「2023年から一年後の八方」|POW「サステナブル・リゾート・アライアンス(SRA)」加盟スキー場事例紹介❶白馬八方尾根スキー場

POWが発起した「サステナブル・リゾート・アライアンス(以下、SRA)」に加盟し、気候変動やサステナビリティへの取り組みを熱心に進めているスキー場を紹介するシリーズ企画。トップバッターは、昨年、STEEPの「THINK SNOW」コーナー新設とともに登場いただいた白馬八方尾根スキー場だ。スノーリゾートで日本初のSDGs部署を設置、先進的に気候変動への取り組む姿を紹介した。あれから1年、さらなる進化を遂げた白馬八方尾根スキー場の今を追いかけた。

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先駆的なその取り組み

日本を代表するスキーエリアであるHAKUBA VALLEYは10のスキー場からなるが、そのなかでも白馬の雄といわれるのが白馬八方尾根スキー場。
実は2つの会社により運営されており、八方尾根開発株式会社は、その一つ。日本のスキー場で一番初めにSDGsの部署を立ち上げ、どこよりも先進的に取り組みを進めてきた。すでに自社が所有するリフトの再生可能エネルギーへの100%切り替えを実現、POWの活動に賛同し、パートナーシップを締結したのも2020年と早かった。

日本のスキー場のサステナブル化への歩みは、白馬八方尾根スキー場なくしては語れない。
このSTEEPで「THINK SNOW」を立ち上げた2023年4月、八方尾根開発株式会社でSDGsマーケティング部を統括している秋元秀樹(あきもと・ひでき)さんを訪ね、SDGsへの取り組みを紹介させていただいた。その内容の概要はこのようなものだった。


 2020-21冬シーズンからの八方尾根開発株式会社が運営するリフトの再生可能エネルギーへの切り替え
 リフト券のオンライン販売の登録ユーザー1万人以上にニュースレターでSDGsの取り組みを発信
 社内への周知にSDGsパネルの設置
 環境講習会の開催
 環境問題について聴き取り調査
 施設の電気のLEDへの切り替え
 リフト券のリサイクル
 バイオトイレの設置
 夏季のSDGsをテーマとした学習旅行プログラム  
など
 

そして、昨23-24シーズンの4月で、八方尾根開発株式会社が運行する13本すべてを再生可能エネルギーに切り替えることができた。わずか3年という驚きの速さで、スノー業界でも大きな話題となった。

再生可能エネルギーで運行されているリフト

もっと詳しくはコチラを!

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あれから1年、取り組みの進捗や変化はあっただろうか。
SRAへ寄せる期待感とともに、再び秋元さんに聞いてみた。

この1年を振り返って


「現在、八方尾根スキー場全体でいえば再生可能エネルギーへの切り替えは72%、複数の企業が運営を担っている背景での完全な再エネ化はなかなか難しいですが、弊社の所有リフトは100%の再エネ化はすでに完了しています。その他、温泉施設など弊社の全事業を含めると脱炭素化は80%くらいです。残りは電力価格の問題や、技術面のテクニカルな課題があって乗り越えられない部分ですね。

価格の問題をクリアするには、使用している電力を減らす省力化しかないかと思っています。あとは、自家発電ですね。行政と組んで小水力発電ができないかを考えていて、継続的に方法を探っています」。

こう話してくれた秋元さん。自然エネルギーづくりへと視野が広がり、すでに動き始めいた。

学習旅行SDGsプログラムと「おらが山」

「この1年で顕著な変化という意味では、学校への取り組みでしょうか。SDGs部署の女性スタッフ2名が、学習旅行でSDGsを学べるプログラムを企画し、白馬の植生の保護活動をテーマに展開しています。

白馬には八方尾根のすそ野から標高2,000mまで広がっている「蛇紋岩(じゃもんがん)」という地帯があるのですが、そこでは珍しい植生の逆転現象が起きていて、本来、標高2,500m以上の高山で生育するはずの植物が、八方尾根では黒菱平から八方池といった低いところに見られるんです。つまり、標高の低いところで高山植物が育つという希少な環境なのです。

蛇紋岩(じゃもんがん)地帯に咲く高山植物

これを地域の人たちはずっと大切にしてきたんですね。白馬の地域の人々は、この美しく希少な「おらが山」に限りない愛情と自負を持っています。こういった白馬の人々の「おらが山」を守ろうという強い思いや熱心な活動を、もっと知ってもらいたい。そんな体験的な自然学習をする修学旅行が徐々にリクエストも増えてきて、軌道に乗り、少しずつ収益化もしてきました。

SDGs部署の二人の女性スタッフも自分たちの取り組みに自信を持って話ができるようになったし、SDGsの視点が別の仕事にも活かされるようになり、新たな着眼点を得ることができた。これも嬉しい成果です」。

SDGs部署の頼もしい女性スタッフの二人 太田美紀さん(左)と 松澤瑞木さん(右)
白馬中学SDGsミーティングの様子
SDGs学習旅行でのレクチャー
▲クリックするとPDFで中味が見られる

こちらが学習旅行SDGsプログラムの教材。

白馬の独特の自然環境や植生の豊かさが丁寧に紹介され、その上でSDGsの視点で、気候変動はじめ自然環境を脅かす問題点が伝えられていて、とてもわかりやすい! 興味を持って白馬の環境問題を考えるキッカケになる、素晴らしい内容だ。

教材の表紙をクリックすると中味が閲覧できるので、ぜひ見てみてほしい。

2024年2月20日より「POWチケット」の試験導入を開始!

白馬八方尾根スキー場では、SRAで検討を進めてきた「POWチケット」の試験導入をこの2月20日よりスタートさせた。2023年12月のSRAの立ち上げから3ヵ月もたたないうちに驚きのスピーディーなアクション、これも白馬の雄といわれる八方の強さか。

「POWチケット」は通常のリフト1日券にドネーションがプラスされた特別なチケット。寄附分の300円がスキー場のサステナブル化の取り組みに活用されることとなり、つまり、このPOWチケットを買うことで直接スキー場の取り組みの応援ができる仕組みだ。

白馬八方尾根スキー場では、ユーザーによるドネーションをスキー場の森林整備に充てる予定だ。

公式サイトには「豊かな森の環境を整備することは光合成を促し、二酸化炭素の吸収量を増加させます。二酸化炭素の削減は、地球温暖化や土砂災害防止に繋がり、また森林が整備されることによりスキー場コースの安全性確保とツリーランエリアを両立できます。」と伝えられている。

これが要注目の「POWチケット」。購入するとスキー場とPOWのステッカーが付いてくる

また、SRAに加盟し今後POWチケットを導入するスキー場は、ドネーションの活用方法や結果などを公表することとなっている。POWチケットを通じて貢献するひとり一人のアクションがどのような形で環境へ還元されるのか、これから楽しみだ。

個人ができるもっと手近な応援アクションもある。現在、POWでは「ワンクリックで応援」キャンペーンを開催中。このページの最後に情報を掲載しているので、ぜひ参加してほしい。

現在の課題とSRAが持つ解決可能性

白馬では現在、コロナ禍以前を上回るペースで海外からの観光客が来ていて、オーバーツーリズムが起きているという。とくにゴミの問題は頭を抱える問題だ。秋元さんは言う。

「この大切な自然をともに守ろうという意識を持って、グリーンな滑り方・遊び方を目指すお客様が、SRAを通じて繋がっていく。「次はどこに滑りに行こうか」という選択を、SRAに参加するグリーンなスキー場の中でするような意識づけと、回遊の仕組みが作れたら面白いと思います。

私たちがPOWと一緒にやろうとしていることを一緒に実現していきたいと思っているお客様が、自分のサステナブルをスキー場と一緒に実現していく。それが例えば、いまのゴミ問題の解決への近道ではないかと思うんです。アライアンスってそういう方向にいかないかなって考えていました。意識の高いお客様がグリーンなスキー場に集い、個々がサステナブルな取り組みをしてくれる。こんな “ロイヤルカスタマー” がアライアンスで育っていくといいなって」。

さすが先駆者。秋元さんの発想はまさにPOWが願うサステナブル・リゾート・アライアンスの未来形ではないか。アライアンスをベースにロイヤルカスタマーが増えながら活発に循環し、リゾートと繫がって取り組みの輪がもっともっと広がっていく。
そんな日が来るために、いま、この問題を自分事として、いちユーザーとしてできることはなんだろう。

次に滑りに行くときは、グリーンなスキー場という観点でスノートリップを計画してみるのは、どうだろうか。

教えてくれた人

秋元秀樹さん
Akimoto Hideki

八方尾根開発株式会社 
執行役員 営業・管理本部長 

東京都出身 飲食事業、貿易関連の経験を経て1998年より白馬に携わる。
2005年移住。
2015年 営業本部長就任。
2016年 執行役員就任 管理・営業部門を統括する。現在は八方尾根観光協会の副会長を兼任し地域活性化に努めている。

Information  白馬八方尾根スキー場
◆公式サイト:https://www.happo-one.jp/
◆公式SNS:InstagramFacebookX(旧Twitter)YouTube


取材協力/八方尾根開発株式会社・POW JAPAN

ワンクリックで応援!キャンペーン  〜3月末日まで!

ホームゲレンデやお気に入りの、思い出の詰まった大好きなスキー場でこの先も滑り続けたい。
あなたにとって特別なスキー場が”脱炭素化・サステナブル化”に取り組み、グリーンなスキー場になることを応援しよう!

POW JAPANは、本キャンペーンで皆さんが回答してくださった「応援したいスキー場」へ「SUSTAINABLE RESORT ALLIANCE」への加盟と脱炭素化・サステナブル化に向けたサポートを提案いたします。

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今後のシリーズ掲載スキー場(予定)
・エイブル白馬五竜
・かたしな高原スキー場
・スマイル・リゾート
・東急不動産株式会社

Information  POW JAPAN
◆公式サイト:https://protectourwinters.jp/
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