妙高高原で新しく始まるスノーキャットツアーサービスを、いち早く体験してみた

豪雪で知られる妙高高原でユニークなスノーキャットツアーサービスが新たにスタートする。

国内屈指の3つの大型スキー場に、小粒ながらも深雪好きにその名を知られたクラシカルなスキー場。さらには周囲を取り巻く広大なバックカントリーフィールドを含めて、日本を代表する一大スノーリゾートとして人気を博している妙高高原。そのなかで、これまでなかった新たな発想とアイデアで来季(2021-2022シーズン)のグランドオープンを目指しているのが「サンダーバード・キャットツアー妙高」。その試験的なプレシーズンツアーを取材した。

旧スキー場跡地と笹ヶ峰エリアで2タイプのキャットツアーが新登場する

「サンダーバード・キャットツアー妙高(以下、SBCT)」は、妙高高原内2つのエリアで営業準備を進めている。

ひとつは「妙高パノラマエリア」。妙高高原駅裏に広がる旧妙高パノラマパークスキー場跡地を再利用してのキャットスキーで、対斜面に位置するこの地ならではといえる妙高高原全域の大パノラマを目の前に、ノートラックの中・急斜面を雪上車に乗って繰り返し滑って楽むツアー。

旧妙高パノラマパークスキー場は妙高高原全域を見渡せる絶景ポイント

もうひとつは「笹ヶ峰高原エリア」。滑り手にとっては聞き慣れない地名かもしれないが、位置的には妙高山の外輪山である三田原山南西斜面の麓。妙高杉ノ原スキー場をさらに南側に回り込んだ奥地といえばイメージできるだろうか。

笹ヶ峰高原周辺には、まだ未開拓のバックカントリーフィールドが目白押し

笹ヶ峰は湖のほとりに牧場やキャンプ場が広がる標高1300m台の高原地帯で、グリーンシーズンは訪れる人も多く、火打山の登山口としても人気が高い。しかし、道路が雪に閉ざされるウインターシーズンは人の姿を見かけることがない白銀の別天地。ここに雪上車でアプローチすることで、バックカントリーツアーやスノーキャンプなど、この季節ならではのスノーアクティビティを実質的な貸し切り状態で楽しめることが最大の特徴だ。

「サンダーバード・キャットツアー妙高(SBCT)」はこうして生まれた

SBCTを立ち上げたのはアメリカ生まれのマーク・ライアンさん。若い頃から北米各地のスキーエリアを渡り歩き、アラスカ・ガードウッドではヘリスキーオペレーションスタッフとしての経験もある生粋のスキーヤーでもある。ライアンさんは学生時代に交換留学で初来日して以来日本に魅せられ、北米と日本を往復するような人生を送ったという。

日本語を流暢に話す「サンダーバード・キャットツアー妙高」代表マーク・ライアンさん

そんなライアンさんが妙高高原への本格移住を決めたのは5、6年前のこと。その最大の理由は毎日のようにリセットされるディープパウダーだった。

「これまで私は世界中でパウダースノーを滑ってきましたが、これほど豊富な雪が毎日降り続き、滑った翌日にはリセットされているような場所はほかに知りません。若いころから何度も繰り返し訪れていた妙高高原に移住したのはそれが最大の理由です」

ここ数年のインバウンド人気は妙高高原も例外ではなく、いったん雪が降れば、各スキー場周辺のパウダーゾーンは国内外の多くのスキーヤー、スノーボーダーで大人気で、雪が降れば滑り手が押し寄せ、豪雪の妙高といっても安心してパウダーを楽しむ余裕が失われていた。

そんな渦中にありながら、ライアンさんにはひとつのアイデアが頭にあったという。この広大な妙高エリアのどこかでキャットツアーを立ち上げることができれば、もっとゆったりとパウダーを楽しむことができるし、自分が愛してやまない妙高のパウダーの魅力を今以上に伝えられるのではないかと。

北米中のスキー場を渡り歩いたというライアンさん。滑りはストロングなアメリカンスタイル

あえてクラシカルな小型雪上車をフィーチャーするには理由がある

ライアンさんがキャットツアーを発想した根底には、じつは彼自身が小型雪上車のオーナーだったというもうひとつの理由もある。もともと乗り物好きの操縦好きだったライアンさんは、ちょっとしたきっかけで状態のいい中古の小型雪上車を手に入れた。圧雪車「ラトラック」で知られる大原鉄工所製のSM-30。1970年代に生産された雪上車で、かつて南極越冬隊で活躍したり、全国の雪国で重宝された10人乗りの乗員運搬用雪上車両である。

大原SM-30を操縦するライアンさん。進行方向は白い2本のブレーキレバーで調整する

妙高高原でもまだ道路の除雪が行き届かなかった時代に、赤倉から燕温泉までの往復を一手に担ったり、ゲレンデ内にある宿泊施設の送迎などで活躍していた雪上車。今から50年も昔の車両だが、赤倉温泉や妙高杉ノ原スキー場のゲレンデに隣接したロッジではいまだ現役で働く姿を見ることができる。

この大原鉄工所製SMシリーズという小型雪上車は、優れた軽量設計に最大の特長があった。ゲレンデの圧雪車と違ってブレードもミルもなく、エンジンのパワーも大きくない。それでも小型軽量だからどんなところでもキビキビ走り、タイトな林の中でもコントローラブル。スキー場の圧雪車が重厚でラグジュアリーなランドクルーザーだとしたら、こちらは一家に一台は欲しい軽快なジムニーといったところだろう。この車両にライアンさんは魅入られたという。

「たとえば、ピステンブーリーのような今どきの圧雪車は、どんなに小型の車両でもメカが複雑で高度な電子基板だらけ。だから故障したらお手上げです。でも、オオハラはシンプルな機械式マシンだから、日頃のメンテナンスやちょっとした故障の修理も自分でできます。自分の年齢とそう変わらない50年も前の車両ですが、上手に乗ってあげればまだまだ十分に働いてくれます。それにこんな時代ですからね。古い道具を大事に使い続けるのは、それはそれで気持ちのいいものです」

キャンプ地の朝。始業前の点検と氷結個所がないかをチェック

実績あるスキーガイドとのコラボレーションで可能性は広がった

苦労の末に、旧妙高パノラマパークスキー場跡地でのキャットツアー運営権を入手したライアンさんは、続いて旧知の間柄だった妙高のスキーガイド、「インフィールド」代表の中野豊和さんに協力を依頼する。妙高山域に詳しいベテランガイドをチームに迎え入れることで、妙高パノラマだけに留まらない新たなツアー候補地の選定を含めたのさまざまな可能性を検討したいと考えたのだ。

右がスキーガイドの中野豊和さん。シーズン中はほとんど雪上で活動している

中野さんは日本山岳ガイド協会認定の経験豊富な山岳スキーガイドで、現在は同スキーガイドステージII資格では指導的立場にもあり、日本雪崩ネットワークや日本テレマークスキー協会では理事を務める人物。2006年から妙高をベースに冬はバックカントリースキーガイドで夏は登山ガイドを続けており、名実ともに妙高の山域に精通したベテランガイドである。

中野さんは妙高パノラマパークでのオペレーションに参加するとともに、妙高エリアでキャットを活用するなら、というテーマでさまざまな可能性を思い描いたという。そのうえで最も高いポテンシャルを見いだしたのが、SBCTのもうひとつの柱となる「笹ヶ峰高原エリア」へのツアーだった。

テレマークスキーらしいゆったりしたリズムで笹ヶ峰エリアのパウダーを滑る中野さん

「インフィールドでは、これまでも道路が笹ヶ峰牧場まで除雪される春時期には、テント泊でより奥地の山へアプローチするエキスパート向けツアーを実施してきました。まずはそれが頭にありました。けれども、キャットを使えば厳冬期でも笹ヶ峰にアプローチできますし、ツアー参加条件も大幅に間口が広がります。また、装備面でも大きなメリットがあります。持ち込むテントや食料も重量を気にする必要がない。つまり、快適な大型ベースキャンプテントを持ち込んだり、手の込んだ料理も存分に楽しめるわけです。さらに言えば、これまで冬に人が入れなかったエリアだっただけに、笹ヶ峰周辺はまだまだ未開拓の斜面が豊富なんです。これは一気に可能性が広がるぞ、と期待が膨らみましたね」

まずは旧妙高パノラマパークでのキャットツアーに参加してみた

JR「シュプール号」というスキー専用列車をご存じの世代の方は、妙高高原駅ホームから目の前に見えるこのスキー場を覚えているかもしれない。短いシングルリフトが数本掛かった小さなゲレンデでしたが、トップには妙高高原全体を一望する大パノラマが自慢の直営ホテルがあり、バブル期には大いに賑わった。営業を休止したのは2003年。以来、スキー場として復活することはなく、降雪後には地元の好き者たちがハイクアップして滑って楽しんでいたようだ。

旧妙高パノラマパークスキー場のトップ。ここまでボトムから約20分の乗車だ

妙高高原駅に近く、メインバーンを見渡せる地点からSBCTキャットツアーはスタートします。ガイドからのレクチャーとビーコンチェックを終えると、スキーやポール、スノーボードをルーフバッグに収め、さっそく大原SM-30に乗り込む。室内はお世辞にも広いとはいえないが、これも小型軽量設計のメリットを優先するがゆえ。また、車内は換気システムやクリアシートを設置するなど、時節柄、感染症対策にも力を注いでいる。

ガイドとゲストを降ろした「大原SM-30」は再びボトムに向けて走行をはじめている

ゴトゴト、ゴツゴツと唐松林の林道を20分ほど登ると、ピークに到着。今も残るパノラマホテル跡の廃墟が痛々しいが、そこから緩斜面の疎林を抜けると、目の前に大斜面が広がる。これがメインバーンになる。出だしから中間部までは30度後半はあろうかという急斜面で、横幅があるので圧迫感はそれほどでもないが、なかなかの斜面だ。そこを抜けると、ボトムで待機しているオレンジの雪上車までの快適なパウダーのクルージングが待っている。

SBCT妙高パノラマキャットは、こんな滑り手にお勧め

このランを、ガイドのコーディネートとライン取りで、早朝から半日かけて4本、5本と繰り返すのが妙高パノラマキャットツアーのルーティン。この日は降雪から数日経った後のしっとりした湿雪だったが、降雪直後の粉雪ならオーバーヘッド間違いなしの斜度だ。とはいっても、標高差にして150から200mという今ドキのスキー場の平均的な中・急斜面1本分なので、バックカントリーをバリバリ攻めているエキスパートな皆さんには少々物足りないかもしれない。

けれども、これからバックカントリーにエントリーしたい人や、一歩たりともハイクアップしたくないというパウダー好きには最適だろう。なにより、誰にも邪魔されることなく、これだけの1枚バーンを自分たちだけで独占できるのだから。また、もしもコンディションに恵まれて、妙高山に抱かれた妙高高原を一望できたなら、忘れられない体験になるのは間違いないだろう。

旧妙高パノラマパークスキー場のメインバーンを滑る。30度オーバーのいい斜度感だ

標高自体が高くないので、1月から2月のハイシーズンの多量の雪の降った翌朝がチャンスだが、そこは大いに悩みどころだ。赤倉観光ホテルスキー場や関温泉スキー場で始業前のリフトに並んで、熾烈なファーストトラック争いに参戦するのか。それとも、そんな喧噪をあざ笑うかのように、パノラマキャットで余裕の深雪に笑みを浮かべるのか。大いに悩まされるに違いない。

2泊3日の笹ヶ峰高原キャット&スノーキャンプツアーが始まった

SBCTのもう一方の柱「笹ヶ峰高原キャットツアー」は、妙高杉ノ原スキー場杉野沢民宿街にある駐車場からスタートする。暖機運転を終えていた2台の大原SM-30に荷物を積み込み、エンジン音も高らかに斜面を登り始めるルートは、主に夏期の笹ヶ峰高原に向かう夏道をトレースする。

妙高杉ノ原スキー場をスタートして笹ヶ峰高原エリアに向けて走る

雪上車はしばらく妙高杉ノ原スキー場のゲレンデ中腹に沿ってウネウネとしたつづら折りを上り、パノラマゲレンデ下部に沿って大きく左に進路を変えてブナ林の中を進む。ここまでおよそ30分。雪上車特有の騒音と振動にもすっかり慣れ、めまぐるしく変わる景色の変化に、次第に気分は盛り上がってくる。

これまで見たことのない真冬の静かな大自然を雪上車に乗りながら満喫できる

ブナ林をしばらく走ると景色は一変して、笹ヶ峰のゆるやかな高原地帯と、背後の白い山々が姿を前方に広がる。あくまでもバックカントリーを滑るためのアプローチのための乗車だが、この頃から、それだけではない雪上車の旅ならではの魅力に気づきはじめることになる。それは、純粋に雪上車で旅する楽しさとでも言おうか。乗って移動するだけでなぜか楽しいという感覚。

これまで国内外のさまざまなキャットツアーを経験してきたが、こんな感覚ははじめてだ。大型のピステンブーリーに載せたゴージャスなキャビンでは絶対に味わえない感覚。車両が小さくてシンプルなぶん、表の雪世界と一体化した走行感が半端なく楽しいのだ。たとえるならスノーモビルで自走するときの感覚にも似ていて、ああ、これなら滑らなくても楽しいかも、なんて我ながら意外な思いが口をついて出てしまった。

あえて本格的な山岳仕様にこだわった厳冬期のスノーキャンプ

杉野沢駐車場からおよそ2時間の乗車で、笹ヶ峰高原のベースキャンプ予定地に到着。ここから雪を踏み固めてキャンプサイト設営が始まる。来シーズンの営業が本格スタートした段階では、装備や食料の運搬や、テントの設営など、すべてのセッティングはスタッフによってあらかじめ終えられている予定だ。

笹ヶ峰高原エリアのベースキャンプ。背後に見えているのは妙高山の外輪山、三田原山

だが、あえてテント設営に参加するというオプションメニューがあってもいいかもしれない。真白い雪面をキャンバスに見立てて、食堂テントや個人テント、スキー置き場やトイレなど、必要な要素を機能的かつ美しくレイアウトする作業は、スノーキャンプ初日の醍醐味だからだ。

SBCTでは、マウンテンハードウェアが極地遠征用に開発した超大型メガドームテント「スペースステーション」をベースキャンプのキッチン&リビング用テントとして用意している。高さ2.57mで直径5.8m、フロア面積26.3m2という世界最大級のベースキャンプ用テントは快適そのもの。外は猛吹雪でも(実際、初日の夜はひどい吹雪でした)中にいれば何の不安もない。

これがベースキャンプのトイレ。内部にはイスがあり、携帯用サニタリーバッグをセットして使う

また、厳冬期用テントとシュラフを持っていない人のために、同じくマウンテンハードウエアの製品がレンタルできるよう準備が進められている。トイレも専用テントが建てられ、携帯用サニタリーバッグで持ち帰るシステムだからあたたかで快適、そして安心です。雪上キャンプ中の最大級のストレスが、これで解消されるはずだ。

ただし、豪華な装備といえばそこまでで、決してグランピング的なゴージャスな設備は望むべくもなく、ツーバーナーにBBQコンロ、流行のテント用薪ストーブといったキャンピンググッズさえあえて避け、あくまで硬派な冬山登山で使える行動用装備が用いられている。ガイドの中野さんは言う。

「SBCTのスノーキャンプはグランピング的な方向にはしたくありません。装備をキャットで運べるからといって、それをやり始めたらキリがないじゃないですか。なんのために厳冬期の雪の中でキャンプしているか、本来の楽しみがわからなくなってしまう。それよりも、私たちが考えるのは、より真冬の自然を体感できるよう基本的な冬山装備プラスアルファのベーシックな雪上キャンプです。

ウエアや防寒着の選び方や着用のしかたから、食事づくりなどの雪山泊の生活全般をあえて体験して楽しんでいただきたいんです。スノーキャンプの醍醐味って、実はその点にあるんじゃないかと思うんですよ。それに、いつか自分たちだけで雪上キャンプをするときにも役に立つと思います。もちろん、アドバイスは惜しみません。また、食事と飲み物については私たちガイドが手を掛けて準備しますし、ちょっとしたお楽しみも用意していますので、そこはご期待ください」

10数人が食事をしてもまだまだ余裕の超大型メガテント「スペースステーション」は快適そのもの

SBCT笹ヶ峰キャット&スノーキャンプツアーはこんなメニューを予定している

笹ヶ峰高原周辺の広大なスノーフィールドを舞台に展開するSBCT笹ヶ峰キャット&スノーキャンプは、さまざまな可能性に満ちている。まず最初に挙げられるのは、杉野沢を早朝に出発して、日帰りで笹ヶ峰エリアを往復するキャット&ハイクでのバックカントリーツアーだ。

バックカントリーツアーで行く笹ヶ峰ダムの南側エリアの斜面。まだまだ未開拓ラインの宝庫だ

これまで厳冬期は人が入ることのなかったエリアに雪上車でアプローチし、ツアーメンバーだけで楽しむバックカントリーラン。ルート選びによってエキスパート向けからエントリー向けまで、さまざまルート設定が可能だ。

続いて、テントに泊まってバックカントリーを滑るスノーキャンプ&ハイクツアー。来季は2泊3日のコースが予定されており、初日はキャンプ場イン。翌日はキャンプサイトから笹ヶ峰ダムを渡り、南側に広がるエリアをハイクして滑り、最終日は滑った後にキャットアウト。天候とコンディションさえ許せば、3日間ともに違ったルートを楽しむこともできる。

実際、今回のプレオペレーションでは、この雪上泊のバックカントリーツアーを実施した。雪質の良さと滑り心地は、ぜひ写真と動画でチェックしてみてほしい。

あるいは、バックカントリースキー/スノーボードをしない人には、スノーキャンプ自体にスノーシューハイクを組み混んだツアーも考えられる。広々とした笹ヶ峰牧場周辺や、白く凍り付いた乙見湖、夢見平のブナの原生林など、みどころもたくさん。いずれも妙高バックカントリーを知り尽くしたスキーガイドが案内してくれる。

大きな可能性に満ちたSBCTによるバックカントリーツアー

本格オープン前のプレツアーに参加した率直な感想としては、非常に楽しみなツアーになりそうだということ。もちろん、天候や雪のコンディションによって大きく左右されるのは間違いないが、それはどのスノーエリアでも同じこと。そのうえで、新たな妙高の楽しみ方を提案してくれるわけだ。

笹ヶ峰ダム南側エリアのピークから妙高山を望む。眼下に広がるのが笹ヶ峰高原

ことに笹ヶ峰高原エリアはこれまで手つかずだっただけに、新たなツアールート開拓の可能性を大いに感じさせられた。そこも大いに期待できる点だ。

たとえば、ほんの一例としては妙高バックカントリーの人気ルートでもある三田原山ツアーとの一体化も考えられます。通常の三田原山ツアーでは、妙高杉ノ原スキー場のトップからからアプローチし、南斜面を滑ってから妙高杉ノ原スキー場に戻るのが一般的。

しかし、南斜面のボトムにキャットを待機させることで、ボトムまでの1000m前後という大きな標高差を滑り降りることができる。そして、迎えに来ているキャットに乗車してキャンプサイトへ。コンディションと体力が許せば、翌日は笹ヶ峰ダムを渡ったワンデイBCツアー。そして最終日は近場を滑ってから、最後はキャットに乗車して杉野沢駐車場に帰る。コンディションとメンバーが揃えば、そんな健脚向きロングランコースも実現可能だ。

今後、毎シーズンのオペレーションが進むごとに、新たなツアールートも開拓されることも予想できる。けれども、どれだけ人気を博すようになっても、雪上車の乗員分というキャパの限界があるため、ファーストトラック争いやオーバーユースの心配もなく、真冬の笹ヶ峰高原ならではの静かなバックカントリーツアーは永遠に維持される。これもまたSBCTの大きな魅力といえるだろう。

DATA

サンダーバード・キャットツアー妙高(SBCT)
https://thunderbird-guides.com/

募集開始:2021年12月から(予定)
営業期間:2021年1月1日〜3月28日(主に週末開催の予定)
問合わせ:myoko.thunderbird.guides@gmail.com

サンダーバード・キャットツアー妙高では、以下3つのツアーを常備しており、参加者の趣旨や嗜好、各レベルや目的に沿って様々なスノーアクティビティから選択することができる。

01 Panorama Tour
・旧妙高高原パノラマパークスキー場を再利用した妙高の歴史と文化に触れるツアー。
・雪上車によるバックカントリースキー/スノーボード、スノーシュー
・所要時間は早朝スタートでおよそ半日

02 Sasagamine Tour
・雪上車で笹ヶ峰高原にアプローチし、バックカントリースキー/スノーボード、スノーシューを楽しむワンデイツアー
・所要時間は早朝スタートで夕方までの1日

03 Sasagamine Base Camp Tour
・雪上車でアプローチした笹ヶ峰高原にベースキャンプを設営して、雪上キャンプを楽しみながら滑る2デイBCツアー
・バックカントリースキー/スノーボード、スノーシュー、雪上車ツアー、スノーキャンプ
・所要時間は早朝スタートの2泊3日(予定)

文=寺倉力、Text=Chikara Terakura
写真=小橋城 Photo=Joe Kobashi
映像=夷フィルム Movie=ebis films


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