’23-24シーズン、世界のさまざまなスノーフィールドで活動したHEADのグローバルアスリートたちのドキュメントムービー「BEYOND」が11/16(土)に公開された。撮影ロケーションの一つに選ばれたのは北海道・ルスツリゾート。ルスツを舞台に4人のスキーヤーが見せる豪快なライディングと愉快なリゾートライフ。その美しい映像とともに、クルーが過ごした12日間を紹介しよう。
「BEYOND」そのコンセプト
「BEYOND」には「超えていく・その先へ」という意味がある。HEADアスリートにとって 、「BEYOND (超える)」 という瞬間は、個人の限界を超え、自身をプッシュするという意味を持っている。そこで彼らは新しい滑走体験や達成感を大切な仲間たちと発見することになるのだ。
どうしてルスツ? プロデューサーのジェフ・トーマス(Jeff Thomas)に聞いてみた
「BEYOND」をプロデュースしたジェフ・トーマス(Jeff Thomas)は、カナダ・ウィスラーを拠点に、もう20年以上スキーシーンを追いかけて世界中を旅回ってきたフィルマーだ。SALOMONがワールドワイドに「SALOMON SKI TV」を始めた2010年頃、このプロジェクトにフリースキー界のレジェンド、マイク・ダグラス(Mike Douglus)とともに参画、2011年にその撮影で初めて日本にやって来た。
「日本の友人に電話して『どこに行くべきかな?』と聞いたら、『いまなら北海道・それもルスツに行くといい』と言われたんだ。『雪が一番多くて、おもしろくて最高だから』と。
その頃、スーパーナチュラルパークもできつつあったんだ。それが僕がルスツを知ったキッカケで、それ以来ルスツリゾートのスタッフともつながりができて、ずっと連絡をとりあい、もう5回、6回は訪れているかな。
ルスツに何度も戻る理由は、行くたびに幸運に恵まれることと、いまでは場所をよく知っているので、撮影がとても効率よく上手くできることだよ」
その後、ジェフは2019年にもルスツを舞台にHEADチームのムービー「SHINRIN-YOKU ~森林浴」を制作。
「僕はずっとツリー・スキーが好きで、それが強い情熱の一つなんだ。カナダでは、大きな杉などの古木がある。初めて日本に行って、雪山で森を通り過ぎたとき、同じような種類の樹だと思ったけれど、見た目が全然違うんだ。それがとても美しくてね、すごくワクワクしたんだ。それで、樹々を中心にしたストーリーを創りたい、そんなムービーを撮影しようと思ったんだ。大好きなルスツでね。
ルスツの森を通り抜けるたびに、風の音が少し違うように感じるんだ。針葉樹があまりなくて、広葉樹が多いからだと思う。だから森の音が違うんだ。とても心が落ち着く。雪の降り方も違う。そして森を通り抜けると、雪の白と森の樹々の黒っぽい深緑のコントラストがもっと際立つように感じる。その視覚的な刺激、美しさは言葉にならないくらい。それが、僕が心を動かされた理由。自然の大地の恵みを全身に浴びながら、森の中で滑り、遊ぶことで心が癒される。ルスツの森とツリーライディングは『森林浴』という表現にぴったりだと思ったんだ」
こんなふうにルスツの大自然と、その魅力を映像にいかに映し出すかに情熱を燃やすジェフが、新たに制作したムービーが「BEYOND」。ジェフとっておきのルスツの映像パートがコチラだ。収録時間は6分弱。ぜひ最後まで見てほしい。
撮影に選んだタイミングと雪の実際
「BEYOND」撮影のためにジェフがルスツに乗り込んだのは2024年の1月10日。12日間をともに過ごした撮影クルーは、4人のHEADチームアスリートたち、イアン・モリソン(IAN MORRISON)、メグ・カミング(MEG CUMMING)、アレキサンダー・グルドマン(XANDER GULDMAN)、ジェナ・ケラー(JENNA KELLER)。そして、フォトグラファーは世界的にも著名なグラント・ガンダーソン(Grant Gunderson:https://grantgunderson.com/) だ。
なかでもイアン・モリソンは、カナダ・ウィスラー出身のプロスキーヤー兼プロマウンテンバイカー。父親はスキーフォトグラフィーの巨匠ポール・モリソン(日本のスキー雑誌「BRAVOSKI」でも長年グラビアを飾ってきた)。バックカントリーでの豪快な滑りで、ムービーや雑誌など北米メディアで引っ張りだこの人気者だ。アレキサンダー・グルドマンは、2023年のFWTで一躍注目を浴びた若手。「The Land of Giants」や「Unified」ムービーでの、スタイルと技術を融合した滑りが評価され、"Breakout Skier of the Year"(最優秀新人スキーヤー)にも選ばれている。
「僕が初めてルスツに行ったのが12年前の1月2日だったんだ。その旅があまりに素晴らしかったから、日付がずっと頭に残っていて。今回は少し遅くなったけど、1月は訪れるのに最高の時期だと思う。ただ今回はちょっと風が強かったんだけどね。幸い、長めに滞在していたので、その間にフレッシュパウダーやおもしろい場所を見つけられたし、青空にも恵まれたよ。雪? もちろん“JAPOW(ジャパウ)”さ。
アスリートたちは、口をそろえて『ルスツのパウダーは信じられないほど軽い、これまでで最高のパウダー!』と言っていたよ」
クルーが全身で感じ取ったルスツの魅力
撮影は実際どのように行われたのだろう。
「撮影プランを立てる際には、天気やその日の目的、スキーヤーの動きなど、多くのことを考えるんだ。風向きが南からなら北側へ、東からなら西側へ行くなど、天候を確認しながら計画を立て、風が強いなかでいい雪を見つけるために、気象データを常に見ながら動いていたね。そのため、毎朝6時に朝食を食べながらミーティングをして、昨日はなにが撮れたか、今日はなにをするかを話し合うんだ。もし計画がうまくいかなければ、その場で柔軟に変更する。雪質、雪量、地形をよく理解しておくことも重要だった」
ルスツとえいば、「ウエストMt.」「イーストMt.」「Mt.イゾラ」の3つの山に37ものコースを擁し、その総滑走距離は42km、単体リゾートしては日本一のスケールを誇る。広大なフィールドに機能的にフード付きリフトやゴンドラがレイアウトされているので、効率のよい滑走と快適な移動ができるのが特長だ。
クルーはルスツをどのように滑ったのだろう?
「もうルスツまるごと全部を滑ったよ。例えば、Mt.イゾラやその裏側、さらに西や東など、本当にいろんな場所で滑ったんだ。ロングランできるエリアや、大きな景色が広がる場所も発見した。リゾートはもちろん、バックカントリーでもあちこちで撮影したよ。
ただ、バックカントリーらしさを強調しすぎず、リゾートっぽく見せるように心がけたよ。実際、スノーモービルもCATも使わずに、多くはリフトでアクセスできる範囲で、毎朝リフトを使ってリゾート内を滑って、ゲレンデが混雑してきたらハイクでバックカントリーに出て、またリゾートに戻るという流れだった。
映像には日差しのなかでの良い雪の様子が映っていると思う。青空に恵まれて景色も楽しめた。パウダーに潜る一方で、天気が良くて洞爺湖や火山、羊蹄山などが見える日もあってね。海外から日本にやってくるスキーヤーやスノーボーダーはパウダーを楽しみにして来るけど、実際に雪の上に立つと、それ以上に日本の絶景に驚かされることが多いと思う。今回のアスリートたちは、太平洋や湖、大きな火山まで眺めることができるだなんて予想外だったようで、この素晴らしい景色に感動しっぱなしだったよ」
イアン・モリソンはこう語った。
「日本にはまだ行ったことがなかったんです。JAPOWを滑ることは僕のなかで『人生で絶対にやりたいことリスト』の筆頭だったんです。そして、ルスツはまさに夢のような旅でした。
スキーはこれまで経験したことがないほど素晴らしく、想像し得る限りの軽くて深いパウダースノーだった。
地形もダイナミックで遊び心にあふれ、バラエティに富んでいてすごくおもしろい。毎朝目が覚めると、新しい雪がリゾート全体を覆い尽くしていて、これには驚くばかりでした」
メグ・カミングはこう語る。
「ルスツで撮影して最も印象的だった点は、自分だけのゾーンを見つけられることです。アクセスしやすいオフピステの地形が、ほとんど手つかずの状態で、他の人のトラックがまったく見えない。これが私たちの撮影と滑りを、とてもエキサイティングで楽しいものにしました。ルスツを滑ることは、まるで宝石のような体験。自分だけの魔法の森にいるような感じでした」
尻別岳へもアプローチ
クルーは滞在中、ヘリで尻別岳にも数回アクセスしたという。尻別岳は美しい独立峰で、ルスツリゾートのヘリでアクセスできる特別エリアだ。降り積もったばかりのフレッシュパウダーと、山頂からは、羊蹄山や洞爺湖、さらには日本海や太平洋まで見渡せる絶景が楽しめる。
「尻別岳はとてもクールな美しい山だよ。あの場所にヘリでアプローチできるだなんて信じられない。アスリートたちも大興奮だったよ」
ニセコや欧米リゾートとの違い
世界中の名だたる山・リゾートを旅回ってきたジェフ。実は「BEYOND」には日本でのロケ地として、ニセコのセグメントも展開されている。ジェフにルスツとニセコの違い、そして北米のリゾートとの違いを聞いてみた。
「例えば、ルスツでバックカントリーに出ても、ほとんど人がいないんだけど、ニセコだともう何百人も見かけるよね。ルスツは混雑もさほどないし、少し静かでいい意味でこじんまりしている。ルスツのビレッジやレストランで出会う人たちも魅力的だ。ニセコとはなにかが違う、なんて言えばいいかな…少し可愛らしいんだよね。ニセコはナイターも素晴らしいし、山の規模も大きくてクールだ。でも、僕のスタイルにはルスツが合ってる。コンパクトななかにさまざまなバリエーションがあり、リフト周辺で遊ぶ感じが楽しい。ルスツのほうがピースフルでプレイフル、平和で遊びごころがある独特の雰囲気があるんだ。
北米のリゾートと比べても、ルスツのほうが遊び心があると思う。今回のアスリートの一人、アレキサンダー・グルドマンは『ここでのスキーはとても遊び心がある』と言ってた。『山をサーフィンするような感覚で滑り降りるのが楽しい、ローラーコースタ―みたいだ』って。そして、どこに足を運んでも、日本の文化的なおもしてなしを感じられることが嬉しいし、素晴らしい。アスリートたちも絶対にまた戻って来たい!と言っていたよ」
ルスツの楽しいアクティビティ
クルーが大興奮したのはルスツの山だけではない。
「映像を見ればわかると思うけど、僕ら滑ること以外にいろんなことをやったんだ。雪上ラフティングや犬ぞり、ドリフトカーレースや森のなかのドライブなど、いろいろなアクティビティも楽しんだんだ。
12日間という長めの滞在だったので、いくつかのアクティビティを挟むことでメリハリがついて、撮影の流れがよくなった。朝6時に起きて朝一番に滑りに行って、午前中は雪がフレッシュなうちに貪欲に撮影し、山を降りたら、その後はアクティビティを楽しんだり、サウナに入ったりしてリフレッシュ。ディナーを食べて夜中の1時までお酒を飲んで、カラオケもやったよ。
僕のこれまでの数えきれない撮影トリップのなかでも、もしかして一番フルスロットでおもしろい旅だったんじゃないかと思う。人生のなかでもっとも充実した12日間だった、といっていいくらい。毎日、本当に楽しくて、ジョークを言って笑いっぱなしだったんだ」
充実のステイ
12日間の滞在で、クルーが宿泊していたのがリゾートのログハウスだ。
「ルスツでの滞在は本当に素晴らしかった。ログハウスはすごくクールで、2、3分歩けばレストランやバーにも行けるし、でも山小屋の雰囲気も楽しめる。夜スキーをしたいときにもすぐ戻れるから便利なんだよ。朝食はホテルで。ビュッフェスタイルなんだけど、みんな和食をチョイスしていたよ。夕食でみんなに一番人気だったのは、すき焼きだね。ルスツは食事も本当に素晴らしいんだ。
そうそう、ホテルにある小さな遊園地にもみんなビックリしてた。『これなに? スキー場にメリーゴーランドなんて信じられない~』って大興奮だった。ジェナ・ケラーはこんなふうに言っていたよ。
『これまでにルスツの雰囲気に少しでも近いリゾートに行ったことがないわ。メリーゴーランドに遊園地、そこに大きな山々があるなんて、まるで巨大なスノードームの中でスキーをしているような感覚だった』ってね」
ルスツでの旅の様子をイアン・モリソンは自身のInstagramに投稿。クルーの撮影風景や、ルスツでのリゾートライフが垣間見れておもしろい。
ルスツで最も感動したこと
最後にジェフに、今回の旅でもっとも感動的で印象に残ったことを聞いてみた。
「今回のルスツでの撮影で忘れられないのは、最終日、夜のうちに約40センチの新雪が降って、その後晴れたんだ。みんな「最高だ」と大はしゃぎ。それが最後の日だったので、全員が特別な気持ちで滑っていたね。JAPOWがくれた祝福に、アスリートたちも大興奮、感動しっぱなしだった。
こんなパウダーや美しいツリー、豊かな地形での素晴らしいスキーはもちろんだけど、ルスツの皆さんがどれほど僕らを歓迎してくれたかということ。それが一番感動的だったかもしれない。毎晩同じお店に食事に行くことが多くて、シェフやスタッフと親しくなったんだ。僕らを見るたびに喜んでくれて、毎晩一緒に写真を撮ったりもしたよ。これはルスツ全体の魅力だと思うけど、家族的な雰囲気がとても楽しかった。これまでもルスツのおもてなしには感心していたけど、今回はとくに家族的で、とても幸せな体験だった。
ぜひルスツのセグメントをチェックしてみてほしいよ。ルスツの楽しさ、素晴らしい景色を紹介できるのが本当に嬉しいし、素晴らしい4人のアスリートと写真家も一緒で、これまでで最高の撮影ができたと思うから。そして、この旅は一生忘れられないものになった。ぜひこのムービーを観て、たくさんの人に同じような体験をしてほしい。ルスツは間違いなく最高の旅先さ、心からおすすめするよ!」
Information
ルスツリゾート
〒048-1711 北海道虻田郡留寿都村字泉川13番
公式サイト:https://rusutsu.com/
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