる堅牢さが本当に心強い。木や枝への接触や、モードチェンジの時にスキーが不意に倒れてエッジがゴーグルにぶつかる、あるいは転倒など、予期せぬアクシデントはつきもの。ラフに扱えるのは助かる」

興味深いことに、20年近くGIROを使っているにも関わらず、山木には「ゴーグルに助けられた」という劇的なエピソードが少ない。それはなぜなのか。

「ゴーグルって、使えて当たり前、見えて当たり前なんですよ。良い状態が普通になっているから、意識することを忘れてしまうんだよね」

問題なく機能している時は意識に上らない。それこそが、GIROのプロダクトが到達した完成度の高さをなによりも物語っている。その絶対的な安心感は、もはや彼の山行においてなくてはならない空気のようになっているのだ。

圧倒的なまでの信頼感。そして、洗練されたデザイン。山木匡浩のどこまでも続く滑走とそれに寄り添うGIROのプロダクトは、これからも真っ白な世界に、どこまでもクリアで美しいラインを描き続けていくに違いない。

使用モデル

Contour コンツアー

カラー=MIDNIGHT/BROWN WORDMARK 他8色|¥49,500

トーリックレンズと長く培ってきたEXV+テクノロジーにより、肉眼で見る視界とほぼ変わらない広さの視界をもつ点が山木が愛用し続ける理由のひとつ。3ヵ所にあるマグネットとピンでレンズを正確にフレームへ強力に固定するだけでなく着脱も容易。

Reverb リバーブ

カラー=BLACK BURST 他8色|¥20,900

モトクロスから着想を得たデザインが特徴。優れた視界を提供する「EXV+テクノロジー」や平面の「VIVIDレンズ」を採用。タフに使える耐久性の高さがポイント。手の届きやすい価格帯とバリエーション豊富なデザイン展開だ。

Profile

山木匡浩 Tadahiro Yamaki

日本を代表するビッグマウンテンスキーヤーとして、南米はじめ、カナディアン・ロッキー、東欧など世界各地の高峰に挑んできた。過酷なバックカントリーで培われた高い技術とリアルな道具論は、多くの滑り手から絶大な信頼を集める。通称ヤマキックス。

Instagram:@yamaki_x

Photo=Joe Kobashi, Hiroya Nakata

Information

GIRO(ジロ)

公式サイト:https://giro-japan.com/
公式SNS:Instagram|Facebook

取扱い/(株)ロータスインターナショナル

INDEX