BC滑走愛好者が冬のスイッチを入れるためにやりたい!6つのこと【首都圏版】

北海道の山域には初冠雪もあり、一気に秋モード全開の10月。この時期に都内在住のバックカントリースキーヤー・スノーボーダーがやっておくべき6つの準備をまとめた。良いシーズンを送るために、しばらくOFFにしていた「冬のスイッチ」をそろそろONにして、シーズンイン支度を整えていこう。BC滑走歴と熱量には自信のある私、YOSHI(STEEP読者レポーター)がお伝えしていく。

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はじめに

*24-25シーズン1月の八甲田。バックカントリーの聖地の一つ

例年、11月に入ると、人工降雪機をフル稼働させてあちこちのスキー場がオープンしていく。そして天然雪でフィールドが雪にすっぽりと覆われた頃、いよいよバックカントリーシーズンが幕を開ける。そういきなりシーズンが始まるわけでもないので、バックカントリーユーザーたちはついのんびりしがちだ。

とはいっても、私のような首都圏在住者には、シーズンイン前にやっておくべき重要なことが幾つかある。ギアの準備もそうだが、冬の仲間との作戦会議と旅の準備も欠かせない。首都圏からの遠征地、北海道や東北は年々外国人にも人気がうなぎ上りで、油断しているとアッという間に宿がブッキングされてしまう。それを見越して8月末あたりからシーズン中の大方の連休の遠征地の宿を押さえにかかったものの、私は例年にはない過熱感を感じた。

常宿がすでに予約で埋まり始めているのだ。いまや冬の北海道はスキーヤー、ボーダーだけのものではなく、世界中から冬の観光を目当てに旅行者がわんさかと押し寄せる一大観光地になる。

そこで今回は、年々状況が変わるなかで、都内在住のバックカントリースキーヤー・ボーダーが、秋にやっておくべき6つの準備をまとめた。良いシーズンを送るために、しばらくOFFにしていた「冬のスイッチ」をそろそろONにして、シーズンインの支度を整えていこう。

①ギアを起こす:板のチューンナップとビーコンなど各ギアのチェック

私の愛用ギア:ゴーグルのレンズに傷が入っていることもシースンオフの間に忘れてしまうから、事前チェックは大事だ


9月、滑り仲間のSNSを見るとチューンナップショップに板を持ち込んでいる投稿を発見。「もうそんな季節なんだな」と思わされて、ふと納戸に立てかけてある板をチェックすると、ソールは乾いて白っぽく、エッジにはうっすら赤錆が浮かんでいる。

ブーツは見た目が変わらなくても、バックルやソールラバーが傷んでいたり、インナーがヘタってフィットが変わっているいることもある。先シーズンはこのおかげで何度左足に大きな靴ズレを作ったことか... …。このときは仲間に相談した結果、自分の足にもテーピングを巻くなどの工夫をして、なんとかシーズンを乗り切った。

板、ブーツだけでなく、納戸に押し込めてあったギアたちは数ヵ月も眠っている間に、呼吸を欲していたり、加水分解し始めていたり。ビーコンや無線機などの電子ギアもスイッチを入れてみないと状態がわからない。無機質だと思っていたギアたちも生き物だ。

とくにチューンナップ工房は10月頃から混み合い、納期もシーズンインギリギリになりがちなので、理想は9月中に持ち込むことだ。ちなみに私がチューンナップに出しているプロショップでは、10月中旬時点で納期は11月末という。

シーズンインに間に合わないということがないように、チューンナップは早めに出しておきたい。ショップのスタッフと会話すると、冬への心のスイッチが入ることも間違いない。

②気持ちを起こす:シーズンインキックオフイベントをチェック

'24-25シーズンUPLAND自由が丘店での「NORTE、YAMAKI-X」のキックオフイベントにて

シーズンオフの間、しばらく顔を合わせていなかった山仲間と顔を合わせると、自然と冬への心のスイッチが入るものだ。秋になると、バックカントリーギアを扱うブランドやプロショップがシーズンインイベントを開催し、人気ガイドたちのスライドトークショーなどが開かれる。久しぶりに仲間と会って「今シーズンはどういう予定?」と話し始めると、ぐっと冬の実感が増してくる。

オンラインでも情報は得られるが、ショップに出向いて新しいギアに触れ、ガイドの話を直接聞いたり、仲間と会話して笑い合う時間には代えがたい。ここで得られるリアルな雪の予想や遠征先の最新事情は、ネット検索では拾いきれない貴重なヒントになる。シーズンを重ねるほど、こうしたプレシーズンの集まりが、雪山仲間との絆を深める大切な場であることもわかってくる。

今年もいくつかのイベントに参加するつもりだが、意外と情報が出るのが直前だったりすることが多いので、日々の情報チェックが大事だ。だから私はSTEEPをこまめに見ている(笑)。


③身体を起こす:ワンシーズン登りきれる身体を

ハイクすればしただけ魅力的な斜面に出会える。頑張りたいのはやまやまなのだが…

筆者の使っているGPSウォッチによると、日帰り1日ツアーで平均、1,000mの標高差を、移動の中で登り・滑りを繰り返して3~4本すると、1日平均1,500~2,000キロカロリーの消費量の運動になるようだ。都内在住のスキーヤーだと、一度遠征すると、2~3日は毎日滑るというのはざらだと思うが、バックカントリーシーズンを充実させるには、とにかく体力が必要。

私は、都心暮らしのなかでも比較的運動しているほうだと思うが、とはいえ、なかなか毎日1,500キロカロリー以上消費する運動はしていない。シーズン中はこの運動量を数日間続けるうえ、毎週、隔週と山に行けば、これ連続してこなすわけだ。バックカントリースキー・スノーボードとは、なかなかハードなスポーツだ。

運動不足のまま雪山に向かうと、初日のハイクで太ももが悲鳴を上げ、翌日は筋肉痛で快適に登れない。せっかくのパウダーを前に体力が尽きるのは悔しいものだ。

'24ー25シーズン、北海道キロロ周辺での滑走

せっかくの貴重な機会を十分に楽しむために、秋から少しずつ身体を目覚めさせておこう。週に2〜3回のジョグやバイク(自転車)、階段の上り下りなどで心肺を戻し、スクワットや体幹トレーニングで膝や腰を支える筋力をつける。ストレッチやヨガで股関節や足首の柔軟性を確保しておくと、ケガの防止にもつながる。

私の場合は、もっぱらジムの頻度と強度を徐々に上げていって体を作っていくのだが、実際にシーズンに入り雪上に立つと、いつも「もう少し持久力を作っておけば、シーズンインがもっと楽しいだろうに...…」と毎年の準備不足を嘆いている始末だ(笑)。

④予定と拠点を決める:山行のスケジュールと宿の確保

'24-25シーズンに訪れた八甲田山荘


秋のうちに予定を決めておくことは、首都圏在住者がシーズンを無駄なく楽しむためのコツだ。とくに年末年始や2月の連休は、人気エリアの宿やガイドツアーの枠があっという間に埋まってしまう。

昨シーズンは、8月末から旭川など、北海道の街を起点に滑るための宿を見ていたが、有名・人気どころはほぼ満室だった。とくに北海道はスキー以外でも海外の観光客に人気のエリア。今シーズンはかなり早い段階から予約が入っている宿も多いようで、長期のツアーを計画する場合は要注意だ。

競争の激しい混雑の北海道ではあるが、お得に行けなくもない。数ヵ月に1回、ANAやJALの宿付き航空券のバーゲンセールがあるのだ。北海道や東北の街をベースにツアーを検討する場合は、有力な候補になり得る。

遠征を前提にする首都圏者にとって、宿の確保は切実だ。常宿のオーナーには早めに連絡を入れ、予定がまだ固まらない場合もキャンセルポリシーを確認して仮押さえしておく。仲間と行くなら、オンラインカレンダーやチャットで日程を擦り合わせておくとスムーズだ。拠点が決まると、その拠点を中心にアプローチできる山々が浮かび上がり、計画を立てる楽しみが増してくる。

シーズンが始まる頃には、もう大まかなシーズンのスケジュールが整理できている状態を目指したい。

⑤移動手段を確保する:タイムセールで航空券・交通を押さえる

'24-25シーズンの旅からの一枚:夕方便は風景も美しい

遠征先が北海道や東北なら、シーズン前は航空券の争奪戦だ。JALやANAの「公式タイムセール」は販売開始と同時に予約するのが鉄則で、9月には年末年始や1月の週末分を押さえておく必要がある。今年はANAのタイムセールが早く、既に3月のタイムセールまで開催済みだ。

とくに新千歳行きは競争率が高く、雪の便りが届く頃にはセールでは予約が取れないことも珍しくない。飛行機だけでなく、空港から山麓エリアまでのレンタカーや送迎バスも早めの予約が安心だ。

都心在住者なら新幹線での移動も視野に入れたい。特にJRの運営するJREバンクの口座を持っている人であれば、利用度に応じて新幹線チケットが大幅に割引になる特典などもあるので、函館や青森など、長距離の移動の場合は、破格の値段で移動が可能になる。興味がある人は、ぜひチェックしてみては。

⑥ 安全と学びをアップデート:講習・レスキュー・保険

いろいろなメーカーのビーコンが集まるので違いを理解するだけでもかなり勉強になる

もしも、雪山にいて雪崩が起きたとして、ビーコン、ショベル、プローブを瞬時に適切に使えるだろうか? 私は自信がないので、毎シーズン、シーズンはじめはビーコンやレスキューのトレーニングに時間を使っている。夏の半年間のブランクで、頭と身体はセーフティギアの使い方も忘れ去り、とっさに反応して動く瞬発力も確実に鈍っているからだ。

だからこそ、毎年シーズン前に雪崩講習会やレスキュートレーニングを受けて、知識と技術、そして感度をアップデートしておきたい。

山岳保険の早めの確認も必要だろう。通常の保険ではもしも山で事故に遭っても捜索費用やヘリ搬送は対象外なことがほとんどである。山岳保険に加入しておくことで、いざというときに安心できる。安全への備えは心の余裕を生み、仲間や家族への責任を果たすための大切な投資だ。

最後に

この冬がすばらしいシーズンになるよう、備えておけば憂いなし。秋から冬の旅のことをあれこれ考えていくと、自ずと日々の充実度もアップするのでは。さぁ、いまから滑走モチベーションを少しずつ上げていこう!

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