「地球温暖化」は、地球規模の気候の変動をもたらす。スキーヤー・スノーボーダーの大切な雪山はもちろん、陸、海を問わず、世界全体の環境が受ける影響は計り知れない。まずは地球温暖化について基礎知識を持っておこう。
地球温暖化とは? そのメカニズム
地球はとても薄い空気の層に包まれている。太陽光は空気層を突き抜けて地表に届き、地表付近の空気を温める。空気中には二酸化炭素(CO₂)やメタンのように、熱を吸収する気体が含まれてて、地表からの放射熱のほとんどは宇宙へ逃がされるが、これらの気体に吸収された熱は再び地表へ放射され、その分の熱は大気圏にとどまることになる。これが温室効果。そして、この作用を起こす二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素やフロン類を温室効果ガスという。
もしもこの温室効果がなければ、地球の平均気温は今よりも約30℃も低く、地表は氷の世界だったと考えられている。温室効果ガスは、地球が冷えすぎるのを防いでいるのだ。
しかし、産業革命以後、化石燃料の大量消費などにより、この温室効果ガスが大気中に増えすぎたため、地球の表面付近の気温が少しずつ上昇していった。この現象が地球温暖化で気温や降水量など、長期的な変化を意味する気候変動に大きく影響を与えているというわけだ。
地球温暖化がもたらすさまざまな危機
20世紀中の地球の平均気温は、この100年間で約0.74℃上昇し、日本でも平均気温は約1℃上昇した。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)という国際機関が発表した報告書(第四次評価報告書,2007)によると、地球温暖化がこのまま進むと、21世紀末までに、環境保全と経済の発展が地球規模で成立する社会ならば、地球の平均気温は約1.8℃(1.1~2.9℃)上昇し、高い経済成長を遂げる社会では約4.0℃(2.4~6.4℃)も上昇すると予測されている。
このような急激な気温上昇は、地球規模でさまざまな面に影響を及ぼす。まず、気温の上昇によって海水が膨張したり、氷河が融けて海面水位が上昇する。その結果、高潮による洪水や海岸浸食が起きたり、低地帯は水没の危機にさらされてしまう。
また、気温上昇はこのような環境変化だけにとどまらず、生物の生態系や人間生活にも大きなダメージを与える。極地の氷が融けていけば、北極グマは棲み処や餌がなくなり絶滅の危機に陥ってしまう。日本においても、米が今までのように生産できなくなったり、熱帯地域に多い伝染病が蔓延する危険性も増えるなど、産業や人の健康への深刻な被害も予測されているのだ。
WFF(世界自然保護基金)によるこちらの動画をぜひ見てみよう。
▼You tube動画/地球温暖化を防ぐ(1分56秒)
雪はどうなる?
地球温暖化は、さまざまな面で甚大な、しかも元に戻すことができない深刻な影響を与えることがわかってきた。
文部科学省は、温室効果ガスの増加を食い止める対策を積極的に行なわなければ、21世紀末には20世紀末と比べて、日本の年平均気温は4.5℃程度、冬季の平均気温は5℃程度上昇することが予測される、と発表。
(引用:日本の気候変動2020|2020年12月 文部科学省 気象庁)
真夏の東京は40℃越えの酷暑となり、冬でもコートがいらなくなるかもしれない。桜が咲いている頃、蝉がミンミン鳴くのかもしれない。四季折々の風景や人々の暮らしも様子が変わっていくのだろうか。地球温暖化によって「シーズンが短くなってしまう」「もしかするとパウダーはもうあまり滑れなくなっちゃうの?」といった想像もしてしまう。
実際にヨーロッパアルプスや北米のロッキー山脈の氷河は年々融解が進み、世界の山間部にある氷河が、いまのペースだと2050年には完全に失われる可能性があるという衝撃的な研究結果も、「Nature」誌で発表されている。
「Accelerated global glacier mass loss in the early twenty-first century」(Nature, 9 March 2021)
日本でも、2031 年~2050 年になるとスキー場における年間滑走可能日数は、現状の約1/3に減少。2081 年~2100 年になると約1/6に減少する、という研究結果も報告された。(地球温暖化がスキー場の積雪量や滑走可能日数に及ぼす影響予測-気象庁 RCM20 予測を用いて, 中口毅博, 2010)
一方で、温暖化による海水温の上昇に伴って大気中の水蒸気量が増加することで、北海道や北陸地方の山岳地帯では、「ドカ雪」で今よりも降雪量が増えるという予測もされている。全国的には気温の上昇で雪が減るものの、地域によってバラつきが生まれ、大雪や小雪に翻弄されたり、被害に悩まされる。
そんな将来がこのままだとやってくる…となると、もはや雪山の恩恵を受けてきた誰もが見て見ぬふりはできないだろう。温暖化の進行を抑えるための対策に一人ひとりが主体的に、それも緊急に取り組まなくてはならない。そんな必要性を実感するのではないか。
さまざまに受ける気候変動の影響(国連HPより)
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/climate_change_un/climate_change_effects/
地球温暖化の原因
なぜ地球温暖化が起こるのだろうか。その原因には複数の理由が考えられているが、IPCCによって、「地球温暖化の背景には、人為的な温室効果ガスがある可能性が極めて高い」、と裏付ける科学的データも示された。その代表格がCO₂で、温室効果ガスの95%を占めている。
CO₂は主に物を燃やす際に発生する。例えば石油などの化石燃料が使われているプラスチックを燃やす火力発電や、工場、ガソリン自動車などはCO₂発生の大きな原因だ。人々が日々暮らしの中で使っている家電製品もCO₂を排出しているものがほとんどなのだ。
よって地球温暖化を食い止めるには、何よりCO₂を削減しなくてはならない。その実現のためには具体的にどのようなアクションを起こせばいいのか。そして、雪の未来を守るために、自分たちができることは何なのだろうか。ぜひみんなで考えていきたい。
【参考文献】
SDGs入門 未来を変えるみんなのために 蟹江憲史(岩波書店)
データでわかる2030年地球のすがた 夫馬賢治(日経BP)
気候変動から世界をまもる30の方法: 私たちのクライメート・ジャスティス!
国際環境NGO FoE Japan気候変動・エネルギーチーム(合同出版)
環境問題の基本がわかる本 門脇仁(秀和システム)
地球環境キーワード事典 地球環境研究会(中央法規)
温室効果ガス削減と排出量取引 みずほコーポレート・みずほ情報総研(日刊工業新聞社)
「地球温暖化がスキー場の積雪量や滑走可能日数に及ぼす影響予測-気象庁 RCM20 予測を用いて」中口毅博(2010)
「Accelerated global glacier mass loss in the early twenty-first century」(Nature, 9 March 2021)