23-24シーズンの足音も近づくなか、今年も多くの滑り手がパウダーを狙っている。日本中を見てもインバウンドのみならず、粉雪を求める滑り手で溢れている。関東圏ユーザーの候補として白馬や野沢、湯沢や妙高、斑尾の名前が挙がるのではないだろうか。(他にもアライやシャルマン、裏磐梯エリアなども)
しかし、それらエリアは雪が降れば国内外のユーザーが我先にリフトへ並び、皆がファーストトラックにめがけて突っ込む。時にはその競争が刺激的だが、ゆっくりと良質なパウダーを延々と楽しみたい時もある。その願いを叶えるのがキューピットバレイだ。
聞き馴染みのない人も多いスキー場かもしれないが、このスキー場は新潟県上越市に位置する。群馬県や長野県からアクセスする場合、ロッテアライや野沢温泉、湯沢・南魚沼エリアの少し足を伸ばした先にあるイメージだ。南魚沼で例えると距離感的には南魚沼から野沢温泉に行くのと変わらない距離にある。
キューピットバレイは近隣の豪雪エリアと同様に日本海の水蒸気が西から吹く風によって大量の降雪をもたらす地域である。新潟県と長野県を結ぶ信越トレイルのある関田山脈の北側に位置し、全ての斜面が北向きである。しかし、キューピットバレイはこれまで県内のファミリーユーザーが訪れるスキー場として集客されてきた。これが我々が聞き馴染みが薄かった理由だろう。
アクセスするには上越市と南魚沼市を結ぶ国道253号線を横道に入ってグングンと進む。山奥の豪雪地帯に分けいり、徐々に左右の雪壁が高くなっていく雰囲気が待ち受けているパウダーへの期待感を掻き立ててワクワクしていく。
そんなキューピットバレイを昨季に滑ったのは、このスキー場を知り尽くすローカルの斎木真司さんと、ARMADAライダーの樋口永悟だ。パウダーを滑りたがっていた永悟を斎木さんが誘って案内することになった。
ここからは2人の話をもとにキューピットバレイの魅力を見ていこう。
正直、聞いたことないスキー場だったんですけど、めちゃめちゃ驚きました(笑)
〜樋口永悟のハナシ〜
「普段滑らない穴場的なパウダースポットを滑りたいなって思って、今回キューピットバレイを斎木さんに案内してもらいました。はじめて名前を聞いたスキー場だったのですが、こんな場所にこんないいスキー場があるの?ってめちゃめちゃ驚きました(笑)。それくらい良かったですね。
まず驚いたのが、僕が活動のベースにしている野沢温泉と比べると、平日とはいえどこんなに競争率が少ないのかと。2日間の滞在でしたが、滑りきれないほどのパウダーエリアですね。ゲレンデマップで見るよりも体感では広く感じました。
あと、新潟のスキー場と聞いて、雪は少し重いのかな? と思っていたのですが、超軽い雪がたくさん降ったことには驚きでした。昨年は周辺のエリアは少雪に悩まされたのですが、山奥にあるので雪がたくさんありましたね。キューピットバレイに行く道の途中で一気に雪壁の高さが変わったのが印象的です。朝イチの山頂は凍えるくらい気温が低くて、極上のパウダーでしたね(笑)」
「今回滑ってお気に入りのコースはソレイユハイヤーですね。急斜面で雪がドッサリ積もってもスピードが出るし、朝イチに行かなくてもパウダーが残っています。ゲレンデ内なのに、ノートラックで何本も滑れたのが良かったですね。ソレイユハイヤーに行くまでもグルーミングのロングコースを滑れるのもオススメのポイントですね。
あと、第2クワッドリフトの向かって右側のツリーランエリアは、ツリーランといえど開けた斜面で斜度もあるのでオススメです。一面に広がるオープンバーンでどこを滑ってもいいので、開放感に溢れてて最高でした」
「次来る時はやはりパウダーが確定している時に来たいですね。知り合いも連れて『こんなところがあるんだよって』教えたい。ゲレ食も美味しかったし、スキー場の下部は初心者も楽しめるし、みんなで遊べるスキー場ですね」
「もったいないから、誰かに滑ってほしい」
〜斎木真司さんのハナシ〜
次は樋口永悟を案内した”キューピットバレイ通”の斎木さんの話を聞いてみよう。斎木さんは普段、同じく新潟県にある舞子スノーリゾートでスキースクールの校長として勤務している。それでもわざわざキューピットバレイに足を伸ばす理由はなんだろうか?
「キューピットバレイは地形の変化が複雑で、その地形を生かしたコース作りをしています。私は普段、舞子スノーリゾートでスクールのインストラクターをしているのですが、思うにスキーを上手くなるには複雑な地形をたくさん滑るのがポイントに挙げられます。つまり、キューピットバレイは天然のスキーの先生ということです。スキー場を滑ってるだけで、勝手に上手くなるということなんです。
私はインストラクターという立場ですから、自分のスキルも磨き続けなければいけません。なので、練習という意味でも滑りに行きますね。ツリーランエリアは自然のままの状態を滑ることができます。キューピットバレイのツリーランエリアはとくにその自然地形が複雑なので上達するのに最適です」
「スキー場が山間にあるので、たくさんの雪が降ります。私がキューピットバレイに行くのはおもに降った日ですね。舞子スノーリゾートで勤務している私が言うのも憚れそうなのですが、舞子は高速道路のICが近いため、パウダーを狙いにくる人もだんだん増えてきました。
しかし、キューピットバレイまで舞子から1時間30分程度足を伸ばせば、パウダーを争うことなく滑ることができるんです。もしくは降った日の2日目、3日目でもキューピットバレイならパウダーが残っている可能性が大いにあります。ほかのスキー場では期待が薄くても、ここに来れば大体パウダーがあるので、『今日はパウダーを滑りたいな』と思った日は来ることが多いですね」
「朝イチは第2クワッドに乗って山頂へ行きます。リフト両サイドのツリーランエリアは正直、そこまで競争率は高くないので、まずは非圧雪のマリオネットにいきます。ここが私は一番好きなコースです。ほかのスキー場だったら、コースにしないでしょう、と言うほどの上下左右に地形変化があって、ぐねぐねしてるんです。あそこを滑ればスキーの先生は要らない、っていうくらいですね。山がスキーを教えてくれるんです。ここは地形変化に富んでいて練習に最適です。
グルーミングバーンを楽しみたい時はラメールに行きますね。一部非圧雪なのですが、程よい斜度変化でロングランが楽しめるので爽快です。朝イチはグルーミングと非圧雪どちらを楽しみたいか、その時の気分次第で選択肢が変わります。マリオネットかラメールを滑って、人が多くなってきたら……。そうは言っても人はそれほど多くならないのですが、ツリーランエリアのノートラックを滑りに行く、というルーティンですね」
「午前中はガッツリ滑るので、午後は何本も滑るというよりかは少ない本数を集中して滑ります。スキー場のなかでソレイルハイヤーが一番急斜面でスピード感を上げて滑れるのでトレーニングになります。
エトルも心地よいグルーミングが続くので、集中して一本滑るのにオススメです。
ただ、午前中ではマリオネットやラメール、ツリーランエリアのパウダーを滑り切ることは不可能なんです(笑)パウダーを滑り切る前に時間と自分の体力を使い果たしてしまうのがいつものパターンです。なので雪が降った日の2日目、3日目でもパウダーが残っているという訳なのです。それがもったいなく感じる時が多々ありますね。
ちょっと言いたくないんですが、もったいないから、もっと多くの人が来てくれたらいいのにな、と思うこともあります。でも、あんまり人が来過ぎてほしくないな、と思う気持ちもあり、葛藤ですね(笑)
1日の終わりに、ちょっとしたフリーライドバーンというか”ポコポコ”程度に軽く荒れたマリオネットを腕試し的に滑るのが私的にオススメです。『上手くなったな』と納得して、スッキリして終わる。これが1日のルーティンです」
キューピットバレイは知る人ぞ知るスポットだが、野沢温泉や妙高、アライなどの豪雪を謳うスキー場からも1時間〜1時間30分で比較的足を伸ばしやすい。パウダーが狙える日、もしくは周辺スキー場がもう滑り荒らされてしまった降雪翌日、翌々日に滑りに行くことをオススメしたい。
キューピットバレイ
公式サイト:https://www.yukidaruma-kogen.com/
公式SNS: https://www.instagram.com/cupidvalley/| https://www.facebook.com/profile.php?id=100063803551575