「A DAY IN THE SKI」上村愛子、西伸幸、丸山淳也、丸山真宏、手塚慧介。白馬高校OBたちの滑り納めのある日

冬の間は白馬岩岳でスキーパトロールとして従事しながら、フリーライドの大会サポートやバックカントリーでの撮影に精を出す丸山真宏
スキー場はとっくにクローズし、麓の町は濃い深緑に覆われ、爽やかな空気が漂い始めた5月下旬。彼の号令によって集まったスキーヤーたちのある日を、彼のテキストと同行したフォトグラファー伊藤剛の写真で届けしよう。

白馬大池へ滑り納めに行こうと声をかけて集まったスキーヤー5人。
このメンバーには共通点がある。 ただただ、スキーが好きということ、そして白馬高校の卒業生だ。

所々雪解けた栂池自然園。標高1700mに訪れる遅い春を感じながら歩く5人

最年少の手塚慧介はこの春に白馬高校を卒業したばかりの18歳。山が好き過ぎて上田市から白馬高校に入学した彼は、1年中、山のことばっかり純粋に考えている。会うたび一緒に滑りましょうと言ってくる山岳少年だ。

西伸幸はご存知モーグルのオリンピアン。スキー馬鹿という言葉が一番似合う。ノブは35歳で世代は被ってないが、昔からの遊び仲間で後輩というより弟に近い存在。朝から晩まで滑っていた頃を思い出す。三度の五輪を経験し、引退後も生涯スキーヤー宣言をしている彼を山に誘ったのは自然なことだった。

丸山淳也は30歳の現役のナショナルデモンストレーターとして活躍しながら山も登るし、キッカーも飛ぶ。いろんなスキーがあることを知っているし、それを体現しているスキーヤーだ。ちなみに、淳也の不整地はほぼモーグルだ。

上村愛子は俺が高校1年生の時の3年の先輩。長野五輪に出場し、白馬高校の名を広めたモーグル界のレジェンドだ。 最近は山も精力的に活動している一方、登っている最中も、カメラをぶら下げて大自然を満喫しながらシャッターを切っているカメラ小僧でもある。

高校時代の競技も違えば年齢もバラバラ。世代を越えて一緒に滑るのはいつだって新鮮だ。

左から丸山淳也、手塚慧介、上村愛子、丸山真宏、西伸幸
話題の中心は全員が通った白馬高校だ、なんでもない思い出話しから近況まで話は尽きない

登っている最中、誰が言い出したのか、高校時代の出来事のことでみんなの足が止まった。
それはスキー部の顧問でもあった矢口先生による野外活動という授業の話だ。

山菜を採ったり、流木でルアーを作り、そのルアーで釣りをしたり、他校には見られないであろう、なんとも白馬高らしい授業。魚が釣れないと単位が取得できないなど、本気と遊びが混合する授業で、なかなか釣れずに補習をさせられていた当時を思い出し笑顔が溢れた。
数ある選択授業のなかで、みんなが野外活動を選択していたのだ。誰しも自然が好きなんだ。

他愛もない思い出話をしながら、俺たちは”スキーが”ではなく、”自然の中でするスキーが”好きなんだということ、そして卒業してからも形を変えて野外活動授業を続けているだけなんだと、改めてそれぞれが思ったに違いない。

今回もそうだ。
シーズン中は各々がスキー活動をしている。大会や撮影、レッスンなんかがそうだ。 でも、こうして集まると、そんないつもやっているスキーとは、なんだか空気感が違う。

それは今日が滑り納めという理由だけではなく、スキーを履いて、何かしたいことが個々にあるからなのだろう。

少し前の賑やかな雰囲気から一変。急斜面と春のザラメ雪でシールが効かなくなりみな苦戦する
この日一番の難所。ザクザクの雪を踏み固めながら板を背負って直登する。18歳という無限の体力を持つ慧介に負けじと維持を張る
先輩達

みんな滑ることだけじゃない思いがあった。
それは、まさに高校時代から連綿と続く野外活動授業の一環なのだ。

雪解けで綺麗なコバルトブルーの白馬大池を撮りたいと、重たいカメラをぶら下げ登る愛子。
本格的な山は初挑戦、そんな山から海を望みたいと息巻く伸幸。
技術選とは違うスキーの自由さを求めながら、下山後のビールのために汗まみれで登る淳也。
行ったことがないルートに心を躍らせ、地形図とにらめっこしながら無限の体力で歩き続ける慧介。
この時にしかできないスキーと山菜採りの面白さをみんなに伝えたい俺。

みんな滑ることだけじゃない思いがあった。 それは、まさに高校時代から連綿と続く野外活動授業の一環なのだ。

そんなことを思いながらトボトボと登っていると、船越の頭から2人のスキーヤーが颯爽と滑り降りて来た。
この時期にここで他の誰かに出会うことは、ほとんどない。
挨拶をすると、満面の笑みで振り向いた2人は、白馬高の大先輩だった。
結局、先輩達も今だに野外活動の続きをしているのだと思うと嬉しくなる。きっと下山しながら山菜も採って帰るのだろう。

白馬大池が望める山のピークにたどり着き、我先に自由なスタイルで大池へとドロップしていく。

そして滑り納めると、美しすぎる白馬大池の絶景を撮る愛子、その池の畔で水遊びをする慧介、山の魅力に取り憑かれたのか、がむしゃらに登り返し滑り納められないノブ、負けじと登り返し流石のラインで滑りきり、おにぎり片手にビールを心待ちにしている淳也がいた。

この日のファーストトラックは自然と愛子に。大池まで一気に滑り降りた先輩の楽しむことに全力な後ろ姿は、後輩達にも確実に伝わる
ハイシーズンのピリッとした雰囲気とは違い、皆に煽られながらただただ気持ち良く滑る丸山真宏
慧介の滑りからはいつでも笑い声が聞がこえてくる。その声はスキーを始めた原点を皆に思い起こさせてくれる。生粋のスキー馬鹿
納得がいくまで何度も登り返し、滑り納める最後の一本まで負けず嫌い全開の伸幸
オープンバーンをハイスピードで突っ込んでいった淳也の鋭いターン
結局、夕暮れまで滑り倒し、滑り納めのはずが、「明日はテントも背負って一泊しよう」なんて計画をおっ立てはじめる諦めの悪い仲間達
山好きは山菜採りも真剣そのもの。山菜の質問責めをされながら力説する真宏(右)。

俺たちは”スキーが”ではなく、”自然の中でするスキーが”好きなんだ

陽も落ちかけ下山のために湖畔からもう一度、登り返す。

夕暮れ時の山の頂きからは、自然と共存しながら山で遊ぶことを教えてくれた白馬高校の校舎がはっきりと見えた。
スキーで繋がる白馬高校OBの絆は世代を越えて、これからも一緒に滑り続ける。

文章=丸山真宏 Text=Masahiro Maruyama
アルペン、モーグル競技を経て、フリースキーヤーとして活動中の39歳。白馬山岳エリアを中心に撮影や大会にも参加。現在は白馬岩岳スノーフィールドのパトロール隊長も務める。栂池高原スキー場、鐘の鳴る丘ゲレンデ入り口の「栂池グランドロッジ」が実家。シーズン中は全国から旧知のスキーヤーが大勢集るたまり場的存在。オフシーズンは農業に従事している。

photo:Hiroya Nakata

写真=伊藤剛 Photo=Go Ito
大阪府出身、白馬村在住。ライダーと共に山深くまで入り込み写真を撮る。ここ最近は映像制作も平行して行っており、その作品の評価も高い。
Instagram:@gomaniac

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