プロが狙うルスツリゾートのツリーラン&パウダー|北海道随一のパウダー環境を上手くあてるコツ

今シーズンは多くのエリアで満遍なく降雪に恵まれている。2月に入っても人気スポットは定期的に雪が降り、かつ寒気を伴っているため良好なコンディションを保っている。

シーズンの序盤が過ぎたが、パウダーシーズンはまだまだ健在。
とくに北海道は積雪量が多く雪質が良いため、スキー場の選択肢が豊富だ。数日の滞在を見込めばパウダーを当てやすい条件が揃っている。そこで1月下旬の3日間、面白い地形や新雪への嗅覚が鋭い2人のライダー、スキーヤー川口徹とスノーボーダー吉田麻人と共にルスツリゾートを滑った模様を紹介しよう。

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スケールの大きさは北海道随一 
3つの山からスキー場を形成

1月下旬にルスツを訪れたスキーヤー川口徹とスノーボーダー吉田麻人。滑り込んだ3日間はまとまった降雪はなかかったものの、毎日10cmほどの新雪が降り積もり、場所を選べば雪や風で斜面がリセットされるような状況だった。気温は毎朝マイナス10℃を下回るグッドコンディション。

まずは3日間のベストショットと映像クリップをどうぞ。

Tetsu Kawaguchi
Asato Yoshida
Tetsu Kawaguchi
Asato Yoshida
Asato Yoshida
Tetsu Kawaguchi, Asato Yoshida
Tetsu Kawaguchi, Asato Yoshida

北海道、いや全国的に見てもルスツほど長い距離を滑れる場所はそうないだろう。
下記のゲレンデマップを見ての通り、ルスツリゾートは3つの山から形成されている。
右からWest Mt.(ウエスト)、East Mt.(イースト)、Mt.Isola(イゾラ)のそれぞれの山の斜面には37ものコースがレイアウトされ、滑走距離が稼げる長いコースも多い。コースの総滑走距離は約42kmもあり、1日で滑りきれるサイズではない。

https://rusutsu.com/trail-map/

3つの山はそれぞれに特徴がある。まずは概要を掴んでおこう。

背後に羊蹄山を控えるマップ右奥に位置するのが、West Mt.(ウエスト)。ホテル前でアクセスしやすく山のサイズもコンパクト。下部は斜度が緩やかなためファミリーや初心者に人気だが、一方で急斜面の1枚バーンやツリーランが楽しめる場所もある。またナイター営業があるので、夜のパウダーも楽しめる。

マップ左奥のMt.Isola(イゾラ)へとアクセスするEast Mt.(イースト)には、ゴンドラがかかり、長い距離が滑れるのが特徴。ゴンドラ山頂駅を起点に眺めの素晴らしい尾根沿いのコースや中斜度で滑りやすいコースをはじめ、ルスツで最大の急斜度40度の斜面もある。

スキー場の最奥にあるのがMt.Isola(イゾラ)だ。3500mのロングランコースを皮切りに、尾根沿いコースとその間を縫うような沢地形が組み合わさり、バラエティ豊富なスロープが揃っている。パウダー狙いの滑り手が我先にと足を運ぶのがこのエリアだ。

さらにスキー場境界線内(点線黄色)のコース以外の部分はすべて自己責任エリアとして開放されている。斜面の向き、斜度、木々の密集度、沢やシュート、マッシュなど様々な地形。これら地勢条件に日々変わる雪の状況によって、ここはいつ行っても新鮮な気分で楽しめる場所になっている。

地勢情報や気象条件をライダーに聞いてみた


川口徹(左)は蘭越在住、吉田麻人(右)は倶知安在住。ルスツへは頻繁に足を運べる距離に住んでいる

ルスツを長年滑り込んでいる吉田麻人は、ここの気象条件や地勢情報に詳しい。よく言われるのはニセコが降っている時や強風にさらされている時はルスツが穏やかであること。それにはこのエリアの象徴である羊蹄山も関係なさそうだ。

「スキー場は全体的に沢地形が多いので、北や西から吹く風によって、南面や東面は雪が溜まりやすいですね。とくに沢のボトムには雪が溜まりやすいから、降雪具合と風をみながらいろんな斜面が選べます。
また、北西からの強い寒気が太平洋側へと抜ける時にニセコには水分を含んだ雪を多く落としていきますが、羊蹄山を境に降る雪の量も変わりますね。やや西寄りから寒気が入ってくるとルスツには大量の雪が降りやすくなります」

West Mt.(ウエスト)背後に聳えるシンボル羊蹄山。East Mt.(イースト)やMt.Isola(イゾラ)を滑っていると、その山容が目に入ってくる

East Mt.(イースト)とMt.Isola(イゾラ)の間にあるツリーエリア。通称シュガーボウルの北西面。陽あたりが少ないので、良い雪がキープされやすい。樹氷に囲まれながらのライディングは格別

一方、川口徹は天気のことにも言及した。

「ルスツは日本海側の天気というよりは、太平洋側の影響が大きくあります。北寄りの寒気がニセコ方面に流入しているときは、南からの空気と北寄りの海からの湿った空気がぶつかりやすい場所です。直線距離にして30kmほどしか離れていませんが、ニセコとはコンディションがちょっと違いますね。
ルスツは標高がそこまで高くないので、降ったあとに晴れ間が出やすいメリットがあります。
あとは、イゾラエリアに設置しているライブカメラは16時になると一旦雪を捌けるので、朝にそれをチェックして雪の降り具合を確認するのもいいと思います」


Mt.Isola(イゾラ)のヘブンリーキャニオンコースの中間あたり。沢筋の非圧雪コースは風によって新雪も溜まりやすい。そのぶん人気が高いためラインがすぐに入るが、コース脇はノートラックが残りやすい。

Mt.Isola(イゾラ)のカフェテリア「スティームポート」脇に設置された24時間降雪カメラは1時間単位で積雪の模様が確認できる https://rusutsu.com/live-mountain-cams/

ご覧のように降雪具合がチェックできる。だいたい10cmほどの積雪量が見て取れる

毎日16時になると積雪計に積もった雪を取り除く。営業終了時から翌朝までの積雪量が目に見えて分かる仕組み

2人がオススメするレコメンドエリア&ポイント
非圧雪コースはもちろんツリーエリアが面白い


上2枚はEast Mt.(イースト)とMt.Isola(イゾラ)の間にあるツリーエリア、通称シュガーボウルの北西面。対斜面から見ると木の密度がよく分かる(上写真)。実際滑ってみると木々の間隔は場所によってまちまち。滑りやすい面を見つけよう

普段、ルスツを滑るルーティンはどんな流れになるのだろうか。2人からそれぞれのラインを聞いてみた。まずは吉田麻人から。

「イゾラを回すことが多いですね。ヘブンリー周辺は木々の間隔もちょうどよくて滑りやすく、脇には大きなマッシュやログがあるのですごく好きです。 イゾラとイーストの間にある北斜面イゾラA、B、Cコース。斜度もあって圧雪も境目に段差もなくきれいなので、降雪のない日はカービングで地形をなぞりながら滑るのも楽しいですね。 あと、パウダー狙いの人や上級者はまずイゾラを目指すことが多いので、イーストの斜面はパスすることが結構あるんですよ。でも、イーストのビバルディとティーニュの間のツリーエリアは斜度もあって地形もいい。最初に狙う人は少ないから穴場的に狙い目です」


East Mt.(イースト)のビバルディとティーニュの間のツリーエリア。Mt.Isola(イゾラ)のツリーエリアにも劣らない地形の宝庫には大小のマッシュが点在している

Mt.Isola(イゾラ)のヘブンリースピリット脇のツリーエリア。スキー場最奥の山は標高1000mもないが、北斜面のため雪の具合も上々
Mt.Isola(イゾラ)のツリーエリア。場所によってはご覧のように開けた斜面もある。リフト上や滑り込みながら、こうしたポイントを見つける力も養おう

川口徹も同様の意見だ。

「場所で行ったらやっぱりヘブンリーあたりかな。木の間隔も広いし、地形も豊富。沢のR形状も深かったり浅かったりと種類もあり、場所によってはピローもあって、とにかく遊べるアイテムがいろいろあります。イーストは麻人が言ったように、人が狙わないラインが多いから面白いですよ。ジャンプしやすいログやマッシュもあちこちにあるから、それらを一つのラインに繋いで滑るのも楽しいですよね。 ルスツ全般に言えますが、ここはどこからツリーエリアに入っても、大きな心配が少なくコースへと戻ってこれるため、ツリーランが楽しめるスキー場の代表かなと思いますね」


こちらもEast Mt.(イースト)のビバルディとティーニュの間のツリーエリア。夏の間に倒れたツリーにこんもりと雪が乗り、ジャンプしたり当て込んだりしたりするのにちょうどいいアイテム。パウダーを滑るだけでなくアクションを入れられるアイテムを探しながら滑るのもいい

ツリーエリアの木々は場所によってその間隔は様々。広い場所ではスピードが出しやすく、狭い場所ではコントロールが求められる。自然のなかを疾走する感覚はたまらなく楽しい
こちらの映像はEast Mt.(イースト)とMt.Isola(イゾラ)の間にあるツリーエリア”シュガーボウル”の東面の様子。木々の多い北西面と違い、尾根と幾重もの沢筋があるオープンバーンになっている。風でリセットされた斜面は滑るたびに粉雪が舞い上がる

自己責任エリアでのツリーラン
広さや斜面バリエーションは日本一

Tetsu Kawaguchi, Asato Yoshida

2人のあとを追いかけて滑った3日間。スキー場はとにかく広大だから飽きることはない。
3つの山の斜面に広がるコースは、西向き以外の方角を向いているため、降雪状況や風向きや強さ次第で雪の溜まる場所が変わってくる。それでも滑走距離や斜面構成を考えるとEast Mt.(イースト)、Mt.Isola(イゾラ)を起点に滑るのがルスツ攻略の正攻法と言える。


上2枚はどちらもWest Mt.(ウエスト)のツリーエリア。距離は短めだが、木の間隔はまばらで滑りやすい。ツリーランに慣れるには最適な山だ。もちろん雪質は上々

この2つの山のツリーエリアの斜面バリエーションは無限と言えるほど。国内外のフィルマーたちが撮影ロケーションとしてルスツを選ぶ理由がよく分かる。オープンバーン、木と木の間隔がタイトでテクニカルな斜面、倒木の上に雪積もってできるマッシュ、巨木に雪が乗ったログ、と映えるロケーションは多い。斜面の向きや斜度も様々だから、条件によって場所の選択肢が広い。そこは他のスキー場にはない大きなポイントだ。


East Mt.(イースト)ゴンドラからもポイントがチェックできたマッシュ。初見で着地点を見極めスピードを調整しながらトリックを決めるのは経験を重ねたプロの成せる技

また、2人が言う通り、East Mt.(イースト)、Mt.Isola(イゾラ)共に、スキー場境界線内のツリーエリア(自己責任エリア)は斜面の地形に沿って素直に滑れば、コースへ戻りやすい地形になっているのも助かる。進入禁止のロープや危険と思われる箇所には注意喚起の印があるため、その指示に従えば、ツリーエリアにはじめて入っても迷うことは少ない。また、フード付きリフトにはコースマップが貼られているため、リフトに乗りながら滑った場所を確認できる。
はじめて訪れたならば、まずはコースすぐ脇のツリーを滑り、地形や場所を把握しはじめたら、徐々にその範囲を広げていきたい。ツリーエリアのポイントは数知れずある。風向きや降雪によってその日の当たり斜面を見つけるのも面白い。地形や雪の状態など自分好みの斜面を探し当てたときの快感は、決まったコースを滑るより何倍も楽しい。なにより自然のなかを滑るスキーやスノーボードの醍醐味を十分に感じられる。


East Mt.(イースト)。フリコ沢コースへ落とすツリーランエリアの下部で見つけたマッシュ。コースを滑る人も立ち止まってパフォーマンスを見つめるほどクリーンに360をきめた

Mt.Isola(イゾラ)、ヘブンリーキャニオンとスピリットの間の林にある沢地形。まるで天然のハーフパイプ。このエリアにはほかにも沢地形があり、形状や斜度で選び遊び放題

ツリーエリアも魅力的だが、East Mt.(イースト)やMt.Isola(イゾラ)のコースは地形が出ているところが多く面白い。とくにEast Mt.(イースト)とMt.Isola(イゾラ)の狭間にある平均斜度7°の「フリコ沢コース」はただ流して滑るにはもったいない。沢筋のコースの両脇には壁地形があり、それらを繋いで滑るのがポイント。一部は人工的にキックを付けて飛べるようになっていたり、ターンや当て込みがしやすいバンク形状にしたりしている。スピードが乗りにくい緩斜面でも、そうしたアイテムを使えばスピードが増し面白さが何倍にもましていく。同様な場所として「ヘブンリーキャニオンコース」の下部も2連ジャンプができる場所や、当て込みがいのある大きな壁など、フリーライドに楽しめる斜面は多い。

映像で「フリコ沢コース」の一部を紹介。East Mt.(イースト)やMt.Isola(イゾラ)のツリーランを終えてからも、このなだらかな斜面で左右の壁を使って遊べる

Mt.Isola(イゾラ)、ヘブンリーキャニオンの下部。コースから脇に外れる途中に2連ジャンプができる起伏がある。キョロキョロとあたりを見渡せばこんな地形があちこちにある

こちらもMt.Isola(イゾラ)、ヘブンリーキャニオンの下部。スキーヤーズレフトに立つ大きな壁でビッテリーターンをきめる。飛ぶも良し、当て込むも良し、ターンを描くも良し

さまざまな地形があるから、どんどんやってみたい動きが浮かぶ。山をまるごと滑り尽くす感覚を磨いて遊びつくそう
吉田麻人
Asato Yoshida
1987年北海道岩見沢生まれ。北海道・倶知安在住

9歳からスノーボードをはじめ、ハーフパイプで五輪を目指す。JSBAのハーフパイプ全日本を優勝し、プロ資格取得後は、TOYOTAーBIGAIRでも活躍。スノーボード歴25シーズンを重ねた現在は、フィルムクルー「Underline」の一員としてフィールドを問わず活動する。
sponsor : ROME sds、ANDSOX
Instagram:@asato_yoshida

川口徹
Tetsu Kawaguchi
1984年兵庫県生まれ。北海道・蘭越在住

10代の頃よりフリースタイルコンペティションで活躍。同時に「mighty_jamming_film_works」で数多くの映像を残す。
現在はTHE NORTH FACEアスリートとしてプロダクトの開発やプロモーション活動に精を出す傍ら、自らのイメージを具現化したスキーをVECTOR GLIDEで開発するなど多方面で活動を続けている。
Sponsor:THE NORTH FACE、vector glide、hestra、 anonoptics、curristick
Instagram:@tetsukawaguchi

Photo=Takahiro Nakanishi、Rusutsu Resort
Text=Takeru Ogawa
Movie=Naoki Takahari

Information

ルスツリゾート
住所:〒048-1711 北海道虻田郡留寿都村字泉川13番地
お問合せ:Tel. 0136-46-3331 (代表)
SNS:Instagram / Facebook / Twitter

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