自然のなかで遊ぶことが大好きで、もっと楽しみたい。そんな思いやアイデアが新しいモノや価値を生み出していく。今回紹介するのは、山のプロフェッショナルが快適とパフォーマンスのバランスを考えた自然派ソックス「歩むsocks」。構想2年、一歩ずつ、一歩ずつの試行錯誤を積み上げ、ついにリリースされた。そのプロダクトに込められた「思い」とは?
プロフェッショナル山岳ガイド 旭 立太

旭 立太(あさひりゅうた)。バックカントリースノーボードから山を始め、自身が感じた山や自然の魅力を伝えられるような山旅を提供したい、と思いガイドの道へ。「Rhythm Works」を始めてから19年、旭さんは、自然のリズムに合わせ、四季を通じて山へ登ってきた。
「山を歩いて、土を感じ、岩や雪、水や緑に触れる。さまざまなフィールドワークを通じて"自然と一体になる瞬間″を体験する。そんな時間があればあるほどに人生は豊かになるのだと思う」
そう語る旭さんが、最近、ガイド業とともに情熱を傾けていることがある。それは「歩むsocks」という靴下づくり。構想2年、温めてきた思いをいよいよ形にするときがきたようだ。
そのきっかけは

ガイドとして、ゲストを山へ連れていく。夏の穂高から冬の白川郷、春の立山……目の前に広がる自然の姿や山の天候は常に変化し続ける。しかし、どんな山行でも変わらないことがひとつある。「自分の足で歩く」ということだ。
「15年くらい前ってスノーボードの靴下にはメリノウールのものがあまりなかったんです。メリノウールは、吸湿・速乾性に優れ、夏は涼しく冬は暖かい。履き心地も快適で防臭・抗菌性も高くて、山には最適です。僕は冬山のガイドもやるので、スノーボードにもメリノウールの靴下があるといいな、と思っていたんです。
たまたま先輩の実家が靴下の工場をやっていて、靴下いつかやろうよ、なんて話していたんですが、ときは流れて、そんな思いは収まっていた。それが、ちょうど2年前に、ふくらはぎを肉離れしたんです。原因はなんだったのか?と思ったわけです。そこで足回りのことが気になって、靴下についてじっくり考えるキッカケと時間ができたんですよね」
違和感から始まった

「ふくらはぎの肉離れは、整体の先生の力もあって、本来なら全治3ヶ月くらいの状態だったところを3週間で復活できたんです。あらためて自分の足の動きを見直そうと、そのときに今まで履いていた靴下を履いたら、非常にいろんなところに違和感があった。つまり快適じゃないってことです」
「違和感」とは具体的にはどんなものだったのか?
「例えば、ふくらはぎに着圧の機能がついている靴下。ゲレンデを滑っているぶんには短時間で問題ないし、パフォーマンスは上がるのですが、バックカントリーにいくとなると、日帰りでも1日歩きます。そこで圧が強すぎると疲れちゃう。これまでも引っかかってはいたんですけど、まぁ仕方ないなと思っていたのが、怪我をきかっけにどうにも気になってきちゃって…。
そこで思ったんです。もっとしっくりくる、自分が使いたい靴下をやっぱり作りたいって。自分で作るなら、ふくらはぎの着圧や、足首のつくりをどうするかを、じっくり考えようと思いました」
忘れかけていた、いつの日かの靴下づくりへのモチベーションが再燃。旭さんは動き出した。
「歩むsocks」誕生

旭さんは2年をかけ、ブランドネーミング、ロゴデザイン、サンプル作成、フィールドテスト、と一歩ずつ歩みを進めてきた。
「ブランド名は、歩くっていうところから「歩む」とかけて「歩むsocks」にしました。足袋型のスタイルがメインになるので、何か日本っぽい名前がいいと思っていたんです。ロゴも日本の文様や家紋のようなデザインをしているスノーボーダーのデザイナーに頼みました。僕も家紋とか好きなので、とても気に入っています。
足袋型にした理由? この形状が、とくに山でアクティブに動くにはいいんです。僕は靴下にはもともとこだわりがあって、様々なものを試してきた。その上でやっぱり足袋型だよな、って。足袋は古来日本で生まれて、文化的に継承されてきたものだし、先人たちはすごく考えてあの形状にしたと思うんです。5本指だと逆にちょっと違うなって思って」
一体どんな靴下なのか?

20年近く、四季折々の山で過ごしてきた長い時間と豊かな体験から生み出した「歩むsocks」。「自分が作るなら、履いていて気持ちがいいものを作りたい」。旭さんがこだわったのは、履き心地の良さ、動きを妨げない機能性、それでいてシンプルであること。
それぞれのこだわりポイントにふれてみよう。
「ルーズ・タイト」そうあってほしいの掛け合わせ
「実は僕、外反母趾がすごいんです。合わない靴とか形状の靴下を履いていると、すごく違和感がある。それに登山や滑りのとき、ブーツのなかで足を動かしたい人なんです。だから足の動きを妨げないってことには、こだわりがある。
それと、怪我をしたときにお世話になった東洋医学の先生に教えてもらったんです。
「ふくらはぎはポンプの役割を果たしていて、血液循環を良くする機能があるんだ。例えば女性とか、血液のポンプ機能が弱くて足がむくみやすい人には靴下で圧をかけることで循環を促進する意図があるけど、筋力のある人にとっては、逆に動きの妨げになってしまい、足が疲れたりしちゃうよ。これはいらないよね」って。あらためて納得したりして。
だから、ルーズであってほしいところはルーズなのがいい。結果、足首は適度に締まっていて、ふくらはぎはゆとりを持たせてルーズに。履いていて疲れないように。素材は伸縮性があるパイル網を使って、履いたときボリュームがないように工夫しています。

かかとからつま先にかけては、とくに指、母指球の手前あたりから一番ワイドな部分、前側は指が広げられるようにルーズめに、横幅を広くしてある。かかとは締まっていて、前は開きやすいから、靴下のなかで指が動かしやすく、指の力も使えるわけです」
ルーズとタイトが絶妙に組み合わされたデザイン、それが快適な心地良さをもたらすのだ。
素材の最後はシンプルに

「歩むsocks」は、岐阜県関市にある創業80年の日本でも有数の職人工場である東洋繊維で製作している。
「当初は、「美濃和紙」という岐阜県の美濃地方の特産である和紙素材と、僕の住んでいる愛知県の尾州の特産のウールを使って靴下を作ろうという計画だったんです。美濃和紙の吸湿性や軽量感という特性と、尾州のウールの特性を合わせたら面白いな、と考えていたから。それが、発案から2年もかかってしまった過程で、たくさんのサンプルを試していくと「良し悪しがある」ってこともわかってきたんです。それで、結果的にはシンプルにメリノウールに戻りました(笑)。
原料の出どころから加工工程までを大切に考えて、牧場の選定、原毛の管理、加工に至るまで、『背景が見えること』を何より重視しています」
そのウールだが、防縮ウールという、洗っても縮まない加工を施したウールで、WOOL100%。足裏とかかとなど滑る部分は、化繊で補強し、最小限の化繊が入るが、基本的には、このようにほぼメリノウールで作られた。
メリノウール 89%|ナイロン 10%|ポリウレタン 1%
この“高いメリノウール率”も、歩む Socks の大きな特徴。
「山で使うものだからこそ、どんな素材かを、ちゃんと知った上で選びたい。その考え方を、履き心地から伝えていきます」と旭さん。
デザインもミニマルに

「はじめは登山用と滑り用と2タイプの展開を考えていたのですが、これもまた最後は一緒になっちゃいました(笑)。サンプルは両方作ったんですが、登山用がすごく良すぎて、これ両方にいけるじゃんって。なので、最初は「Tall」という丈でスタートします。
春から秋にかけても履くことを想定しているので、もうちょっと暖かくなり過ぎいように、足裏のパイル編みは一緒のボリュームなんですけど、甲の部分は湿気が逃げるように薄くしています」
滑ることを考えると、ブーツの足裏のフィーリングがとても重要で、より繊細な足裏フィーリングがほしい。僕は比較的薄手の靴下が好きなので、薄手で暖かいのを作っていたんですけど、結局、これまた中厚になっちゃった(笑)。
中厚は暑くて汗をかきすぎてフィーリングが悪いかと思っていたら、作ってみたら悪くないんですよ。結局、最近の登山でも同じ中厚のものを履いていて、まったく問題なく快適なんです。すると、基本、真夏以外は使えるね、となりまして。最終形態は中厚のパイル地になりました。

100%ウールなので、湿気がほぼない、感じないんですよ。汗を感じない。ずっとさらさらしている。通常の編み地は表面が平らですが、パイル編みはループ状の繊維が特徴。フィーリング的には、地は中厚だけど、ループ状の繊維によって空気の層ができて、暖かさをキープしてくれて、クッションや保護の役割も果たしてくれるので、ふんわりした履き心地で快適です。
いままで長時間ブーツを履くと足があたって痛かったのが、この靴下を履くようになって痛みが軽減して、ほぼなくなっちゃいました」
「結局みんな中厚になっちゃった」と苦笑いする旭さんだが、それはサンプルを作っては試し、時間と根気のいる作業を繰り返した努力が導いた答えに他ならない。「こうであるはず」と最初に立てた仮説に固執せず、自らの研ぎ澄ませた感覚を信じて、プロダクトをアップデートしていく姿勢は、まさに現場主義のガイドらしい。
靴下の重要性

スキー・スノーボードをするときの靴下が変わると、何が起きるのか? 触れないわけにはいかないのが、靴下の重要性や枠割だ。
「靴下は、靴と足をつなぐ関節的な役割を果たします。靴がいくらよくても、ちゃんと足と合ってないとパフォーマンスもよくならないです。だから、靴下は靴と足を上手く連動させるための重要な媒介アイテムだと思っています。
単なるクッション材というより、靴と足の連動を円滑に進めてくれるものでもあり、ブーツ・登山靴と足、それぞれのポテンシャルをより引き上げてくれるものだ、と考えています。それは自分の滑りのポテンシャルも引き上げてくれる。靴がたいしたクオリティのものでなくても、靴下によって自分のパフォーマンスのポテンシャルを上げられこともあると思います。
足の指が広げられるかどうかで、滑りのパフォーマンスが変わる。足裏は「鍵」ですね。いまは靴が進化しているから、靴でサポートしている、足が本来持っているはずの指でバランスをとる力や、指でコントロールする力は落ちてしまっているんです。
そこに問題意識を持って、いま、幅広でベアフット系(裸足感覚の靴底の薄く、つま先の広い靴)が流行ってきていますよね。人間の足が持つ本来の機能を取り戻そうというムーブメントが、アメリカを中心に起こっていて、日本にも広がりを見せています。僕は、ベアフットの靴を履いているおかげで指が開いてきたので、2年前の靴が履けなくなった。それに腰にかかる負担が減って、腰の疲労が軽減されました。
「歩むsocks」もベアフット系のシューズと同じように、幅広でスペースがあるから、指が開き出して、指の運動が活性化される。それによってバランスがとりやすくなったり、足に無理のない自然な動きが促される。だから山でも疲れにくくなるはずです」
靴下はガイドと似てる

人の命を預かって山で働く山岳ガイド。
旭さんがガイドになったのは「ただのなれの果てですよ」と笑うが、その表情には山への強い愛情とプロガイドとしての誇りがあふれている。
「ガイドって、靴下と同じように間接的な役割を果たしながら、人の人生の時間を気持ちよく、豊かにするお手伝いだと思います。
自然とお客さんをうまくつなげる仕事。人間も変化するし、自然の環境も変化する。それらをうまくマッチングさせ、いかに心地のいいリズムで人と自然を繋ぐことができるかがガイディングの肝。そして、靴下は、足から自然とからだを繋ぐ。いかに快適に足と自然を繋ぐことができるかで、パフォーマンスが変わる。ガイディングと似てる。
以前は質よりも量で、とにかく山にいたかった。ただひたすら滑りたかった。でも、いまは違う。山での時間のクオリティ、精度を求めてる。使うもの、身につけるもの、自分が納得できて好きなものを使って、山の時間を豊かに過ごすこと、それが大切なんです。

この「歩むsocks」は、純粋に山が好きな人や、スキーやスノーボードが人生の一部になっていて、なくてはならないって人に履いてほしい。山で過ごす、自分にとってかけがえない時間を「ともに歩む」。そういう時間を大切にしている人に履いてほしいです。
僕がどんな人かって? 変人ですね。こだわりいろいろあるし。
でもこだわりって幸せになる。
人生をおもしろくするには必要なものだと思うんです」
そのこだわりが生み出した「歩むsocks」。履いてみたくはならないか?
歩む Socks (AYUMU Socks) – Tall +
※オンラインストアの準備が整うまでInstagram(ayumu.socks)のDMにて注文可能

Size|サイズ(ユニセックス)
SM:22.0 – 25.0 cm ML:25.0 – 28.5cm
¥5,800(税込) / MADE IN JAPAN
Features|特徴
一日中履いていたくなる、心地よさ。
「違和感がないこと」を大切に、山岳ガイドの視点で監修。
足袋型・リラックスフィットの、シンプルなデザイン。
バックカントリーを含むスキー・スノーボード、雪板、
雪山登山まで対応し、
寒冷な環境でも安定した履き心地を支えます。
日常から、冬のフィールドへ。
Material|素材
・メリノウール 89% / ナイロン 10% / ポリウレタン 1%
・吸湿速乾・消臭性に優れ、毛玉ができにくい高耐久素材
・優良牧場と契約しノンミュールジングを含む、
トレーサビリティ管理された高品質ウール
Functions|機能
・足袋構造:踏み込み時の安定感とバランスをサポート
・非締め付けデザイン:リンパの流れに配慮、ストレス軽減
・ヒールサポート:ズレを抑えつつ血流を妨げない設計
・パイル編み:フィーリングと保温性のバランスを追求。
冷えを軽減し、クッション性を確保
・脛〜足先パイル:当たりを軽減し、快適性を向上
・ふくらはぎ部分:パイルを入れず、圧迫感を抑えた設計
・面で支える構造:各要素を組み合わせ、やさしくサポート
歩むSocks

歩む合同会社
〒491-0113 愛知県一宮市浅井町西浅井字郷裏6番地1
Contact:info@ayumusocks.com
Instagram:ayumu.socks
Editor:Chise Nakagawa

