ユーザーが自ら体験したことは、他の人にとっても貴重な情報になるはず、ということでSTEEPでは読者レポートをスタート。
今回、お届けするのはその第1弾。体験したのは「UPLND×OGASAKAかぐらキャンプ2024」。レポーターは、スキー歴20年、バックカントリー歴7シーズン目、普段は北信、東北を中心に滑っているYOSHIさんだ。
久しぶりの「かぐらの山」へ
「かぐら」といえば、首都圏アクセスのバックカントリーの聖地といえる場所でしょう。かくいう私も、バックカントリーデビューは2018シーズンの「かぐら」でした。バックカントリー歴が長くなるにつれて活動範囲はどんどん広がり、最近は「初滑り」にかぐらスキー場を少し滑るくらいで、ずいぶんと遠ざかっていました。
今回、友人の紹介で、「UPLNDかぐらキャンプ(2024年2月26~28日)」というショップ主催のバックカントリーキャンプに参加してみました。数年ぶりに入ることになった「かぐら」の山。その様子をレポートしてみたいと思います。
「UPLND×OGASAKAかぐらキャンプ2024」とは
「UPLNDかぐらキャンプ」とはどのようなキャンプなのか、をまず説明しましょう。2023年から北欧ブランドのHaglöfs を展開するプロショップの「UPLND」主催で、そこにOGASAKA、Haglöfs 、ガイドのYamaki-X(ヤマキックスこと山木匡浩氏)で開催されるという、なんとも豪華なスキーキャンプです。
スキーキャンプといえば、自分にとっては大学生の頃、スキー場近くの宿に2、3日滞在して、友達とワイワイ滑るのが定番でしたが、今回はまさにその大人版。よく利用するバックカントリーガイドクラブや通っているショップなど、それぞれの繋がりのあるメンバーが集い、各メーカーのスタッフと一緒に2泊3日でかぐらのパウダーを遊び尽くす大人のキャンプなのです。
ショップツアーならではの楽しみ
ショップツアーならではの楽しみは、ギアに精通したスタッフが同行し、ツアー中にさまざまな最新情報を入手できることでしょう。
今回のキャンプでは、皆で夕食の後、OGASAKAのバックカントリー・フリーライドスキーの紹介から、気になる開発の動向、Haglöfs からはマテリアルの紹介や来季のアイテムの紹介、試着大会、最後には参加者プレゼントなど、一般のツアーにはないエンタメ要素が盛りだくさんでした。
さらに、このツアーの核心は、ツアー中に写真家の中田寛之氏に滑走写真を撮影してもらえること。毎日滑走シーンをプロフォトグラファーに撮影してもらい、夜に皆で大きなスクリーンに投影し、その写真一枚一枚に対してYamaki-X(山木氏)がレビューをしてくれるのです!
常連の方々がコレをとても楽しみにしていた理由がよくわかった次第でした。プロに撮ってもらえる写真が、とにかくカッコいいのです!(笑)。
1日目は、なにも考えずツアーに参加していましたが、2日目からは写真映りを考えて、バックパックのアクセサリーやポールの持ち方もフォトジェニックになるよう調整! 2日目からは身なりも整って、夜にレビューされる写真もどんどん良くなっていきます。映りに気を遣う「意識高い系」スキーヤーが、こうしてどんどん誕生していくのでしょう(笑)。
幅広いレベルの参加者が楽しめる絶妙なガイディング
ゲレンデスキーヤーからすると、バックカントリーツアーはとてもハードルが高いように思います。そして、初心者向けのガイドツアーを探すのも至難の技だし、入ってみると上級者が多くて肩身が狭い思いをすることもあります。
その点、初級~中級を中心とするこのキャンプは最適です。もちろん参加者のなかには上級者も多くいますが、山木さんの絶妙な斜面選びのガイディングで、初心者も上級者も大満足な滑走ができます。
今回、3日間のキャンプ中、後半の2日は雪が降り続く絶好のパウダーコンディションでしたが、1つの斜面にメローなラインと、上級向けのラインがある絶妙な斜面選びのおかげで、レベルがまちまちのグループでも、みんなが大満足でした。
一定の滑走スキルさえあれば、バックカントリーの経験値がどんな人でも大満足できる。多様な参加者の期待に細やかに応えてくれようとする温かな心配りと、卓越したガイディングノウハウ。これにはとても感動・感心するし、この点が特に、このキャンプをバックカントリー初級者にもオススメできる理由だと思います。
その道のプロが集うキャンプのもう一つのメリット
通常のガイドツアーと違う点は、ガイド以外にも多くの関係者も参加者することです。今回のUPLNDかぐらキャンプには、オガサカスキーの開発担当者、Haglöfs の日本担当者、そしてUPLNDの企画担当も参加して、その道のプロ達が集結していました。ギアについても見識を深められるのも勿論ですが、機材トラブルの回避についても、彼らは深い知識を有しています。
実際、今回のキャンプ中、一緒に参加していた私の妻は愛用のMSRのポールの凍結に困っていました。具体的には、三段式のポールが2、3日連続で使用していると、気温の低い日に凍結してしまい、モードチェンジにとても苦労するという悩みを抱えていたのです。これまでは暖めたりして、なんとかその場を凌いでいたのですが……。
その場を目の当たりにしたスタッフが、夕食後に課題解決の時間をとってくれたのです。まず、ポールを分解し細かく見ていくと、あちこちに水滴が散見されました。これは凍るはずです。要は、乾燥が不十分になりやすい構造なのです。
ただ、簡単に分解できるものでもないので、どうしたら簡単にメンテナンスできるかを考えていきます。こんなことも、その道のプロたちと一緒に過ごすからこそ。こんなエピソードにたくさん遭遇するのも、このUPLNDかぐらキャンプの魅力でしょう。
違う環境で滑ることの面白さを実感
今回3日間、UPLNDかぐらキャンプで過ごしてみて、私はいつものメンバーたちと過ごすバックカントリーツアーとは、また違った学びと楽しさを発見しました。
ひとつは、ある程度の想像はしていましたが、ガイドのガイディングスタイルの多彩さとクオリティの高さ。そして、キャンプ全体を盛り上げようとする気遣いあふれるスタッフと過ごす3日間の時間の濃厚さ。想像をはるかに超えるものでした。そして、もう一つは、参加者の皆さんの温かさです。初めて出会う人たちといきなり3日間寝食をともに過ごすので、躊躇する人も多いと思いきや、それは始めだけ。同じ雪遊びを趣味とする人達が集まれば、1日も経たずに打ち解けます。
周りの人が変われば、入ってくる情報も変わり、自分の次のツアーの予定も変わってくるというものです。実際、このツアーに参加した方から湯殿山の素晴らしさをたっぷりお聴きして、春に自分も湯殿山にチャレンジしてみることを決めました。いつも決まったガイドや仲間と行動している人や、滑ることは大好きだけどバックカントリーはまだ慣れないという人、もっと新しい滑るモチベーションが欲しい人、来年もUPLNDかぐらキャンプがあれば、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
REPORT :YOSHI(STEEP読者レポーター)
普段は東京でマーケティングの仕事に従事し、標高3,000mと水深30mの間を行き来するスキーヤー・ダイバー。当初はパウダーを滑ることだけに夢中だったが、ハイク中に見える山の景色、空気感、そして地方の山を訪れる旅に魅了され、さらにのめり込み、地方に第二の拠点を構えることを本気で考え出した、バックカントリーを始めて7シーズン目のまだまだ新米バックカントリースキーヤー。
SPECIAL THANKS
ガイド: 山木匡浩氏
サポートスタッフ UPLNDライダー 佐藤藍氏
株式会社アール・シイーテイー・ジャパン営業 三浦氏
UPLND 村井俊介氏
オガサカスキー 長野本社営業 関氏
フォトグラファー 中田寛也氏