尾瀬戸倉フリースキーオープンが開催 オリンピアンの高尾千穂最速レポート

ここ数年、毎年行われている、尾瀬戸倉フリースキーオープン(2/27-28)。過去にはFIS公認の大会は数多くあったが、現在では尾瀬戸倉を残すのみとなっている。
開催7年目にして、過去一番の参加人数だったという当大会。通常のシーズンなら海外へ遠征に行く選手も今年は日本に留まっていたので、過去に類を見ない熱い戦いとなった。その最新レポートを、実行委員会であり、元ソチ五輪スロープスタイル代表の高尾千穂からレポートをもらった。

尾瀬戸倉フリースキーオープンとは

尾瀬戸倉フリースキーオープンは2015年から始まり、今年開催7年目を迎える国際スキー連盟(FIS)公認のクラスを含む、フリースキー・スロープスタイル種目の競技会です。近年はオリンピックの影響によって、中国や韓国でもFIS公認大会は増えていますが、日本国内では、未だ数が少なく、毎年継続的に開催されているのは尾瀬戸倉フリースキーオープンだけとなっています。

大会当日は晴天に恵まれる。選手の大半は未成年で保護者も多く集まった

参加者は、13歳以上でFIS競技者登録をしている選手を対象としたFISクラス。年齢は不問ですが、全日本スキー連盟(SAJ)に競技者登録をしている選手を対象としたSAJクラス。12歳以下と18歳以下の選手の部門を設定したジュニアクラスの3クラスにそれぞれ男女別で募集しています。FISクラスならびにSAJクラスは、特設のスロープスタイルコースを使い、ジュニアクラスは常設のスロープスタイルコースで、それぞれ競技を行います。

大会の雰囲気

大会前日に行われる公式トレーニングの日は晴天でした。大会数日前からの冷え込みによって、バーンはカチカチにパックされまた今シーズン初戦という事もあってか、選手たちは少し緊張している面持ちでしたが、ほかの選手と再会の挨拶を交わす中で、徐々に気持ちもリラックスしているように見えました。

12歳以下のジュニアクラス男子は楽しみながら滑っていた

気温が上がって少し雪が緩み始めた、公式トレーニングが後半に差し掛かる頃には、高難度のトリックに挑戦する選手も増えてきました。難しいなランを成功させた選手だけでなく、たとえ転倒してしまっても、果敢に高難度トリックに挑戦していた選手に対しては、選手同士で拍手や歓声があがる良い雰囲気になっていました。

写真左上に大会コースの全容。ホテル4階にあるジャッジブースからの眺め

レベルアップしている選手たち

FIS・SAJクラスについて、今年度の大会は、数週間前から続いた暖気と降雨により融雪が急速に進行し、例年に比べ、ジブセクション が少なく、ジャンプも小さい設計となっていました。しかし、その中でも選手たちは、ジブでは高難度のコンボトリックを、ジャンプではコークやミスティをはじめとした様々な回転軸や高難度のグラブトリックをみせてくれました。

勝負の分かれ目になったキャノンレール

FIS男子のクラスについて、ジャンプ台のサイズによる制限から、コーク720、900、スイッチ900などを行う選手が多かったです。その中で特に目を引いたのは、トリックやグラブで個性を出したランでした。少数の選手しか行っていないジブでのコンボトリックやダブル系のトリックを組み合わせたランが上位に入りました。
優勝した選手は、ジブでは誰も行っていないミスティーアウトをただ一人成功させ、さらにジャンプで、ダブル系のトリックを使わなくても、大きなエアと個性的で完成度の高いグラブをメイク。均一的なトリックが目立つ中、オリジナリティを出したトリックで高評価を獲得していました。

FIS女子クラスは、今年度、過去最多となる参加人数でした。ジブセクションは450アウトを最高難度のトリックとして、ジャンプではレフトとライト、両方向のスピンが基本となるまでレベルアップしていました。優勝選手はスイッチ720を左右両方向で、高い完成度でメイク。女子選手の全体的なレベルアップに目を見張るものが多かった今回の大会です。

ジュニアクラスは、初めて大会に出場する選手が多くいました。ジュニアクラスの選手には難しいと思われたドンキーレールと言った変形系 のジブアイテムにも、積極的に入る選手が多かったのが印象的でした。既にレフト、ライト、スイッチなど回転方向を複数使い分けている選手もおり、次世代の選手層に厚みを感じます。女子に関してもグラブをしっかり意識したランを行っていました。

身体の小さい選手も果敢に攻める

今回の大会で、最も印象に残ったのが、SAJクラスの13歳以下の選手達です。昨年までコースを通すのがやっとという選手が、まだ小さい身体でFISクラスの上位選手達と同等の高難度トリックでコンビネーションを行っていたのです。例えばレギュラー900から反対方向のスイッチ900、スイッチ1080など、数年前までは考えられないような高い次元のレベルに突入しています。

男女ともにスピードの調整に苦戦しているように見える場面はあったものの、ただトリックを行うだけでなく、グラブや空中動作など、非常に高い完成度でランをまとめていることにジャッジ一同驚きました。

勝負の分かれ目となったジャッジの目線

今大会はジャッジにとっても今シーズン初戦 でした。選手のレベルを把握するため、前日から入念に選手の滑りをチェックしました。例年に比べてアイテム数が少なく、また、小さいため、選手間でランが似通うであろうと事前に予想していました。そのため、ジャッジングの評価基準である、高さと完成度を大きなポイントとし、ジャンプ台に合った放物線を描いてトリックを実施できているか、ジブで最後まで芯をとらえて乗ることができているか、全体的に着地の際のお手付きや尻餅は勿論、板のズレ、身体ふられ方まで細かく見ることにしました。

ジュニアクラスの選手もグラブを意識したトリックが当たり前のように飛び出す

さらに、もう一つの大きなポイントとしたのが、漸進性(Progression)です。トリックやグラブなど、他の選手と比較してどれほど目立てるか、際立ったことができるかが順位を上げる鍵となりました。

高尾が見据えるフリースキーのこれから

今年はコロナ禍ということで、例年だと海外で転戦している日本人のトップ選手も今大会には多く参戦していました。ジュニアクラスのまだ若い選手らにとって、ワールドカップ等、世界の第一線で戦っている選手と同じコースでランをできたことは、貴重な体験だったのではないかと思います。このような機会が増えることは競技全体のレベルの底上げにつながると感じています。

満足に大会が開催されないシーズンだったが、この大会を機に全国の友人とも顔を合わせた


最近の世界のシーンを見ていて、今後より重視されるのは、個性であると私自身は思っています。皆がただ、同じトリックをするのではなく、そこからいかにオリジナリティを出せるかが重要になってきます。例えば、今回の大会で言う、ただ一人だけジブセクションで3D系のアウトミスティアウト をしたり、珍しい、誰もができるわけではない グラブトリックをしたり、という点です。
現在競技を行っている選手も、これから選手を目指すキッズたちも、型にはまらず、クリエイティブなコースラインや、新しい、珍しいグラブや動きなど、自分だけの個性をどんどん出して欲しいと思います。
また、フリースキーというスポーツ自体、若年年齢化しているが、フリースキーは文字通り“フリー”なスキーです。フリースキーの楽しみ方は無限であり、今後は全ての年齢層、さまざまな目的をもった人が楽しめる大会やイベントも開催していきたいと思っています。

大会結果-リザルト-

FISクラス男子
1位 藤井 源
2位 山本 泰成
3位 太田 寛九郎
4位 伊藤 瑠耶
5位 山岸 建矢
6位 東 虎太郎

FISクラス女子
1位 近藤 心音
2位 古賀 結那
3位 渡辺 栞鈴
4位 菅原 那奈
5位 佐藤 瞳
6位 菅原 希昴

SAJクラス女子
1位 近藤 叶音

SAJクラス男子
1位 山田 蒼天
2位 西 陽彩
3位 木下唯人

ジュニアクラスU18男子
1位 栗原 真輝人
2位 高麗 智悠

ジュニアクラスU12男子
1位 榎本 悠人
2位 志釜 琉太
3位 伊藤 柊

ジュニアクラスU12女子
1位 アンダーソン 有珠ジェシー
2位 齋籐 結姫
3位 藤井 紗也キャメロン

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