このシリーズ企画は、雪山時間と雪山滑走を快適に楽しくしてくれそうなアイテムを雪上で使ってみて、実際どうなのかの検証を試みたりしながら、ユーザー目線でレポートするものだ。今回ピックアップするのは「ハイスペック魔法びん水筒」。STEEP編集部がハイシーズンのバックカントリーにコレを連れて行ってみた。
バックカントリーでのランチは?
私は圧倒的に「魔法びんのお湯でカップヌードルを作る」派
歩いてしか行け無い場所で絶景を楽しみながらのランチ。こいつは格別だ。私の場合は山の上でのカップヌードル。山の上で食べるとなんでこんなにうまいんだろうって、マジ、そう思う。同じように感じてる人、ぜったいいるに違いない。
冬山でも天気が良ければ、山の上でのランチは実に気持ちよしなのだ。
バックカントリーエリアでのランチといえば、ナッツやバー、バナナなどの行動食、または、おにぎりやパン類を持っていき、水や持参のお湯で紅茶やスープなどといただく、が無理のないところだ。けれど、私は圧倒的に「魔法びんのお湯でカップヌードルを作る」派だ。冷え切った山の上で温かいヌードルは夏場以上にうまさを感じる。
なぜならば・しかし
もちろん、アツアツのお湯を山の上でも確実に楽しみたいなら、ストーブ+ガス缶+鍋、それに水(まぁ、その辺の雪を沸かしてもいいが、それだととても時間がかかる)を使うのが確実だろう。
実際、スコップで雪テーブルとベンチを作り、ストーブを使って豪快に焼きものランチをしているツワモノもたまに見かける。かなり楽しそうだが、これだと荷物が重くなる上にかさばり、しかもお湯を沸かすのに時間がかかる。また天候によっては使えないことだってある。
対して魔法びんは、欲しい時にすぐに取り出せてすぐ使える。かさばらない、重くない、というのがメリットだ。実にお手軽だ。とはいえ、「魔法びんのお湯は保温力が弱くカップ麺など作れないだろう」なんて疑う人も多い模様。
そこで、4つの魔法びんにお湯を詰めて雪山に持ち出し、アツアツの温度をどれくらい長く保てるか、そしてちゃんとカップ麺は作れるのかを、実際に検証してみた。検証を実施したのはニセコグランヒラフからのサイドカントリーエリア。雪山での至福のランチタイムの写真と共に、その結果をご紹介しよう。
魔法びんはどれくらい熱々の温度を保てるのか?
いきなりだが、下記の表をご覧いただきたい。(ぜひ拡大して)
4つの魔法びん、それぞれの重さと水筒内温度はこんな感じ。朝お湯を入れてから通常のバックパックに入れて、6時間持ち歩いた後の温度がこれだ。(外気温はマイナス8度前後)
※メーカーが示す保温効力とは室温20℃で95℃のお湯の場合
※今回検証時の外気温:マイナス8度前後
※価格は2021年2月現在のもの
※検証に使用したタイプは2016~2019年頃に購入した個人装備
結論から言うと、今回持参したサーモス山専用ボトル、モンベルはいずれもカップ麺を作るのに必要な90℃近い保温力を6時間経っても維持し続けていた!
検証のプロセスをお見せしよう
ニセコグランヒラフからバックカントリーに出かけた当日の一連の流れは、このようだった。
AM7:00 電気ケトルで水を沸騰させ、水筒へ
朝の7時より検証開始。電気ケトルで水を沸騰させて、魔法びん水筒へ入れる。この時、保温効果を高めるためにチョットしたコツがある。
コツ1:最初に熱湯を少し入れてまんべんなく回し、ステンレス内部を温めておく。いったんそのお湯を捨てて沸かしたお湯を入れると熱さの持ちは格段と違う。
コツ2:水筒内部の中に隙間ができないくらいパンパンにお湯を注ぐ。隙間があると持ち歩き中にお湯が内部で揺れて保温力が低下するのだ。
AM 8:30 いざ雪上へ・外気温はマイナス8度!
PM13:00 山の上でランチ
午前中ひとしきりハイク&滑りを繰り返した後、ランチタイム到来。さっそく水筒内の温度を検温。モンベルアルパインサーモボトル700mmでまずは測ってみた。
水筒の温度は約84度。9度ほど下がったが、ヌードルに使うお湯としては問題ない熱さだ。気温マイナス7度、雪温マイナス0.3度のランチスポット環境。ヌードルはご覧の感じ(写真下)。待ち時間3分より少し長めでちょうどよいあんばい。スープも熱く体がとても温まる~。
ちなみに容量500mmはカップヌードルを作って、残ったお湯(150mmほど)でお茶やコーヒーが楽しめる一人用。750mmはヌードル2人前でちょうどいいサイズ。大容量の900mmはガイドさんがよく利用している。ゲストの方に暖かなお茶などをふるまっているのをたまに見かける。
ちなみに、登山上級者の方などはハイスペック魔法瓶をテルモス、と呼ぶ方が多い。魔法びん黎明期に信頼できる魔法びんがメーカー名の「テルモス」と呼ばれていたなごりからだ。英文にすると「Thermos」でドイツ語読みは「テルモス」。英語読みは「サーモス」。テルモス=サーモスということだ。
山から戻り、部屋で再び検温
お湯が半分以上無くなり、水筒内で空気に触れてたにもかかわらず67.3℃を保っていた。マグタイプは55.2℃。
すごいね。驚きの検証結果であった。
以前はこんなに大荷物だった
私は以前は冬でもストーブとアウトドアガス、スチール鍋を持参し(写真下)、ランチスポットでお湯を沸かし、ヌードルをいただいていた。それがどうだろう。ハイスペック魔法びん水筒と出会ってからは、ワンデイ冬山ではストーブの出番がすっかりなくなった。
以上、魔法びん水筒はとても優れもの、という検証結果アンドお話でした。
まだ使ってない方はぜひ。
Photo/Diceman、STEEP編集部 Text/Snowman
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