「雪の壁があんなに高くなっているのは初めて見ました」
そう話してくれたのは八方尾根開発のスタッフ。30年近くスキー場に勤めている人でさえ、スカイラインの乗り場に人の身長の倍近い高さに積もった雪の壁ができたのは初めてだという。


このあと仮に暖かくなるのが早くなったとしても、今季は雪の当たり年だ、と言いたい。
24−25季は12月と1月にかけてコンスタンスに雪が降り順調に積雪量を増し、気温の低い日が多かっただけでなく、ここ数年1月に何度もあった降雨が少なかったことも要因に挙げられる。
全国各地のスキー場はいま、万全のコンディションで滑り手を迎えてくれる。
HAKUBA VALLEYもその例外になく、とくに2月に入ってからは2度にわたる大量の降雪を伴う寒気の入り込みによって、想像以上に積雪が増えている。前述の八方尾根では黒菱の積雪量が公式サイトによると655cm。場所によってはもっとあるのでは、というほどだ。
その黒菱の第3ペアリフトが埋まってしまうのは、ここ20年で記憶にない。黒菱ペアリフトを日常的に運行していたときは、大雪が降ったりすると常に除雪をしてリフト運行ができるようにしていた。

それが、今季はコロナ禍以来、数年ぶりに黒菱第3ペアリフトを毎日運行。ところが、日々の降雪量が多く、除雪をする間もなくあれよあれよと埋まってしまった。これまでなら、搬器を一旦一箇所に回収し、圧雪をかけたりすることもあったのだが……。
手作業で掘り起こす作業をしているスタッフには、まったく頭が下がる思いだ。

その昔、黒菱ゲレンデのリフト脇や下部に生えていたヤブは、2月になるとほぼほぼ埋まり真っ白な斜面になった。大きなコブが連続する姿は兎平のコブと並んで、黒菱の風物詩でもあった。
それがここ10年ほどでヤブは木々へと成長し、2月になっても黒菱の下の方には木々の頭がぴょんぴょん出ている始末。木々は5m近い高さに成長しているが、いまはリフト脇の木々や下部の木々はすべて埋まり、頭を出している木は数えるほどになっている。今季は黒菱の急斜面を広く使ったターンすることだって可能だ。
同様に裏黒エリアも通常は多くのヤブが滑走の邪魔をしていたが、今冬に限っては、それらもほぼすべて埋まり、快適な滑走ができる。
とにかく、八方尾根全体の積雪量が多いため、急斜面の多い地形が丸く緩やかな地形へと変化している。それでいて雪は柔らかく、とても滑りやすい。





ここ数年は雪の少なさに苦慮していた八方尾根だが、今季はまったく逆の状態。
「今年はゲストのみなさんの笑顔が多く、穏やかでピースフルな感じがします」
と語る前述の八方尾根スキー場スタッフ。
搬器が雪に埋まるなどスキー場運営において大変なことは多いが、積雪量と雪質、そしてリセット頻度の高さを求めて、世界中からゲストが訪れる白馬。雪の多さは確実に高い満足度に直結する。
また、生活面でもたび重なる除雪や倒木、それに伴う停電など気苦労も多い。
だが、この機会だからこそ見れたり、触れたり、体験できることも多い。気まぐれな自然現象をポジティブに捉えて、楽しみに変換するのに絶好のタイミングだ。




豊富な積雪量によって、見知ったる景色と異なる姿になった白馬を見に行ってみよう。
■白馬八方尾根スキー場 https://www.happo-one.jp/