新潟県の上越エリアは、妙高やアライなど国内屈指のスキー場を有する地域として知られている。なかでも「キューピットバレイ」は、マニアなスキーヤーやスノーボーダーが集まる場所として近年注目を集めている。今季、同スキー場には国内最速クラスのリフトが新設され、滑走の利便性が格段に向上した。新しく生まれ変わったキューピットバレイの魅力を詳しく見ていこう。
「豪雪」で知られるキューピットバレイ
キューピットバレイの特徴はとにかく積雪が多いことだ。幹線道路から道を一本入った山間に位置する。スキー場に近づくにつれ道路脇の雪の壁が一気に高くなる。3mはあろうかという高さだ。毎晩のようにコンスタントに雪が降り積もるのにもかかわらず、ここはファミリースキー場という認識のため、パウダー競争率も高くない。知る人ぞ知るスポットなのだ。
そんなキューピットバレイに国内最速クラスの最新クワッドリフトが掛かった。スキー場中腹にある第2クワッドリフトが延伸してかけ変わった形だ。以前より400m伸びて、1400mの距離を移動する。
スキー場の下部から山頂までをつなぐようになったので、滑走距離が長くなった。以前はロングランが楽しめる「ソレイユ」を滑り切ってしまうと第2クワッドで山頂まで上がることができず、麓まで降りてこなければならず、山頂まで復帰するのに再び2本のリフトを乗り継ぐ必要があったが、今回の架け替えのおかげで1本で山頂までダイレクトにアクセス可能になったのだ。

下は23-24シーズンのマップだ。比べてみるとリフトがかけ変わった影響がよくわかる。

今回、キューピットバレイの愛好者であるスキーヤー廣瀬健がスノーボーダー橋本貴興を連れて、リニューアル後はじめて訪れるというトリップに同行した。
乗車時間が1分も短くなった秒速5mのリフト
訪れたのは1月某日。まずは2人が楽しんだ様子を動画でみてもらいたい。リフトの速さも動画のほうがわかりやすいはず。
ハイシーズンには珍しく太陽が照りついているキューピットバレイ。それでも山頂付近は降雪があったようで、樹木が雪化粧をしている。
朝イチは1本、足ならしのために山頂からのトップトゥボトムを滑る。第1クワッドリフトを上がって、かけ変わった第2クワッドリフトへ向かう。

ひと目で新しいとわかるリフト小屋。まだ動き出したばかりなので、試運転中。一番最初に乗るために運転開始を待つ。
リフトをかけかけるために数億円のお金が必要とされる今、新しいリフトに乗れること自体貴重な体験だ。

待つこと5分、運転が開始した。乗車する際はゆっくりと、いつものクワッドリフトと変わらない。しかし、乗り場を出てすぐにその違いが分かった。これまでのリフトより明らかに早い。一般的なリフトは秒速4mで運行するが、この最新リフトは秒速5mで運行可能だ。
1425mの距離を移動するとなると、秒速4mの場合は5分56秒。およそ6分かかる。
しかし、秒速5mの場合は4分45秒と1分以上も軽減される。1秒でも早く、1本でも多く滑りたいスキーヤー、スノーボーダーにこの差は大きい。
なるほど1分以上も早いなると、体感でも明らかに違う。風を切るように上がっていく。そのうえ静粛性も高く、揺れも少ない。ストレスを感じることなく、文字通りアッという間に山頂に到着だ。




今回のリフト新設により、滑走可能コースは従来の4本から8本へ倍増。総滑走距離も約4,500mから7,600mへと大きく拡大した。山頂から思い思いのコースを滑れる。
速いから、朝イチの貴重な時間を逃さない。
朝イチはビシッとしまったグルーミングバーンを堪能するため、「ソレイユ」へ。最長滑走距離2.6kmのロングランを楽しむ。


「やっぱり朝イチは最高ですね! 標高が高いからかな?上越市のなかでも抜群に雪質がいい!」とご満悦のようすの橋本。
「キューピットバレイの朝は本当にオススメなんですよ! 滑れるコースも多いから他のお客さんと被らないし、リフトがかけ変わったおかげで長い距離滑れますしね」と廣瀬が案内する。
足慣らしを済ませたら、非圧雪エリア・ツリーランへ。朝イチからパウダーを急いで狙わなくとも、キューピットバレイにはそこかしこにパウダーが眠っている。



キューピットバレイには3つの非圧雪エリアと2つの広大なツリーランエリアがある。
まずは廣瀬のオススメである「リベルテ」へ。ここはソレイユのグルーミングバーンも楽しみながらスピードをつけてパウダーへエントリーできるので、積もった日には極上の浮遊感を得られる。以前だとここを滑ってしまうと、山麓まで降りて、リフト2本を乗り継がなければ山頂へ復帰できなかったが、ここも新設リフトのカバー範囲内。すぐに山頂に上がれる。
次は広大なツリーランエリアへ。第2クワッドリフトを降りて右手からエントリーする。ボウル状の広い自然地形そのままの斜面が広がっており、どこをどのように滑ってもよい。滑り手の気分次第で自由にラインを描ける。





第2クワッドリフトを降りて左手のツリーランエリアは程よい感覚で木立が並ぶ。体感にして1000m弱の距離があるので満足度も高い。起伏の多い斜面で、緩急のある滑りが楽しめる。
その隣の「マリオット」も非圧雪エリアだ。こちらも起伏の激しい斜面で、整地されきった斜面を滑り飽きてしまった上級者にはたまらなく楽しい。地形を読みながら攻略し、自分の理想のラインを滑り切る。滑り終わった後には程よい疲労感と上手くなった自身が得られるようなコースだ。




こうして、新しく生まれ変わったキューピットバレイを楽しんだ2人。彼らの目には、キューピットバレイはどんなスキー場に映っただろうか?
廣瀬:「キューピットバレイは雪が少ないシーズンでも確実にパウダーがあるのがとても魅力です。コースやツリーラン含め、非圧雪エリアが多い点も見逃せません。それなのに、パウダーを狙いに来る人は少ないので、降った日から2・3日パウダーが残っているなんてもこともあります。それに加えて、新しいリフトがかかったので滑れるコースの選択肢も増えて、滑走距離も長くなったので、滑り好きの人にはうってつけのスキー場になりました。リフトの速度が早ければ、それだけたくさん滑れますし、朝のいいコンディションを逃すこともなくなりました。コンディションのいい日に、リフトが遅いとじれったいですからね。キューピットバレイは斜面変化も豊富で、本格的なBCに行く前などの練習にも最適な場所です。」
橋本:「上越市の東の奥地に位置する雪深く自然豊かな素晴らしいフィールド。菱ヶ岳を見上げる自然の地形を生かした楽しいコースに晴れた日には日本海を眺望。最長滑走距離4000mの滑りごたえに、源泉掛け流しの温泉で大満足間違いなしです!雪質、景色、食事、温泉を大満喫してゆったりと過ごせて最高でした! 国内最速クラスのリフトもめっちゃ早くてスムーズな乗り心地でした。あれに乗るだけでも来る価値ありですね!」
豊富な積雪があり、コースも面白い。それに加えてリフトが最新鋭だなんて、よりお客さんが増えそうだ。スキー場にとってはとてもいいことである。みなさんも秒速5mの国内最速クラスのリフトを体感してみては。

左:橋本貴興
“HASSY”のニックネームで長年親しまれてきた、プロスケートボーダー & プロスノーボーダー。大阪と長野を拠点に、冬はホームマウンテンである北信五岳の山々をベースに探求しつつ、日本各地からアラスカに至るまで数多くの斜面にラインを刻んできた。スケートボードで長年培ってきたオールラウンドに対応できるスキルで、困難なセクションを滑らかにクリアしていく姿にファンも多い。
Instagram:@takaokihashimoto
右:廣瀬 健
北海道出身、群馬県在住。アルペンスキーで培ったテクニックを武器に、フリーライドコンペシーンで活動中。沼田を拠点に谷川岳をはじめ各地のフィールドへ足を運ぶ。
Instagram:@kenny_fjc
