最新の湯沢中里を知っているか?
新潟県湯沢町にあるここ、湯沢中里スノーリゾートはコース数11、リフト数6基の、全体的に横に広いスキー場だ。
ゲレンデの斜度は比較的緩やかで、子供向けアトラクションの充実やキッズルームサービスなどのファミリーに嬉しい施策の拡充によって、「家族向け」のスキー場と認知されている。
そう、それは確かに間違いではない。
しかし、その認識だけではこのスキー場を見誤るということをお伝えしたい。
ここはコアに滑りを楽しむ、ツリー&パウダー愛好家こそが満足するスキー場なのだ。
急斜面のツリーランエリアは上級者に大人気
このスキー場一帯を管理し運営するスマイルリゾートは緩やかな斜面と別に、これまでに滑ることができなかった広大かつ急斜面のツリーランエリアに着目した。
スキー場向かって右側の山には、ツリーランエリアとしてオープンできるだけの無開拓ゾーンが広がっていたのだ。この場所を、基本的には自然の地形と木々を活かしながら整備し、ツリーランエリアとして解放した。
マップでいうと右側のG、H周辺のエリア。この場所を開放することで、滑れる面積はこれまでよりもさらに広がる。リフト架線下等の危険個所を除いて、この山丸々が滑れるようになったのだ。
さらに、ツリーランエリアを滑走するのに特別な料金や申請等は必要ない。リフト券さえ持っていれば入れる。
今シーズンの湯沢中里をSTEEP編集部が実証!
「今の湯沢中里はメチャメチャ調子いいらしい」と聞きつけたSTEEP編集部。コアに滑りを追求するツリー&パウダー愛好家が、いかに喜べるかを検証するために、1月下旬に湯沢中里に乗り込んだ。その評価ポイントとエビデンス(証拠)がこれだ。
Good Point 1. 木々の密度がバラエティでリズム変化が楽しい
Good Point2. 好みによって選び放題の斜面の豊富さ
Good Point3. Steepもありの滑り応えある適度な斜度がある
Good Point4. コンスタントな降雪で安定した◎コンディション
Good Point5. 起伏の多い豊かな自然地形で面白さ抜群
木々のなかは地形変化や起伏が豊富で風の吹き方によって雪が積もる場所も異なる。吹き溜まりを狙って滑れば、極上の一本が味わえる。
ツリーランエリアの様子はこのドローンの映像がわかりやすい
ロングランが楽しめる非圧雪コースにも注目
湯沢中里の革新はツリーランエリアに留まらない。
すでにゲレンデとして存在する4つの急斜面コースにも改良の手を加えた。これらを非圧雪斜面として活用したのだ。
非圧雪コースは全てスキー場右側の山に集中しており、全部で5コースある。下の画像の白く塗りつぶされたエリアが非圧雪。赤く塗り潰された場所以外の白点線の内側はツリーランエリアとなっている。
① ダイナミックコース /全長600m・最大斜度32° ・平均17°
② ジャイアントコース/全長580m・最大斜度32° ・平均22°
③ チャレンジバーン/全長370m・最大斜度32° ・平均25°
④ エクストリームコース/全長200m・最大斜度31° ・平均24°
⑤ トレーニングバーン/全長250m・最大斜度31°・ 平均25°
非圧雪コースでノートラックパウダー食べ放題
湯沢中里がある新潟県湯沢町は言わずと知れた豪雪地帯。大量に降る雪の恵みを活かした非圧雪コースは、ハイシーズンになれば連日の降雪でノートラックパウダーを食べ放題。急斜面に積もった深い新雪をひとたび滑れば、フェイスショット浴びまくりの至極のランができるのだ。
とくにおすすめなのが、第二ロマンスリフトを一本乗って到着するジャイアントコース。スキー場正面に広がる一枚斜面で遮る物一つない新雪のオープンバーンを滑るのは爽快そのもの。
知る人ぞ知るSTEEP&DEEPなフィールド
湯沢中里はファミリースキー場という表の顔を持ちながら、裏には新雪が降りまくり、急斜面のビッグなツリーランエリアと5つの非圧雪コースを持ち合わせる、隠れたSTEEP&DEEPなフィールドだった。
実は、この「雪が降った日は中里が当たり」というのはローカルやマニアなスキー客には周知の事実。実際この日も地元のプロスノーボーダーが撮影に訪れていた。逆に言えば、これまで知る人ぞ知る、というスキー場だったのだ。
廣瀬 健が語るそのクオリティ
現在この湯沢中里をホームとして滑っているのが、フリーライドスキーの祭典FWQに何度も出場経験がある廣瀬 健だ。
非圧雪・ツリーランエリアのクオリティとポテンシャルの高さについて
「湯沢中里は急な斜面でありながら適度な間隔で木が生えているのでフリーライドの練習に最適です。スピードがあるので瞬時にコース判断する能力が身につきます。非圧雪斜面については、個人的には適度に人が入って凸凹になったタイミングが一番楽しいんです。これぞフリーライドって感じで。斜度もあって滑走距離が長いので、これも練習になります。FWQ HAKUBA4スターの前はここで滑り込んでいました」と語る。
活かされたそのポテンシャル
ゲレンデスペックだけ見れば緩やかな斜面が多い湯沢中里スキー場。これまでファミリースキー場の色が強い施策を行ってきただけに、ツリーランエリアの拡充を進めている理由が気になる。
スキー場の運営統括の八木さんに話を聞いてみた。
「湯沢中里は横に広くて、全体的に緩やかな斜面が多いんです。しかし、今までコースとして使われていなかった斜面を見ると急斜もあり、様々な顔を持った斜面があることに気づきました。このエリアが使われていないことがもったいない。
私は仕事上、様々な海外のスキー場を見て回っていますが、海外のスキー場は『え、こんなところも滑れるの』というような斜面も多く、どこからどこまでがスキー場かわからないような規模の大きいスキー場がたくさんあります。
湯沢中里スキー場の場合はスキー場右側の森林エリアをツリーランコースとして安全管理を施し、かつお客様自身のレベルに応じた自己責任の下でオープンさせれば、一つの山がまるごと滑れるという大きなポテンシャルを持っていました。それに加えて、コアな滑り手も満足できる斜度があります。これを最大限に活かしたいという思いで、解放に至りました。
この湯沢町や南魚沼には、すでにバックカントリーで有名なスキー場がいくつかありますが、もしそれらのスキー場が強風などで止まっていたら、試しにでも、うちに来てほしいですね」。
山まるまる一つがリフト一本で回せる力が湯沢中里を変えた
近隣エリアにはかぐらなどバックカントリーで知られるスキー場もあるが、湯沢中里はそれらとはまた違った嗜好性を持った、スティープなツリーランを楽しむ場所としてうってつけだ。ファーストトラックのドパウダーも見逃せない。山まるまる一つ、という広大なエリアをリフト一本で回せる。これが湯沢中里の魅力だ。
実際この1月下旬の取材日には、ファミリースキーヤーが数多くいる中に、太い板を履いたスキーヤー・スノーボーダーの姿があった。営業開始前にリフトに並んでいたのも太い板を履いた人達だ。
これまで初級者向けと認識されていた湯沢中里が確実に変わり始めている。このスキー場のもう一つの顔が認知されるのも、そう遠い日ではなさそうだ。
■Data
標高
702m
最長滑走距離
2,000m
標高差
244m
最大斜度
32°
コース数
16本
リフト
9本
G/R
-基/-本