‘23-24シーズン、旧アルツ磐梯と旧猫魔スキー場の2スキー場が1つになった「星野リゾート ネコマ マウンテン」。その大きなニュースとともに、この2つのスキー場を繋ぐ連結リフトの存在も同時に発表した。
12月22日には長年待ち望んでいた、待望のリフトの運行式が執り行われた。
その模様や実際のリフトの乗り心地をお届けしよう。そして星野リゾートの代表であり年間60日以上の滑走日数を誇る、大のスキー好きである星野 佳路さんにもコメントを寄せてもらった。
北と南のエリアを繋ぐ。その名も「ニャルツチェア」
2023年12月22日(金)、午前9時から運行を開始した連結リフト。これまで旧アルツ磐梯(現南エリア)と旧猫魔スキー場(現北エリア)とをゲレンデ内からアクセスするにはスキーやスノーボードを担いで、ブナ林を歩いていく雪上徒歩ルートのみだった。
星野リゾートがこの2つのスキー場の運営を引き継いだ2003年当初から連結リフト構想は上がっていたが、リフト建設にあたりさまざまな問題に直面。なかなか計画が進まないなか、ようやく着工にまでたどり着き、連結リフトを実現することとなった。
新しいリフトということで、スキー場が打ち出したのはリフト名称の公募だ。お客様から愛されるリフトを、という思いからリフト名を広く募集した。その名称は初運行時の現地セレモニーでお披露目となったのだ。
1300名にも及ぶ応募のなかから選ばれたのは「ニャルツチェア」だ。
「猫魔」の地名、そしてスキー場名からなくなってしまったが長年愛された「アルツ」が融合したような、なんとも可愛らしい名前に。「ニャルツ」は6名から同じ名称が届いていたという。
「ニャルツチェア」アクセス方法
ニャルツチェアは750メートルのペアリフト。北エリアから南エリア、南エリアから北エリアと双方向から乗車できる。所要時間は約7分。北エリアのベースからの最短ルートは「フレンドリーキャットチェア」に乗り、「エキサイトキャットチェア」に乗り継ぐ。降りた先に連結リフト「ニャルツチェア」の乗降場がある。
一方、南エリアはベースから「アルツエクスプレス」、「ブラックバレーエクスプレス」に乗り継ぎ、「ピーク4」を滑り「ピーク2」の手前に乗降場がある。
北エリアではベースからほぼ滑走せずに「ニャルツチェア」まで辿り着き、南エリアでは「ホワイトバレー3」「ピーク4」のコースを選べば、初級者コースのみでもアクセスできる。滑りに自信がなくても、トータルリフト数13基、全33コースを有する広大なネコマ マウンテンを自由に行き来できる。
ドキドキの初運行。初めて乗車したのは誰?
「ニャルツチェア」の名称発表後、2つのスキー場をつなぐリフトが初めて動き出した。北エリアから乗り込んだのは、ネコマ マウンテンを運営する星野リゾート代表、自身もコアな滑り手である星野佳路さんだ。そしてその後を続いた一般ゲストは、シーズンパスホルダーの地元のスノーボーダー、南エリアからの初ゲストはスキーヤーだった。
乗車中は静かな林のなかを進んでいく。北エリアからの「ニャルツチェア」では、南エリア側に入る際にかなりの急勾配を下っていき、さながらジェットコースターのような感覚だが、目の前に広がる絶景の猪苗代湖や会津若松が見渡せる。初乗車したゲストからはその景色の良さに歓声が上がっていた。
対して南エリアから乗車すれば、北エリア側に広がる桧原湖が眺望できる。どちらも天候に恵まれると、絶景を味わえるリフトだ。これは北からも南からも乗って体感したい。
「やっと繋がったけど、ようやくスタート地点に立てた」
このエリアには他には負けない魅力がある、といち早く目をつけ、2003年より旧アルツ磐梯&猫魔スキー場の運営を行ってきた星野リゾート代表の星野佳路さん。当時から構想を練っていた連結リフトだが、単に2つのスキー場を繋ぐだけではなく、北と南、裏磐梯と会津若松、それぞれの地域を活性化させる重要な役目を果たしそうだ。
「やっと繋がったけど、ようやくスタート地点に立てた」という星野さんのコメントは、リフトが繋がらないと走り出せず、繋がったことで、本当の意味で前進できる感覚があるという。星野さんはこう続けた。
「2003年からこの地域の再生に携わっていますが、東日本大震災や原発事故で赤字に転落し、ゼロ以下からの再スタートとなりました。世界の投資家からの援助はなくなりましたが、そこで吹っ切れて、持続可能なリゾート運営をするには自分たちの力で好きにやってみようと思いました。北海道や白馬にも負けない、このエリアの魅力を発信していけば、いつかは私たちが目指す姿にたどり着くと信じています」
すべての雪バカのために、という合言葉のもと、今シーズンも多くのイベントの開催など、さまざまな取り組みを続ける。他にはないユニークさからも毎年欠かさず訪れるリピーターも多い。
そんな愛されるスキー場だからこそ、今回の連結リフトの公募に踏み切った。星野さん曰く、「私もいくつかリフト名のアイデアを出しましたが、スタッフからは”普通すぎて”却下されました(笑)」とのこと。
「ニャルツ」というリフト名を初めて聞いた時には、さすがにジョークかな? と思った星野さんだが、スタッフたちの「いまのお客様を大切にする」その姿勢とこだわりを感じたという。
星野さん直伝「ニャルツチェア」を使った楽しみ方4選
つながったネコマ マウンテン、そして「ニャルツチェア」を使った楽しみ方を星野さん直々に教えてもらった。
その① 連結リフト運行後も残した 雪上徒歩ルートをあえて使う
これまで北と南エリアを往来するために使っていた雪上徒歩ルート。実は「ニャルツチェア」運行後もそのまま残され、徒歩での双方のエリアへアクセスも可能だ。
その② ベッド数が圧倒的に多い! 裏磐梯に泊まる魅力
首都圏からは日帰りでもアクセスできるが、広大なビッグゲレンデを満喫するには1日じゃもったいない。特に北エリアの裏磐梯には南エリアより多くの宿泊施設があり、ラグジュアリーなリゾートホテルからリーズナブルな民宿まで、好みに合わせて選べるのも嬉しい。
連結リフトのおかげで、北と南エリアの行き来がしやすくなり、どちらか一方だけでなく、エリア全体で遊べるようになった。裏磐梯で宿泊して北と南エリアを滑り尽くすのもよし、城下町の会津若松観光や本場の喜多方ラーメンに舌鼓を打つのもよし。楽しみが何倍にも広がることだろう。
その③ ベースに降りなくても一日中山の上で楽しめる
今季南エリア側の「ニャルツチェア」の近くにゲレンデレストラン「The Rider’s」をオープン。メニューを充実させ、ランチや休憩のたびにベースへ降りずに楽しめる。一日中山頂付近のコースで遊びたいコアな滑り手にとっても嬉しい。
その④ 実はコスパに優れたネコマ マウンテンのリフト券
昨今、さまざまな理由から各地のスキー場ではリフト券の価格高騰が止まらない。そんな状況を見た星野さんは「リフト券の値上げはやめよう」と決めた。ネコマ マウンテンではタイやオーストラリアなど、海外からのゲストも少なくない。滑りに来るインバウンドたちは、長期滞在して、長く滑りたい人たちが多いという。
そこでリフト券を値上げてしまうと、海外のリゾートに比べて安くとも、高くなったリフト券に躊躇してしまう。なんといっても、国内のスキーヤー・スノーボーダーを忘れてはいけない。「今来てくれるファンを大切にする」星野さんをはじめ、現地のスタッフたちも同じ想いだ。
今シーズンのネコマ マウンテンのリフト1日券は5500円(大人料金)。スキー場の規模感をみると、非常にお得な価格設定だ。グルーミングバーンにパウダーエリア、多種多彩なアイテムが揃うパーク、そして充実した施設に絶景。なんともコストパフォーマンスに優れた点も魅力のひとつだろう。
星野リゾート代表 星野 佳路
長野県軽井沢町生まれ。1991年より星野温泉(現星野リゾート)代表に就任。スキーへの愛情が深く、今シーズンは滑走日数80日が目標。
今シーズンはトマムの狩振岳キャットツアーや谷川岳、NZの友人から良い評判を聞いたシャルマンに滑りにいく予定。
今年1月に新調したVECTOR GLIDEのジーニアスナローを愛用中。力が弱くても圧雪バーンやパウダー、海外にいく時もこの1本で滑れる優れモノ。日本メーカーならではの細やかな工夫が随所に見られる、星野さんおすすめの一台。
Information
星野リゾート ネコマ マウンテン
〒969-3396 福島県耶麻郡磐梯町大字更科字清水平 6838-68(南エリア)
〒969-2701 耶麻郡北塩原村桧原猫魔山1163(北エリア)
公式サイト:https://www.nekoma.co.jp/
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