ローカルゲレンデの底力 ムイカスノーリゾート。魅惑の面ツルエリアでパウダーロングラン

新潟県南魚沼市は隣接する津南町や湯沢町と並んで豪雪地帯と呼ばれている。
ここには石打丸山や舞子、八海山など関東圏のスキーヤーならお馴染みのスキー場が集まっている。

このなかに、魅惑の面ツルパウダーエリアを秘めるローカルスキー場がある。
それがムイカスノーリゾートだ。

同じ南魚沼市内にある舞子スノーリゾートや上越国際、石打丸山スキー場とは少々離れた位置にある

関越道を北上すると、まず先に群馬や湯沢エリアのスキー場、そして舞子、石打、上越国際とメジャーなスキー場が並ぶので、関東圏のスキーヤー、スノーボーダーからは馴染みが薄いかもしれない。
しかし、新潟市や長岡市から近いため、県内から来るお客さんの方が多いスキー場なのだ。

ムイカはかつてから、初級者ゲレンデとして活用されており、県内外の修学旅行生や地元の小中高校生のスキー授業の場所として親しまれてきた。
ゲレンデが緩やかなので、まずはボーゲンから、という初心者にもうってつけのスキー場だ。
それだけに、「ムイカは初心者や初中級者が行く場所」というイメージが強く、ある程度滑れるようになれば、ほかのスキー場へ行く、という人も多い。


しかし、20季からこのゲレンデが生まれ変わっているという。そして、その生まれ変わったムイカが「実はめっちゃいい」という噂をローカルから耳にするのだ。これまで上級者には見向きもされなかったこの地が、新しい関東圏パウダーエリアに変わろうとしている。

初級者ゲレンデに突如登場した全長1500mの非圧雪パウダーエリア

ムイカはリフトが3基の初中級者向けゲレンデであったが、近年大きく変わった点が2つある。1つは山頂の旧第6リフト一帯がハイクアップのオフピステフィールドになったこと。2つ目は管理区域外申請山岳コースをオープンさせたことだ。

管理区域外申請山岳コースはマップ右側にオープン。ゲレンデとの間の沢は滑れないので注意が必要

オフピステフィールドは第3ペアリフトを下りて約150m(約15分)ハイクアップでスキー場の山頂(748m)まで上がり、そこから非圧雪コースを滑れるというもの。ムイカは山頂付近の標高が1000mにも満たないのにまるで森林限界のように疎林帯となっている特徴的な山容だ。ハイクアップしてオフピステフィールドへ向かえば広大な斜面の中に点々と木々が生えた神秘的な世界が広がっている。

一面白銀の世界が滑り放題になるのだ。

このハイクアップゾーンは歩くところだけ圧雪車で踏んでいるためつぼ足でも歩ける。しかし、バフバフの雪が降った日はつぼ足で歩くのは少々大変だ。雪が多い日はクライミングスキンやスノーシューを持ってきた方が安心だ。
また、ハイクの距離は150mしかないので本格的なバックカントリーに出る前にクライミングスキンを付けて歩行練習をしたい、という方にもおすすめだ。

オフピステ―フィールドの営業時間は15時まで。取材日当日も豪雪地帯ならではの降りっぷりだった
15分ハイクアップしただけでも広大な面ツルの斜面を滑れる

魅惑の斜面が広がる管理外申請山岳コースへ

スキー場向かって右側の管理外申請山岳コースはローカルも穴場と称するスポットだ。ここはスキー場の古い資料によれば「MSコース」と呼ばれており、列記としたコースだったエリアだ。

よって、木が点々と生えていながら、景色が開けた尾根になっている。平らに整備されておらず、自然の地形がそのまま楽しめるフリーライドな斜面だ。

ハイクアップゾーンを上がった先の山頂は標高748m、ベースからの標高差400m。山頂から管理区域外申請山岳コースをノンストップで滑れば全長1500mの超ロングランができるのだ。これはほかスキー場のリフトアクセス系バックカントリーエリアと比べてもかなり長い部類にはいる。
エリアの境界線は滑り手からみて左側にポール、右側にピンクリボンが付いているので、そこから先に出ないよう注意が必要。

左の囲みがない部分が普通のスキー場で右側の赤い線が引かれた部分がサイドカントリ―エリア
木々の間隔が広いので、初級者でも滑りやすい
場所を選べば上級者でも満足できる急斜面もある
木々もまばらな幻想的な景色が広がる
大量に雪が降る南魚沼では連日のようにパウダーも浴び放題

全貌は動画をご覧いただきたい。

これまで初心者・初中心級者向けゲレンデと認知されていたこのムイカのオフピステ・管理区域外申請山岳コースをどうしてオープンに至ったのかスキー場を運営統括する八木さんにお話を聞いた。

「前々からスキー場のリフトに乗っていた際に右側の面ツル斜面が気になっていたんです。それで古い資料を調べてみたら、どうやら昔はコースとして活用されていたらしいことが分かりました。調査しに行ってみると、木の間隔も広いオープンバーンに近い環境があることが分かり、これはきっとお客様にも楽しんでいただける場所だと思い、関係各所に申請して開けるに至りました。正直なところを言うと私もスキーが大好きなので、私も滑りたい。という思いが強いというのもあるのですが(笑)
管理区域外という位置付けですので自分の滑走能力に見合っているか判断いただき、自己責任のもとお越しいただく形になりますが、これからバックカントリーをどんどん始めたいという方に滑ってもらいたいですね」

この管理外申請山岳コースへ入るためには、事前にムイカスキー場のチケット窓口で申請を行い、腕章をつけて行く必要がある。(腕章のデポジット1000円必要。腕章返却時に返金される)

リフト券購入窓口で申請書を記入する
1000円のデポジットを支払い、腕章を受け取る
管理区域外申請山岳コースへのゲート
エリア内にはコース左側に竹ポールが刺さっている
竹ポール同様コース右側にはピンクリボンがある
全長1500mのロングランは滑りごたえ十分
ボトムエリアのトラバースライン。一部雪庇がせり出している箇所もあり、注意が必要
最後は板を脱いで3分ほど歩くとスキー場山麓に帰ってくる

このパウダーエリアの特長は“斜度が緩い”という点だ。ハードな急斜面や密なツリーランができるような場所ではなく、広大で緩やかな斜面があり、楽しんでクルージングできるようなフィールドだ。もちろん部分的には急になるような場所もあるが、難しい斜面ではない。
これはバックカントリーを滑るのに不安を抱えている人や不慣れな人でも滑りに来やすく、最初の足掛かりとしてはうってつけのエリアなのだ。

フリーライドスキーの祭典、FWQに何度も出場する廣瀬健はこう語る。
「ムイカは緩やかな斜面で急な斜面を滑るのがまだ得意ではないという方でも安心して来られます。アクセスも15分のハイクで行けるので、バックカントリーが不慣れで足慣らしとしてやってみたいという方にはうってつけの場所だと思いますよ。オフピステエリアから滑れば1500mのロングランです。勢いをつけて滑れば全体的に緩やかとは言え、気持ち良い滑りができるんですよ」

初級者・中級者ゲレンデに突如登場したムイカスノーリゾートの管理区域外申請山岳コース。まだまだ穴場的なスポットであり、これからバックカントリーを始めてみたいという人には練習場所としても適っている。先述した通り、標高は高くないながらも疎林帯という他のエリアにはない特徴的な場所だ。
訪れて見ればムイカの限りない可能性に驚かざるを得ないだろう。

今回スキー場を案内してくれた二人。
(右)廣瀬健 北海道出身、群馬県在住。アルペンスキーで培ったテクニックを武器に、フリーライドコンペシーンで活動中。沼田を拠点に谷川岳をはじめ各地のフィールドへ足を運ぶ
(左)八木達也  湯沢中里、舞子、ムイカ、キューピッドバレイ、二ノックスを運営するスマイルリゾートのスキー場運営統括。自身も大のスキー好きで、運営業務に従事する傍ら、滑り続けて新しいスキー場の可能性を見出している

ライダー協賛:PeakPerformanceVector grideSweet Protection

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