世界中からパウダーフリークが訪れる。北海道のド真ん中にある「北海道パウダーベルト」
北海道の内陸部、北は旭川から南はトマムのある占冠までの一帯を「北海道パウダーベルト」と呼ぶことがすっかり定着した。質・量ともに雪に恵まれる北海道にあって、ここはそのなかでも軽い雪がコンスタントに降るエリア。道内のニセコ、本州の白馬に続き、いまではハイシーズンになると多くのインバウンドが訪れる場所になっている。
それもそのはず。内陸部特有の圧倒的な軽い雪。それが多いときには胸まで積もる降雪量。標高の高いアルパインエリアもあれば、標高を落とせば枝を広げた広葉樹のダケカンバを縫って滑るツリーラン。ロケーションも豊富だ。荒天時や視界が悪いときでも、このエリアのどこかにはパウダースノーを存分に堪能できる場所があるということだ。
アルパインな雰囲気抜群の十勝岳周辺、大雪山旭岳へは旭川から60km圏内
それほどのエリアだけあって、3月以降でもパウダー遭遇率も高い「北海道パウダーベルト」。ハイシーズン中の恩恵にとどまらず、その雪は長くシーズンを楽しむ礎となる。
北海道最高峰である標高2291mの旭岳をはじめ、標高2000m前後の山々が連なる大雪山の山々は気象条件や緯度が高いことから、本州の3000m級の山々に匹敵する山岳環境だ。つまり、春が近づいても本州の北アルプス上部と同じような環境があるため、比較的標高が高く、北向きの斜面、風の影響が少ない場所は、3月終盤以降でもパウダーが味わえる。
とはいえ、ビジターが春時期にパウダーをピタリと当てるのは難しい。また、各山の雪の状況を把握し、そのなかからベストをたぐり寄せるのはなかなか困難な作業だ。そこで頼りになるのがガイドクラブの知見だ。
今回は北海道内をくまなくガイドする武石誠(Hokkaido Expeditions)にピンポイントの日程でガイドを依頼。ハイク時間は長すぎず、少しばかりでもフレッシュな雪を滑りたい。そんなリクエストに対してどんな山を選ぶのか。編集部のオガワと各地の山域を滑る市川高嶺さんの2人を案内してもらった様子を紹介しよう。
登った山は三段山。山を堪能するのに相応しい雲ひとつない空模様
日時は2023年3月30日。前日までの天候が安定して良かったことから、日中は上富良野の麓で10度を超えるほどの気温。春めいた穏やかな日差しは標高をあげても影響があり、日の当たる斜面は融雪と凍結を繰り返している。このコンディションにはガイドの武石も、
「さすがにパウダーは期待薄かな〜。ゆっくり目にスタートして雪が緩むとともに登って滑りましょう」
と旭川の焼き肉屋で煙に巻かれながら、そう伝えてくれた。
「北海道パウダーベルト」の東側には大雪山山系が鎮座する。黒岳や旭岳、富良野岳のある十勝岳連峰、山のエキスパートたちが通うニペソツなど、この山域は広大で奥深い。どこかにはグッドコンディションが潜んでいるはずだ。
向かった山は三段山。十勝連峰のなかでもメジャーなポイントだ。ベースには温泉地の「白銀荘」があり、温泉とバックカントリーをセットで楽しめるのも魅力のひとつだ。三段山はその名の通り、エゾマツの森のなかを登る1段目、樹林帯を抜け緩やかな斜面をゆく2段目、3段目はアルパインという山。
振り返れば富良野の盆地や遠く大雪山も見渡せるナイスビュー。移りゆく景色を眺めながらが登るのが気持ちいい山だ。白銀荘から三段山山頂までは約700mの標高差。ゆっくり歩いて途中で休憩を挟んでも3時間弱ほどの行程。果たして今回は……。
ここからは写真を中心に当日の様子をなぞっていこう。
前々日から北海道にいたため、標高をかなり上げ、かつ北斜面狙いでないとパウダーは滑れないと思っていた。それが3時間ほどのハイクアップで斜面は短いものの、3月末でもパウダーが滑れるとは。
極寒のハイシーズンにもこのエリアを滑ったことはあるが、来る時期によって表情が違うのが山の良いところでもあり、怖いところ。比較的、安定傾向にある春は視界が開け、山を歩いていても日差しが気持ちいい。休憩時に眺める山々は雄大で高度感もある。活き活きとした前十勝の噴煙も絶景だ。
天候によってはまだまだ冬模様だからこそ、想定を超えたパウダーも味わえる。その逆に、降った雪が溶けたり固まったりして、痛い思いをすることもある。春シーズンの「北海道パウダーベルト」は十分すぎるほどの滑走フィールドと環境がある。日が長くなることもあり、1日中山のなかに入ってロングルートを楽しむこともできる。これからの時期が山を楽しむ第2のシーズンスタートだ。
Guide Infomation
▶Hokkaido Expeditions
公式サイト:https://www.hokkaidoexpeditions-japan.com/
SNS:Instagram
「OMO7旭川(おも) by 星野リゾート」を起点にして、春シーズンを存分に楽しむ
セカンドシーズンの「北海道パウダーベルト」を満喫するなら、旭川にある滑り手ファーストな拠点「OMO7旭川 by 星野リゾート」がオススメ。人口34万人が住む旭川は北海道第二の都市とあって、新鮮な食が集まり、熟成された食文化が充実している。豊富な宿泊施設や旭川駅周辺にまとまった歓楽街など、旭川はアフタースキーにもってこい。それに、山の天候が不安定なときには、気分を変えて都市観光が味わえるのも良い。
滑り手にとってありがたいサービスが多いOMO7旭川。市街地のちょうど真ん中あたりにあるから、ハイシーズン中は4つのスキー場や山を結ぶ無料送迎バスがある。館内にはチケットカウンターがあり、スキー場で並ぶ手間もなく、リフト券を買うことができる。
シーズン中は毎朝その日のベストパウダースノーを知らせてくれる朝のイベントも開催中。現地のスタッフと映像電話で繋がり、そのときの状況をリアルタイムで知ることができるのはとてもありがたい。
ほかにも、雪温15℃からマイナス30℃まで適応する30種類のワックスが無料で使えるメンテナンススペース「OMO WAX BAR」や、エントラスを入ってすぐ右手には暗証番号の入力で出入りできる乾燥室も完備だ。
部屋に入れば、スキーやブーツ、ゴーグル、グローブ、ウエアをひとまとめに収納できる専用ラックがあり、かさばるスキーケースなどをベッド下に入れたりできるなど、快適に過ごせる工夫が随所に散りばめられている(専用ラックのある部屋は1日4室限定の専用プランの申込みのみ)。
旭川の街に精通していなくてもなにも問題はない。OMO7 旭川に在中する”ご近所ガイドOMOレンジャー”が、旭川の街を練り歩きながら食事どころやお酒どころを案内してくれる。賑わっている居酒屋やジンギスカン、ゆっくりとくつろげるBAR、みんなが大好きなラーメンなどその種類は豊富。ゲレンデサイドに泊まっていたら味わえないアフタースキーが堪能できる。
季節が進み暖かくなる3月末から4月。名残惜しい冬を、滑走フィールドが十分に広い”北海道パウダーベルト”のセカンドシーズンで楽しもう。
Infomation
OMO7旭川 by 星野リゾート
公式サイト:https://omo-hotels.com/asahikawa/
SNS:Instagram|X
Photo/Takahiro Nakanishi