プロに教わる。スキー・スノーボードのシーズンオフの手入れ&保管方法

シーズンオフの間、いつもどのようにスキーやスノーボードを保管しているだろうか? お気に入りの板を長持ちさせて、‘24-25シーズンにまた調子よく滑るために、まだ間に合う! 今こそしておかなくていけないことを専門家に教えてもらおう。

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最悪のシナリオにならないために

最も遅く6月上旬までオープンしていた月山スキー場

夏を迎え完全にシーズンアウトした(であろう)今、役目を終えたマイ・スキー&スノーボードはどうなっている? もしや、山で最後に使ってからなにもしないで、どこかに放置しているとしたら大変だ。まさか外で雨ざらし……というSTEEPユーザーはいないだろうが、真夏の暑さで熱が籠ってチンチンの温度になる物置などに無造作に置いたりしてはいないだろうか? 

その先に待っているのは、大枚をはたいて買った大事なスキー&スノーボードが、すぐに満足に使えなくなってしまうなんて最悪のシナリオだ。それはどうして? 
なぜなら、シーズンオフのスキーのメンテナンスと保管方法がスキーの滑走性能の維持や寿命に大きく関わるからだ。どうすれば最悪のシナリオを防げるのか? そこで、ワックスやチューンナップギアの専門メーカー「ガリウム」に、シーズンオフの手入れや正しい保管方法について教えてもらった。

案内してくれたのはガリウムのエンジニアである田中智士(たなかさとし)さん。この道20年のスペシャリストだ。

「シーズンを終えた板は、いろいろな斜面や雪を滑っていますから滑走面もエッジもすっかり疲労した状態です。とくに春先のザラメ雪などは表面に黒い汚れのクズが浮かんでいたりしますよね。すごく汚れている上を滑ることで、その汚れが滑走面にどんどん蓄積していきます。仮にハイシーズンにパウダーばかりを滑っていても、実は1月や2月のきれいに見える雪も、厳密には汚れているんです。それを放置しておくと汚れが酸化して、滑走面をどんどん劣化させていくのです。

そんな状態の滑走面の板が雪上でスムースに走るわけがないですよね。雪にひっかかる、スピードが全然出ない、思うように加速しない、そうなれば当然、滑っていても気持ち良さや楽しさは半減してしまいます。さらに滑走面の劣化は板の寿命にも大きく影響するのです。そうならないためには、メンテナンスが大事です。もしも今、シーズンアウトした板を放置したままでも、今からでも遅すぎるということはないです、ぜひ手入れをして適切に保管してあげましょう」

必ずやっておくべきことは「滑走面のクリーニング」

シーズンアウトしたスキー・スノーボードは、まずクリーナーを使って、滑走面の汚れを拭き取ることが最優先だ。

手順1.クリーナーをつけて滑走面をきれいにする。

詳しくはこちらの動画で確認しよう!

滑走面の汚れを拭き取るには、キッチンペーパーなどが望ましいが、古くなったTシャツやタオルでもいい。ティッシュは紙粉が出てしまうのでNG。やってみると驚くほど汚れていたことがわかるもの。

こんなに滑走面は汚れていることも少なくない。しっかり拭いて黒い汚れが出なくなるまで繰り返す。

滑走面の劣化もさることながら、もっと素朴に「板が滑らなくなった」という問題の一番の原因は、汚れの付着からくるものなのだ。

手順2.表面だけでなく、ストラクチャー内のケバやゴミ、汚れを取り除くためには、ブロンズブラシを使ってトップからテール方向に向かってブラッシングをかけると尚良し。

手順3.さらにコルクに巻いたファイバーテックス(粗仕上げ用)で細かなケバを取ればもっと完璧。

Q. エッジはどうすればいい?

田中さんいわく
「バリなどが気になるようなら、錆びを落とす消しゴム(ラストリムーバー)でバリや錆びを落としてあげて、ある程度きれいにしておくといいですね」


保管の前にもう一つ必須が「ワックスによる酸化防止のコーティング(パッキング)」

滑走面から汚れを除去したら、滑走面を空気に触れさせないよう保護するために、ベースワックスを塗ることも必須だ。固形ワックスをアイロンで溶かして塗るのが、いちばん保護効果が高くて良い。

手順4.滑走面全体にワックスをまんべんなく生塗りする。アイロンに固形ワックスを当てて表面を柔らかくしたほうが生塗りしなすくなる。

手順5.ワックスを滑走面に垂らす。ワクシングペーパーの上にワックスを融かしながら適量をまんべんなく垂らす。

手順6.ワックスをアイロンで延ばす。アイロンを止めないように滑走面全体にまんべんなく延ばしていく。

動画で一連の流れを確認してみよう。ワックスを塗る程度やブラッシングの手の動かし方や力の入れ方など、動画ならよくわかる。

Q. アイロンを持っていない(買いたくない)場合は?

田中さんいわく
「アイロンを持っていない人も少なくないですよね。アイロンがなくてはダメか、というと実はそんなことはないんですよ。固形ワックスを生塗りで厚塗りするんです。また、スプレーやペーストの簡易ワックスを塗ってそのままにしておけば、それでも何もしないよりははるかにいいです」


手入れに使うアイテムたち

クリーナー300(300ml) ¥1,100
ラストリムーバー ¥1,540
ラストディフェンダー \1,870
ブロンズブラシ ¥4,730
フィニッシュコルク \2,310
コルク ¥990
ワクシングアイロン ¥17,600
ワクシングアイロンHandy ¥7,370
ワクシングペーパー(50枚入り)\990
ファイバーテックス(粗2枚入り)\1,100
2WAY CLEANER (300ml) ¥2,530

保管はどこにどのように?

一通りの手入れが済んだら、最後はどこにどのように保管すればいいか。

「一番良いのは風通しの良い陽の当たらない涼しいところに置いておくことです。いわゆる冷暗所ですが、難しい場合は、少なくとも直射日光が当たらないところに置きましょう。たとえ室内でも窓から夏の西日がガンガンと当たるような場所に置いてしまうと、温度が上がって塗ったワックスが溶け出してしまいます。

また、板は基本、木で造られているのであまり高温な状態だと変形してしまうリスクもあります。最も理想的なのは30℃以下での保管ですが、40℃以下ならば大きな心配はないと思います」と田中さん。

これはSTEEPのジャスト・アイデアだが、グラフィックが気に入っているスキーなら、部屋に飾るのはどうだろう? 
Hover. The Wall Mount Ski」という、スキーを壁に引っ掛けてくれるアイテムひとつあればOKだ。部屋のなかならば風通しも良く、湿度もほどよく調整ができる。板の乾燥にももってこいだ。ただし直射日光が当たらない場所を選ぶことを忘れずに。

Hover. The Wall Mount Ski ¥15,950

教えてくれた人

田中 智士 (たなかさとし)さん
株式会社ガリウム

この道20年のスペシャリスト。WAXの製造等も行っており、WAXの特性を熟知している。アルペンスキーを担当し、契約選手のサポートや各大会でのサービスを行っており、「滑らせる」ためのワクシング等のテクニックを日々研究している。

Info
株式会社ガリウム
公式サイト:https://www.galliumwax.co.jp/
公式SNS:Instagram Facebook Youtube

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