飽きない滞在型リゾート。総合力にあぐらをかかない奇抜なアイデア
北海道にある星野リゾート トマムは、内陸性気候が生み出す群を抜いた軽い雪質をいかした数々のアクティビティに加えて、滑らない人も多様な過ごし方ができるさまざまな施設やアクティビティが、エリア内にまとまった滞在型リゾートとして国内外から人気だ。
マイナス30℃近くまで気温が下がることを生かした雪と氷でできた施設「アイスヴィレッジ」。天候を問わない屋内プール「ミナミナビーチ」は、30m×80mの日本最大級造波プール。山麓からゴンドラ一本でアクセスできる「霧氷テラス」。スキーインスキーアウトができる食事やショッピングエリアの「ホタルストリート」。ほかにも数えるのも一苦労するほどのアクティビティが揃っている。
なかでも、ときどき登場するユニークな試みがトマムらしいとして話題を集めている。
例えば”スキーインスキーアウトこたつラウンジ”。
食事や買物をスキーインスキーアウトで楽しめるホタルストリートの一角に、こたつが並び、暖を取りながらおでんや日本酒が味わえるもの。雪の舞うスキー場内で”こたつ”というミスマッチ感が面白く、サービス開始当初から人気だ。
着想点は日本の文化やらしさをリゾート内で出せないか。一般的な価値観から見ると、スキー場のなかにこたつがあるのは違和感でしかないが、むしろそれが旅をする国内外の人にとっては強く印象として残る。それが楽しさへと繋がる。ホタルストリートは滑る人も滑らない人も一堂に介して楽しめる場所だから、滑るだけではない喜びや驚き、満足感を感じるのにもってこいだ。
また、旅との親和性の高い音楽を絡めた取り組みも興味深い。
「面白そうだからやってみる」が原動力
演奏に招待されたピアニストの市川高嶺さん。パリ・エコール・ノルマル音楽院、スイスのベルン高等音楽院で腕を磨き、UFAM国際音楽コンクール室内楽部第一位を獲得。定期的に演奏会を開いている。また、小さい頃から「ミウラ・ドルフィンズ」でスキーレッスンやアウトドアアクティビティに参加しており、現在は演奏の傍ら、全国各地の雪山を滑るアクティブなピアニストだ。
23季に開催していたピアノにまつわる2つの企画も面白い試みだった。ひとつはゲレンデにピアノを置くストリートピアノならぬ、ゲレンデピアノ。もうひとつは、ピアノが旅をして全国を回った「旅するLovePiano」だ。
どちらも、世間のトレンドとして耳目を集めたストリートピアノがアイデアの源泉。「ゲレンデでストリートピアノって見たことがない」、「リゾートセンター前にピアノを置いて写真を撮ると、トマムマウンテンがバックに控えてトマムらしい」という考えから企画がスタートした。
「旅するLovePiano」はヤマハミュージックジャパンとコラボレーションしたもの。イラストを施した特別ピアノが全国の星野リゾート施設を旅して回るという奇抜なアイデアだ。トマムではホタルストリート内のcafe&bar「つきの」に設置され、営業時間内なら誰もが弾け、演奏後には特別ステッカーがもらえる。「旅するLovePiano」滞在中は、何人ものYouTuberが足を運び、トマムの自然を満喫しながら演奏を楽しんだ様子がSNSを賑わせた。
もうひとつの、ゲレンデピアノはリゾートセンター前に置いていたシャンパンバーに併設する形でピアノを設置。比較的天候が落ち着く3月に開催していたとはいえ、実施に向けてはいくつものハードルがあったという。
手袋をして弾くことはできないので、もちろん素手。曲が終わるたびに何度も指先を温めながら鍵盤を叩く高嶺さん。暖かそうな雰囲気だが、3月といっても空気は凍てつき、10分ほどが演奏の限界。明るすぎるため裸眼では眩しくサングラス着用。なにもかもが、規格外のピアノ演奏だったと笑みを浮かべながら演奏を終えた。
屋外にピアノを置くということで、楽器レンタルをする会社からは「はじめは電子ピアノにしてはどうか」という提案もありました。本物感に妥協はしたくなかったので、じゃあ次はグランドピアノはどうだとなったのですが、今度は土台となるソリにが重量に耐えれず、最終的には、ヤマハのグラビノーバという型に落ち着きました。
ピアノはカバーを厳重に巻き、雪や雨が入らないようにして、外へ置きっぱなしです。ピアノは温度変化による湿気に弱いので、室内に入れたり出したりといった移動はしません。3月でもマイナス10℃以下になることもありますが、開催にあたって、ピアノの調律が大きく狂ったりはなかったです。
1日の大まかな流れは、朝にパトロールがその日の天候を調べ、概ね晴れ予報のときはカバーを外して、あとは自由に弾いてください、という感じです。
なにせ、レンタルの人も極寒のスキー場にピアノを設置するのは初めてのことでしたから。設置前の打ち合わせでも、エラーは実施してみないとわからないと。リスクはあるかもしれませんが、それよりもやったことがない面白さに共感していただいて、協力してもらえました。
こう話してくれたのは、このプロジェクトの指揮をとった総支配人の渡辺さんだ。
ピアノの音が鳴り響く。不思議なゲレンデ空間
誰でも弾けるゲレンデピアノは、リゾートセンターからスキー場へ出た目の前に置いてあった。誰かが弾いていれば、スキー場へ出た途端、ピアノの音色に包まれるという不思議な体験が味わえる。
また、開催時には10時、12時、14時にはピアニストがミニコンサートを開いていたため、一緒にやっていシャンパンバーとともに、スキー場離れしたロケーションが人々を引き寄せていた。写真を撮ったり、近くへ来て、ソリに腰かけて音楽を聞いたり、シャンパンを味わったりと思い思いに過ごしていた。ピアノも自動演奏ではなく、人が音色を奏でているのも良い。まさに、音楽はリゾートらしさを醸し出すひとつのエッセンスだ。
24季もさまざまなトピックスでリゾートが盛り上がっている星野リゾート トマム。なかでも注目は、3月1日から31日まで開かれる晴れの日限定イベント「絶景シャンパンテラス」だ。これは、標高1088mの霧氷テラスの展望デッキで、シャパンと絶景を堪能できるもの。ノンアルコールドリンクも用意しているため、子どもから大人まで、スキーをする人もしない人も等しく、贅沢なひとときが過ごせる。
絶景シャンパンテラス https://www.snowtomamu.jp/winter/topics/2303/
星野リゾート トマムは北海道の中央に位置する「北海道パウダーベルト」と称される注目のエリアにある。
険しいアルパインエリアのバックカントリーから、ローカルスキー場、リゾートスキー場と雪山を楽しむバリエーションに富んでおり、上級者から初級者までが、存分に冬を楽しむ環境が整っているとあって、滑り派だけにとどまらない注目のエリアだ。
全体的に東に向いた斜面のトマムは、緩やかな山体のタワーマウンテンとほどよい斜度を持ったトマムマウンテンの2つの山から構成されている。1月や2月は平均気温がマイナス10度近く、かつ2月以降は晴天率も高まるため、降った雪が放射冷却によって水分が飛んでいくドライアウトによって、さらに質の高いパウダー滑走が楽しめる。
そのうえ、雪の性質を活用したアクティビティも多い。極上のパウダーエリアが滑れる”上級者限定解放エリア”や、スキー場から車で20分ほど行ったところにある狩振岳エリアで開催している”狩振岳CATツアー”など、コアな滑り派も満足できる。
星野リゾート トマム
所在地:〒079-2204 北海道勇払郡占冠村字中トマム
電話:0167-58-1111(代表電話)
URL:https://www.snowtomamu.jp
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